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27:ダンスと自覚
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「シル、踊りに行こうか」
陛下と王妃様のダンスが終わり、今度は俺達が踊る番。
ヴィンスのエスコートのままフロアへと出れば、俺たちを中心に数ペアの高位貴族が円を描く様に並び立った。
ざっと顔を見渡すと、今回の舞踏会に招かれた公爵家ばかり。然も隣国や海の向こうの有名な公爵家まで。
本当にこの国は、様々な国と関係を持っている。
「…シル、そろそろ始まるぞ」
「うん、ごめん…招待客が豪華だから、つい」
思考の海に沈んでいた俺を、ヴィンスが優しく引き上げてくれる。
苦笑を浮かべて謝れば、気にするなと優しく告げられた。本当に、ヴィンスは優し過ぎるなぁ。
ゆったりと始まった曲に合わせ、俺とヴィンスがステップを踏む。俺はお世辞にもダンスが上手いと言えないけれど、それ以上にヴィンスのリードが上手くて踊りやすい。
きっと、他の客の目には俺のダンスがそれなりに見えている事だろう。
「シルとこうして踊れるなんて、夢見たいだ」
「お、大袈裟だな…ごめん、俺そんな上手くなくて」
「何言ってるんだ、シルがメインで習っているのは男性側のステップだろう?なのにこんなに踊れてるじゃないか」
確かにヴィンスの言うとおり、俺が作法として習ってきたのは男性側のステップだ。
だけど同性のパートナーも当たり前なこの時代、女性側のステップも覚えていた方がいいと思って勝手に習っていたけど…まさか、こんな所で役に立つとは。
もし今後、俺がヴィンスの伴侶になったとしたら…こういった機会は、増えるんだろうな。
って、何考えてるんだ。今は目の前の事に集中しないと。そう思った瞬間、俺の身体がふわりと浮いた。
「…~っわ、」
「私とのダンス中に、考え事はしないでくれないか?嫉妬してしまう」
「嫉妬、って…何言ってんだよ」
俺を真っ直ぐ見つめながら、少し拗ねたように目を細めるヴィンス。
すとん、持ち上げていた俺の身体を優しく下ろしてくれる。そして再び腰に添えられた大きな掌に、どくりと心臓が跳ねた。
思わず誤魔化すように目を逸らしてしまったけれど、嫉妬すると言ったヴィンスが物凄く可愛く見えた。俺より身体も大きくて、力だって強くて…いつだってかっこいいヴィンスが、あの一瞬俺の目には可愛く映った。
俺にしか見せないであろう表情に、声。それがとても嬉しくて堪らない。
「ヴィンス、俺…」
「…シル?」
ヴィンスの事が、好きだ。ずっと前から分かってた。
気づいていない振りをした。だって俺は、アルフォンスが好きだったから。こんなに早く心変わりをして、ヴィンスに軽薄な奴だと思われたくなかった。
それに呪いの件も解決していない。このままじゃ、間違いなくヴィンスの事を巻き込んでしまう…そんなの、絶対に嫌だ。
だからもう、腹を括ろう。さっさと決着をつけて、ヴィンスにちゃんと告白しよう。
「…後で、話したい事があるんだ。時間、少しだけ俺にくれるか?」
「あぁ、勿論。シルの為に使う時間は、1秒だって惜しくないさ」
そう言ったヴィンスに、俺はくすくすと笑い声を漏らした。
陛下と王妃様のダンスが終わり、今度は俺達が踊る番。
ヴィンスのエスコートのままフロアへと出れば、俺たちを中心に数ペアの高位貴族が円を描く様に並び立った。
ざっと顔を見渡すと、今回の舞踏会に招かれた公爵家ばかり。然も隣国や海の向こうの有名な公爵家まで。
本当にこの国は、様々な国と関係を持っている。
「…シル、そろそろ始まるぞ」
「うん、ごめん…招待客が豪華だから、つい」
思考の海に沈んでいた俺を、ヴィンスが優しく引き上げてくれる。
苦笑を浮かべて謝れば、気にするなと優しく告げられた。本当に、ヴィンスは優し過ぎるなぁ。
ゆったりと始まった曲に合わせ、俺とヴィンスがステップを踏む。俺はお世辞にもダンスが上手いと言えないけれど、それ以上にヴィンスのリードが上手くて踊りやすい。
きっと、他の客の目には俺のダンスがそれなりに見えている事だろう。
「シルとこうして踊れるなんて、夢見たいだ」
「お、大袈裟だな…ごめん、俺そんな上手くなくて」
「何言ってるんだ、シルがメインで習っているのは男性側のステップだろう?なのにこんなに踊れてるじゃないか」
確かにヴィンスの言うとおり、俺が作法として習ってきたのは男性側のステップだ。
だけど同性のパートナーも当たり前なこの時代、女性側のステップも覚えていた方がいいと思って勝手に習っていたけど…まさか、こんな所で役に立つとは。
もし今後、俺がヴィンスの伴侶になったとしたら…こういった機会は、増えるんだろうな。
って、何考えてるんだ。今は目の前の事に集中しないと。そう思った瞬間、俺の身体がふわりと浮いた。
「…~っわ、」
「私とのダンス中に、考え事はしないでくれないか?嫉妬してしまう」
「嫉妬、って…何言ってんだよ」
俺を真っ直ぐ見つめながら、少し拗ねたように目を細めるヴィンス。
すとん、持ち上げていた俺の身体を優しく下ろしてくれる。そして再び腰に添えられた大きな掌に、どくりと心臓が跳ねた。
思わず誤魔化すように目を逸らしてしまったけれど、嫉妬すると言ったヴィンスが物凄く可愛く見えた。俺より身体も大きくて、力だって強くて…いつだってかっこいいヴィンスが、あの一瞬俺の目には可愛く映った。
俺にしか見せないであろう表情に、声。それがとても嬉しくて堪らない。
「ヴィンス、俺…」
「…シル?」
ヴィンスの事が、好きだ。ずっと前から分かってた。
気づいていない振りをした。だって俺は、アルフォンスが好きだったから。こんなに早く心変わりをして、ヴィンスに軽薄な奴だと思われたくなかった。
それに呪いの件も解決していない。このままじゃ、間違いなくヴィンスの事を巻き込んでしまう…そんなの、絶対に嫌だ。
だからもう、腹を括ろう。さっさと決着をつけて、ヴィンスにちゃんと告白しよう。
「…後で、話したい事があるんだ。時間、少しだけ俺にくれるか?」
「あぁ、勿論。シルの為に使う時間は、1秒だって惜しくないさ」
そう言ったヴィンスに、俺はくすくすと笑い声を漏らした。
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