6 / 72
原作開始前
04:建国祭
しおりを挟む
レオンハルト・ライラック、齢8歳。
第二王子はあれ以降、殿下とのお茶会について来なくなったものの、俺が婚約者として王宮を訪れる際には必ず姿を表し、小さな嫌がらせをして直ぐに隠れる。
余りにも幼稚すぎて、相手にしてられない。
俺が殿下に言いつけないでいるのを何か勘違いしてるのか、すれ違い様に侮辱されるのも増えた。
この間なんて、「どうせ直ぐ飽きられるさ」ってわざわざ耳元で囁かれたんだ。
うるせぇぶっ飛ばすぞ…って意味を込めて笑みを向けたらちょっと怯えていたのはいい気味だな…その内殿下に纏めて報告しよう。
そんなお子ちゃまの話はどうでも良くて…俺と殿下は今、市井に遊びにきている。
勿論周りには私服の護衛騎士が10人以上待機してるし、父上の最強防御魔法が幾重にも重ね掛けされている…大袈裟な。
兄様は兄様で、婚約者候補殿とデート中だ。
そう、デートだ。
俺と殿下は今、年に一度行われる建国祭を見て回っているのだ。
弱冠俺のテンションが高い気がするが、殿下はにこにこと優しげな笑みを浮かべている。
思わずにへら、と緩んだ笑みを向けてしまうのも仕方ないだろう…だって、楽しいんだ。
がやがやと騒めく街、色とりどりのお菓子や料理…何より殿下の珍しい平民服姿!
こんなレアな格好、もう二度と見れないかもしれないんだぞ…そりゃあ興奮もするさ。
何を着ても滲み出てしまう高貴なオーラ…うーん、美しい。俺の旦那様は完成されすぎてるな。
そんな事考えながら歩いていても、人には一切ぶつからない。
俺の腰を片腕で抱く、殿下の完璧なエスコートのおかげだ。やっぱ俺の旦那様は最高だぁ…。
もう、建国祭へ参加するのは難しいだろう。それ程、俺たちの身分は高く危険が多い。
だから、せめて今日だけでも2人で楽しめるように…思い出を作りたくて。
実は今回、俺がわがままを言い張ったのだ。
近頃殿下は忙しそうで、公爵邸への訪問も週に一回に減ってしまっていた。
俺が寂しいのも、理由の一つだ。
「…レオ、あっちにも行ってみて良いかな?」
「はい、もちろんです!今日は好きな所に好きなだけ行きましょうね」
いつも俺の事優先な殿下が、珍しく自分の行きたい場所を強請ってきた。
それが本当に嬉しい、信用してもらってる証拠だろう。
だから俺は、満面の笑みで返すんだ。
この小さい背中から、今だけでも重たい責任が降りてくれますように。
殿下が行きたがってたのは、祭りの時期限定で開かれているアクセサリーの露店。
こんなとこで安物買わなくても良いのに…そう思った矢先、少し怪しげな雰囲気を漂わせる髭をたっぷり蓄えた店主が口を開いた。
「…ふむう、お主厄介な運命にあるようじゃのう」
…は?
