53 / 72
それから
閑話43.5:ヒロインと目覚め
しおりを挟む
あの騒動から約1週間後、私とリオの元へ嬉しい知らせが入る。
レオ様が、意識を取り戻したと。
今は、宮廷医師2名による診察を受けているらしい。
嬉しかった、彼が無事で。
あの日レオ様が目の前で倒れて、私の呼吸が止まったのを覚えている。
もしかしてこのまま、彼は帰らぬ人になるのではないか。
…お腹の子と共に、居なくなってしまうんじゃないかと。
クロムウェル殿下の腕で目を閉じている彼を揺さぶってしまったのは記憶に新しい。
レオ様が眠っている1週間、毎日毎日リオと一緒にお見舞いに行った。
私も勿論心配してたけど、それ以上にどんどんリオの顔色が悪くなっていく。
「…レオ、居なくならないでくれ」
そう呟いたリオの顔は、切実で。
見ているこっちが泣きそうになって来るほど痛ましくて…見ていられなかった。
レオが目覚めた知らせを受けた私たちは、診察が終わるまで扉の外で待機している。
私以上にそわそわ、うろうろしているリオ。
中から僅かに聞こえる医師の声と、クロムウェル殿下の声…時折聞こえる、掠れたレオの声も。
その声は、私たちを安心させるのには最高の薬だった。
生きてる、彼は生きている。
運命に抗い、今この時間に息をしている…。
私達と同じ空間に、居る。
力が抜けてしまいヘナヘナとその場に座り込む。
ふと隣を見ると、さっきから周辺を歩いていたリオも同じように脱力して座り込んで居た。
そんな彼を見て、思わず笑ってしまったのは許して欲しい。
数時間後、漸く面会を許可されて勢いよく扉を開ける。
大きな音に驚いたレオが、此方を思いっきり振り返った。
僅かに痩せた頬に、眠っている時より全然良くなった顔色…生きているレオが、そこにいた。
レオに駆け寄り、思いっきり抱きしめる。
リオも同じように抱きしめていて、腕の中から小さく苦しそうな声が聞こえた。
この1週間の私達の思いの丈を、ぶちまける。
レオが死んだら、後を追おうと考えていたとも。
「…バカ、でしょ。そんな事したって嬉しくない」
馬鹿と言われると思ってなかったから、つい反論しそうになる。
その言葉を心に留められたのは、レオの表情だった。
静かに、頬を伝う涙。
泣いてる自覚がないのか、レオは涙も拭わずに私達を説得する。
そんな事されても、罪悪感で一杯になるだけ。絶対にやるんじゃない、これは命令だと。
私とリオに、初めて下された主人からの命令。
今まで家族同然に過ごしてきたから、レオは命令なんて一度もして来なかった。
するとしても、お茶の準備とか…簡単なものばかり。
面と向かって命じられた事は一度もなかった。
その命令は、彼なりの愛情表現なのだと思う。
レオはまだ13歳で、護られるべき年齢だ。
大人の指示を仰いで遵守する…そんな、歳だ。
それでも、自分の考えであの場に赴いたのは彼なりの覚悟だったんだろう。
怒りで目の前が見えなかった、ごめんと。
そう謝罪する姿は、とても小さく見えて。
あぁ、私はこれから先も彼を守ってあげたいと…そう、思った。
あの時私が止めていれば、レオは考えを改めたのかもしれない。
今更な話だが、私もリオも…リリアンヌ妃への怒りで頭に血が昇っていたのだと思う。
大人しく大人を頼っていれば、誰も傷付かなかった筈だ。
今となっては後の祭りだけど。
もう一度、私とリオはレオを抱きしめる。
今度は抱きしめ返してくれた…温かい、体温がじんわりと広がる。
小さく聞こえるリオの嗚咽には、気付かないふりをして。
小さな声で聞こえたレオの謝罪に、私は首を横に振った。
レオ様が、意識を取り戻したと。
今は、宮廷医師2名による診察を受けているらしい。
嬉しかった、彼が無事で。
あの日レオ様が目の前で倒れて、私の呼吸が止まったのを覚えている。
もしかしてこのまま、彼は帰らぬ人になるのではないか。
…お腹の子と共に、居なくなってしまうんじゃないかと。
クロムウェル殿下の腕で目を閉じている彼を揺さぶってしまったのは記憶に新しい。
レオ様が眠っている1週間、毎日毎日リオと一緒にお見舞いに行った。
私も勿論心配してたけど、それ以上にどんどんリオの顔色が悪くなっていく。
「…レオ、居なくならないでくれ」
そう呟いたリオの顔は、切実で。
見ているこっちが泣きそうになって来るほど痛ましくて…見ていられなかった。
レオが目覚めた知らせを受けた私たちは、診察が終わるまで扉の外で待機している。
私以上にそわそわ、うろうろしているリオ。
中から僅かに聞こえる医師の声と、クロムウェル殿下の声…時折聞こえる、掠れたレオの声も。
その声は、私たちを安心させるのには最高の薬だった。
生きてる、彼は生きている。
運命に抗い、今この時間に息をしている…。
私達と同じ空間に、居る。
力が抜けてしまいヘナヘナとその場に座り込む。
ふと隣を見ると、さっきから周辺を歩いていたリオも同じように脱力して座り込んで居た。
そんな彼を見て、思わず笑ってしまったのは許して欲しい。
数時間後、漸く面会を許可されて勢いよく扉を開ける。
大きな音に驚いたレオが、此方を思いっきり振り返った。
僅かに痩せた頬に、眠っている時より全然良くなった顔色…生きているレオが、そこにいた。
レオに駆け寄り、思いっきり抱きしめる。
リオも同じように抱きしめていて、腕の中から小さく苦しそうな声が聞こえた。
この1週間の私達の思いの丈を、ぶちまける。
レオが死んだら、後を追おうと考えていたとも。
「…バカ、でしょ。そんな事したって嬉しくない」
馬鹿と言われると思ってなかったから、つい反論しそうになる。
