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それから
44:2人の行方
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クロ様が行方を眩ませた日の真実を、聞かされた。
あの日リリアンヌ妃との面会を求めたが、彼女は自身の妹であるシャスイン侯爵夫人とお茶をしていた。
それならば日を改めようと、一度俺の元へ帰る予定だったらしい。
然し、とある男が接触してきた。
ヴェイル・シャスイン侯爵…リリアンヌ妃の義弟で、第二王子派閥の筆頭。
彼はリリアンヌ妃の狂信者として有名だ。
彼女の命令で人を殺めたとか、とある貴族を死に追いやっただとか…黒い噂が絶えない。
勿論、彼女の息子であるアルファスト殿下にも狂おしい程の愛情を向けていた。
シャスイン侯爵はクロ様に接触し、リリアンヌ妃の事で話があると持ちかけた。
勿論、罠だと疑った…けど、少しの希望も持てた。
シャスイン侯爵は、アルファスト殿下を愛していたから…まるで自分の息子だと言うように、彼を可愛がっていたのを知っていたから。
クロ様は彼について行き、とあるお茶で魔力を奪われたと言う。
…俺も飲んで居た、無属性魔法の込められた紅茶。
あれはお茶を淹れる際、何らかの魔力を込める事で正常な効果を発揮するらしい。
例えば、水属性で作り出した水で淹れる。火属性で湯を沸かす…完成後、直に魔力を込める。
そうする事で紅茶内に第三者の魔力を溜め、体内に取り入れた時に吸収される。
勿論自分の魔力を込め、自分で摂取することも可能だ…意味がないから、やらないらしいけど。
以前の戦争時、医療用茶葉として国からの支援物資になる程効能は確かだそうだ。
だから高級で、貴重なものだとも。
しかしその茶葉は一切の魔力を込めず淹れると、飲んだものの魔力を吸収する毒になる。
無属性魔法特有の、吸収効果を利用したようだ。
魔法の無効化は、相手の魔力を無属性魔法の術者に吸収させる事で成せる。
魔力を奪われ気絶させられてしまったクロ様は、何処かに存在する通路を通ってシャスイン邸へ連れ込まれた。
そこに、アルファスト殿下も居たらしい。
彼も同じように魔力を奪われた後連れて来られたそうだ。
その後、魔力封じの道具と拘束具をつけられて力を奪われていた。
そんな2人を助けたのは、他でもないシャスイン侯爵夫人だった。
彼女はプライドが高く典型的な高位貴族のご令嬢…然し、夫と姉の狂気には耐えきれなかった。
最も近い家族の、異常な行動。
彼女は第二王子を王にさせたい姉の気持ちも、そんな姉を狂ったように慕う夫の気持ちも理解できなかった。
だから、クロ様達を助けた。
どうか姉と夫に相応の処罰を、私の愛した夫を元に戻してくれと。
そうして2人は、シャスイン邸から逃れたらしい。
今思えば軽率だった、一度考え直しリリス公爵と共に話を聞けばよかったとクロ様は言う。
そうすれば、俺がリリアンヌ妃の元へ乗り込む事など起きなかったと…。
確かにそうだと思ったが、決断をしたのは俺で…あの時の行動は、俺の過失だ。
正常さを失ってはいたが、愚策だと理解している。
犯人の目処が立っていたからこそ、憎しみに苛まれ冷静になれなかった。
母親失格だ。この子を第一に考えなければいけないのに、自分の気持ちを優先した。
そしてあろう事か、自分の侍従に怪我を負わせた。
俺があの日招待に応じなければ…少なくとも、俺達3人は誰も傷付かなかった。
先日面会した父上に、俺に処罰をと告げた。
俺が軽率な行動をしたせいで…父上の言いつけを破ったせいで、公爵家や王宮内を混乱させた。
それが、彼女の狙いの一つだと…よく考えれば、分かった筈なのに。
「レオが罰を受けるなら、私も一緒にとライラック公爵に言ったよ…これは、私達2人の罪だ」
