推しは未来の魔王様!?

柴傘

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原作突入中

39:二度目のお茶会

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あの手紙が届いて2日後、俺はリオとレイチェルと共にリリアンヌ妃の住む後宮へ赴いていた。
きっと大丈夫、上手くやれる。


そう自分に言い聞かせて、招かれた部屋まで歩く。


少し後ろでリオとレイチェルが、心配そうに俺を見ていた。
そんな2人を見て思わず笑ってしまう。


あぁ、俺は1人ではないんだ。


後宮の執事長に案内されるまま、リリアンヌ妃の待つ部屋へ歩みを進める。
少しの期待と大きな恐怖。
上手いこと、自分の身を守りつつクロ様達の居場所を吐かせないと…。


目の前で開かれた扉。


黄色が基調の豪奢な部屋に通される。
少し先の椅子に座る、赤いドレスのリリアンヌ妃。
…綺麗だが、どこか恐ろしく感じる。


「…ごきげんよう、レオ」
「王国の月に祝福を…ご無沙汰しております、リリアンヌ様」


俺たちはお互いに、作られた笑みを浮かべた。



「…お腹の調子はいかが?順調かしら」


優雅に紅茶を飲みながら尋ねてくるリリアンヌ妃。
俺は目の前のお茶やお菓子に手をつけないまま、にっこりと笑う。
そっと膨らむお腹を撫でると、彼女の眉毛がぴくりと動いた。


「はい、お陰様で…すくすく育ってます。リリス公爵のお陰ですね」


ガチャン
リリアンヌ妃が勢いよくカップを置いた。
まるで彼女の怒号の様に、大きく短くなる音。


リリアンヌ妃とシンシア兄様は、自他共に認める程不仲だ。


シンシア兄様はそれほどでは無いが、リリアンヌ妃が嫌っていると言う。
理由は皆目検討がつかないらしい。


そんな大嫌いな男の名前を出され、明らかに不機嫌になる。


少し後ろで控えているリリアンヌ妃のメイドが、狼狽え怯えている。
そんな姿が痛ましくて、彼女の機嫌を戻そうと新たな話題を振った。


「…リリアンヌ様。今日は、俺が知りたい情報を下さるとの事でしたが…それは、一体」
「あぁ、あぁ…そうでしたね。不快な名前を聞いたから忘れてたわ」


キラリ、リリアンヌ妃の目が光る。
獲物を見つけた肉食獣の様な眼光に、思わず背筋が粟立つ。


この人は一体、何を考えているんだろう?


「レオが今一番知りたい情報…クロムウェル殿下と、アルファストの居場所ですわね?」


余りにも確信を得た発言に、違和感を感じる。
現在クロ様達の行方は、陛下直属の聖騎士団が本気で捜索している。


正騎士団はこの国の騎士のトップ…全員魔法の腕も剣の腕も確かな猛者ばかり。
陛下の命令でのみ動く、精鋭だ。


その聖騎士団が総力を上げて探しても、未だに2人は見つかっていない。


今ここで2人の居場所を言えば、自分が犯人だと言う様なものだ。
犯人以外に知り得ない情報なのだから。


慎重に、言葉を選ばなければならない。
酷く喉が乾いて、上手く言葉が出ない…目の前にあるカップを手に取り、口を付ける。


俺がその紅茶を飲む前に、カップは誰かに弾かれた。


「っ…メリー!何をするのです!」


驚きから固まっていると突然聞こえた、リリアンヌ妃の金切声。
メリーと呼ばれた人物…先程、彼女の怒れる姿を見て怯えていたメイドが、いつのまにか俺を守る様に両手を広げていた。


「リリー様、もうおやめください!わ、わたくしっ…わたくし、もう見ていられません!」


ぽたぽたと、彼女の瞳から涙が溢れ出る。
声を震わせリリアンヌ妃を真っ直ぐ見据える彼女は、酷く美しく輝いている。
メリー嬢は、俺たちの協力者だった。


「わたくし、知っています。リリー様が本当はとってもお優しくて、綺麗で、気高い存在なのだと。
でも、でもっ…これ以上ご自分を蔑ろにするのはおやめ下さい!復讐心は何も育んではくれないのです!」


「黙りなさいメリー!私に逆らうと言うのですか…貴女は、私の味方だと思ってましたのに!」


お互い一歩も引かず、睨み合う。
リオが俺を立たせて背後に隠す…レイチェルが、守る様に傍に控える。


3対1…この場に、リリアンヌ妃の味方はいない。


「…っふふ、あはは!分かったわ、最初からこうすれば良かったのね…全部、全部燃やしてしまえば!」


ぶわり、一気に室内の温度が上がる。
原因はリリアンヌ妃の…掌に浮かぶ、大きな炎の玉。


彼女は、国内有数の火属性の使い手だ。
この場で対抗出来るのは…多分、俺だけ。メリー嬢は、リリアンヌ妃と同じで火属性使いだから。


医者に言われた、妊娠中の魔法はご法度という言葉。


でも、今使わなければ。
俺もお腹の子も、きっと燃やされて死んでしまう。


リオとレイチェルの静止を無視し、俺はリリアンヌ妃の目の前に立った。
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