推しは未来の魔王様！？

原作開始前

02:せつめいしよう！

突然だが、俺ことレオンハルト・ライラックが生きる世界の事を文字に起こそうと思う。
というか、単純に頭の中を整理したいだけだ…未来に起こる悲劇を、防ぐために。

ここは魔法が存在するファンタジーな世界。物語の軸となる国は聖ロザリア王国…王族と貴族、平民からなる社会。

性別、種族関係なく妊娠・出産が可能。もちろん同性婚も異性婚も大丈夫。
貴族は割と同性婚が多いらしい…多分価値観的な関係で。平民は五分五分だそうだ。

ライラック家は国内に存在する2つの公爵家の内の一つで、光を冠する家だ。
もう一つの公爵家はリリス公爵家、此方は影を冠する家で、主に他国の情勢や動向を探る仕事を担っている。

魔法属性は基本の火・水・土・風・雷・氷の6属性、特殊な聖・無属性も存在するが希少な為文献は少ない。
聖は癒しを、無は虚無を意味する…つまり、魔法の無効化。とんだチート属性だ。

土>雷>水>風>氷・火>聖・無の順で適正数が多く、高位貴族や王族は2属性以上持っているのが尊いとされ、高貴な血筋ほど魔力が澄んでいて多い。
勿論我が家も魔力が澄み多く、俺も兄様も2属性持ち。
クロムウェル殿下に関しては3属性と本気マジもんの最強王子様である。

世界の話はこれくらいかな、本編の方も纏めておこう。

物語の舞台は聖セントポーリア学園。中等部と高等部、各3学年ずつ存在し、魔法適正を持つ者は必ず通う事が義務付けられている。
因みに魔法適正を持つのは主に貴族階級、ごくごく稀に平民にも顕現するが、50年に一度くらいだと言う。

主人公はルクレイチェ伯爵家嫡男、リオーネ・ルクレイチェ、愛称はリオ。
小柄な体躯に艶やかな黒髪、ぱっちり猫目で灰色の瞳…可愛らしい容姿をしていた。
明るく活発で物怖じしない性格、正義感が強く間違った事が大嫌いな主人公様。
国内では数少ない聖属性魔法の使い手で、魔力も多く将来有望株。


作中での台詞は、全て倫理観がきっちりしていてとても好感が持てた。
俺は一途である事に美を感じる人間だったから、ハーレムルートのない花いとはとても楽しくプレイできたし、とある事を除けば正真正銘の神ゲーだと思う。


…第二王子ルートのエンディングさえ良ければ神ゲーだったのだ。


各攻略対象にはハッピーエンドとバッドエンド、友情エンドの3つのエンディングが存在する。
名前の通り、ハッピーエンドは対象と幸せに暮らすルート、バッドエンドは別れる・何方かが死亡ルート、友情エンドは良き友・同僚として過ごすルート。

攻略対象は第二王子、騎士団長息子、侯爵家嫡男の3人、近々追加予定だった第一王子の計4名。
第一王子を除いた9個のエンディングが存在するのだが、その内の一つが大不評。

…そう、第二王子のハッピーエンドである。

俺もプレイしたが、はっきり言ってクソシナリオとしか言いようがなかった。
大まかな経緯はこうだ。

出会いは聖ポーリア学園の中庭、入学式に遅れそうな主人公と偶然第二王子が出会う。
見目の良い主人公に高慢な態度で迫る第二王子、入学式に遅れそうな焦りと王子の態度の嫌悪感から不敬にも叱ってしまう主人公。

第二王子は今まで、兄である第一王子にしか叱られた事が無かった…周りは皆、自分の言う事を聞くイエスマンばかりだったから。
物怖じせず己を叱る主人公に興味を持ち、嫌がられながらも何度も何度も迫る王子。

主人公と接して行く内、彼の心根の真っ直ぐさや光り輝く笑顔に本気で惚れ、今までの己を顧みて更生して立派な王太子候補へと…という、まぁありがちなストーリー。

そこまではよかった。そこまでは。

二人が仲を深めている最中、主人公の親友で第一王子の婚約者…つまり俺が、謎の死を遂げる。
その数日後に第一王子が失踪、第二王子と主人公はレオの死と失踪は繋がりがあると確信して調査を進める。

然し突然、王宮に魔王が降臨し聖ロザリア王国への攻撃を開始。
圧倒的な力を前に絶望しかけるも、主人公の聖属性魔法と第二王子の剣技で魔王を討ち倒す…そして、第二王子は王太子となり学園卒業後は主人公と愛でたく婚姻。

子宝にも恵まれ幸せに暮らしましたとさ…めでたしめでたし。


ぜんっっっっっぜんめでたくない！！！


レオの死因は？第一王子の行方は？事件何も解決してないじゃん！
運営どう言う事だよ！説明しろー！俺たちのレオを返せー！

…とまぁ、こんな風に炎上した。

しかも、この第二王子ハッピーエンド以外は普通に良いストーリーで、本当に運営どうした何があった状態。
なぜこれで良いと思ったんだ。

作中で第一王子は名前のみの登場で、顔は一切出なかった。顔を出したら魔王だってすぐバレちゃうからだろうな…。
でも、流石にその終わり方は無いわ。追加ではなく隠しキャラにしとけば良かったのに。クリア後解禁とかそんな感じで。


簡単に纏めたノートに鍵をかけて机の奥深くへ仕舞い込む。
これが見つかったらだいぶやばい、頭がおかしいとか思われてしまうだろう…忘れたときに、時たま読み返す程度にしよう。


数年後、未来の旦那様にこのノートが見つかってしまうのはまた別のお話。