厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第二章 サイコパス覚醒

サイコパス集結

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 「さーて、華那子のボス具合が板に付いて来たところで、一旦外に出よか」
「アホやで・・・」

  『華那子さんって呼ぶより、姉さんって呼んでいいっすか?』
「あぁボスとかドンとかじゃなかったらなんでもえぇわ」
 
 「えっ?ボスあかんのか?」
絵里は、華那子がボスと呼ばれることが好きだった。
だが、当の本人は嫌がってるようなので、今まで通り華那子でいく事にした。


人数増えてきたし、貫禄出て来たし、相変わらず口は悪いけど、ボスって感じやのになぁ。
なんで嫌なんやろ?ボスらしい悪い顔になってきたのに。

『おい、絵里!』
 「なん?」
『心の声が駄々洩れやぞ!』

風馬に指摘されて声に出していた事に気が付いた。
慌てて華那子の顔を見たら、目を細めて拳を強く握っていた。

 「も、もう大丈夫やんなー」
 「一回外に出てみよかな~」

「そうですね、一度お外をうかがってみましょうか?絵里さん」
 「やめてくれ~ うちが悪かった~」





風馬と麗華を中に残して、華那子と絵里と衣摩は外に出た。

「取り敢えず、風馬のパワーレベリングと全員のレベル上げが優先事項やな」
 「やな~。麗華のスキルでテリトリーに集めてしまうか?」
「人もゴブリンもな」
 「取り敢えずいつもの狩場に行ってみるか」

そう言っていつものマンションに戻ろうと歩いていると、華那子たちを捜索していた女子にばったりと出会ってしまった。

 『あんたら、さっきの人をどうしたんやー』
異様に大声で絡んで来るその女は、多分仲間に聞こえるように声を出してるんだろう。

「絵里、レベル5やけど、逝くか?」
 「ほいよ」

 「マリオネット!」

「衣摩、絵里にやらすけど、えぇか?」
  「うんうん、いいよー」

「んじゃー絵里、やってまい」
  
いつもの大剣では無く、腰に刺していたナイフで心臓辺りを突く。

「なんでナイフなんや?」
 「ん~ナイフに氷の魔法付与してみたんよ」
「結果は?」
 「切れ味抜群!(笑)」

 「んで、心臓刺してんのに、まだ生きとるよー」
 「体温で凍ったんが溶けたら死ぬんかな?」

「おもろいけど、あんま使い道無い様な気がするわ」
 「まぁなにかあった時に使えたらえぇなーってくらいの実験や」

 「そのうち大剣に氷魔法を乗せられたらおもろいかな?」
「氷の大剣か」

 「これから属性が重要な敵もおるかも知れんしな」
「せやな、選択肢は多ければ多いほど有利になるやろうしな」



 『いやぁぁぁぁぁ~』
別の女性がその場を目撃してしまい、大声で叫び声をあげる。

すると全速力で走ってくる男が一人。
また違う方角から男が走ってきた。

 「おい、華那子ー ちょいヤバい奴がおるぞ」
「おう、見とう見とう」
  「ほぇ~ うちらの天敵やな~」

レベルこそ8とそれほど高いわけでも無く、特に強い攻撃系スキルを持っている訳でも無い。
ただ、耐性一覧にあるその耐性スキルといつ使うんだ?と言うスキル。

 【精神支配耐性】と【洗脳解除】

何をどうやったらこんなヘンテコなスキルを覚えるんだろう?
精神支配耐性なんて、こいつの人生に一体何があったのだろう?

