厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第三章 健斗と美咲と新たな出会い

小動物しか勝たん

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健斗達一行は美咲達とロータリー西のスロープで合流した。

何故西側かと言うと、東側には怖い顔で睨みつける一団が居るからである。
それは美咲も気づいており、どうしたものかと思い悩んでいた。

 「なぁ健ちゃん、なんであの大剣使いの人はうちらに怒っとんやろうか?」
「わからんけど、横殴りして結果横取りしてしまった事があかんかったんかな?」

 『いやっ、もううちらは崩壊しとったからなぁ』
  『下手したら死人が出とってもおかしない状況やったしー』

 「でも許可なく横されたら怒るやろなぁ」
「許可はこの魔法屋に貰ったよ。って言うか、助けてくれって言いよったし(笑)」

 『ゆ、ゆうたような、ゆうてないようなぁ?』
 「いやいや、うちも聞いたわw」
  『死人に一番近かったのはあんたやで』

あははははは

和気あいあいで7人が楽しんでるのを反対側から4人のきつい目が睨んでいる。

「まぁ治癒魔法も覚えた事やし、あの4人を治しに行こうか」
 「ちょい待てぇ~ いつの間にそんなスキル覚えたんじゃぁ~?」

「ふふふ、美咲君、人は日々進化しとるんじゃよ」
 「その言葉、一回聞いたわ~」

 『仲えぇなぁ 自分ら」
 「どこがやね~ん」


「ま~あそこにまだ怪我人がおるから、ヒールとか覚えれるんちゃうか?」
 「あの目で見られながら~?」
「気合じゃ~」

   『リーダーはとても良い人なんですけどね・・・』

「とりあえず行ってみようか?」
 「行くのか・・・」


美咲はあまり乗り気では無かった。
理由は簡単だ。

せっかくすけっとしたのに敵意を向けられて、横扱いの目線で見られている事だ。
話せば言い合いになるのは目に見えている。


魔武闘家の子が先陣を切ってリーダー格の大剣戦士に向けて言葉を発する。

  『リーダー、風使いの健斗さんとその一味です』
 「一味ってなんやね~ん」
「初めまして、庄内健斗と言います、こちらは二つ石美咲と言います」

  『名前なんかどうでもえぇわー』
  『人の獲物、横取りした気分はど~よ?』

 「はぁ~?崩壊してもう全滅目前やったのを助けたったのに何ゆぅとんじゃ?」
「美咲っ辞めとけ」
 
 「辞めれるかぁ!こっちは丁寧に挨拶しとんのに、なんじゃ?この態度は」
 (挨拶したんは俺やけど・・・)

 「あんなトロール一匹に大怪我させられて戦線離脱しといて、何が横取りじゃ?」
 (トロール倒したんも俺やけど・・・)

 「いきなり横した訳ちゃうやろが~」
 「ちゃんと様子見て、もうあかんやろうってとこまで待っといたったやろが~」
 「魔法職の子にタゲがいってしもて、どうにもならんかったから手~出したんやろが~」
 「おまえらまだまだ動けるのに、ちょっと怪我しただけで離脱したヘタレのくせに~」
 「ふんっふんっ!」

