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第一章 美咲と健斗
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エントランスに着くと、わらびとリョウケンの血まみれの格好に悲鳴が上がる。
だが、あまり二人の変貌した容姿に言及する人は居なかった。
人の記憶は曖昧なものだが、ここまで気にならないものだろうか。
背格好も見た目の容姿もまったく別人なのに。
「それでは、行きましょうか」
全員で階段を上がり、先頭は健斗とリョウケン。
しんがりを務めるのは美咲とわらびの二人である。
健斗はガラガラとキャリーバッグを転がす。
静まり返った通路にその音が妙に響き渡る。
連絡橋を渡って2番街から3番街に入るとまたゴブリンの姿が見え隠れする。
戦闘はリョウケンに任せ、見えないところの詮索を健斗が分担を請け負う。
一般人が後ろに居るため、二人ともピリピリとした緊張感を持っている。
きょろきょろとゴブリンが居ないか探る。
見つけては倒し、また神経をゴブリンに向ける。
(ヒュン)
「「あっ?」」
「これは何かスキルを覚えた感じですね」
ステータスプレートを見ると二人ともが[索敵]のスキルを覚えてた。
これは便利だ。
リョウケンが手を上げてくるので、ハイタッチをしてお互いに嬉しそうな顔で微笑みあう。
その後は索敵スキルで早めにゴブリンを見つけることが出来て、楽に4番街まで全員到着した。
区役所は隣の建物だが、一旦外に出ないとダメだ。
「先行して様子見てきますね」
「なぁ~ なんでハイタッチしとったん?」
美咲が訝しげな顔で聞く。
「あぁ索敵スキルを覚えたんです」
「二人とも?」
「はい、二人共です」
「ウッキィィィ」
「猿かよっ」
腕を振り回す美咲のおでこを押さえる。
「ま~索敵は風魔法の応用スキルだから覚えても不思議じゃないよね」
わらびが解説する。
「索敵って風魔法なんやー」
「サーチ系は大体風魔法の応用ですね」
「気配探知は第六感の強い忍術や仙術、範囲魔法を使える魔法職」
「あとは雷系で電磁波使うサーチ系もあります」
「土魔法の振動感知のスキルもあります」
「マップ系統は土魔法と風魔法の応用スキルですね」
ほんとにこの子の知識には敬服する。
まずはリョウケンと二人で区役所に様子を見に行く。
2号線を挟んで向かい側にあるボーリング場に人が居るのが見える。
スマホの灯りか懐中電灯か分からないが灯りが火の玉のように動いている。
本当に人の霊魂かも知れないが。
区役所には人の気配はしないし、入り口にはかぎが掛かって入れなくなってる。
2号線には車も走っていない。
あちらこちらで止まったままの車を放置してるため通れないんだろう。
「どうしよっか? 中学まで見に行ってみようか?」
だいたい区役所から中学校までは200mほどしかない。
全力で走れば30秒も掛からないだろう。
「健斗さんならあの車を端に寄せて道を作れるんじゃないですか?」
「リョウケンさんもレベル4か5になったでしょ?もう車くらいならいけますよ」
道の真ん中をトラック等で輸送すれば安全に避難できるかも。
歩道でもそこそこ広いから、軽トラ見つけられればいけそうだ。
杭全 良兼(41)
Lv 5
種族 【新人類】 選択
職業 【拳闘士】 選択
称号 【--】
基本能力一覧
GMR/USU
HP 81/81(+34)
MP 16/16
STR 64(+23)
DEF 56
AGI 54(+18)
DEX 33
INT 19
SP/44
基本技能一覧
身体強化Ⅰ
剛拳 超跳躍 索敵
216-1/178+0
「STRが20くらいで冷蔵庫一人で持ち上げられたから、そのステなら十分でしょ」
「やってみますか」
道路に出て車を路肩に持っていく。
車体のどこかが潰れて止まってる車の中では、ほとんど人が死んでいた。
桜口の信号から、烏帽子町の信号まで車を片付ける。
そして軽トラか2トン3トンくらいのトラックを探すが、軽トラがすぐに見つかる。
中ではおじさんが亡くなっていたが、両手を合わせて静かに道路に寝かせ車を借りる。
区役所の隣に戻り、避難希望者を荷台に乗せる。
16人全員が立ってだが乗れた。密だね。
美咲とわらびとリョウケンは早歩きで中学を目指す。
細心の注意を払い中学校の通用門の横に車を並列駐車すると、乗っていた人々が我先にと稼働門を乗り越えていく。
