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それから
閑話44.5:王妃と少女
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私には、心から愛する女性がいた。
あの子と出会ったのは、我が家主催のお茶会…年頃のご令嬢子息を集め、私に相応しい婚約者を探す為の。
その中に、彼女は居た。
我が家は国内では公爵家の次に力のある侯爵家で、取り入りたい人物は多く居た。
私の周りに我先にと声を掛けようとしてくる子供達。
少し離れた所に、1人佇む彼女。
華やかではないが、とても整った顔立ちの少女。
彼女は1人、出されているお茶やお菓子を楽しんでいて…まるで、私が目に入っていないかのようだ。
いや、事実彼女の目に私は止まっていないんだろう。
それが酷く悲しくて、悔しかったのを覚えている。
私は何としても彼女と知り合いたくて、他の子達を退けて話しかけに行った。
これが初恋だと知ったのは、それから数年後の事だった。
あの日どうにか彼女と知り合い、知人程度にはなれたと思う。
時折我が家へ呼んで、お茶を飲んだりお互いの髪を纏め上げたり。
私を侯爵令嬢と分かっていながら、1人の友人のように接してくれる彼女…セシルに、どんどん惹かれていった。
セシルは大人しそうな見た目とは反対に、とても気が強くお転婆だった。
あの日のお茶会で静かだったのは、本当に私という人物に興味がなかったからだそうだ…。
私が話しかけていなかったら、知り合いにすらなってなかったらしい。
あの日、自分から話しかけて本当に良かったと思う。
逆に言えば、セシルが自ら私に近寄って来なくて良かった。
もし彼女が他の不特定多数のように、近寄ってきていたら…私は、ここまで彼女に惹かれなかったと思う。
それ程彼女は、気高く美しい。
私も彼女に見合う人間になりたい。
いつしかそう思うようになっていた。
だから毎日、侯爵家の長女としての教養を厳しく完璧になるまで教育してもらった。
父も母も、令嬢教育に打ち込む私を褒めてくれた。
少しわがままだけどかわいい私の妹も、お姉様みたいになる!と言って勉強に励んでいるらしい。
彼女のお陰で、我が家はとても明るくなった。
心からそう思う。
私が彼女と出会う前は、皆何処か冷たく薄情で…。
妹とは仲が良かったけど、両親とはいまいち距離を置かれていたように思う。
きっとそれも、両親の教育方針だったんだろう。
我が家は、方々に敵が多い
王家からの覚えもよく、幼い頃から王子殿下と私の仲が表面上は良いのだ。
私が弱くならないように…1人で立てるように、距離を置いて居たのかもしれない。
そんな私は、王子殿下の婚約者候補筆頭だ。
正直に言うと、王子殿下が苦手だ。
何となく冷めている…達観していると言った方が良いのだろうか?
爽やかな笑みで穏やかな姿は、きっと偽りで。
私に対し、常に一線置いた距離感で接してくる。
多分、私を信用しきっていないのだろう。
将来の国王として、今から正しい態度をとっている。
冷酷で、無慈悲で…とても正しい。
きっと彼の本質に気付いている人間はごく僅かだ。
表面の理想の王子像に騙されて、彼の本質を見失っている。
見目麗しい王子殿下は、色んなご令嬢やご子息から大人気だ。
どうか、私以外の方を王家に迎え入れて欲しい…そうだ、バーバラ侯爵家のご令嬢なんてどうだろう?
可愛らしく、小動物のような愛嬌があって…王子殿下が微笑めば、きっと一発で落ちてくれる。
私の存在なんて忘れて、他の誰かと婚約してくれないだろうか。
そして私は…私は。
願わくば。
願わくば、彼女と結ばれる未来がありますように。
そんな事を健気に毎晩夜空に願う。たった一つの、私の我儘だ。
既にお父様には、彼女の家へ婚約の申し込みをして欲しいと言ってある。
私も彼女も、今年で10歳…婚約適齢期だから。
明日、返事は来るだろうか?
