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第一章 美咲と健斗
新人類
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男の顔は若々しく、いままでの中年初期の面影はなくなっていた。
「どっから見ても20歳くらいにしか見えんよー」
「そう言う君も髪の色変わってるし、目の色も変わってるやん」
少女の髪は緑色が強いブラウンに、虹彩は淡い感じの緑掛かった碧眼になっていた。
「元々目は青っぽかったんよ。それがコンプレックスで濃い茶色のカラコン入れててん」
日本で生まれて日本で育ったのに、目の色が違うだけで小さいころから苛めの対象にされていたらしい。
アジア系の顔にしか見えなかったが、ハーフなのかな?
「ハーフ?」
「おとうさんが日露のハーフだから、クォーターかな」
「目の色と足の長さだけ受け継いだみたい」
悪戯っぽい笑顔でコロコロ笑う感じが可愛さを倍増している。
そうこうしてたら少女は目から落ちたカラーコンタクトを探す出す。
度が入った特注なので結構高かったらしい。
男は自分の身体を色々と触ったりまさぐったりしながら肉体が若返ったことを強く感じる。
最近あまり運動もしてなかったのに、学生時代のように筋肉もしっかりしている。
立ち上がると、感覚的だが身長もかなり高くなっていた。
「計らんとわからんけど、10㎝くらいデカくなってるかな」
「うちもますます高くなったんちゃうかな?」
急に砕けた話し方をしてきたが自分もそうなので気にしない事にした。
少女は元々169㎝あったらしく、背が高いことにも強いコンプレックスを持っていたらしい。
それでいつもベタ靴を履いていたんだろう。
それがまた高くなったことに嫌気が差してるかと思ったが、そんな感じは見受けられない。
手足も長くなったので、裾や袖から手足がはみ出してる俺の恰好を見て、少女はクスクスと笑う。
「チンチクリンやなー」
少女も背格好がかなり大きくなったが、女性ならではで、クリアカットだった裾の長さも8分丈のパンツにしか見えない。
こんな有り得ない現状に何故か違和感を覚えず、テンションも上がりポジティブな思考だけが頭の中を駆け巡る。
ゴブリンに突き刺さった包丁を抜き取り手に持つ。
今更ながら手が震える。
でもたった1体倒しただけで、まだまだこのマンションには無数のゴブリンが巣くっている。
「取り合えず27階まで上がりませんか?」
マンションから脱出した方がよいんじゃないかという事とかを軽く説明する。
「家に連れ込んで、変な事せーへん?」
「しばくよ!」
「えへへ♪」
なんだ?この親近感・・・
階段を急ぎ足で上りながら今後の計画を話す。
まずはこのマンションからの脱出。
そのためには、武器と食料が必要な事。
自分の家には武器がある事。
(ヒュン)
1段抜かし2段抜かしで駆け上がっていると、いきなり人の所作では出来ないくらい大きくジャンプして踊り場の壁に激突しそうになった。
少女も同じく、危うく怪我をするところだ。
「なんなん?今の?」
「身体が変化したのと関係あるんかな?」
「物は試し だねー」
踊り場から上の踊り場まで、飛ぶイメージで足に力を入れ踏ん張る。
「どりゃー」
14段ある階段を一気に飛び上がれる。
この能力向上は凄く助かる。
少女も真似して飛んでくる。
「すげぇぇーーー」
興奮して少女が叫ぶ。
しかし、これはこれで人外の道を歩んでいるような気がするなー。
ほどなく27階に到着して、防火扉を少し開けてホールを見る。
ここにはゴブリンは居ないようだ。
