厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第三章 健斗と美咲と新たな出会い

新たな出会い

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ルームの中に入ると美咲は起きていた。

少し驚いた顔をしていたが、「おはよっ」と挨拶をして来たので「おはようさん」と返す。
出口のゲートを見ると、外からコンセントに向かって線が2本刺さっている。
成功だな。


事の顛末を詳しく話し、今、外ではトロールと9人の戦士が戦ってる事も話す。

美咲は、着替えるから外に出てくれと言う。
早く風呂とトイレと個別の部屋を設置したいなー。


  

外に出ると、ゲートを閉じて戦闘を見学に行く。
トロールはまだまだ元気だ。

6人の戦士たちもまだまだ元気だ。
だが、1発喰らえば致命傷だと言うのは変わらない。



いつの間にか美咲が後ろに立っていた。
何となく覇気が無い。
朝は弱いのだろうか?

「朝飯食うか?」
 「何があるん?」
「サンドウィッチでも作ってくるよ」
 「ありがとー」

ルームに一旦入り、冷蔵庫の線を伝ってゲートを出る。

思い通りに冷蔵庫の真横に出た。

これはこれから使える裏技やな。

でも、美咲の元に帰れないのならあまり意味は薄い。


もう一度入って普通にゲートから出ると、美咲の出てきた位置に繋がっていた。
(よしよし、これは使える!)

入り直してまた冷蔵庫の所に出ようとゲートを触ってわかった事がある。
ゲートの大きさはルームの中で変えられるんだと。

ルームの中のゲートを、超大型冷蔵庫の大きさまで広げて、線を伝って外に出る。
今度は外から超大型冷蔵庫を中に入れる。

「入った~」

これで第一段階クリアってとこかな。

もう一台の冷蔵庫はこのまま置いておこう。
このキッチンを自分専用にするには、ここに一台残して、コンセントを差しっぱなしにする必要があるからだ。
 
ルームの中に戻って思い知らされる。
大型冷蔵庫が2台も入らない部屋の広さだった・・・

まぁ1台は外のキッチンに置いておくから問題ないか。


キッチンに立ち、サンドウィッチを作る。
パンにマスタードバターを塗り、マヨネーズを重ねて塗る。
その上に切ったトマトと、レタスをパンッっと叩いて平たくして乗せる。
ハムを乗せて、軽くマヨネーズをかけて伸ばし、マスタードバターを塗ったパンでサンドする。

あとは食べやすい形に切って整形すれば出来上がり。
自分はパンの耳は半面残すタイプだ。

皿に盛ってお盆に乗せてルームの中に持ち込んで、今度はお湯を沸かす。
お湯が沸くまでの間に布団を畳んで纏めておく。

リーリは夜行性らしく、畳んで積み上げた布団の中に潜り込む。


ガスボンベ式のコンロで沸かした温かいコーヒーをコップに入れてお盆に乗せる。

そして美咲の居る方のゲートに出て行って、食事を渡し二人で食べながら戦いを観戦する。


「あの大剣の娘、タゲ取り上手いよなぁ」
 「うん、ヒットアンドウェイを忠実にこなしてる」
「ダメージもそこそこ与えてるし、かなり体力消耗と状況判断に頭使うやろな」

 「あの動きは見習わないとなぁ」
「美咲はだいたい突っ込み過ぎやからなー」
 「自分でわかっとんねんけど・・・」

「俺の攻撃でもあいつにはそこそこダメ与えられるけど、美咲はもっとダメ高いかな」
 「うち、SPを全部STRとDEFに振ったからなー」

「そっかー 俺は剣士やのに剣士のスキルが何も無いからなぁ(笑)」
 「魔法ばっかり使うからちゃうんか?」
「魔法が楽でえぇしなぁ」

 「あっ!タンクの子がコケよった」
「体力が限界に来たかな?」

トロールからタゲを取っていたタンクの剣士が倒れたので、トロールは上段からその金棒を打ち下ろす。
大剣で受けようとする女性。

 ドッゴーン

大剣士の刀が曲がり、胸に金棒がわずかだがめり込む。

 ゴフッ

大剣士は血反吐を吐いて転げ回ってその場を離脱する。

弓職二人は、失矢しつやしたようで、戦場に矢を拾い集めに走る。

タンクが機能しなくなったことで、殴り屋も一気に形勢不利になる。
トロールが適当に横薙ぎに振り払った金棒は、3人の殴り屋たちの足や腰に当たる。

避け気味に当たったとは言え、その威力は高く、機動力を一気に奪われた。

「こりゃー崩壊かな?」
 「助ける?」

「おーい、手伝おうかー?」

2人に一番近くで戦ってた魔法職の女が近寄ってきた。
 『さっきから、のんびり食事したりとか、あんたら何考えとんねん!』

 「んっ? 他人の戦いの見学してただけやけど?」
「普通に考えて、横入りして横取りなんて出来ないでしょ?」

 『だからって、大笑いしたり食事したりと、あんたらむっちゃ気分悪いわ!』

 「ごちゃごちゃゆぅとらんで、仲間助けんでえぇんか?」
「許可があれば手助けするよー」
 『いらんわー』

上の戦場では多くの戦闘員が離脱したので、フレンドリーファイア身内への誤爆の危険性が減ったため、魔法職の子が冷気の槍をトロールに向けて発射する。
肩口を掠めて、少しのダメージが通り、トロールのターゲットが魔法職の子に替わった。