喜んでお受けします…そう言って欲しい。
「…私のお願い、叶いますように」
その日も夜空にそう願い、眠りについた。
あの子と出会ったのは、我が家主催のお茶会…年頃のご令嬢子息を集め、私に相応しい婚約者を探す為の。
その中に、彼女は居た。
我が家は国内では公爵家の次に力のある侯爵家で、取り入りたい人物は多く居た。
私の周りに我先にと声を掛けようとしてくる子供達。
少し離れた所に、1人佇む彼女。
華やかではないが、とても整った顔立ちの少女。
彼女は1人、出されているお茶やお菓子を楽しんでいて…まるで、私が目に入っていないかのようだ。
いや、事実彼女の目に私は止まっていないんだろう。
それが酷く悲しくて、悔しかったのを覚えている。
私は何としても彼女と知り合いたくて、他の子達を退けて話しかけに行った。
これが初恋だと知ったのは、それから数年後の事だった。
あの日どうにか彼女と知り合い、知人程度にはなれたと思う。
時折我が家へ呼んで、お茶を飲んだりお互いの髪を纏め上げたり。
私を侯爵令嬢と分かっていながら、1人の友人のように接してくれる彼女…セシルに、どんどん惹かれていった。
セシルは大人しそうな見た目とは反対に、とても気が強くお転婆だった。
あの日のお茶会で静かだったのは、本当に私という人物に興味がなかったからだそうだ…。
私が話しかけていなかったら、知り合いにすらなってなかったらしい。
あの日、自分から話しかけて本当に良かったと思う。
逆に言えば、セシルが自ら私に近寄って来なくて良かった。
もし彼女が他の不特定多数のように、近寄ってきていたら…私は、ここまで彼女に惹かれなかったと思う。
それ程彼女は、気高く美しい。
私も彼女に見合う人間になりたい。
いつしかそう思うようになっていた。
だから毎日、侯爵家の長女としての教養を厳しく完璧になるまで教育してもらった。
父も母も、令嬢教育に打ち込む私を褒めてくれた。
少しわがままだけどかわいい私の妹も、お姉様みたいになる!と言って勉強に励んでいるらしい。
彼女のお陰で、我が家はとても明るくなった。
心からそう思う。
私が彼女と出会う前は、皆何処か冷たく薄情で…。
妹とは仲が良かったけど、両親とはいまいち距離を置かれていたように思う。
きっとそれも、両親の教育方針だったんだろう。
我が家は、方々に敵が多い
王家からの覚えもよく、幼い頃から王子殿下と私の仲が表面上は良いのだ。
私が弱くならないように…1人で立てるように、距離を置いて居たのかもしれない。
そんな私は、王子殿下の婚約者候補筆頭だ。
正直に言うと、王子殿下が苦手だ。
何となく冷めている…達観していると言った方が良いのだろうか?
爽やかな笑みで穏やかな姿は、きっと偽りで。
私に対し、常に一線置いた距離感で接してくる。
多分、私を信用しきっていないのだろう。
将来の国王として、今から正しい態度をとっている。
冷酷で、無慈悲で…とても正しい。
きっと彼の本質に気付いている人間はごく僅かだ。
表面の理想の王子像に騙されて、彼の本質を見失っている。
見目麗しい王子殿下は、色んなご令嬢やご子息から大人気だ。
どうか、私以外の方を王家に迎え入れて欲しい…そうだ、バーバラ侯爵家のご令嬢なんてどうだろう?
可愛らしく、小動物のような愛嬌があって…王子殿下が微笑めば、きっと一発で落ちてくれる。
私の存在なんて忘れて、他の誰かと婚約してくれないだろうか。
そして私は…私は。
願わくば。
願わくば、彼女と結ばれる未来がありますように。
そんな事を健気に毎晩夜空に願う。たった一つの、私の我儘だ。
既にお父様には、彼女の家へ婚約の申し込みをして欲しいと言ってある。
私も彼女も、今年で10歳…婚約適齢期だから。
明日、返事は来るだろうか?
喜んでお受けします…そう言って欲しい。
「…私のお願い、叶いますように」
その日も夜空にそう願い、眠りについた。
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