忍び足でホールを抜けて吹き抜けを見渡すと、上階の廊下にはゴブリンの姿はなかった。
南西の階段から下に降りて行ったんだろうか。
自分の家はホール出口から見て、正面。
一番距離があるところ。
今のジャンプ力なら吹き抜けを飛び越えて行けそうだが、もしも届かなけりゃ27階から真っ逆さまに落ちて行くことだろう。
辞めておこう。
吹き抜け回りの廊下は、縦目のアルミ柵で囲われている。
そのためどこの位置からでも丸見えだ。
姿勢を低くして早足で進む。
廊下にはゴブリンや住人の遺体や死体が所々に転がっている。
それをかわしながら到着した自室のドアを開ける。
「小綺麗にしてるんだあ」
「まあ、そこのソファーにでも掛けてて」
「家族の方は~?」
「ん? 一人暮らしだよ」
「・・・・」
冷蔵庫からよく冷えたお茶をコップに注ぎ、少女の前のガラステーブルに置いた。
「ステータスオープン」
自分の前に右腕を伸ばし手のひらを広げて、唐突に少女が叫んだ。
「キャーーー♪ ほんまに出よったー」
はしゃぐ少女の前方を見ると、薄っすら光る四角いホログラム様の物が浮かび上がっている。
頭の片隅にはそんな想像もあったが、ありえないと思い込む中年脳とまずはやっとけっていう青春脳の違いがここに出たなと思う。
少女曰く
「身体が大きく変化したことも驚きやけど、なんかこぅ力が漲みなぎってる感じ?」
「もしもレベルアップとかあったらこんなんになるんかなーって思ってん」
「うち、ロープレとか好きやし、ステータスボードとか出たら面白いかなって」
「キャッキャッキャッキャ」
とにかく明るくはしゃいでるから、思わずついつい
「ステータスオープン」
「おっ!出た出た」
自分も唱えてしまった。
「どれどれ?」
庄内健斗 (31)
Lv 1
種族 【新人類】選択
職業 【--】選択
称号 【--】
基本能力一覧
GMR/PRE
HP 15
MP 10
STR 10
DEF 10
AGI 10
DEX 10
INT 10
SP/0
基本技能一覧
超跳躍
8-0/5+0
「なーんかシンプルだなー」
「ですねー」
「新人類って、ちょっと笑える」
「へ~ 健斗さんって言うんやー」
背後から自分のステータスを見られてるとは思わなかった
「ちょ! おいおい」
「君のも見せなさい!」
「いやぁ~えっち~」
「ちょっとだけやから、なっ!大丈夫、大丈夫、見るだけやから」
「エロおやじに犯される~」
さっきまでの緊迫した時間はどこに消えたのか。
クスクス笑いながら少女は自分のステータスを見せてくれた。
二ツ石美咲(19)
Lv1
種族 【新人類】選択
職業 【--】選択
称号 【--】
基本能力一覧
GMR/SPE
HP 15
MP 10
STR 10
DEF 10
AGI 10(+10)
DEX 10
INT 10
SP/0
基本技能一覧
扇風脚 超跳躍 覗き見
8-0/5+0
「え~?」
ステに+補正があるし、攻撃系みたいなスキルもあるし。
「どうしたのー?」
満面の笑みで聞き返す美咲。
「なんか複数スキル持ってるし」
「覗き見 って(笑)」
「さっき健斗さんのステータスを覗いた時になんか ヒュン って感じで、覚えたみたい」
「何度かそれなったよねー。ヒュンってやつ」
いきなり名前呼びをされて少しドキッとしたが、そこは大人だから平静を装う。
うん。
「旋風脚なら知ってるが、扇風脚ってなんなん?」
「階段でゴブリンにキック入れたやつちゃうかな?」
「行動発生系かー」
このスキルはすべて何かの行動をしたら覚えるって感じだな。
進化前の行動でも要素として残るんかな?
「覗き見ってどんなスキルなん?」
「ん~よぅわからん(笑)」
種族と職業のところに 選択 ってあるが、まだどちらも選択は出来なかった。
「職業とか選んだらまたスキル増えるんかな?」
「やってみんとわからんね」
「GMRってなんやろ?」
「うちとは記述が違うね」
「美咲ちゃんのSPEと俺のPREの違いがわからんね」
お互い自己紹介も何もしてないが、名前で呼ばれたから名前で呼んでみたけど、受け入れられてるみたいかな。
「SPEはスペシャルでPREはプレミアム?」
「AGIに補正が付いとうから、スピードかもよ?」
「PREはプレシャス?貴重な?」
「わかったープレゼントやわー」
「何くれんの?」
半笑いで推測した事を話すこの子がなんとなく女性として可愛く思えてきた。
「最後の数式はなんやろ」
「算数の宿題?」
「そりゃ無いわー」
ボケと突っ込みが確定したような気がする。
二人のステータスをスマホで写真に撮り保存する。
二人ともお茶を飲み干し、武器を飾ってる部屋に美咲を招き入れる。
「ほぇ~ すんごいねー」
「SAOが好きだったんよ。それで2刀流にあこがれてネットで買ったんよ」
「SAO?なんなんそれ?」
「ソードアートオンラインって知らん?」
「知らん(笑)」
「・・・・・」
壁に掛かっている双刀の柳葉刀
「でもこいつらは材質が金属じゃないから武器にはならへんかな」
金属製のククリや短剣も何本か並べている。
「この赤漆が綺麗な鞘が気に入って、オークションで落とした青龍刀が使えるかな」
こちらは壁に掛けずDIY製の木製ロッカーにしまってある。
「刃引きの刀やったけど、自分で砥いたった」
「刃引き?」
「刀の刃を切れないように潰した物を指すんだよ」
「切れるようにして、銃刀法違反にならんの?」
「日本刀は登録証とかきちんとしてて買うときに名義変更したらいいだけなんよ」
「西洋刀や中国刀はそんな基準がないから、結構曖昧なんよね」
「銃と違っていちいち警察に届けんでも良いんだよ」
「届け、出さんでいいんやー」
「普通に牛刀とかだと刃渡り30㎝とかあるけど、届けなんて出さへんやろ?」
「まぁ確かに」
「刃渡り30㎝のサバイバルナイフとか元町の高架下行ったら普通に売っとるし」
「とは言え、街中で持ち歩くとすぐに銃刀法違反で捕まるけどね」
「家庭内限定か~」
「あっ これ」
美咲が手に取ったのは、3本の鈎爪がついた鉄の手袋のような武器。
「それはアイアンクローって言って、ドラクエ3に出てきた黄金の爪みたいなもんだよ」
「うち、これがいい!」
「それ、結構危ないんよ? 自分の太もも良く突くし」
「奥の大きい奴は刃が引っ込むけど、操作に慣れるまでちょっと掛かるよ」
「太ももで思い出したけど、あのゴブリンにやられた傷は?」
かなりの出血をしてたから深い傷だったのだろうが
「なんか進化した時に勝手に治っとった」
「あはははは。」
「なんじゃそれ!」
リュックにペットボトルや簡易な食料を詰め込んでいくうちにフッと思ったが
この美咲という子、いつのまにか一緒に行動するのが当然のように接してくるし、自分もそれを違和感なく受け入れてる事にちょっと怖さを感じた。
彼女の母親達の事もまだ理解できないし、ついさっき名前を知ったばかりだし、一応未成年なんだし。
もしかしたら彼女は精神操作系の隠しスキルを持ってるのかも知れない。
ただ、とにかく明るい性格が一緒に居てとても心地良い。
もう一つ思うことは、家に入ってから身長も計ってみたが、自分が172㎝→185㎝ 美咲が169㎝→177㎝になっていた。体系もガッチリと二回りくらい大きくなっている。
美咲は胸こそBカップくらいで変わらないが、お尻とかツンっと上向く良い形をしている。
元々なのかも知れないけど。
鏡を見ると顔も若返り、そして歯がすべて綺麗に生え変わっていた。
普通ならそんな事があればもっと驚くはずなのにふつーうに受け入れてる。
跳躍のスキルも、すごく飛べるようになったなーってくらいにしか思わなかった。
もしかしてこれは夢なのかも知れない。
俗にいう明晰夢か。
それとも、二人ともが能天気なだけかも知れない。
「健斗さーん、これ気に入ったー」
結局、美咲が選んだ武器は、チタン製の手の甲から肘まである3本クローを選んだ。
簡易の腕盾になるし攻撃力も高い。
手のひら側に二つのリングがあり、それを強く握ると爪が出てくる。
緩めると爪は腕部分に収納されるという変則的なクローである。
爪の長さは当初20㎝ほどもあったが、先端の鈎部分をカットして研いで研いでするうちに15㎝ほどになっている。実用的な長さじゃないかなと思う。
何か、遠足にでも行くようなフワフワした気分で忘れかけていたが、ゴブリンはこのマンションにかなりの数が暴れていた。それはこのマンションだけなのかこの近辺がそうなのか世界全体がそうなってしまったのかまったくわかっていない。
ベランダに出てみると、南側に灘区役所があり、その横には大きな公園がある。
その公園では人々が逃げまどい、ゴブリンがそれを追いかけまわすという、ここでも見た光景が広がる。
近くの高層マンションを見渡すと、廊下やベランダの所々に赤く染まる部分が見て取れる。
「どっから見ても20歳くらいにしか見えんよー」
「そう言う君も髪の色変わってるし、目の色も変わってるやん」
少女の髪は緑色が強いブラウンに、虹彩は淡い感じの緑掛かった碧眼になっていた。
「元々目は青っぽかったんよ。それがコンプレックスで濃い茶色のカラコン入れててん」
日本で生まれて日本で育ったのに、目の色が違うだけで小さいころから苛めの対象にされていたらしい。
アジア系の顔にしか見えなかったが、ハーフなのかな?
