厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第二章 サイコパス覚醒

サイコパス暴食

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華那子はすぐに囮を見つけ、進化させて連れ歩く。
「あんたにはなんの恨みも辛みも無いけど、うちのために頑張れな」

そんな事を言われても、その男性は自分の意志で動くことも出来ない。
そして自分が何をしてるのかも、何をされてるのかもわかっていない。

ある意味、幸せなのかも知れない。
これから冥府への旅しか道は用意されていないから、恐怖も痛みも感じないのは楽だろう。

 (虐殺の時の人数が多い方が良いのかなぁ)
 (絵里の時は二人でURだから関係ないのかな)
人の命で遊ぶ様に、武器やスキルを狙う華那子の精神はおかしくなっているのか。

だが、おかしいと思わないのがサイコパスだ。
そもそも、人を殺す事がおかしいのか?おかしいなら、戦争はどうなるのだろうか。





ナチスドイツの残虐な人体実験のおかげで、地球の医学は急速に発達した。
いまだに医学界ではドイツ語が基本な事でもわかるであろう。
その犠牲になった人々には、生きてても死んでも地獄だっただろうが、未来の病人を幾人も救う尊い犠牲だったと言えるのではないだろうか。

人類史上一番の黒歴史。
人体実験なんて、本当にあってはならない事だけれども・・・


神戸の街はこの後どうなっていくのかわからない。
華那子のこの実験が後々この世界の人々を救う大きな研究にはならないだろうか?


絶対にならんな。
いや~すまんすまん。







華那子は効率的に行く事にした。

まずは進化で一人、これで同族殺し。
次に二人か三人を纏めて殺して虐殺または惨殺でスキルか武器を貰って終了。

これなら避難してない人が多いマンションだと何回も挑戦できる。


「ほい、おっさんこの二人をまとめて殺すんやで」
 (ヒュン)

殺し終わっても何も武器が顕現してこない。
ステを見ると、空間収納を覚えていた。
「おぉ~やったじゃ~ん、おっさん」
「おっさんえらいー」

華那子は男性にピョンピョン抱きついて喜んだ。
しかし、すぐに屍にされて宝珠を抜かれる。

哀れだ。


「ん~またオレンジ色の珠やな」
「まぁ鑑定と空間倉庫があればどうなとなるし」
「欲しかった最有力のスキルやし♪」
「絵里に自慢気に見せびらかしたろ~」

とても機嫌が良い。



二人目はすぐだった。
家の中に4人いたから全員従属させた。

先ほどの仕入れでレベルが10に上がった時、従属の許容が5人に増えていた。
 (このスキルの人数が増えるとレベリングがはかどる)

1人にレベルを付けるついでに、二人を続けて殺させる。
スキルか武器を覚えたら、残った一人に殺させてレベルを付ける。
スキルか武器を覚えなかったら、もう一人も殺してしまえば良い。

経験値は2倍入るので、実質経験値2倍のスキルがあるようなものだ。
魔物にも従属が利くならレベルは上げやすくなるかもな。

2人目も武器じゃないオレンジの珠だった。

 [経験値:5000]

「ん?これは当たりなんか外れ何かよぅわからんな」
「今まで稼いだ経験値の3倍以上か。序盤戦なら美味しいか」


「欲しがるとなかなか武器が出んな~」
「次いこ、次」

3人目も武器は出ず、球はまたオレンジだった。

 [土魔法]-[フォート]

4人目に挑戦するのに仕込みをしていたら絵里がニタニタして上がってきた。

「なんや悪い顔しとんなー」
 「ふふふ、華那子を泣かしちゃろうと思ったら楽しなってきたんや」
 「ほれ、出してみ」

少女が"夢月"を装備した。


「ぅおおおおおおおおおおおおおおお!」
「絵里~よぅやった~~~~」
 
 「はぁ?これはうちが出したんやで?ただで手に入るとか思ってへんやろうな?」
「はぁ?金取るんか?土下座でもせぇゆぅんか?」
「なんでもしたるぞ」

 「そっちは何が出たんや」
「こっちは、土魔法と経験値5000とうにゅむにゅ・・・」

 「そのうにゅむにゅゆぅとんを聞きたいのぉ~」

「えーと、ちょっとした収納スキル。大した事ないよー」

 「おぉ~~~?空間倉庫か?異次元倉庫か?異次元バッグか?ーーーー」

「ク・ウ・カ・ン・ソ・ウ・コ」
 「よっしゃよっしゃ~~ それと交換やー」

「えぇぇぇぇぇ」
「お代官様ーそれだけは堪忍してくだせぇ」
 「ならん!はよぉー差し出すのじゃ」
「そ、それを納めたら、幼い乳飲み子がぁ~」
 「乳飲ませとけー」


2人の茶番劇を何を思って少女は聞いているのだろう。

 「そうそう、うちな~この娘育てよかって思とんねん」
「嘘こけ~」
 「にわとりか(笑)」

「お前は地獄に落ちろ!」
 「お互い、天国なんか行けるわきゃないやろが~」

華那子は渋々空間収納の珠と少女を交換した。

「絵里を殺したらどっちもウチのもんやけどなぁ・・・」
 「怖い事言うなー!!!」

絵里は華那子のお尻をかなり強く蹴ろうとした。
だが、従属契約の縛りで痛みを与えるほど強くは蹴れなかった。

ハナから、危害を加えるつもりで蹴ろうとした訳でも無いのだが。



絵里が少女を滅し、華那子が宝珠を取り出してユニーク登録を済ます。

やはり華那子も右手に握り、天に掲げてうっとりした顔で独り言をつぶやく。
「はぁ~ かっちょえぇ~」

 「おいおい、華那子よー」
 「ほんま、あんたに感謝せんとな」
「どないしたん?」
 
 「今のんでレベルが10になったんやけど・・・」
 「まぁうちのステ見てみ」



丘絵里(39)
Lv10 

種族 【新人類】 選択
職業 【大剣戦士】【人形師】 選択
恩恵 【技能貸与-人形師】
称号 【同族殺し】【殺人鬼】【惨殺者】
状態 【使役―琴南華那子】

基本能力一覧
GMR/USU
HP 577/577(+51)
MP 106/106(+51)
STR 373/189(+72)〔+100〕
DEF 164(+10)
AGI 175/125(+10)〔+28〕
DEX   48(+58)
INT  36(+10)
SP/0
基本技能一覧 
      吸血の大剣 剣豪 人形化 空間倉庫
      隠蔽 跳躍 観察 俊足 斬撃 剣術
      穴掘り
1331/1183


「恩恵?」
「従属の恩恵って事か」
 「そうみたいやな、一人だけやけど人形に出来るわ」

「なんか面白くなってきたなぁ」
 「ちょっと人形探してくる」

「んじゃ、続きやっとくわ」

絵里はいそいそと階下に降りて行った。
華那子は続きを始めたが、欲しかった短剣が手に入った事で、モチベーションは下がっている。
 (4つ目は赤玉かー)

赤玉はUR級のスキルや武器なのに、華那子の感覚は麻痺している。

それは、あまりにも簡単に手に入るからだ。

華那子たちにしか出来ない事だけど。
それは 躊躇う事無く人が殺せる奴らがどれだけ居るか と言う事だ。


4つ目の赤い球を視てみる

〔堕天使の宝珠〕魔族へと種族変換出来る珠 

 (ふぅ~ん)
とんでもないポテンシャルを秘めた宝珠だが、今の華那子には興味をそそる物では無いようだ。





絵里は適当に部屋に隠れてる人間を見つけ、人形化の練習をしてみる。

老夫婦の男性の腹を軽く殴り悶絶させる。
今はレベル10もあるので、普通に殴ればノーマルの人間は生を保てないだろう。


「我が手足の如く意を滲透せよ」

  「マリオネット!」

老婆は先ほどの少女のように物言わず物考えず、唯々佇む。
そのまま老人を殺させる。

進化はしたが、アラフォーくらいにしか若返らない。
 (年齢が高すぎたのかな?)