店主の何処か楽しそうな台詞に、全身がぞわりと粟立った。
あまりにも、的確すぎたから。
「店主、私の婚約者の運命が何だって?場合によっては不敬罪で…」
「ふぉっふぉ、お貴族様じゃったか…なに、運命と言っても、今の時点では不確定なものじゃ。お主の行動次第で様々な活路が見出せるじゃろ」
声が、出なかった。
店主自体は怪しいが、先の未来の漠然とした不安を、否定されているような気がして。
小さな安堵が、確実に生まれた。
黙った俺を心配そうに見つめる殿下
彼を安心させるべく、俺は柔らかな笑みを浮かべた。
「熱いのう…お二人さんに幸多からんことを」
そう言った後、俺たちが少し目を話した隙に…その店は忽然と消えていた。
確かに目の前にあったのに、もうそこには何もない。
2人して首を傾げた後、思わず小さく笑い合った。
第二王子はあれ以降、殿下とのお茶会について来なくなったものの、俺が婚約者として王宮を訪れる際には必ず姿を表し、小さな嫌がらせをして直ぐに隠れる。
余りにも幼稚すぎて、相手にしてられない。
俺が殿下に言いつけないでいるのを何か勘違いしてるのか、すれ違い様に侮辱されるのも増えた。
この間なんて、「どうせ直ぐ飽きられるさ」ってわざわざ耳元で囁かれたんだ。
うるせぇぶっ飛ばすぞ…って意味を込めて笑みを向けたらちょっと怯えていたのはいい気味だな…その内殿下に纏めて報告しよう。
そんなお子ちゃまの話はどうでも良くて…俺と殿下は今、市井に遊びにきている。
勿論周りには私服の護衛騎士が10人以上待機してるし、父上の最強防御魔法が幾重にも重ね掛けされている…大袈裟な。
兄様は兄様で、婚約者候補殿とデート中だ。
そう、デートだ。
俺と殿下は今、年に一度行われる建国祭を見て回っているのだ。
弱冠俺のテンションが高い気がするが、殿下はにこにこと優しげな笑みを浮かべている。
思わずにへら、と緩んだ笑みを向けてしまうのも仕方ないだろう…だって、楽しいんだ。
がやがやと騒めく街、色とりどりのお菓子や料理…何より殿下の珍しい平民服姿!
こんなレアな格好、もう二度と見れないかもしれないんだぞ…そりゃあ興奮もするさ。
何を着ても滲み出てしまう高貴なオーラ…うーん、美しい。俺の旦那様は完成されすぎてるな。
そんな事考えながら歩いていても、人には一切ぶつからない。
俺の腰を片腕で抱く、殿下の完璧なエスコートのおかげだ。やっぱ俺の旦那様は最高だぁ…。
もう、建国祭へ参加するのは難しいだろう。それ程、俺たちの身分は高く危険が多い。
だから、せめて今日だけでも2人で楽しめるように…思い出を作りたくて。
実は今回、俺がわがままを言い張ったのだ。
近頃殿下は忙しそうで、公爵邸への訪問も週に一回に減ってしまっていた。
俺が寂しいのも、理由の一つだ。
「…レオ、あっちにも行ってみて良いかな?」
「はい、もちろんです!今日は好きな所に好きなだけ行きましょうね」
いつも俺の事優先な殿下が、珍しく自分の行きたい場所を強請ってきた。
それが本当に嬉しい、信用してもらってる証拠だろう。
だから俺は、満面の笑みで返すんだ。
この小さい背中から、今だけでも重たい責任が降りてくれますように。
殿下が行きたがってたのは、祭りの時期限定で開かれているアクセサリーの露店。
こんなとこで安物買わなくても良いのに…そう思った矢先、少し怪しげな雰囲気を漂わせる髭をたっぷり蓄えた店主が口を開いた。
「…ふむう、お主厄介な運命にあるようじゃのう」
…は?
店主の何処か楽しそうな台詞に、全身がぞわりと粟立った。
あまりにも、的確すぎたから。
「店主、私の婚約者の運命が何だって?場合によっては不敬罪で…」
「ふぉっふぉ、お貴族様じゃったか…なに、運命と言っても、今の時点では不確定なものじゃ。お主の行動次第で様々な活路が見出せるじゃろ」
声が、出なかった。
店主自体は怪しいが、先の未来の漠然とした不安を、否定されているような気がして。
小さな安堵が、確実に生まれた。
黙った俺を心配そうに見つめる殿下
彼を安心させるべく、俺は柔らかな笑みを浮かべた。
「熱いのう…お二人さんに幸多からんことを」
そう言った後、俺たちが少し目を話した隙に…その店は忽然と消えていた。
確かに目の前にあったのに、もうそこには何もない。
2人して首を傾げた後、思わず小さく笑い合った。
145
お気に入りに追加
2,119
あなたにおすすめの小説
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
猫が崇拝される人間の世界で猫獣人の俺って…
えの
BL
森の中に住む猫獣人ミルル。朝起きると知らない森の中に変わっていた。はて?でも気にしない!!のほほんと過ごしていると1人の少年に出会い…。中途半端かもしれませんが一応完結です。妊娠という言葉が出てきますが、妊娠はしません。
神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。
篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。
愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと
糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。
前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!?
