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原作突入中
38:罠
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クロ様の消息が途絶えた。
俺が彼を見送った後、その足でリリアンヌ妃に面会を申し入れたらしい。
然しその時間、リリアンヌ妃はシャスイン侯爵夫人とお茶をしていたそうだ…自分の息子が行方不明って時なのに。
だからクロ様には会っていないと、そう言っている。
リリス公爵家の優秀なメイドが後宮に潜入中らしく、幸いな事に俺がお願いしたリリアンヌ妃の監視はされている。
だが特に、疑わしい行動はしてない様だ。
俺とレイチェルの読みでは、確実にリリアンヌ妃が関わっているんだけど…。
どうしても、証拠が見つからない。
俺が身重な今、まともに動けるのはリリス公爵とリシェ兄様だけで…。
レイチェルもリオも、好きに王宮に出入りできる訳ではない。
俺の従者とメイドだから、入れるのだ。
そんな俺も今、父様からリリス公爵家から出るなと厳命を受けた。
クロ様とアルファスト殿下の失踪…次に狙われるのは、きっと俺。
第一王子派閥は、それを危惧している。
…もし、万が一。
万が一、二人の王子が最悪の形で発見された場合。
お腹の子が、第一王位継承者になる。
それだけは絶対に避けたい。
この子が王太子候補になるのは、クロ様が即位した後でいい…そうじゃなきゃ、いけない。
クロ様、どうか。
どうか無事に帰ってきてください。
俺はこの子と、一緒に待ってます。
今の俺には、ひたすら祈る事しか出来ないけれど。
信じてもいない神に、お願いしますと縋り付く。
不安で押し潰されそうで、悲しくて悔しくて。
そんな俺を、レイチェルとリオが支えてくれるけど。
早く貴方の温もりが欲しい。
「…クロ様、」
ぽつりと呟いた俺の声は、今にも消えてしまいそうだった。
クロ様の失踪から約1週間。
今週の定期検診を先程終え、休憩中。
妊娠の経過は、相変わらず順調だった。
「…レオ様、先程お手紙が届きましたわ」
表情の強張ったレイチェルが告げる。
手に持っているのは、赤い封蝋のされた一通の手紙。
…紋様は、薔薇と百合。
リリアンヌ妃の、紋様。
またお茶会のお誘いだろうか。
これまで数回、お茶に誘われた…全部、悪阻が酷くてと断りを入れている。
そんなあからさまな文言に、リリアンヌ妃は怒った事がない。
まるで分かってると言いたげな、「残念ですわ、お大事に」という科白。
腹立たしい、きっとあの人がクロ様を何処かに閉じ込めているのに。
手紙を受け取り封を切ると、簡素な文章が目に入る。
いつもは長々と前口上が書いてあるのに…今回は、随分シンプルだな。
“貴方の知りたい事を教えてあげる
レイチェル嬢とリオーネ様は同行していい。
2日後の14時、3人で後宮に来なさい”
…俺の知りたい事。
それは、殿下2人の居場所や安否だけ。
それを知っていて、敢えて煽っている…でも、この機会を逃せば二度とクロ様に会えないかもしれない。
「レオ様、駄目ですわ…これは、明らかに罠です」
「分かってる、分かってるけど…でも!」
頭では分かっていても、心が言うことを聞いてくれない。
クロ様に会いたい、声を聞きたい、抱き締めたい。
愛しい彼に、早く早く早く。
くしゃり、読んでいた手紙がよれる。
そんな俺を見て、リオが会話に入ってきた。
「…行きましょう、リリアンヌ妃の元へ。殿下方を拐かした証拠が見つかるかもしれない」
「リオーネ、貴方何言ってるのか分かってるんですの!?レオ様が王宮に行くのはリスクが高すぎますわ!」
「分かってる!分かってるけど…」
悔しそうに顔を顰めるリオ。
…俺が、決断しないといけない。後宮へ行き、少しでも証拠を手に入れるか。
公爵邸に籠り、身を守るか。
「…行こう、リリアンヌ妃の元へ」
リオとレイチェルが息を飲む。俺の決意に満ちた表情に、2人は黙って頷いた。
俺が彼を見送った後、その足でリリアンヌ妃に面会を申し入れたらしい。
然しその時間、リリアンヌ妃はシャスイン侯爵夫人とお茶をしていたそうだ…自分の息子が行方不明って時なのに。
だからクロ様には会っていないと、そう言っている。
リリス公爵家の優秀なメイドが後宮に潜入中らしく、幸いな事に俺がお願いしたリリアンヌ妃の監視はされている。
だが特に、疑わしい行動はしてない様だ。
俺とレイチェルの読みでは、確実にリリアンヌ妃が関わっているんだけど…。
どうしても、証拠が見つからない。
俺が身重な今、まともに動けるのはリリス公爵とリシェ兄様だけで…。
レイチェルもリオも、好きに王宮に出入りできる訳ではない。
俺の従者とメイドだから、入れるのだ。
そんな俺も今、父様からリリス公爵家から出るなと厳命を受けた。
クロ様とアルファスト殿下の失踪…次に狙われるのは、きっと俺。
第一王子派閥は、それを危惧している。
…もし、万が一。
万が一、二人の王子が最悪の形で発見された場合。
お腹の子が、第一王位継承者になる。
それだけは絶対に避けたい。
この子が王太子候補になるのは、クロ様が即位した後でいい…そうじゃなきゃ、いけない。
クロ様、どうか。
どうか無事に帰ってきてください。
俺はこの子と、一緒に待ってます。
今の俺には、ひたすら祈る事しか出来ないけれど。
信じてもいない神に、お願いしますと縋り付く。
不安で押し潰されそうで、悲しくて悔しくて。
そんな俺を、レイチェルとリオが支えてくれるけど。
早く貴方の温もりが欲しい。
「…クロ様、」
ぽつりと呟いた俺の声は、今にも消えてしまいそうだった。
クロ様の失踪から約1週間。
今週の定期検診を先程終え、休憩中。
妊娠の経過は、相変わらず順調だった。
「…レオ様、先程お手紙が届きましたわ」
表情の強張ったレイチェルが告げる。
手に持っているのは、赤い封蝋のされた一通の手紙。
…紋様は、薔薇と百合。
リリアンヌ妃の、紋様。
またお茶会のお誘いだろうか。
これまで数回、お茶に誘われた…全部、悪阻が酷くてと断りを入れている。
そんなあからさまな文言に、リリアンヌ妃は怒った事がない。
まるで分かってると言いたげな、「残念ですわ、お大事に」という科白。
腹立たしい、きっとあの人がクロ様を何処かに閉じ込めているのに。
手紙を受け取り封を切ると、簡素な文章が目に入る。
いつもは長々と前口上が書いてあるのに…今回は、随分シンプルだな。
“貴方の知りたい事を教えてあげる
レイチェル嬢とリオーネ様は同行していい。
2日後の14時、3人で後宮に来なさい”
…俺の知りたい事。
それは、殿下2人の居場所や安否だけ。
それを知っていて、敢えて煽っている…でも、この機会を逃せば二度とクロ様に会えないかもしれない。
「レオ様、駄目ですわ…これは、明らかに罠です」
「分かってる、分かってるけど…でも!」
頭では分かっていても、心が言うことを聞いてくれない。
クロ様に会いたい、声を聞きたい、抱き締めたい。
愛しい彼に、早く早く早く。
くしゃり、読んでいた手紙がよれる。
そんな俺を見て、リオが会話に入ってきた。
「…行きましょう、リリアンヌ妃の元へ。殿下方を拐かした証拠が見つかるかもしれない」
「リオーネ、貴方何言ってるのか分かってるんですの!?レオ様が王宮に行くのはリスクが高すぎますわ!」
「分かってる!分かってるけど…」
悔しそうに顔を顰めるリオ。
…俺が、決断しないといけない。後宮へ行き、少しでも証拠を手に入れるか。
公爵邸に籠り、身を守るか。
「…行こう、リリアンヌ妃の元へ」
リオとレイチェルが息を飲む。俺の決意に満ちた表情に、2人は黙って頷いた。
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