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原作開始前
06:こんにちは、主人公
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厳かな婚約式を終えた後、軽くお色直しをして、そのまま婚約記念パーティーへと移行する。
他の貴族とは違い、王族の婚約者である俺のデビュタントは今日この場だ。
ファーストダンスを踊り、数分の休息を取った後、怒涛の貴族からの挨拶回りを受けなければいけない。
俺は今、その地獄の挨拶巡りの真っ最中だ。
クロ様に腰を抱かれ、その場から動きはしないものの挨拶しようとする貴族が一向に減る気配がない。
そりゃそうか、クロ様は王太子候補筆頭だもんな…ほぼ確実に、未来の国王だ。
挨拶する貴族の視線は、俺の胸元…青く輝くネックレスに集中している。
クロ様からの寵愛の証と言って良いそれに、高位貴族は目を見張ると同時に納得した表情を浮かべた。
まぁ、ライラック家だしな…みたいな感じだ。解せぬ。
そんな適当な事を考えていたら、想像してなかった人物が目に入る
照明の光を柔らかく反射する綺麗な黒髪、ぱっちりとした灰色の猫目。
小柄な体躯に合う、可愛らしい顔立ちの美少年。
リオーネ・ルクレイチェが、そこに居た。
確かレオと主人公…リオーネは、入学後クラスが一緒になり初対面、貴族の礼儀に少し疎いリオーネの世話を焼きつつ友情を育む予定だった筈。
レオが伯爵家であるリオーネの顔を忘れる訳ない。完璧な第一王子の婚約者であるレオは、一度でも挨拶をした貴族を忘れたりしなかった。
話に相違が生まれている?
「…レオ、大丈夫かい?」
一人でぐるぐると思考の海に浸っていた時、心配そうな声が聞こえる。
顔を上げると、整った眉を八の字に下げながら首を傾げるクロ様の姿。
宥めるように背中を上下する温かな掌に、思わず小さく息を吐き出す。大分動揺が鎮まってきた。
「大丈夫です、思ってたより緊張してたみたいで…申し訳ありません」
「良いんだよ。私はともかく、レオはこう言った場は初めてだろう?…よくやってくれてるよ」
「…ふふ、ありがとうございます殿下」
俺たちの仲睦まじい様子に、何故かリオーネが目を輝かせていた。
いったい彼は、誰なんだろうか?
*
数日後、ライラック公爵邸に思いもよらない訪問者が現れた。
…そう、ルクレイチェ伯爵父子だ。
俺に何か用があるらしい。
「突然押しかけてしまい申し訳ありません。レオンハルト様にとって悪い話ではありませんので、聞くだけ聞いていただけると幸いです」
にこにこと、人の良さそうな笑みを浮かべるルクレイチェ伯爵。隣に座るリオーネは、何故かキリッとした表情で背筋を伸ばしていた。
なんだか変な親子だなぁ。
「それで、私にとって悪くない話…とは?」
「はい!我が息子リオーネを、レオンハルト様の侍従見習いとして働かせて欲しいのです!」
「レオンハルト様、ぜひお願いします!」
は?
リオーネが、俺の侍従見習い?
この人達何言ってんの?
