厄災の街 神戸

Ryu-zu

文字の大きさ
上 下
46 / 154
第三章 健斗と美咲と新たな出会い

2人の巣

しおりを挟む
オレンジ色の珠を手に取り色んな方向から眺めてみる。
特に何も書いていない。

美咲に渡す。同じように色んな方向から見ている。
それをなんとなく眺めていると(ヒュン)と言ういつもの感じから、新しいスキルを覚えた。

「あぁ鑑定覚えた」
 「はぁ?うちも欲しい~」
「覗き見あるやん」
 「ヴー」
「でもまぁ暫く見つめてたら覚えるんちゃう?」
 「めんど~」

(好きにしてくれ)


鑑定を使ってアイテムを見ると、ハンカチのような物は[素早さのアスコットタイ]
首に巻いても頭に巻いても腕に巻いても装備の効果はある。
素早さ5%アップの良い装備だった。

美咲に渡すと、腰に巻いて踊っている。
それも有りか。



オレンジの玉は 

空間の宝珠[ルーム]Lv1 

詳細を見てみると、どうやら異空間に部屋を持てるみたい。
部屋としては初期値で1800x2700x2700(※1 と約13㎥(リューベ)もあるようだ。
少し天井の高い3畳の部屋って位の大きさだね。

床には重力が設定されているようなので、空間収納のようにすべてを使えないのがネックか。
ただ、持ち込みも出来るようなので荷物の置き場所に最適。
これは良い物を拾ったと二人で大喜びする。


 「夜寝る時の見張り番が要らなくなるねー」
「早速使ってみるか」
「でも3畳ほどだから、布団引いたら畳1枚分くらいしか残らないよ」
 「やっす~い田舎の旅館に泊まったと思ったらいいわ」
「神田川の世界観やな~」
 「どこの川?」
「・・・」

ちょこちょこ訪れる、このジェネレーションギャップ。
まー かぐや姫とか母親が好きだったから知ってるけど、自分の世代でも無いから仕方ない。



「これ、俺が取り込んでもいいのか?」
 「いいよ~ん」
「いつもなら自分が~って感じで言うのに、どないしたん?」

おでこに手を当てると、激しく振り払われた・・・
 「な、なんしよんなー」

これはセクハラだったか。
「ごめんごめん、セクハラやったな」

すっかり打ち解けたと思って調子に乗ってしまった。
反省!








 (いきなりくんなよー)
 (びっくらこいた~)
その時、美咲は少しエッチな事を考えていた。
狭い部屋で布団を並べて健斗と一緒に寝てるところを色々と都合良く妄想していた。
股間が少しジュンっとした所で顔に触られて、驚いて激しく拒否してしまった。






「宝珠よ!我が身に宿れ!!」

オレンジ色の宝珠は健斗の身体に吸い込まれるように消えて行った。

「ルーム!」

部屋に繋がるゲートが目の前に現れた。
「ちょっと見て来るな」


美咲を置いて健斗一人でゲートをくぐる。

(ほぉ~ 窓も何も無いし、床も壁も天井も同じ感じで変な気分になるなー)

部屋の一部に、薄青い楕円形で陽炎のようにユラユラと揺らめくゲートが常駐している。
スキルレベルが上がるとカスタマイズが出来ると鑑定に出てたけど、どうやったらそのレベルが上がるのかは分からないままだ。

ゲートの位置を任意で動かせるようなので、壁の真ん中位に上げてみた。
軽くジャンプしないとゲートに入れない程度の高さだ。
今後、部屋の追加とか出来たらゲートの部屋とか作ればいいかな。
今は寝てる間に外に出てしまう危険も少し考えられる。
自分は寝相が良い方だが、美咲はわからない。

コンベックスを取り出して寸法を測って見ると、きっちり1800x2700だった。
さすがは鑑定スキルだ。

室内には電気も何も無いのにかなり明るい。
照明は無くてもいけそうな感じだなー。


何となくステータスプレートを見てみると、新しいステータスが発生していた。
OPと言うものだが、鑑定で見ると[オプションポイント]と出て、詳細は LVのあるスキル等のオプションチョイスを選択する時に必要なポイントを表示 するものらしい。

どうやって使うのか色々と触っていると、ダイアログが出て来てカスタマイズを示唆してくる。
どうやらスキルのLv1の部分をクリックすると、条件を満たしていれば窓が開くようだ。
現在所有のOP1.5で出来る事は

・インフラ設置
  ・給水、排水(0.8)
  ・ガス(0.6)
  ・電気コンセント100v(0.6)
  ・電気200v(1.2)
・部屋拡張Lv1(1.5)
・部屋増設Lv1(1.5)

