推しは未来の魔王様！？

原作突入中

閑話24.5:とある少女の狂気

許せない、許せない、許せない。
あの女が憎い。あの女が愛するもの全てが煩わしい。
アイツさえいなければ、私があの場所にいる筈だったのに。私が、彼の隣に。


あの方の隣に相応しいのは、私だけなのに！


父も母も、私に失望している。
貴族の令嬢に生まれたからには、政略結婚は必須…私は家柄も良く、自慢じゃないけど見目も良い。
社交会でも、それなりの地位を持っていた。


あの女が、現れるまでは。


聖セントポーリア学園入学して頭角を現し始めた、レイチェル・ルーズレス。
確かに見た目は私より良い、それは認める。
だけど、普段の所作は完璧だけどリオーネ様相手に常に喧嘩腰で、レオンハルト様達も困っていた。


だから私が、お二人を助けようと思ったのに。


何で何で何で！
何故私が責められなければならないの！？
しかもあの女、リオーネ様に婚約を申し込まれたらしい…許せない、その場所は私の物だった筈なのに！


どろり、黒く濁った感情が胸中を支配する。


あの女の苦しむ顔が見たい。
醜く歪み、 悔しがる表情を想像すると笑みが浮かんでくる。
私にした様に、失う苦しみを味わえば良い。


「ふ、ふふ…あははっ…！」


私の口から漏れ出る笑い声。
聞いた事がないような、狂気じみた声音が他人事に思えてくる。
私、どうしてこんなに可笑しいのかしら？


「ふふ、待ってなさい…レイチェル・ルーズレス…！」


貴女のその美しい顔を、恐怖と悲しみに染めてあげる。
直接痛めつけるのは効果が薄いだろう。
彼女の大切なもの…人を、傷つけるのはどうだろう？


以前大切なネックレスを失った時、酷く困っていた。


きっと本人に仕掛けるより、自分のせいで誰かが傷つく方が苦しんでくれるだろう。
あぁ、ぞくぞくする…楽しみだわ。


そうよ、彼女だけじゃなくレオンハルト様も苦しめば良いんだわ。
だって彼が、私を真っ先に否定したのだから。
彼女をリオーネ様の婚約者に据えたのだって、レオンハルト様の仕業なんでしょう？


聞いてしまったの。


レオンハルト様本人が、レイチェルを侍女候補にしたって言っているのを。
貴族は噂が好きだから、そんな話をしたら誇張されるに決まってる…恐らく、それを狙ったのね。
何て姑息なのかしら。クロムウェル殿下の婚約者として相応しくないわ。


そうよ…あの2人を排除すれば、きっと。


きっと今まで以上に、あの方も私の事を認めてくださるわ！
そうすれば私が…私がアルファスト殿下の婚約者になって、そして殿下が王太子に…！


そうよそうよ、お父様もきっとそれを望んでらっしゃる！
知ってるの。お父様が、アルファスト殿下を王位に就けようとしているのは。


きっとクロムウェル殿下より、アルファスト殿下の方が国王に相応しいのだわ！
だからお父様は、リオーネ様に近寄れと仰ったのよ…リオーネ様とアルファスト殿下は、仲が良いから！
素敵なライバルであると同時に、良き友人だと噂で聞いたわ。


ふふ、私の人生はこれからよ。


レオンハルト様を引き摺り下ろし、レイチェルを苦しめる。
多少悪い事をしたって、男爵家如きが侯爵家に叶うはずはない…心配なのはライラック公爵だけれど、学園内に大人は介入できない。


完璧だわ！
早速あの方にお手紙を書きましょう。私が貴女様の手足として、アルファスト殿下を支え王位へ導くと。
嗚呼、なんて素敵なの！結婚式のドレスはどんなデザインにしたら良いかしら！


私の名前はマーガレット。
未来の国母になる女性…マーガレット・シャスインよ。


シャスイン侯爵家の名にかけて、国の未来を掴み取って見せますわ！