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38:想定外
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「おぉ、凄いな」
ヴィンスとの魔術の授業、今日は防御壁を張る魔術の実践をしている。
この魔術は術者の魔力量や思いの強さによって硬度が代わり、弱いものから強いものまで様々。
でも最低限の強さでも剣や弓は弾けるから、王族であるヴィンスには丁度いいだろう。万が一、がないなんて言い切れないし。
お手本として俺の周りに防御壁を張る。今はそんなに魔力を込めてないから強くないが、半透明のドームに包まれている様な姿の俺を見れば多少はイメージしやすいだろう。
何よりも魔術に一番必要なのは、イメージ。想像力がものを言うからな。
「魔術の使用後のイメージはこんな感じ。重要なのは、何を守りたいか…自分が一番守りたいものを思い浮かべると良いよ」
「…私が一番、守りたい者」
ぽつり、ヴィンスが小さく呟いた後目を閉じる。
少ししてからふわりと小さな風が起こる。ヴィンスの魔力が、周囲に溢れ出ている。
今までこんな事なかった。体外に少しだけ漏れ出る事はあっても、こんなにも大量の魔力が身体から溢れ出るなんて…それくらい強い魔術を、使う気なのかな。
ヴィンスを中心に、俺の周囲まで満ちる心地いい魔力。時折光の粒が舞い、ヴィンスの白銀の毛並みを輝かせる。
その光景があまりにも綺麗で、愛おしくて…俺はただぼんやりと見惚れているだけだった。
「…っシル、出来たぞ!」
「う、うん。初めてなのに凄いな、とても強い防御壁になってる…これなら、ドラゴンの攻撃も防げそうだ」
ヴィンスの嬉しそうな声にはっとする。
さっき俺が作った半透明なドームと違い、ヴィンスの魔力をこれでもかと詰め込んだ防御壁は無色透明だ。
よく目を凝らしても見えない。そっと手を伸ばせば、あたたかな見えない壁に触れる事ができる。こんなにも強力な防御壁は、俺でさえ作るのは難しい。
きっとそれだけ、ヴィンスの気持ちが強いんだろう。
「シルの事を考えたんだ。私がこの世で命を賭けて守りたいのは、シルだから」
「…ヴィンス、」
至極素直な笑みと共に告げられる言葉に、じわじわと顔に熱が集まっていく。
思わずふい、と顔を逸らしてしまった。だって、余りにも恥ずかしい…それ以上に嬉しくて、どうしていいか分からなくなる。
衝動的にヴィンスに抱きつきたくなってしまう。それすら恥ずかしくて出来ないんだけど…うう、俺ってヘタレだなぁ。
ふと、ヴィンスが此方に近寄ってくる気配がした。その後直ぐ、壊れ物を扱うかのような丁寧さで抱き締められる。
「…シルがあまりにも可愛い反応をするから、つい」
「ヴィンスが照れさせる様な事言うからだろ」
俺の旋毛や頬に口付けながら、ヴィンスが苦笑混じりに言う。
それに反抗する様に唇を尖らせ拗ねた声を出せば、すまないと謝る気のなさそうな声が返ってきた。
その声にまた意義を唱えようと顔をあげれば、想像以上に近付いていたヴィンスの顔。
そのまま唇に口付けられ、そっと目を閉じる。
ちゅ、ちゅうと可愛らしい音を立てながら唇を啄まれ、少しの物足りなさと欲求に薄っすら口を開いた。
その僅かな隙を逃さないと言わんばかりにぬるりとヴィンスの長い舌が咥内に入ってくる。
そのまま俺の舌先を絡め取られ、擦り合わせ吸い上げられて…息苦しさと快感に、頭がぼうっとしてくる。
「っ、は、ぅん…ゔぃ、ン、」
「…シル、」
俺の名前を呼ぶ熱っぽい声に、ぞくぞくと背筋が震えた。
ヴィンスとの魔術の授業、今日は防御壁を張る魔術の実践をしている。
この魔術は術者の魔力量や思いの強さによって硬度が代わり、弱いものから強いものまで様々。
でも最低限の強さでも剣や弓は弾けるから、王族であるヴィンスには丁度いいだろう。万が一、がないなんて言い切れないし。
お手本として俺の周りに防御壁を張る。今はそんなに魔力を込めてないから強くないが、半透明のドームに包まれている様な姿の俺を見れば多少はイメージしやすいだろう。
何よりも魔術に一番必要なのは、イメージ。想像力がものを言うからな。
「魔術の使用後のイメージはこんな感じ。重要なのは、何を守りたいか…自分が一番守りたいものを思い浮かべると良いよ」
「…私が一番、守りたい者」
ぽつり、ヴィンスが小さく呟いた後目を閉じる。
少ししてからふわりと小さな風が起こる。ヴィンスの魔力が、周囲に溢れ出ている。
今までこんな事なかった。体外に少しだけ漏れ出る事はあっても、こんなにも大量の魔力が身体から溢れ出るなんて…それくらい強い魔術を、使う気なのかな。
ヴィンスを中心に、俺の周囲まで満ちる心地いい魔力。時折光の粒が舞い、ヴィンスの白銀の毛並みを輝かせる。
その光景があまりにも綺麗で、愛おしくて…俺はただぼんやりと見惚れているだけだった。
「…っシル、出来たぞ!」
「う、うん。初めてなのに凄いな、とても強い防御壁になってる…これなら、ドラゴンの攻撃も防げそうだ」
ヴィンスの嬉しそうな声にはっとする。
さっき俺が作った半透明なドームと違い、ヴィンスの魔力をこれでもかと詰め込んだ防御壁は無色透明だ。
よく目を凝らしても見えない。そっと手を伸ばせば、あたたかな見えない壁に触れる事ができる。こんなにも強力な防御壁は、俺でさえ作るのは難しい。
きっとそれだけ、ヴィンスの気持ちが強いんだろう。
「シルの事を考えたんだ。私がこの世で命を賭けて守りたいのは、シルだから」
「…ヴィンス、」
至極素直な笑みと共に告げられる言葉に、じわじわと顔に熱が集まっていく。
思わずふい、と顔を逸らしてしまった。だって、余りにも恥ずかしい…それ以上に嬉しくて、どうしていいか分からなくなる。
衝動的にヴィンスに抱きつきたくなってしまう。それすら恥ずかしくて出来ないんだけど…うう、俺ってヘタレだなぁ。
ふと、ヴィンスが此方に近寄ってくる気配がした。その後直ぐ、壊れ物を扱うかのような丁寧さで抱き締められる。
「…シルがあまりにも可愛い反応をするから、つい」
「ヴィンスが照れさせる様な事言うからだろ」
俺の旋毛や頬に口付けながら、ヴィンスが苦笑混じりに言う。
それに反抗する様に唇を尖らせ拗ねた声を出せば、すまないと謝る気のなさそうな声が返ってきた。
その声にまた意義を唱えようと顔をあげれば、想像以上に近付いていたヴィンスの顔。
そのまま唇に口付けられ、そっと目を閉じる。
ちゅ、ちゅうと可愛らしい音を立てながら唇を啄まれ、少しの物足りなさと欲求に薄っすら口を開いた。
その僅かな隙を逃さないと言わんばかりにぬるりとヴィンスの長い舌が咥内に入ってくる。
そのまま俺の舌先を絡め取られ、擦り合わせ吸い上げられて…息苦しさと快感に、頭がぼうっとしてくる。
「っ、は、ぅん…ゔぃ、ン、」
「…シル、」
俺の名前を呼ぶ熱っぽい声に、ぞくぞくと背筋が震えた。
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