周りにゴブリンも居ないのに。
中に入り校舎の方に走っていくと
「ちょっと待て~」
杈を手に持った数人が侵入を拒む。
「あんたらどこの人間や?」
校舎から出てきた数人の質問に対して老人が答える
「私らはそこの2番街から避難してきたものです」
「ん~ここの避難許容人数が精々200人くらいなんだが、もうすでに220人居るんだよ」
「申し訳ないけど、校舎内に入るのはご遠慮願いたい」
「自衛隊とかの助けがいつ来るのかわからない今、必要最小限で纏めたいのです」
「んじゃ~わしらぁどないせ~ちゅうねん?」
輩の男が叫ぶ。
「校庭にならご自由に避難キャンプを設営して下さい」
「私たちも生徒やそのご家族を守るのに必死なんです」
「これ以上は食料も心許ないし、インフラも水以外はすでに止まってて何も出来ないのです」
「本当に一体何が起こっているのか・・・」
確かに許容出来うる人数の制限はわかるが、校庭での野営は少し危険な気がする。
こんな事ならあのままマンションで自宅に引きこもってた方が安全だった。
とは言え、ここの先生方?達の言い分も理解できるだけに少し考えないと。
「確かに誰でも彼でも避難させてたら収集付かんくなるのは目に見えてるし」
わらびがもっともな事を言う。
「それと、確定では無いですが私なりの考察だと思って下さい」
そう前置きしてわらびが語りだす。
ここまで来るまでにたくさんの遺体を目にしたけど、子供の遺体は一体も見なかった事。
精々中学生程度の子供しか見なかった。
子供はモンスターの餌になっているのじゃないか?という事。
ある程度レベルが上がったゴブリンは、女性を繁殖の借り腹にするため、危険が高まる。
そういった色々な考察を少しながらだが伝えた。
「一体何が起こっているのか、私たちにはまったくわからないのです」
自称、ここの学校の教師だと言う人々がそう語る。
わらびは自分の考察を続けて語りだした。
あくまでも自分の考えなので、これからの参考にはしても、指針にはしないで欲しいと。
レベルについての話はあまりしなかったのは、過度の期待を持たせてしまうかもしれない事。
変態の際の肉体の再構築に激しい痛みが伴う事。
そういったものを理解せずにモンスターを倒そうものなら、のたうち回るうちに殺されてしまう。
実際、間違いなく進化してるだろうに、無言で転がってる遺体はたくさんあった。
自分も少し意見を言っておこう。
「申し訳ないのですが、今晩だけでもこの方たちを中に入れてもらえないでしょうか?」
「明日、日が昇れば校庭をお借りしてどうにかしてみます」
「代わりと言ってはなんですが、朝までの防衛線は自分たちが死守します」
「あなたたちみたいな若い方に一体何が出来るかと?」
「こ~んな事とか出来るよー」
美咲が風纏で空中に浮く。
自分も同じく浮き上がり、上空で美咲と模擬戦をやって見せる。
リョウケンは地面を殴り小さなクレーターを作り、わらびは目にも止まらぬ速さで移動し、とんでもなく高く飛び上がる。
[[[な、なな、なんじゃ~]]]
「この人らは戦える人たちじゃ」
いつものご老人が口添えしてくれる。
「どうですか?悪い話じゃないと思いますが」
教師たちは顔を見合わせ、軽くうなずいた。
「では、明日の朝までという条件で許可しましょう」
「ただし、中で何かトラブルを起こした場合は即刻退場して頂きます」
「おい、おっさんとおばはん、あんたら二人が心配じゃ」
美咲が輩夫婦に食って掛かる。
「あぁ~?わしらがなんかしたんかー?」
「やらかしまくっとうやろが~」
「美咲ちゃん、お口が悪くないかい?」
「ご、ごめんちゃい」
「お兄さんたち、あなた方の自分勝手な言動は目に余るものがあります」
「あなたがたが問題を起こすと、この方々にも被害が被るんです」
「明日の朝まではおとなしくしていてもらえますか?」
「それが約束出来ないのなら、強制的にマンションに戻します」
「わ、わかっとるわ」
小さな声でそう呟く輩夫。
「それではみなさん、こちらへどうぞ」
教師に引率されて避難してきた人々が校舎の中に迎え入れられる。
「んじゃ、俺と美咲は西側、リョウケンさんとわらびさんは東側の見回りをお願いします」
「「わかりました」」
「そのまえに隣のコンビニにいってみ~へん?」
美咲が提案する。
たしかに校舎内にある食料は今の避難してる人たちの物。
