推しは未来の魔王様!?

柴傘

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原作突入中

23:異変

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パリン!


俺の直ぐ横で、何かが割れる音が響く。
咄嗟に俺を背後に庇ったリオが、鋭い視線で周囲を見回すものの、俺とレイチェル、リオの3人しか居ない。
近頃、謎の攻撃を受ける様になった。


「レオ様、やはりクロムウェル殿下に相談しませんか?このままだと怪我どころの話じゃなくなりますわ」


心配そうに俺を見上げるレイチェル。
そんな彼女に笑みを向けると、何も言えないのか押し黙ってしまう。
今、クロ様は隣国への外遊中だ。


次期王太子として、他国との交流を深めている。


「俺が、クロ様の邪魔をする訳には行かない…大丈夫、リオもいるし。ね?」


そう言ってリオを振り返ると、複雑そうな顔をされた。
何か言いたげで、でも言い難そうな…不思議な顔。
不安も混じった瞳に、思わず苦笑を浮かべる。


「リオ、言いたい事は言ってくれっていつも言ってるでしょ」
「…はい。僕も、クロムウェル殿下に言った方がいいと思います」


ぎゅっと両手を握られ、いつにも増して心配そうな声を出すリオ。
瞳の奥に、僅かな怒りと憎しみが見えた気がした。
ふるりと身震いすると、咄嗟に手を離される。


「レオンハルト様が殿下に心配掛けたくないのは百も承知です…ですが、それとこれは別。命の危険がある今、婚約者である殿下を頼るべきです」
「そうですわ!全部では無くとも、ここ最近の出来事は報告すべきです!」


詰め寄ってくる2人の勢いに、俺は渋々折れてしまった。
間者の存在もあり得るから、手紙にはぼかして書こう…うん、2人が怖かったとかそういう訳じゃない。
断じて、違うから。



「レオ!無事か!?」


勢いよく開かれた扉。
突然現れたリシェ兄様に、思わず目を見開いてしまう。
兄様、何でここに居るんだ?


兄様は、クロ様の側近候補として隣国へ行っていた。
その兄様が帰ってきたって事は…うん、クロ様の仕業だろうね。
自分はまだ帰国できないから、信頼しているリシェ兄様を送り込んだんだろう。


クロ様の優しさに、頬が綻ぶ。


「ぐう、帰国直後にその笑顔は眩しすぎるよ…レオ、怪我とかはしてない?殿下から命を狙われてるって聞いたのだけど」
「お、大袈裟すぎる…違うよ、偶に攻撃されるだけ」
「攻撃!?私の可愛いレオに怪我を負わせようとする輩なんて…握り潰してやる」


久々に炸裂した兄様の過保護に、笑みが溢れる。
そんな俺ににへら、緩んだ笑みを向ける姿に、ふと疑問が浮かんだ。
さっき兄様は、と言ってなかったか?


「…リシェ兄様、パンジー姉様に会いに行きました?」
「はっ…まずい。レオ匿ってくれ!」


一気に兄様の顔が青褪める。
あぁ、これはもうすぐ姉様が乗り込んでくるだろうなぁ。


「リオ。俺と兄様、パンジー姉様の分のお茶とお茶菓子用意してくれる?」
「…ふふ、畏まりました。直ぐご用意しますね」
「レオ、庇ってくれるんだよな?そうだよな?」
「いえ、リシェ兄様が頑張ってください」


そうにっこりと告げると、がくりと項垂れる。
何時もだったら手を貸さないけど、今回の原因は俺にあるから…少しは庇ってあげようかな。


「ごきげんよう、レオ。偶にはお姉さまとお茶しましょう?」


リオがお茶を淹れ終わった直後、タイミングを見計らった様に現れたパンジー姉様。
俺の向かいに座る様に促せば、美しい所作でお茶会が始まる。
斜め横に座る兄様を、完全に無視して。


「ぱ、パンジー…久しぶりだね、元気だったかい?」
「そうだレオ、今度私主催のお茶会に参加しませんか?以前好きだと言っていて茶葉が手にはいりましたの。勿論、リオーネやレイチェル嬢も連れてきて構わないわ」
「それなら、参加しようかな。ね、リオ」


俺の問いに、静かに頷くリオ。
完全に無視された兄様は酷く落ち込んでいる…少し、可哀想。
でも姉様からひしひしと伝わってくる怒りに、今はまだその時じゃないとタイミングを見計らう。


そんな兄様を無視したお茶会は、数時間続いた。


「っ…パンジー、無視しないでおくれ…」
「全く…情けないですわよ、リシェ様」


遂に半べそをかき始めた兄様に、呆れた様なため息を吐き出す姉様。
すかさず、俺がフォローする。


「姉様、ごめんなさい…兄様は俺の身に危険があると思って、真っ先にここに来てしまったんです」
「レオは悪くないわ…少し、私も大人気なかったわね。リシェ様が私よりレオを優先した事に拗ねるなんて…」


そう言って立ち上がった姉様は、兄様の頬に唇を落とす。
それだけで、兄様は笑顔になった。
我が兄ながら、ちょろすぎない?でも俺も、クロ様に同じ事されたら機嫌治る気がする。


ではまた後で、そう言って扉に向かったパンジー姉様。
その瞬間、何かが割れた音が部屋に響く。


俺の直ぐそばの窓ガラスが、綺麗に割れていた。
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