推しは未来の魔王様！？

原作突入中

21:来るべき未来

リオーネは言った、僕は親友の仇を討ちたいと。
クロムウェルは告げた、彼の感じた以上の苦痛を犯人に与えたいと。
レオを愛する2人は、密かに協力関係を結んだ。


リオーネは学園側を、クロムウェルは公務をこなしつつ王宮内の怪しい者達の動向を探った。
然し、余りにもレオを邪魔に思っていた第二王子派が多く、犯人を特定する確たる証拠が掴めない。
捜査は目に見えて難航していた。


そんな2人に、突然の情報が舞い込んでくる。


それは、日頃レオの世話をしていたライラック家のメイド長マーサ。
レオの懐妊を聞き、ライラック公爵が世話係として王宮に遣わせていたそうだ。彼女は信用できるし、何よりレオを愛している。


マーサはクロムウェルが以前会った時より痩せていたが、恐らくレオの死の所為だろう。
かなり憔悴していたが、瞳は爛々と光っていた。


「坊っちゃまは、坊っちゃまは殺されたのです。あの方に…私の口からは言えませんが、この者を訪ねてください」


そう言って、女性の名前が書かれたメモを渡すマーサ。
クロムウェルは犯人を言う様に詰問するも、頑なに犯人に関して口を閉ざす。
どうやら、彼女の主人であるライラック公爵に口止めされている様だ。


クロムウェル以上にレオの側にいた彼女の事だ、犯人が許せないだろう。
だから、口止めされているがクロムウェル達に情報を流したのだ。それ程、犯人が憎い。
愛しい坊っちゃまを奪ったあの人を、許せない。


そう語った彼女の瞳から、涙が一筋流れ落ちた。


それ以降のストーリーは、これまた簡素でおざなりな物だった。
リオーネより先に真相を知ってしまったクロ様が、絶望して魔王化。その後犯人を殺すべく王宮を攻撃して第二王子に倒される…。


何だそのクソゲー。どうせまた炎上したんだろうな…。


「因みに、めちゃくちゃ炎上しました」


だろうね！レオの死をおざなりに扱うからだ。
というかあれだけ引っ張っておいてそれは無いだろう…クロ様のルートに行くだけでも大変なのに、バッドエンド一択って地獄かよ。
結局、ゲーム内で明らかにされなかった訳だ。


「そこで、真打の公式続編なのです。とある男爵令嬢が主人公の、推理小説…“花束を愛しの君にAnother”ですわ！」


なんと安直なネーミングだろう。
花いとアナザーかな…うわ、本当に安直だなぁ。
…ん、男爵令嬢？


「そうなのです、私がその主人公…レイチェル・ルーズレス男爵令嬢なのですわ」


急にしょんぼりした彼女。
そういえば、ルーズレス嬢はレオの死因を知らない様だった…もしかして、読んでないのかな？


「私、花いとアナザーが完結前に寿命で…老衰で、死んでしまいまして」


やっぱり花いとアナザーだった…じゃなくて！
寿命？老衰？この人前世で何歳だったの？


「大まかな流れや、怪しい人物は分かるのですが…いまいち犯人が分からないのです。
私、元々推理は得意ではなくて…それに、年齢も年齢だったので細かい所は覚えてませんの…あ、本編でのクロムウェル殿下の一途さはほんっとうに素敵でしたわ！」


きらきらした瞳を俺に向ける彼女。
力強い言葉に、思わず笑みが溢れる…本当に、花いとが好きなんだなぁ。


「自分の正体に気づいた時、感動しましたの…もしかしたら、レオンハルト様を救えるかもしれない。クロムウェル殿下と幸せになる未来を見れるかもしれないと」
「俺も、そうしたいと思ってる…だから、君には協力して欲しいんだ」


そう言って見つめれば、意志の強い両目とかち合う。
彼女の答えは、一つだけなんだろう…すごく、心強いよ。


「勿論です！クロレオの民として、この身朽ちようとも全力で協力させて頂きますわ！」
「うん、ありがとう…じゃあ早速なんだけど、一つ目のお願い聞いてくれる？」


是非とも！
そう力強く頷かれ思わず笑みが溢れた。これから俺がお願いする事にきっと彼女は全力で挑んでくれるだろう。


「君には、リオーネの婚約者になってもらいたい」
「はい、畏まりましたわ！…え、リオーネ様の婚約者…え、ええ！？」


俺と彼女の2人っきりのサロン内に、驚いた声が木霊した。