連続して氷の槍を打ち込むと、数発が当たりトロールが少し怯む。

トロールの向こうでは、弓職が二人トロールを狙うが、あまり威力も無くダメージも低い。

 「あの弓の子達、矢が無くなってアタフタしとったな~」
「うん、魔力はそこそこあるんやから、マジックアロー覚えたらいいのにな」
 「ここのボスはどの子かわからんけど、あの二人にすんごい教えたりたいなぁ~」
「おせっかい娘が~(笑)」
 
 「うちらが教えたら、やっぱり風魔法かな?」
「多分、そうなるやろな」
 「風の一族~」
「はははははは、美咲が族長か」



大剣の子を戦場から離脱させて、怪我の無い格闘家と魔武闘の二人が後ろから削る。
だが、氷の魔法よりも高いダメージを与えられない為、タゲは変わらず魔法職に向かう。


ターゲット目指してバスのロータリーから、一段低いタクシー乗り場に飛び降りて来る。

 ドッスーン

2メートルほどの段差だが、大きく地響きがする。

魔法職の女性を見つめて、ニタリと笑い金棒を振り上げ襲い掛かる。

 ドッゴーーーン

 『キャァァァァァァ~~』

かろうじて避けたが、女性が居た場所はアスファルトが大きく抉れている。

その女性は、チラリとこちらを見たが、健斗も美咲も口笛を吹きながら目を反らした。

 『ちょ、ちょっと~~~』

女性がトロールから目線を外している間に、第二撃が振り下ろされた。

 『いやあぁぁぁっ』

またかろうじて避けたが、片足の膝から下の皮膚を金棒かなぼうかすっていった。

 『アダーーーーイダーーーー』

大きなダメージでは無いが、皮膚が剥がされ大量の血が飛び散り流れ出す。

 『た、たすけてぇよぉぉぉぉ~』
「俺らに言ってるんかな~?」

健斗がキョロキョロしながら意地悪く突き放したように答える。

 『し、死にたぁないよぉ~』

その女性は、健斗と美咲の後ろに飛び込んだ。

 「やれやれ、助けたろか~」
「美咲、うかつに飛び込むなよ」
「ステ見てわかっとうやろうけど、美咲のスピードやったらあいつの攻撃は当たらんからな」
 「楽勝~ とは思ってないけど、脳筋やったらスピードで翻弄したらいけるやろ」

 「風舞!」
 「風纏!!」

 「ちょっと行って来るわ。一人でも大丈夫やんな?」

風のドレスに包み込まれた美咲がトロールの右側に飛んでいく。

「風纏!」
健斗は左側に飛んでいく。


 『ほっ? う、浮いとる?』
 『と、飛んでる?』
 『なんじゃ~こいつらぁ~~~』

『偉そうな態度を取っとっただけあるかな?』
  『さてさて、どんだけやれるんかな?』
魔武闘家の子と殴り屋の格闘家の子が魔法職の子のそばにやってきた。
ほとんどダメージが通らないので、一旦美咲たちに任せて体力の回復を謀ろうとしていた。

 『見させてもらうでぇ~』
魔法職の子が大声で健斗に向かって叫ぶ。
戦線離脱して余裕を見せていたが、トロールと目が合うとまた他の子の陰に隠れた。



戦闘態勢を取ったトロールは、魔法職の子をまだ見据えているので、健斗はそのまま右手と左手を交互に振り風刃ふうじんを5発づつ、トロールの顔面目掛け連続で飛ばす。

すべての風刃が顔面にヒットする。
トロールは大きくのけぞり、倒れないようにガシッと踏ん張ったが、顔面は血塗れになっている。

『すごっ!一瞬やなっ!!』
 『風魔法? すんごいなぁ』

 『もうこの人らに任せといたらえぇんちゃうの?』
『それはあかんやろ~ 人として!』

風魔法を使う剣士の戦い方を見ていると、向こうの方で弓の子らが女の子に抱えられて宙に浮いている。一生懸命弓を撃ってるようだが、一向にこっち側には飛んで来ない。
(???)
そう思ったが、すぐに今までとは比べ物にならないくらい早い矢が飛んでくる。
軌道を変えて全弾必ずトロールに突き刺さる。

 『あの子らの矢の軌道っておかしないか?』
『あれ、マジックアローやろ』
『あるのは分かってたけど、使いこなせるとはな~』
 『あの女の子が教えたんやろか?』

『あっ、女の子がトロール討伐に戻って行ったわ』
 『ちょい待ち~』
 『あの子ら浮いたままやで~~~』
『あれってスキルなんやろうな~』
 『えぇなぁ・・・・』

『後で教えてもらう?』
 『うちはプライドなんて無いから、教えてもらえる!』

『あはは 教えてくれるかどうかもわからんけど』
『あんたはあの風剣士の子に偉そうに何かゆぅとったしな』

 『あかんかー・・・』

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