「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」
激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。
注※微エロ、エロエロ
・初めはそんなエロくないです。
・初心者注意
・ちょいちょい細かな訂正入ります。
継母の心得
トール
恋愛
【本編第一部完結済、2023/10〜第二部スタート ☆書籍化 2024/11/22ノベル5巻、コミックス1巻同時刊行予定☆】
※継母というテーマですが、ドロドロではありません。ほっこり可愛いを中心に展開されるお話ですので、ドロドロ重い、が苦手の方にもお読みいただけます。
山崎 美咲(35)は、癌治療で子供の作れない身体となった。生涯独身だと諦めていたが、やはり子供は欲しかったとじわじわ後悔が募っていく。
治療の甲斐なくこの世を去った美咲が目を覚ますと、なんと生前読んでいたマンガの世界に転生していた。
不遇な幼少期を過ごした主人公が、ライバルである皇太子とヒロインを巡り争い、最後は見事ヒロインを射止めるというテンプレもののマンガ。その不遇な幼少期で主人公を虐待する悪辣な継母がまさかの私!?
前世の記憶を取り戻したのは、主人公の父親との結婚式前日だった!
突然3才児の母親になった主人公が、良い継母になれるよう子育てに奮闘していたら、いつの間にか父子に溺愛されて……。
オタクの知識を使って、子育て頑張ります!!
子育てに関する道具が揃っていない世界で、玩具や食器、子供用品を作り出していく、オタクが行う異世界育児ファンタジー開幕です!
番外編は10/7〜別ページに移動いたしました。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
SODOM7日間─異世界性奴隷快楽調教─
槇木 五泉(Maki Izumi)
BL
冴えないサラリーマンが、異世界最高の愛玩奴隷として幸せを掴む話。
第11回BL小説大賞51位を頂きました!!
お礼の「番外編」スタートいたしました。今しばらくお付き合いくださいませ。(本編シナリオは完結済みです)
上司に無視され、後輩たちにいじめられながら、毎日終電までのブラック労働に明け暮れる気弱な会社員・真治32歳。とある寒い夜、思い余ってプラットホームから回送電車に飛び込んだ真治は、大昔に人間界から切り離された堕落と退廃の街、ソドムへと転送されてしまう。
魔族が支配し、全ての人間は魔族に管理される奴隷であるというソドムの街で偶然にも真治を拾ったのは、絶世の美貌を持つ淫魔の青年・ザラキアだった。
異世界からの貴重な迷い人(ワンダラー)である真治は、最高位性奴隷調教師のザラキアに淫乱の素質を見出され、ソドム最高の『最高級愛玩奴隷・シンジ』になるため、調教されることになる。
7日間で性感帯の全てを開発され、立派な性奴隷(セクシズ)として生まれ変わることになった冴えないサラリーマンは、果たしてこの退廃した異世界で、最高の地位と愛と幸福を掴めるのか…?
美貌攻め×平凡受け。調教・異種姦・前立腺責め・尿道責め・ドライオーガズム多イキ等で最後は溺愛イチャラブ含むハピエン。(ラストにほんの軽度の流血描写あり。)
【キャラ設定】
●シンジ 165/56/32
人間。お人好しで出世コースから外れ、童顔と気弱な性格から、後輩からも「新人さん」と陰口を叩かれている。押し付けられた仕事を断れないせいで社畜労働に明け暮れ、思い余って回送電車に身を投げたところソドムに異世界転移した。彼女ナシ童貞。
●ザラキア 195/80/外見年齢25才程度
淫魔。褐色肌で、横に突き出た15センチ位の長い耳と、山羊のようゆるくにカーブした象牙色の角を持ち、藍色の眼に藍色の長髪を後ろで一つに縛っている。絶世の美貌の持ち主。ソドムの街で一番の奴隷調教師。飴と鞭を使い分ける、陽気な性格。
ファンタジーな世界でエロいことする
もずく
BL
真面目に見せかけてエロいことしか考えてないイケメンが、腐女子な神様が創った世界でイケメンにエロいことされる話。
BL ボーイズラブ 苦手な方はブラウザバックお願いします
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる