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37:ひみつ
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「ヴィンセント殿下に内緒で、街に行きたい…ですか?」
俺の相談を聞いたダイアン様が、驚いた様に目を見開く。
そんな表情でも凛々しくてかっこいい。彼女は女性だが、本当に騎士という職業が似合っている。
そんな彼女に、俺は一世一代のお願い事をしていた。絶対絶対、ヴィンスにバレたくないんだ。
こくこくと何度も頷いて見せたら、彼女は口元に手を当て考え込んだ。
「…やはり、無理でしょうか。どうしてもヴィンスには内密にしたいんですけど」
「外出許可を得るのは容易です。が、殿下には確実にバレますね…既にお二人は、婚約してますから」
「そうですよねぇ…どうしよう」
はぁ、大きなため息を吐き出す。ダイアン様は困った様に笑っていた。
そんな俺たちに、レイモンドはやっぱりやめましょうと諌めてくる。
そりゃ、ヴィンスに隠し事なんてしたくない。変に疑われたくもないし、きっとあの人は心底心配してくれる。
だけど、こればっかりは俺も譲れない。どうしても、ヴィンスに内緒で贈り物がしたいのだ。
「そうだ、良いこと思いつきましたよ」
何処か得意げな笑みを浮かべるダイアン様に、俺はきょとんと首を傾げた。
「……本当に良かったのかなぁ」
「大丈夫ですよ。何だかんだ言って、殿下はシルティア様に甘いですから」
街へ向かう馬車の中、向かい側に座ったダイアン様がくすくす笑う。
俺達はさっき、二人で出かけるとヴィンスに直接伝えに行った。勿論ヴィンスは猛反対だったけど、俺の事信用できないのかって聞いたら、凄く葛藤した後外出許可をくれた。
ううん、なんかヴィンスを騙している気分…まぁ、俺がダイアン様とどうこうなる事は無いんだけど。
ヴィンスの凄く落ち込んだ顔は、ちょっと可哀想だった。
「ところでシルティア様、殿下への贈り物は決めてるんですか?」
「うん、ブレスレットにしようと思って…ダイアン様はどう思います?」
「とても素敵だと思います。殿下もきっと、お喜びになりますよ」
そう言ってにこにこと笑うダイアン様に、思わず照れ笑いを返す。
今日は前に街に行った時訪れた宝飾店でヴィンスのブレスレットをオーダーして、少しだけ他の買い物もする予定なんだ。
馬車の窓を流れる街並み。この国に来たばかりの時も見たはずなのに、あの頃とは景色の輝きが全然違う。
それが少しだけ楽しくて、じっと窓の外を眺めた。
「……あれ、」
「どうかしましたか?」
俺の不思議そうな声に反応したダイアン様が、顔を覗き込んでくる。
ぱちぱちと数回瞬きを繰り返し、もう一度窓の外を見た。特に何も変化がない、綺麗な街並みだ。
…さっき一瞬だけ、視界が眩んだ気がした。目眩かとも思ったけど、本当に一瞬だったから違うかもしれない。
考え込んだ俺を心配そうに見つめるダイアン様に微笑む。
「大丈夫です。ちょっと、何かを見間違えたみたいで…」
「そうでしたか」
ほっとした様に笑むダイアン様に、俺は誤魔化す様な笑みを浮かべた。
俺の相談を聞いたダイアン様が、驚いた様に目を見開く。
そんな表情でも凛々しくてかっこいい。彼女は女性だが、本当に騎士という職業が似合っている。
そんな彼女に、俺は一世一代のお願い事をしていた。絶対絶対、ヴィンスにバレたくないんだ。
こくこくと何度も頷いて見せたら、彼女は口元に手を当て考え込んだ。
「…やはり、無理でしょうか。どうしてもヴィンスには内密にしたいんですけど」
「外出許可を得るのは容易です。が、殿下には確実にバレますね…既にお二人は、婚約してますから」
「そうですよねぇ…どうしよう」
はぁ、大きなため息を吐き出す。ダイアン様は困った様に笑っていた。
そんな俺たちに、レイモンドはやっぱりやめましょうと諌めてくる。
そりゃ、ヴィンスに隠し事なんてしたくない。変に疑われたくもないし、きっとあの人は心底心配してくれる。
だけど、こればっかりは俺も譲れない。どうしても、ヴィンスに内緒で贈り物がしたいのだ。
「そうだ、良いこと思いつきましたよ」
何処か得意げな笑みを浮かべるダイアン様に、俺はきょとんと首を傾げた。
「……本当に良かったのかなぁ」
「大丈夫ですよ。何だかんだ言って、殿下はシルティア様に甘いですから」
街へ向かう馬車の中、向かい側に座ったダイアン様がくすくす笑う。
俺達はさっき、二人で出かけるとヴィンスに直接伝えに行った。勿論ヴィンスは猛反対だったけど、俺の事信用できないのかって聞いたら、凄く葛藤した後外出許可をくれた。
ううん、なんかヴィンスを騙している気分…まぁ、俺がダイアン様とどうこうなる事は無いんだけど。
ヴィンスの凄く落ち込んだ顔は、ちょっと可哀想だった。
「ところでシルティア様、殿下への贈り物は決めてるんですか?」
「うん、ブレスレットにしようと思って…ダイアン様はどう思います?」
「とても素敵だと思います。殿下もきっと、お喜びになりますよ」
そう言ってにこにこと笑うダイアン様に、思わず照れ笑いを返す。
今日は前に街に行った時訪れた宝飾店でヴィンスのブレスレットをオーダーして、少しだけ他の買い物もする予定なんだ。
馬車の窓を流れる街並み。この国に来たばかりの時も見たはずなのに、あの頃とは景色の輝きが全然違う。
それが少しだけ楽しくて、じっと窓の外を眺めた。
「……あれ、」
「どうかしましたか?」
俺の不思議そうな声に反応したダイアン様が、顔を覗き込んでくる。
ぱちぱちと数回瞬きを繰り返し、もう一度窓の外を見た。特に何も変化がない、綺麗な街並みだ。
…さっき一瞬だけ、視界が眩んだ気がした。目眩かとも思ったけど、本当に一瞬だったから違うかもしれない。
考え込んだ俺を心配そうに見つめるダイアン様に微笑む。
「大丈夫です。ちょっと、何かを見間違えたみたいで…」
「そうでしたか」
ほっとした様に笑むダイアン様に、俺は誤魔化す様な笑みを浮かべた。
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