その言葉を心に留められたのは、レオの表情だった。
静かに、頬を伝う涙。
泣いてる自覚がないのか、レオは涙も拭わずに私達を説得する。
そんな事されても、罪悪感で一杯になるだけ。絶対にやるんじゃない、これは命令だと。
私とリオに、初めて下された主人からの命令。
今まで家族同然に過ごしてきたから、レオは命令なんて一度もして来なかった。
するとしても、お茶の準備とか…簡単なものばかり。
面と向かって命じられた事は一度もなかった。
その命令は、彼なりの愛情表現なのだと思う。
レオはまだ13歳で、護られるべき年齢だ。
大人の指示を仰いで遵守する…そんな、歳だ。
それでも、自分の考えであの場に赴いたのは彼なりの覚悟だったんだろう。
怒りで目の前が見えなかった、ごめんと。
そう謝罪する姿は、とても小さく見えて。
あぁ、私はこれから先も彼を守ってあげたいと…そう、思った。
あの時私が止めていれば、レオは考えを改めたのかもしれない。
今更な話だが、私もリオも…リリアンヌ妃への怒りで頭に血が昇っていたのだと思う。
大人しく大人を頼っていれば、誰も傷付かなかった筈だ。
今となっては後の祭りだけど。
もう一度、私とリオはレオを抱きしめる。
今度は抱きしめ返してくれた…温かい、体温がじんわりと広がる。
小さく聞こえるリオの嗚咽には、気付かないふりをして。
小さな声で聞こえたレオの謝罪に、私は首を横に振った。
66
お気に入りに追加
2,122
あなたにおすすめの小説
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜
ゆきぶた
BL
異世界転生したからハーレムだ!と、思ったら男のハーレムが出来上がるBLです。主人公総受ですがエロなしのギャグ寄りです。
短編用に登場人物紹介を追加します。
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
あらすじ
前世を思い出した第5王子のイルレイン(通称イル)はある日、謎の呪いで倒れてしまう。
20歳までに死ぬと言われたイルは禁呪に手を出し、呪いを解く素材を集めるため、セイと名乗り冒険者になる。
そして気がつけば、最強の冒険者の一人になっていた。
普段は病弱ながらも執事(スライム)に甘やかされ、冒険者として仲間達に甘やかされ、たまに兄達にも甘やかされる。
そして思ったハーレムとは違うハーレムを作りつつも、最強冒険者なのにいつも抱っこされてしまうイルは、自分の呪いを解くことが出来るのか??
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
お相手は人外(人型スライム)、冒険者(鍛冶屋)、錬金術師、兄王子達など。なにより皆、過保護です。
前半はギャグ多め、後半は恋愛思考が始まりラストはシリアスになります。
文章能力が低いので読みにくかったらすみません。
※一瞬でもhotランキング10位まで行けたのは皆様のおかげでございます。お気に入り1000嬉しいです。ありがとうございました!
本編は完結しましたが、暫く不定期ですがオマケを更新します!
ヒロイン不在の異世界ハーレム
藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。
神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。
飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。
ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが
咲
BL
俺には大好きな兄がいる。3つ年上の高校生の兄。美人で優しいけどおっちょこちょいな可愛い兄だ。
ある日、そんな兄に話題のゲームを進めるとありえない事が起こった。
「あれ?ここってまさか……ゲームの中!?」
モンスターが闊歩する森の中で出会った警備隊に保護されたが、そいつは兄を狙っていたようで………?
重度のブラコン弟が兄を守ろうとしたり、壊れたブラコンの兄が一線越えちゃったりします。高確率でえろです。
※近親相姦です。バッチリ血の繋がった兄弟です。
※第三者×兄(弟)描写があります。
※ヤンデレの闇属性でビッチです。
※兄の方が優位です。
※男性向けの表現を含みます。
※左右非固定なのでコロコロ変わります。固定厨の方は推奨しません。
お気に入り登録、感想などはお気軽にしていただけると嬉しいです!
異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった
藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。
毎週水曜に更新予定です。
宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。
異世界でチートをお願いしたら、代わりにショタ化しました!?
ミクリ21
BL
39歳の冴えないおっちゃんである相馬は、ある日上司に無理矢理苦手な酒を飲まされアル中で天に召されてしまった。
哀れに思った神様が、何か願いはあるかと聞くから「異世界でチートがほしい」と言った。
すると、神様は一つの条件付きで願いを叶えてくれた。
その条件とは………相馬のショタ化であった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる