厄災の街 神戸

Ryu-zu

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第二章 サイコパス覚醒

サイコパス胎動

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メグミは喉を切り裂かれた中村の遺体を抱きかかえていた。
  「一体、誰に、こんな目に・・・」


 (わたしだよぉ~ん)

そう言いたいが、笑いをこらえシリアスを続ける。


その後ろで高田は微動だにせず、只立っているだけだった。
華那子は行動に移したいが、もしも高田が動き出すと、とてもじゃないが自分では勝てない。

メグミを殺せば高田の支配も解けるのかも知れないが、継続した場合、止める者も居なくなり暴走する恐れも考えられる。

自分が死ぬ事だけは避けないと駄目だ。

先に高田を倒すのが良策で、そのためには絵里の到着を待つ必要がある。

「この、他の多くの遺体は誰なんでしょう」
 「ここで何かがあったのはうかがええますが、とても変な様子ですね」

華那子は7階の4遺体もここに持って来ていた。

上から放り投げて落としたので、顔以外も結構グチャグチャになっているが
少女は見た目綺麗な死体なので部屋の奥に下着を引っかけたまま寝転ばせている。
それを見てメグミは何か思うだろう。

しかし、こいつらもこれだけ悲惨な遺体を見ても吐き気の一つも催さないのも凄いと思う。
こう言ったものも進化の影響なのだろうか?



索敵で絵里がこっちに向かって走ってるのが分かる。
いよいよだ。
胸が高鳴り拳に力が入る。

他の遺体を見る振りをしながら、さりげなく高田の後ろに立つ。
自分の意思がまったく無いように見える。

わざとらしく肘を掴んでみたが、ピクリともしない。
完全に傀儡になっているんだろう。

メグミの命令が無いと動かないのか、メグミを守るために動き出すのか分からないので迂闊な行動は控えた方が安全だ。

メグミの指示が出る前に一気に殺る!



 「ハァハァ」
 「山下さんはもうすでに殺されていました、ハァハァ」
やっと絵里が合流した。

役者やのぉ。



絵里が高田の真後ろに付いた。
華那子は高田の斜め前に移動する。

  「・・・」
  「レイプされたような跡はありましたか?」
 「無かったと思います」
  「琴南さん、これって魔物の仕業だと思いますか?」

いつになく冷静で知的な物言いで話すメグミに少し違和感を覚える。
自分勝手で自己中で、理不尽を世の中に巻き散らかしていた女がどうしたんや。


「モンスターだとしたら、ゴブリン以外の力のある奴でもいるのかも知れないですね」
  「ふむ・・・」

また中村の遺体に目線を移した瞬間を二人は見逃さなかった。

 「しのぶ!」
絵里が後ろから袈裟懸けに大剣を一閃、振り下ろす。
華那子は隠し持っていたペティナイフを喉元目掛け突き刺し、そして引き裂き抉る。
 カハッ

高田は何の抵抗も出来ず、右肩から左腰に向かって上半身が斜めにずれて落ちていく。
 (ヒュン)(ヒュン)

その鋭い切れ味の、見るからにファンタジーソードを握る絵里の顔を、目を見開いて華那子は見た。
どやっ って顔でにやける絵里。

  「な、あ、あなたたち何をしてるのー?」

華那子たちはメグミに対峙して少し驚く。
鑑定でメグミを見ると、さっきまでレベル3しかなかったのに、今はレベルが7にまで上がっている。

色々と頭の中で詮索するが、今はそれよりもこいつを殺す事に集中しないといけない。
幸いな事にこいつの素早さはあまり高くない。

絵里の素早さはそこそこ高く力もあるし、今はレベルも6まで上がっている。
メグミに大したスキルも無いので、そのまま斬りかかる。

腕で大剣を避けようとして、メグミの右腕が吹き飛ぶ。
  「ウギャァァァァァァ」
 「うるさい!」
「静かにしてね~」

華那子はすぐさまメグミの横に立ち喉元にナイフを差し込む。
 ガハッ

間髪入れず、絵里が心臓辺りを突く。華那子はもう一度喉を刺し切る。
華那子に少しだけ大剣が掠ったが、それも愛嬌だろう(と絵里は思っていた)


何かを言おうと口を動かすが、声も出ずそのまま朽ちていくように落ちていくメグミ。
 (ヒュン)

 「よっしゃ!」
「やっしゃーちゃうわ!」
「おまえ~うちを狙ったやろー」

 「ちゃうちゃう、そんなんするわけないやろー」
「あかん!それ、没収や!!」
 「ふふふ、えぇけど、これって個別識別武器やから使えんで」

絵里は大剣を華那子に渡す。
それを受けとるが、あまりにも重すぎて持ち上げる事も出来なかった。

「よぅこんな重いん持てるなあ」
 「いや、所有者が持つと丁度えぇんよ」

軽く片手で持ち上げる。
今わかっている性能を細かく説明する。

 「どうよ?かっこえぇやろ~」
「ちっ!う、うらやましないわ!!」

「ってか、それってどないしたん?」
メグミの宝珠を抜きながら華那子が聞く。

 「ん?あいつら二人倒したら惨殺者って称号付いてな、それの報酬みたい」
「ほぉーえぇなぁ、えぇなぁ、自分だけえぇなぁ」
 「あんたはその宝珠抜くのん貰っとるやん」

黙って今度は高田の宝珠を抜く。
人とは、無い物ねだりをするものだ。

「んじゃーこいつの宝珠は絵里行きやな」
「ほれよ~」
高田が唯一持つ剣豪と言うスキルは今の絵里の武器にぴったりだ。

「うしっ!予定の職業も出て来たし」

 「華那子ーやっぱスキルってすごいな~」
 「今までただ振ってただけやけど、なんも考えんでも剣の動かし方がわかるわ」
 「勝手に身体が動く!」

新しいスキルで能力が上がったことに舞い上がるほど喜ぶ絵里を見て華那子は微笑む。

「その前に、残りの二人の宝珠も抜いとこか」
「それ、嬉しいんは分かるけど、あんま人に見られんなよ」
 「おぅわかっとる、わかっとうって」

この剣とスキルがあれば、余程レベル差が無い限り、絵里に勝てる奴は居ないだろう。




山本と佐藤の遺体から宝珠を抜く。
ステータスの宝珠は4つなので二人で2個づつし、スキルはすでに消化したメグミの従属契約と高田の剣豪以外を並べて置いてみる。
種類は 監視 俊足 跳躍 調理 話術 速歩 
跳躍は多田にやるとして、絵里に欲しい物を取るように言う。
 
 「俊足以外は要らんかな」
「遠慮せんでもえぇで、話術いらんか?」

 「誰と話すんやー 営業マンでもないし」
「んじゃ残りはうちが消化しとく」


「それよりもなぁ、絵里、うちの従者にならんか?」
 「はぁ?あんたの奴隷になれっちゅうんか?」

「別に無理やりする事も出来るんやけど、うちとあんたの仲やから聞いたんやけどな」
 「なんのメリットがあんねん」

「メリット?お互い相手を裏切れんってくらいか」
「嫌なら、調べたいことだけ調べたら解除するって約束でどないや?」

 「解除せんって保証がないやんけ」
「だから~今すぐ無理やりにでも奴隷に出来るんやって」
「高田が一々メグミのために奴隷になったと思うか?」

 「・・・」

「従属契約ってのは、3段階あるんよ。
[使役]って緩いのは、自我も自由も持ったまま従者になるくらい。
リスペクトしとう社長とその社員みたいな関係かな?
もしも高田がこの深度の従属やったら、多分うちらに勝ち目は無かったかもな。

んで、[召使]ってレベルは、自我はあるけど主人に絶対に逆らえない事。
俗に言う、異世界物の契約奴隷って感じやわ。

一番強いのは、高田が掛けられとった[傀儡]やな。
もう完全に自我も自由も何もなく、単なる操り人形って奴や」

 「そんで、うちにどれを掛けたいんや?」

「最終的には使役やろ。今のこの関係のまんまでえぇしな」
「ただ、色々調べたいから深度深くしたりするけど、どうよ?」
 「まぁあんたを信用するわ」

「そんなに簡単に人を信用してもえぇんかぁ?(笑)」
 「しばくぞー」


「我が従属と化し、我に従え」
「バルレ!」

黒っぽい光が絵里を包み、染み込んでいく。
「どうよ?気分は?」

 「ん~これが使役ってやつか?」
 「なんも変わらんけど、あんたに対する信頼感みたいなもんが強うなっとう」
 「尊敬みたいな感じは多分勘違いやと思うわ」

「そやなー うちも絵里に信頼置ける感じになっとるわ」
「大剣で狙われたんは、もう忘れられるわ」
 「ちゃうってゆぅとーやん」

「んじゃ悪いけど、深度上げてくで」
 「ほいよ」

「汝の階位を返す」
「パペット!」

「座れ」
絵里は抵抗なくその場で座る。
「感想は後で聞くな」

「汝の階位を返す」
「スレイブ!」

「立て!」
絵里はスクっと立ち上がる。

「汝の階位を返す」
「バルレ!」


「どうやった?奴隷の旅は?」
 「感想言うんか?」

「頼むわ、今後どうするかわからんけど、知っとかんとな」

 「まず、パペット? あれは言われたら勝手に身体が動く感じやな」
 「逆らおうとしてみたけど、そんな気持ちがすぐに消える」
 「んで、スレイブ? あれはベッドに寝転んで動画か映画でも見てる感じや」
 「意識もあるし見えてるし聞こえてるんやけど、まるで他人事のように思えてた」

「ありがとな~」
「あと、試したいんは、経験値やな」
「高田を倒した時にメグミのレベルが急に上がっとったやろ」
「うちらにもちゃんと配分されとったから、従属化で楽々レベリング出来そうやと思わん?」

 「確かにあいつレベル7になっとったな」
 「まぁ試してみる価値はあるな」

「サザンで獲物探すか」
 「OKボス ふふふ」



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