自分たちは自分たちで調達しないといけない。
広い校庭の北側に校舎が立っている。その北隣にコンビニがある。
だが、あまり二人の変貌した容姿に言及する人は居なかった。
人の記憶は曖昧なものだが、ここまで気にならないものだろうか。
背格好も見た目の容姿もまったく別人なのに。
「それでは、行きましょうか」
全員で階段を上がり、先頭は健斗とリョウケン。
しんがりを務めるのは美咲とわらびの二人である。
健斗はガラガラとキャリーバッグを転がす。
静まり返った通路にその音が妙に響き渡る。
連絡橋を渡って2番街から3番街に入るとまたゴブリンの姿が見え隠れする。
戦闘はリョウケンに任せ、見えないところの詮索を健斗が分担を請け負う。
一般人が後ろに居るため、二人ともピリピリとした緊張感を持っている。
きょろきょろとゴブリンが居ないか探る。
見つけては倒し、また神経をゴブリンに向ける。
(ヒュン)
「「あっ?」」
「これは何かスキルを覚えた感じですね」
ステータスプレートを見ると二人ともが[索敵]のスキルを覚えてた。
これは便利だ。
リョウケンが手を上げてくるので、ハイタッチをしてお互いに嬉しそうな顔で微笑みあう。
その後は索敵スキルで早めにゴブリンを見つけることが出来て、楽に4番街まで全員到着した。
区役所は隣の建物だが、一旦外に出ないとダメだ。
「先行して様子見てきますね」
「なぁ~ なんでハイタッチしとったん?」
美咲が訝しげな顔で聞く。
「あぁ索敵スキルを覚えたんです」
「二人とも?」
「はい、二人共です」
「ウッキィィィ」
「猿かよっ」
腕を振り回す美咲のおでこを押さえる。
「ま~索敵は風魔法の応用スキルだから覚えても不思議じゃないよね」
わらびが解説する。
「索敵って風魔法なんやー」
「サーチ系は大体風魔法の応用ですね」
「気配探知は第六感の強い忍術や仙術、範囲魔法を使える魔法職」
「あとは雷系で電磁波使うサーチ系もあります」
「土魔法の振動感知のスキルもあります」
「マップ系統は土魔法と風魔法の応用スキルですね」
ほんとにこの子の知識には敬服する。
まずはリョウケンと二人で区役所に様子を見に行く。
2号線を挟んで向かい側にあるボーリング場に人が居るのが見える。
スマホの灯りか懐中電灯か分からないが灯りが火の玉のように動いている。
本当に人の霊魂かも知れないが。
区役所には人の気配はしないし、入り口にはかぎが掛かって入れなくなってる。
2号線には車も走っていない。
あちらこちらで止まったままの車を放置してるため通れないんだろう。
「どうしよっか? 中学まで見に行ってみようか?」
だいたい区役所から中学校までは200mほどしかない。
全力で走れば30秒も掛からないだろう。
「健斗さんならあの車を端に寄せて道を作れるんじゃないですか?」
「リョウケンさんもレベル4か5になったでしょ?もう車くらいならいけますよ」
道の真ん中をトラック等で輸送すれば安全に避難できるかも。
歩道でもそこそこ広いから、軽トラ見つけられればいけそうだ。
杭全 良兼(41)
Lv 5
種族 【新人類】 選択
職業 【拳闘士】 選択
称号 【--】
基本能力一覧
GMR/USU
HP 81/81(+34)
MP 16/16
STR 64(+23)
DEF 56
AGI 54(+18)
DEX 33
INT 19
SP/44
基本技能一覧
身体強化Ⅰ
剛拳 超跳躍 索敵
216-1/178+0
「STRが20くらいで冷蔵庫一人で持ち上げられたから、そのステなら十分でしょ」
「やってみますか」
道路に出て車を路肩に持っていく。
車体のどこかが潰れて止まってる車の中では、ほとんど人が死んでいた。
桜口の信号から、烏帽子町の信号まで車を片付ける。
そして軽トラか2トン3トンくらいのトラックを探すが、軽トラがすぐに見つかる。
中ではおじさんが亡くなっていたが、両手を合わせて静かに道路に寝かせ車を借りる。
区役所の隣に戻り、避難希望者を荷台に乗せる。
16人全員が立ってだが乗れた。密だね。
美咲とわらびとリョウケンは早歩きで中学を目指す。
細心の注意を払い中学校の通用門の横に車を並列駐車すると、乗っていた人々が我先にと稼働門を乗り越えていく。
周りにゴブリンも居ないのに。
中に入り校舎の方に走っていくと
「ちょっと待て~」
杈を手に持った数人が侵入を拒む。
「あんたらどこの人間や?」