「ハーフ?」
「おとうさんが日露のハーフだから、クォーターかな」
「目の色と足の長さだけ受け継いだみたい」
悪戯っぽい笑顔でコロコロ笑う感じが可愛さを倍増している。
そうこうしてたら少女は目から落ちたカラーコンタクトを探す出す。
度が入った特注なので結構高かったらしい。
男は自分の身体を色々と触ったりまさぐったりしながら肉体が若返ったことを強く感じる。
最近あまり運動もしてなかったのに、学生時代のように筋肉もしっかりしている。
立ち上がると、感覚的だが身長もかなり高くなっていた。
「計らんとわからんけど、10㎝くらいデカくなってるかな」
「うちもますます高くなったんちゃうかな?」
急に砕けた話し方をしてきたが自分もそうなので気にしない事にした。
少女は元々169㎝あったらしく、背が高いことにも強いコンプレックスを持っていたらしい。
それでいつもベタ靴を履いていたんだろう。
それがまた高くなったことに嫌気が差してるかと思ったが、そんな感じは見受けられない。
手足も長くなったので、裾や袖から手足がはみ出してる俺の恰好を見て、少女はクスクスと笑う。
「チンチクリンやなー」
少女も背格好がかなり大きくなったが、女性ならではで、クリアカットだった裾の長さも8分丈のパンツにしか見えない。
こんな有り得ない現状に何故か違和感を覚えず、テンションも上がりポジティブな思考だけが頭の中を駆け巡る。
ゴブリンに突き刺さった包丁を抜き取り手に持つ。
今更ながら手が震える。
でもたった1体倒しただけで、まだまだこのマンションには無数のゴブリンが巣くっている。
「取り合えず27階まで上がりませんか?」
マンションから脱出した方がよいんじゃないかという事とかを軽く説明する。
「家に連れ込んで、変な事せーへん?」
「しばくよ!」
「えへへ♪」
なんだ?この親近感・・・
階段を急ぎ足で上りながら今後の計画を話す。
まずはこのマンションからの脱出。
そのためには、武器と食料が必要な事。
自分の家には武器がある事。
(ヒュン)
1段抜かし2段抜かしで駆け上がっていると、いきなり人の所作では出来ないくらい大きくジャンプして踊り場の壁に激突しそうになった。
少女も同じく、危うく怪我をするところだ。
「なんなん?今の?」
「身体が変化したのと関係あるんかな?」
「物は試し だねー」
踊り場から上の踊り場まで、飛ぶイメージで足に力を入れ踏ん張る。
「どりゃー」
14段ある階段を一気に飛び上がれる。
この能力向上は凄く助かる。
少女も真似して飛んでくる。
「すげぇぇーーー」
興奮して少女が叫ぶ。
しかし、これはこれで人外の道を歩んでいるような気がするなー。
ほどなく27階に到着して、防火扉を少し開けてホールを見る。
ここにはゴブリンは居ないようだ。
忍び足でホールを抜けて吹き抜けを見渡すと、上階の廊下にはゴブリンの姿はなかった。
南西の階段から下に降りて行ったんだろうか。
自分の家はホール出口から見て、正面。
一番距離があるところ。
今のジャンプ力なら吹き抜けを飛び越えて行けそうだが、もしも届かなけりゃ27階から真っ逆さまに落ちて行くことだろう。
辞めておこう。