これだけしかなかった。
だけど、電気が使えるのならこんな素晴らしいことは無い!
後で美咲と相談して決めよう。



まだまだこのステータスと言う奴は分からない事ばかりだな。




リュックを部屋の中に置いて外に出る。
久々に背中に何もない状態になったので、何か身軽になった気がする。

次に入ったらリュックが無かったなんて事はないよなぁ・・・
少し心配しながらゲートをくぐる。



外に出ると美咲が何故かプリプリと怒っている様子だ。

「何を怒ってるん?」
 「勝手に一人で行きやがってぇ~」

聞けば、術者が中に入るとゲートが消えるらしい。
俺が入ってすぐに続こうとしたら、ゲートに入る前に消えたらしい。


それで怒られてもなぁ・・・
まぁ謝っておこう。
「ごめんよー」


リュックの心配もあるので、またすぐにゲートを開く。
「ルーム!」

「ほれ、入って」

散々文句を言ってたくせに、ゲートに入るのにビビってなかなか入れない。
「顔だけ入れて見てみ」

ゲートに顔だけ入れれば当然こちら側に身体だけが残る。
首無し美咲・・・
異様な光景なので、スマホで撮っておこう。


しばらく中を眺めていた美咲は、そのままゲートの向こうに消えて行った。



せっかく鑑定を覚えたので、さっきの宝箱を鑑定してみる。


混沌の宝箱[Lv4-橙等級]
開錠呪文-[オープン][ウーヴリール][ネーフ][レリース][我が意に沿い解錠せよ]

(ははっ オープンだけで良かったのか・・・)

また次に宝箱を見つけたら、一番長い呪文を唱えてみよう。




一息ついて、自分もゲートをくぐる。


「狭いやろ~」
美咲は床に座り込んで、キョロキョロと部屋の中を見回している。

「んでー今出来る事はこんなもん」
「ポイントがまだ少ないから全部は出来んけどな」
そう言って美咲にカスタマイズの窓を見せる。

 「んー排水給水ってどんなんやろー」
「普通に排水とー、給水は水道の事だよ」
 「んじゃー最初にそれかな?」

「俺も最初はそう思ったけど、水はペットボトルでいけるやん?」
「だったら電気のコンセントで冷蔵庫でも入れた方が良くないかな?」
「スマホも充電したいし」
 「健ちゃんがそう思うならそうしよっか」

「んじゃーコンセントでいいな」
「あれ?ポイント足りるから水もいけるわ」

コンセントは2か所設置できるので、右奥と手前右に設置した。
水道と排水は左の壁に設置した。
水道は、壁に点検口が出来てその中に止水弁があった。
排水パンが水道の真下に付けられてそのまま水を落としても大丈夫なようだ。

蛇口はシングルレバーの混合水栓が付いている。
まだお湯が出る設定が出来ないので、今はどちらにレバーを動かしても水しか出ない。

でも、どこから電気が来るのだろう?
どこから水が来て、排水はどこに行くのだろう?

コンセントプレートを外して中を見てみたが、壁の中には黒いボックスが見えるだけ。
配線もそのボックスの小さい穴から出ているが、その先は分からない。
排水パンもばらして見てみたい衝動に駆られる。


「明日、ホームセンターで流し台探そうか」
「それと、家電ショップで大型冷蔵庫もだな」
「寝るところが狭くなるが、しばらくの辛抱だし」

シミュレーションゲームをしているようで面白い。
 
「さっきの部屋からマットと布団持ってこよう」
「次はポイント貯めてトイレが欲しいな」



マンションに侵入し、マットと布団を持ち込んだ。
寸法的にマットが2枚敷き込めなかった・・・
仕方なく、2段マットにして美咲に譲り、健斗は布団だけで床に寝る事に。

「灯りが消せないけど、寝れるか?」

先ほどから美咲がまったく喋らなくなった。
警戒してるのかな?
まぁいいか・・・
「んじゃー寝よう 美咲、おやすみね」
 「あっ、お、おやすみ・・・」



▽▽▽



こんな狭い部屋で男の人と寝るのか―
と、美咲は部屋の中を見回した。
健斗ならもう信頼してるし信用もしてる。
しかし、親しくなったのは今朝の話だ。
まだ20時間も経っていない。
彼と性的な接触は嫌では無いが、豊富な男性経験がある訳でも無く極度の緊張が先立つ。

何か色々と話してるようだが、耳に入ってこない。

頭がボーっとする。
天井と壁の境目が分かりにくいため、何か視界がおかしくなるから?

ふと見ると、彼が布団に潜っていくのが視界に入った。
自分の布団は隣に、ベッドのようにマットを積み重ねてセットされている。

「んじゃ寝よう 美咲、おやすみね~」


 「あっ、お、おやすみ・・・」



美咲も布団に入り、健斗に背を向けて寝る態勢で横になる。
リーリがモゾモゾと美咲の布団に潜ってくるので、優しく撫でながら物想う。
 (激動の一日が終わったなぁ)
 (目が覚めたら元の世界に戻ってるなんて事は・・・)


目を瞑るがなかなか寝付けない。
明日からの事を考えるとなおさら目が冴える・・・

それでも心身ともに目に見えない多大な疲れが溜まっている。
いつの間にか意識が夢の世界へと墜ちていく。


本当に長い一日が終わっていく。


お疲れ様
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

お爺様の贈り物

豆狸
ファンタジー
お爺様、素晴らしい贈り物を本当にありがとうございました。

処理中です...