校舎から出てきた数人の質問に対して老人が答える
「私らはそこの2番街から避難してきたものです」
「ん~ここの避難許容人数が精々200人くらいなんだが、もうすでに220人居るんだよ」
「申し訳ないけど、校舎内に入るのはご遠慮願いたい」
「自衛隊とかの助けがいつ来るのかわからない今、必要最小限で纏めたいのです」
「んじゃ~わしらぁどないせ~ちゅうねん?」
輩の男が叫ぶ。
「校庭にならご自由に避難キャンプを設営して下さい」
「私たちも生徒やそのご家族を守るのに必死なんです」
「これ以上は食料も心許ないし、インフラも水以外はすでに止まってて何も出来ないのです」
「本当に一体何が起こっているのか・・・」
確かに許容出来うる人数の制限はわかるが、校庭での野営は少し危険な気がする。
こんな事ならあのままマンションで自宅に引きこもってた方が安全だった。
とは言え、ここの先生方?達の言い分も理解できるだけに少し考えないと。
「確かに誰でも彼でも避難させてたら収集付かんくなるのは目に見えてるし」
わらびがもっともな事を言う。
「それと、確定では無いですが私なりの考察だと思って下さい」
そう前置きしてわらびが語りだす。
ここまで来るまでにたくさんの遺体を目にしたけど、子供の遺体は一体も見なかった事。
精々中学生程度の子供しか見なかった。
子供はモンスターの餌になっているのじゃないか?という事。
ある程度レベルが上がったゴブリンは、女性を繁殖の借り腹にするため、危険が高まる。
そういった色々な考察を少しながらだが伝えた。
「一体何が起こっているのか、私たちにはまったくわからないのです」
自称、ここの学校の教師だと言う人々がそう語る。
わらびは自分の考察を続けて語りだした。
あくまでも自分の考えなので、これからの参考にはしても、指針にはしないで欲しいと。
レベルについての話はあまりしなかったのは、過度の期待を持たせてしまうかもしれない事。
変態の際の肉体の再構築に激しい痛みが伴う事。
そういったものを理解せずにモンスターを倒そうものなら、のたうち回るうちに殺されてしまう。
実際、間違いなく進化してるだろうに、無言で転がってる遺体はたくさんあった。
自分も少し意見を言っておこう。
「申し訳ないのですが、今晩だけでもこの方たちを中に入れてもらえないでしょうか?」
「明日、日が昇れば校庭をお借りしてどうにかしてみます」
「代わりと言ってはなんですが、朝までの防衛線は自分たちが死守します」
「あなたたちみたいな若い方に一体何が出来るかと?」
「こ~んな事とか出来るよー」
美咲が風纏で空中に浮く。
自分も同じく浮き上がり、上空で美咲と模擬戦をやって見せる。
リョウケンは地面を殴り小さなクレーターを作り、わらびは目にも止まらぬ速さで移動し、とんでもなく高く飛び上がる。
[[[な、なな、なんじゃ~]]]
「この人らは戦える人たちじゃ」
いつものご老人が口添えしてくれる。
「どうですか?悪い話じゃないと思いますが」
教師たちは顔を見合わせ、軽くうなずいた。
「では、明日の朝までという条件で許可しましょう」
「ただし、中で何かトラブルを起こした場合は即刻退場して頂きます」
「おい、おっさんとおばはん、あんたら二人が心配じゃ」
美咲が輩夫婦に食って掛かる。
「あぁ~?わしらがなんかしたんかー?」
「やらかしまくっとうやろが~」
「美咲ちゃん、お口が悪くないかい?」
「ご、ごめんちゃい」
「お兄さんたち、あなた方の自分勝手な言動は目に余るものがあります」
「あなたがたが問題を起こすと、この方々にも被害が被るんです」
「明日の朝まではおとなしくしていてもらえますか?」
「それが約束出来ないのなら、強制的にマンションに戻します」
「わ、わかっとるわ」
小さな声でそう呟く輩夫。
「それではみなさん、こちらへどうぞ」
教師に引率されて避難してきた人々が校舎の中に迎え入れられる。
「んじゃ、俺と美咲は西側、リョウケンさんとわらびさんは東側の見回りをお願いします」
「「わかりました」」
「そのまえに隣のコンビニにいってみ~へん?」
美咲が提案する。
たしかに校舎内にある食料は今の避難してる人たちの物。
自分たちは自分たちで調達しないといけない。
広い校庭の北側に校舎が立っている。その北隣にコンビニがある。
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