そう言って笑ったクロ様の姿に、思わず涙が溢れ出た。
あの日リリアンヌ妃との面会を求めたが、彼女は自身の妹であるシャスイン侯爵夫人とお茶をしていた。
それならば日を改めようと、一度俺の元へ帰る予定だったらしい。
然し、とある男が接触してきた。
ヴェイル・シャスイン侯爵…リリアンヌ妃の義弟で、第二王子派閥の筆頭。
彼はリリアンヌ妃の狂信者として有名だ。
彼女の命令で人を殺めたとか、とある貴族を死に追いやっただとか…黒い噂が絶えない。
勿論、彼女の息子であるアルファスト殿下にも狂おしい程の愛情を向けていた。
シャスイン侯爵はクロ様に接触し、リリアンヌ妃の事で話があると持ちかけた。
勿論、罠だと疑った…けど、少しの希望も持てた。
シャスイン侯爵は、アルファスト殿下を愛していたから…まるで自分の息子だと言うように、彼を可愛がっていたのを知っていたから。
クロ様は彼について行き、とあるお茶で魔力を奪われたと言う。
…俺も飲んで居た、無属性魔法の込められた紅茶。
あれはお茶を淹れる際、何らかの魔力を込める事で正常な効果を発揮するらしい。
例えば、水属性で作り出した水で淹れる。火属性で湯を沸かす…完成後、直に魔力を込める。
そうする事で紅茶内に第三者の魔力を溜め、体内に取り入れた時に吸収される。
勿論自分の魔力を込め、自分で摂取することも可能だ…意味がないから、やらないらしいけど。
以前の戦争時、医療用茶葉として国からの支援物資になる程効能は確かだそうだ。
だから高級で、貴重なものだとも。
しかしその茶葉は一切の魔力を込めず淹れると、飲んだものの魔力を吸収する毒になる。
無属性魔法特有の、吸収効果を利用したようだ。
魔法の無効化は、相手の魔力を無属性魔法の術者に吸収させる事で成せる。
魔力を奪われ気絶させられてしまったクロ様は、何処かに存在する通路を通ってシャスイン邸へ連れ込まれた。
そこに、アルファスト殿下も居たらしい。
彼も同じように魔力を奪われた後連れて来られたそうだ。
その後、魔力封じの道具と拘束具をつけられて力を奪われていた。
そんな2人を助けたのは、他でもないシャスイン侯爵夫人だった。
彼女はプライドが高く典型的な高位貴族のご令嬢…然し、夫と姉の狂気には耐えきれなかった。
最も近い家族の、異常な行動。
彼女は第二王子を王にさせたい姉の気持ちも、そんな姉を狂ったように慕う夫の気持ちも理解できなかった。
だから、クロ様達を助けた。
どうか姉と夫に相応の処罰を、私の愛した夫を元に戻してくれと。
そうして2人は、シャスイン邸から逃れたらしい。
今思えば軽率だった、一度考え直しリリス公爵と共に話を聞けばよかったとクロ様は言う。
そうすれば、俺がリリアンヌ妃の元へ乗り込む事など起きなかったと…。
確かにそうだと思ったが、決断をしたのは俺で…あの時の行動は、俺の過失だ。
正常さを失ってはいたが、愚策だと理解している。
犯人の目処が立っていたからこそ、憎しみに苛まれ冷静になれなかった。
母親失格だ。この子を第一に考えなければいけないのに、自分の気持ちを優先した。
そしてあろう事か、自分の侍従に怪我を負わせた。
俺があの日招待に応じなければ…少なくとも、俺達3人は誰も傷付かなかった。
先日面会した父上に、俺に処罰をと告げた。
俺が軽率な行動をしたせいで…父上の言いつけを破ったせいで、公爵家や王宮内を混乱させた。
それが、彼女の狙いの一つだと…よく考えれば、分かった筈なのに。
「レオが罰を受けるなら、私も一緒にとライラック公爵に言ったよ…これは、私達2人の罪だ」
そう言って笑ったクロ様の姿に、思わず涙が溢れ出た。
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