とにかく、こいつとは相性が悪すぎる。

 『おいーおまえら! 色々と聞きたいことがあるから逃げるな!!』


普通に戦闘しても、この3人と華那子たち3人なら、余裕で勝てるだろう。

でも、こいつらっていったい何人で捜索してたのかがわからない。
華那子たちの方がレベルは高いが、精神支配耐性がどれくらいの優位性を持っているか分からない。

 『おい!聞いとんかー』
 『他の連中も、おまえらが殺したんやな?』
『このショートヘア―の子がナイフで刺したんやー』

女性は泣きながら絵里の方を指さす。



分からない事が多い時は下手に戦うのは危険だ。
「みんな、逃げるぞー」
「衣摩ー浮遊使え!」

華那子には速歩、絵里には俊足があるために逃げ足は速い。

だが衣摩はそっち系のスキルが無いので、浮遊を使えば普通に走るよりは遥かに早い。
頃合いを見て、テリトリーに収納すれば良い。





みるみるうちに、相手を引き離し置き去りにしてしまう。

少し遅れてる衣摩を待ち、テリトリーに放り込む。

絵里と二人で疾走しながら会話する。

「おいおいー困ったのぉー」
 「ほんまやで。まだまだこの辺で稼ぎたかったけどなー」

「とりま、この地区から離れよか」
「マンションの非避難民なんてどこに行ってもおるやろ」
 「んじゃー六甲アイランド辺りのマンション群でも行ってみるか」

 (ヒュン)
「おっ?疾走覚えたわ」
 「今でも十分早いけどなー」


「それか、篠原台近辺のハイソマンションから鶴甲団地に掛けて」
 「鴨子ヶ原から渦が森の高台団地群もえぇなぁ」
「的が無くなったら三宮や北区に行ってもえぇし、大阪とかやったら顔ばれもせんしな」

 「東京やったらやり放題ちゃうんか?」
「まぁでも今のレベルとスキルじゃ無双は出来んかも知れんからなー」
 「あぁ耐性と解除スキルか」
 「さっきのやつ殺して奪うべきやったかな?」
「まぁ奪うリストとして覚えておこう」

 「なぁうちに傀儡や奴隷化何回か掛けてくれんか?」
「耐性か?」
 「あぁ覚えといて損は無いかな」
「うちの使役から外れるかも知れんぞ?」
 「それは困るけど、使役は精神支配してないから、洗脳系の耐性じゃなけりゃOKちゃうかな?」

「あとでやってみるか」


まずは海岸線に下りて行き、そこから迂回して山手を目指し、43号線を超えて少しまた迂回してから大型スーパーに食料や飲料の調達に行く事にした。
あまり逃走経路隠蔽にはなってないと思うけど、何もしないよりはましかも知れない。


各避難所は、不文律で自分たちのエリアを決めていて、他のギルドやクランの領域には余り入り込まないようにしているようだ。

その為に、国号を挟んで北側にはモールの連中はあまり来ない。



ボーリング場の南にある大型スーパーの中に入ると、そこそこの人が商品をぶんどっている。
華那子たちはバックヤードの方に足を運び、箱単位の商品を片っ端からテリトリーに入れていく。

華那子と衣摩と麗華が組み、テリトリーに運び込み、絵里と風馬が組んで空間倉庫に商品を物色して掘り込んでいく。

100均コーナーでも使えそうな物は全て収納する。

何があるか分からないからであるが、今後仲間が増えたときに、錬金術や鍛冶師や生産職のスキルを持つ奴が出て来るかも知れない。
その時に色々な物があれば選択肢も広がるかも知れない。



ある程度運び込んだら、冷凍の肉類を1つの冷凍砦に入れていく。
ここは零下18度くらいの設定にしてある。
完全に凍らせてバクテリアの繁殖を抑える倉庫だ。

他にもいくつか砦を作り、温度を変えてパーシャルやチルドの部屋も作ってある。

氷の厚みを変えて行けば溶解時間も温度も調整できるようになってきた。
溶解しない万年氷も作り出せる。

あとは普通に絵里の空間倉庫に収納しておけば何年でも肉も魚も野菜も腐らない。

食料はあまり心配ないが、出来れば調理師が欲しい。
調理のスキルも持ってはいるが、ボスであり母親では無い。
欲を言えばメイドも欲しい。

今のフォートがランクアップしてハウスやキャッスルに進化して欲しいものだ。


華那子も絵里も命が掛かったゲームをしている気分だった。
この先に特に目標も指針も何も無いが、しばらくは日々を問題なく暮らせていける事を目指す。

軽い目標と言えば、レベルを上げて使役の人数を増やす事だけだ。


店舗の方に向かうと、冷凍食品がほぼ手つかずの状態で放置されている。

停電になって何時間も経てば、解凍されてしまってレンジに掛けないと食べれない物はもう廃棄だろう。
だが、華那子のグループはそれを再冷凍する事が出来るため、根こそぎテリトリーに詰め込んだ。

今度、ホームセンターに行ったときに、大量に材木を取り込んで、棚や小屋などを作ってみよう。
大工のスキルがあるからだ。

取っておいて良かったかも知れない。
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