吹き抜け回りの廊下は、縦目のアルミ柵で囲われている。
そのためどこの位置からでも丸見えだ。
姿勢を低くして早足で進む。
廊下にはゴブリンや住人の遺体や死体が所々に転がっている。
それをかわしながら到着した自室のドアを開ける。
「小綺麗にしてるんだあ」
「まあ、そこのソファーにでも掛けてて」
「家族の方は~?」
「ん? 一人暮らしだよ」
「・・・・」
冷蔵庫からよく冷えたお茶をコップに注ぎ、少女の前のガラステーブルに置いた。
「ステータスオープン」
自分の前に右腕を伸ばし手のひらを広げて、唐突に少女が叫んだ。
「キャーーー♪ ほんまに出よったー」
はしゃぐ少女の前方を見ると、薄っすら光る四角いホログラム様の物が浮かび上がっている。
頭の片隅にはそんな想像もあったが、ありえないと思い込む中年脳とまずはやっとけっていう青春脳の違いがここに出たなと思う。
少女曰く
「身体が大きく変化したことも驚きやけど、なんかこぅ力が漲みなぎってる感じ?」
「もしもレベルアップとかあったらこんなんになるんかなーって思ってん」
「うち、ロープレとか好きやし、ステータスボードとか出たら面白いかなって」
「キャッキャッキャッキャ」
とにかく明るくはしゃいでるから、思わずついつい
「ステータスオープン」
「おっ!出た出た」
自分も唱えてしまった。
「どれどれ?」
庄内健斗 (31)
Lv 1
種族 【新人類】選択
職業 【--】選択
称号 【--】
基本能力一覧
GMR/PRE
HP 15
MP 10
STR 10
DEF 10
AGI 10
DEX 10
INT 10
SP/0
基本技能一覧
超跳躍
8-0/5+0
「なーんかシンプルだなー」
「ですねー」
「新人類って、ちょっと笑える」
「へ~ 健斗さんって言うんやー」
背後から自分のステータスを見られてるとは思わなかった
「ちょ! おいおい」
「君のも見せなさい!」
「いやぁ~えっち~」
「ちょっとだけやから、なっ!大丈夫、大丈夫、見るだけやから」
「エロおやじに犯される~」
さっきまでの緊迫した時間はどこに消えたのか。
クスクス笑いながら少女は自分のステータスを見せてくれた。
二ツ石美咲(19)
Lv1
種族 【新人類】選択
職業 【--】選択
称号 【--】
基本能力一覧
GMR/SPE
HP 15
MP 10
STR 10
DEF 10
AGI 10(+10)
DEX 10
INT 10
SP/0
基本技能一覧
扇風脚 超跳躍 覗き見
8-0/5+0
「え~?」
ステに+補正があるし、攻撃系みたいなスキルもあるし。
「どうしたのー?」
満面の笑みで聞き返す美咲。
「なんか複数スキル持ってるし」
「覗き見 って(笑)」
「さっき健斗さんのステータスを覗いた時になんか ヒュン って感じで、覚えたみたい」
「何度かそれなったよねー。ヒュンってやつ」
いきなり名前呼びをされて少しドキッとしたが、そこは大人だから平静を装う。
うん。
「旋風脚なら知ってるが、扇風脚ってなんなん?」
「階段でゴブリンにキック入れたやつちゃうかな?」
「行動発生系かー」
このスキルはすべて何かの行動をしたら覚えるって感じだな。
進化前の行動でも要素として残るんかな?