鼻息も荒く、一気に噴き出す美咲の文句。

それを聞いていた敵意4人組は取り敢えず返す言葉が無かった。
だが、美咲達を気に入らないのは変わらないので、きつい目線を送り続ける。

  『どんだけ言い訳しても、横師は横師じゃー』
 「しつこいのー 死にかけのおまえら助けたんはうちらや」
 「それが気に入らんのやったら、そこで死んでみいや~」

「美咲ーもう辞めとけって」
「ちょっと一回部屋に戻って頭冷やしてこいや」

 「うちは冷静や~ どっからどう見ても冷静やろが~」

「ルーム」

健斗は無理やり美咲をルームの中に押し込んだ。

 『な、なんですのじゃ?』
「おいおいっ、言葉がおかしいぞ(笑)」

魔法屋の子がルームへのゲートを見て素っ頓狂な声を上げる。

 『ゲ、ゲート~?』
  『は、初めて見た~』
 『ど、どこに繋がってんの~?』

「これはルームと言って、異空間部屋に繋がってるんよ」

 『な、中が見たいぃ~』

「中はまだカスタマイズ出来てないから狭いよー」
「一人だけなら入ってもいいかな」
 
ゲートの中へ魔法屋の子だけを入れてあげる。





 「うわぉ~?」
いきなり人が入って来て、美咲は驚いた。

 『す、すご~い、すご~い、ほんますご~い』
 『これって異次元空間の中~?』
 『ゲートくぐったらすぐにここに出たー』

美咲に答えるでもなく、一気にまくし立てる。

 「おぅ!ルームってスキルやねんけど、まだまだ色々と出来るらしい」
 「今は電気と水道が来とうだけやけど、そのうちトイレや風呂が作れるらしいわ」

ドヤ顔で美咲が説明をするが、これは健斗のスキルである。

 『すご~ どうやってこんなスキル手に入れたん?』

美咲は宝箱の話を魔法屋の子に話し出した。
たまたま見つけたものだけど、探せば他にも絶対にあるはずだと。

 『うち、レベル上げ辞めて宝箱ハンターになろっかな~』

 「でも欲しい物ばっかりじゃないやろうけどな」

 『うちら、メンバー多いから誰かしら必要なもんになるかも知れんしね』
 『この部屋のスキル欲しいなぁ・・・』

 「やらんぞー(笑)」

 『えっ? うぎゃ~』
 「どした?」

 『そこの布団の中でなんかが動いた~』

 「あぁ起こしてしもたか」
 「ほら、出ておいでー」

布団の中からモゾモゾとリーリが出てきた。
それを見て驚愕の顔から満面の笑顔に変わる魔法屋。

 『いやぁぁぁぁぁぁぁ』
 『なんなんこの可愛い生き物は~』

思わずリーリを抱きしめたが、拒絶された。

 「この子はまだ人馴れしてへんからな~」
 「どんどん触ったげて。噛むやろうけどw」

 『リカバリーも覚えたし、噛まれ放題やで~』

美咲は眷属契約の発生の仕方も説明した。

 『こんな子、眷属にしたいな~』
 


 「なんであんたらのリーダー達はあんなに怒っとんやろうか?」

リーリを撫でながら魔法屋が答える。

 『なんでやろなぁ さっぱりわからんよ』
 『あんたらと元からの知り合いとかちゃうの?』

 「うちはまったくどの子も知らんけど、相方が昔手を出した子とかかもなw」
 『ゆぅたら悪いけど、女ったらしな感じの顔しとうし(笑)』
 「にゃははははは」

 『あっごめん、彼氏の悪口言うても~た』
 「アホやで、彼氏ちゃうわー」
 「おんなじマンションで顔見知り程度やったけど、昨日から戦友になっただけや」

すっかり美咲の頭は冷静になっていた。






外では健斗が大剣戦士に話しかける。

「なぁ何をそんなに怒っとんや?」

『・・・』

「何が気に入らんのか教えてくれよ」

『・・・』

「しかし、その大剣、変わった形しとんな」

『・・・』

「良く見ると可愛い顔しとんな~」

『ほ、ほっとけっ!』

やっと反応したけど、そっぽを向いてしまった。

 『女たらしやな』『女たらしだね』『スケコマシやわ』『エロ親父や~』

他の仲良くなったメンバーに色々と言われるが、みんな顔が微笑んでいる。
しかし、目の前の4人は笑う事も微笑むことも無い。



丁度そこにルームから美咲と魔法屋さんがひょっこりと出てきた。

 『なぁなぁ中はホンマに部屋になってて凄いんよ~』
 『冷蔵庫もあってホンマびっくりするわ~』
 『ほんで、この子見てぇ~』

すっかり慣れたリーリを抱いて、皆に見せびらかす。

 『カーバンクルの変異種なんやって~』


そっぽを向いていたリーダーの顔がその手に抱かれている小動物をロックオンする。

『にゃぁ~ にゃんにゃんこの子は~』
『可愛すぎにゃ~』


「おまえはネコ娘か・・・」


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