検証のためにもう少し若い人間を探す。
だが避難していないのは老人が多い。

すべて見つけた人間は老婆に殺させる。

老婆が殺人称号報酬のスキルを覚えた。

指向性重力場ブラックホール〕すべての物を異空間に吸い込み閉じ込める

 (ふぅ~ん)


このスキルの偉大さをまったく理解していない様子だ。

 「こいつ殺したらスキルや経験値はどうなるんやろ?」
指向性重力場のスキルは興味が無いから消えても良いと考えている。

サクッとその老婆を断ち切り、結果を見る。

経験値は2倍入り、スキルは消えた。
 「おっ?経験値はやっぱり2倍入ったか」
 「スキルの方は華那子がおらんとあかんなー」

もう一度そっちの検証を始める。
年齢による若返りの度合いはもうどうでも良い。

飽き性だ・・・



次に見つけたのは、60前くらいの初老の寝たきりの男性だった。
見るからに衰弱し、手足は骨と皮しか無い様に見える。

人形化し、介護をしていた娘らしき人物を餌食にさせる。
娘は大層抵抗したので、両足を切り落とした。


男性は進化の悶絶の後にゆっくりと無言で立ち上がった。
 (こんな病状でも進化すると完治するんやなぁ)

浴衣の寝間着を着ていたが、進化で、はだけて脱げ落ちた。

全裸だ。

筋肉質に変わってはいるが、元々が病弱でやせ細っていたので、少し細い。

その男の顔を見て絵里の心が揺らめいた。

その顔が、身体が、股間が、絵里の好みのど真ん中だった。
 (ん~こいつはキープしときたいなぁ)
 (レベル上げたら人形の数増やせるかな?)
 (それまでキープして育てるか♪)

絵里は思考しながら無造作に、右手で男性の股間をいじくりまわしもてあそんでいた。
肉体が20代前半くらいに若返っているその一物はカチカチに伸びていく。
 (おぉ~これはこれは♪)

旦那とは、子供が出来て以来一度も性的関係がまったく無いレス夫婦。
他所で平気で浮気して帰ってくるクズ旦那にそれを求める事はもう無くなっていた。

だが、熟れた肉体は嫌でも性欲が沸き上がる。
家に誰も居ない時間帯に、韓流のドラマを見ながら独りで火照った身体を癒す事もあった。
風呂場で身体を洗っているうちに、妄想の彼氏と事を致す事もあった。
トイレ終わりのビデでふと感じてしまい、自分で優しく慰める事もあった。

だが、今、目の前には自分の言いなりになる自分の理想に近い人形が居るのだ。
絵里は躊躇とまどう事無く服を脱ぎ棄て、男をベッドへと引きずり込む。




   ~~~~~~~~~~




 「はぁ~♪良かったぞ。また頼むな」
事が終わり、すっきりとした絵里は、この男のレベリングとURスキルか武器の入手に掛かる。

少し前に華那子のせいで湿ってしまったショーツを履き替えた。


2軒めで惨殺の称号が付き、手に入れたのはUR武器のスピアだった。
長柄の先に切刃が付いた長槍ランスでは無く、俗に蜻蛉切とんぼぎりと呼ばれる、槍の半分が両刃の刀身で残りの半分は柄で成るスピアだった。

腕力と俊敏アップと技能習得が付与している。

何件か回った所で華那子の呼ぶ声が聞こえてきた。
もうかれこれ1時間半は経っているだろう。

 「お~い、ここだよ~」
廊下から上を見上げると華那子が居た。

「そろそろ一回帰ろか? 腹減ったし」
腕時計を見るともう12時を過ぎていた。
色々と楽しんでるうちに、時間があっという間に過ぎ去った。


避難所に戻る道すがら、収穫出来なかった宝珠の話になる。
華那子が取りに戻ろうかと提案したが、興味のある宝珠でも無いので放棄する事にした。

他愛ない話の合間に唐突に華那子は絵里に問う。

「あんたさーその男どうするつもりなん?」
 「んっ?これ、おもちゃ、えへへへ」

「なんや顔色えぇと思たら、やってもたな?」
 「にゃはははは」
「ちっ!そんな使い方もあるんか」

「うちが使こうてもえぇんか?」
華那子は冗談のつもりで言ったのだが

 「あぁ自由に使いや」
 「えぇもん持っとるで~」

あっさりと絵里は貸し出しOKの言葉を返す。


人形男に人と接した時に社交辞令はしなさい、名前を聞かれたらちゃんと答えなさい等と命令しておく。

 「後な、こいつ育ててボディガード代わりや囮にも出来ると思ってんねん」
 「出来たら自我で行動して欲しいけど、このスキルにそんなん無いしなぁ」
「ま~人間でレベリング出来るんも、そんなに長い間じゃないやろうしな」
 「うん、ゴブリン程度なら苦労もせんけど、もっと強いの出てきたら人数多い方が有利やしな」

そんな話をしていると避難所の自分たちのブースに帰り着いた。


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