「覗き見ってどんなスキルなん?」
「ん~よぅわからん(笑)」
種族と職業のところに 選択 ってあるが、まだどちらも選択は出来なかった。
「職業とか選んだらまたスキル増えるんかな?」
「やってみんとわからんね」
「GMRってなんやろ?」
「うちとは記述が違うね」
「美咲ちゃんのSPEと俺のPREの違いがわからんね」
お互い自己紹介も何もしてないが、名前で呼ばれたから名前で呼んでみたけど、受け入れられてるみたいかな。
「SPEはスペシャルでPREはプレミアム?」
「AGIに補正が付いとうから、スピードかもよ?」
「PREはプレシャス?貴重な?」
「わかったープレゼントやわー」
「何くれんの?」
半笑いで推測した事を話すこの子がなんとなく女性として可愛く思えてきた。
「最後の数式はなんやろ」
「算数の宿題?」
「そりゃ無いわー」
ボケと突っ込みが確定したような気がする。
二人のステータスをスマホで写真に撮り保存する。
二人ともお茶を飲み干し、武器を飾ってる部屋に美咲を招き入れる。
「ほぇ~ すんごいねー」
「SAOが好きだったんよ。それで2刀流にあこがれてネットで買ったんよ」
「SAO?なんなんそれ?」
「ソードアートオンラインって知らん?」
「知らん(笑)」
「・・・・・」
壁に掛かっている双刀の柳葉刀
「でもこいつらは材質が金属じゃないから武器にはならへんかな」
金属製のククリや短剣も何本か並べている。
「この赤漆が綺麗な鞘が気に入って、オークションで落とした青龍刀が使えるかな」
こちらは壁に掛けずDIY製の木製ロッカーにしまってある。
「刃引きの刀やったけど、自分で砥いたった」
「刃引き?」
「刀の刃を切れないように潰した物を指すんだよ」
「切れるようにして、銃刀法違反にならんの?」
「日本刀は登録証とかきちんとしてて買うときに名義変更したらいいだけなんよ」
「西洋刀や中国刀はそんな基準がないから、結構曖昧なんよね」
「銃と違っていちいち警察に届けんでも良いんだよ」
「届け、出さんでいいんやー」
「普通に牛刀とかだと刃渡り30㎝とかあるけど、届けなんて出さへんやろ?」
「まぁ確かに」
「刃渡り30㎝のサバイバルナイフとか元町の高架下行ったら普通に売っとるし」
「とは言え、街中で持ち歩くとすぐに銃刀法違反で捕まるけどね」
「家庭内限定か~」
「あっ これ」
美咲が手に取ったのは、3本の鈎爪がついた鉄の手袋のような武器。
「それはアイアンクローって言って、ドラクエ3に出てきた黄金の爪みたいなもんだよ」
「うち、これがいい!」
「それ、結構危ないんよ? 自分の太もも良く突くし」
「奥の大きい奴は刃が引っ込むけど、操作に慣れるまでちょっと掛かるよ」
「太ももで思い出したけど、あのゴブリンにやられた傷は?」
かなりの出血をしてたから深い傷だったのだろうが
「なんか進化した時に勝手に治っとった」
「あはははは。」
「なんじゃそれ!」
リュックにペットボトルや簡易な食料を詰め込んでいくうちにフッと思ったが
この美咲という子、いつのまにか一緒に行動するのが当然のように接してくるし、自分もそれを違和感なく受け入れてる事にちょっと怖さを感じた。
彼女の母親達の事もまだ理解できないし、ついさっき名前を知ったばかりだし、一応未成年なんだし。
もしかしたら彼女は精神操作系の隠しスキルを持ってるのかも知れない。
ただ、とにかく明るい性格が一緒に居てとても心地良い。
もう一つ思うことは、家に入ってから身長も計ってみたが、自分が172㎝→185㎝ 美咲が169㎝→177㎝になっていた。体系もガッチリと二回りくらい大きくなっている。
美咲は胸こそBカップくらいで変わらないが、お尻とかツンっと上向く良い形をしている。
元々なのかも知れないけど。
鏡を見ると顔も若返り、そして歯がすべて綺麗に生え変わっていた。
普通ならそんな事があればもっと驚くはずなのにふつーうに受け入れてる。
跳躍のスキルも、すごく飛べるようになったなーってくらいにしか思わなかった。
もしかしてこれは夢なのかも知れない。
俗にいう明晰夢か。
それとも、二人ともが能天気なだけかも知れない。
「健斗さーん、これ気に入ったー」
結局、美咲が選んだ武器は、チタン製の手の甲から肘まである3本クローを選んだ。
簡易の腕盾になるし攻撃力も高い。
手のひら側に二つのリングがあり、それを強く握ると爪が出てくる。
緩めると爪は腕部分に収納されるという変則的なクローである。
爪の長さは当初20㎝ほどもあったが、先端の鈎部分をカットして研いで研いでするうちに15㎝ほどになっている。実用的な長さじゃないかなと思う。
何か、遠足にでも行くようなフワフワした気分で忘れかけていたが、ゴブリンはこのマンションにかなりの数が暴れていた。それはこのマンションだけなのかこの近辺がそうなのか世界全体がそうなってしまったのかまったくわかっていない。
ベランダに出てみると、南側に灘区役所があり、その横には大きな公園がある。
その公園では人々が逃げまどい、ゴブリンがそれを追いかけまわすという、ここでも見た光景が広がる。
近くの高層マンションを見渡すと、廊下やベランダの所々に赤く染まる部分が見て取れる。
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眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。
「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」
ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。
ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視
上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。
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