「僕は先日のクロムウェル殿下とレオンハルト様の婚約パーティーに出席しました。その時思ったんです…こんなにも美しく輝く未来の国母様を、自分の手でお守りしたいと!」
丸くて愛嬌のある灰色の瞳をこれでもかと言わんばかりに輝かせ、頬を赤らめるリオーネ。
伯爵もうんうんと力強く頷いている。
その姿は瓜二つで、この親あってこの子ありと思わせられた。
何となくだけど、俺を慕っている以外の感情は無い気がする。
純粋無垢な、綺麗な瞳。
すっと片手を差し出すと、可愛らしくきょとりと首を傾げるリオーネ。俺の答えは、既に決まっていた。
「…よろしくね、リオーネ。いや、リオ」
「はい、っはい!よろしくお願いします!」
翌日、必要最低限の荷物を持ったリオが公爵邸に突撃する事になる。
そんな彼の姿を見たメイド長のマーサと執事長のジョンが、リオに雷を落としまくったのは正直言って面白かった。
彼のお陰で、また一つ公爵邸が賑やかになったのは言うまでも無いだろうな。
他の貴族とは違い、王族の婚約者である俺のデビュタントは今日この場だ。
ファーストダンスを踊り、数分の休息を取った後、怒涛の貴族からの挨拶回りを受けなければいけない。
俺は今、その地獄の挨拶巡りの真っ最中だ。
クロ様に腰を抱かれ、その場から動きはしないものの挨拶しようとする貴族が一向に減る気配がない。
そりゃそうか、クロ様は王太子候補筆頭だもんな…ほぼ確実に、未来の国王だ。
挨拶する貴族の視線は、俺の胸元…青く輝くネックレスに集中している。
クロ様からの寵愛の証と言って良いそれに、高位貴族は目を見張ると同時に納得した表情を浮かべた。
まぁ、ライラック家だしな…みたいな感じだ。解せぬ。
そんな適当な事を考えていたら、想像してなかった人物が目に入る
照明の光を柔らかく反射する綺麗な黒髪、ぱっちりとした灰色の猫目。
小柄な体躯に合う、可愛らしい顔立ちの美少年。
リオーネ・ルクレイチェが、そこに居た。
確かレオと主人公…リオーネは、入学後クラスが一緒になり初対面、貴族の礼儀に少し疎いリオーネの世話を焼きつつ友情を育む予定だった筈。
レオが伯爵家であるリオーネの顔を忘れる訳ない。完璧な第一王子の婚約者であるレオは、一度でも挨拶をした貴族を忘れたりしなかった。
話に相違が生まれている?
「…レオ、大丈夫かい?」
一人でぐるぐると思考の海に浸っていた時、心配そうな声が聞こえる。
顔を上げると、整った眉を八の字に下げながら首を傾げるクロ様の姿。
宥めるように背中を上下する温かな掌に、思わず小さく息を吐き出す。大分動揺が鎮まってきた。
「大丈夫です、思ってたより緊張してたみたいで…申し訳ありません」
「良いんだよ。私はともかく、レオはこう言った場は初めてだろう?…よくやってくれてるよ」
「…ふふ、ありがとうございます殿下」
俺たちの仲睦まじい様子に、何故かリオーネが目を輝かせていた。
いったい彼は、誰なんだろうか?
*
数日後、ライラック公爵邸に思いもよらない訪問者が現れた。
…そう、ルクレイチェ伯爵父子だ。
俺に何か用があるらしい。
「突然押しかけてしまい申し訳ありません。レオンハルト様にとって悪い話ではありませんので、聞くだけ聞いていただけると幸いです」
にこにこと、人の良さそうな笑みを浮かべるルクレイチェ伯爵。隣に座るリオーネは、何故かキリッとした表情で背筋を伸ばしていた。
なんだか変な親子だなぁ。
「それで、私にとって悪くない話…とは?」
「はい!我が息子リオーネを、レオンハルト様の侍従見習いとして働かせて欲しいのです!」
「レオンハルト様、ぜひお願いします!」
は?
リオーネが、俺の侍従見習い?
この人達何言ってんの?
「僕は先日のクロムウェル殿下とレオンハルト様の婚約パーティーに出席しました。その時思ったんです…こんなにも美しく輝く未来の国母様を、自分の手でお守りしたいと!」
丸くて愛嬌のある灰色の瞳をこれでもかと言わんばかりに輝かせ、頬を赤らめるリオーネ。
伯爵もうんうんと力強く頷いている。
その姿は瓜二つで、この親あってこの子ありと思わせられた。
何となくだけど、俺を慕っている以外の感情は無い気がする。
純粋無垢な、綺麗な瞳。
すっと片手を差し出すと、可愛らしくきょとりと首を傾げるリオーネ。俺の答えは、既に決まっていた。
「…よろしくね、リオーネ。いや、リオ」
「はい、っはい!よろしくお願いします!」
翌日、必要最低限の荷物を持ったリオが公爵邸に突撃する事になる。
そんな彼の姿を見たメイド長のマーサと執事長のジョンが、リオに雷を落としまくったのは正直言って面白かった。
彼のお陰で、また一つ公爵邸が賑やかになったのは言うまでも無いだろうな。
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