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24:お誘い
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一人部屋で吐いた日以降、俺の体調はあまり芳しくなかった。
不調という不調ではないが、酷く情緒が不安定だ。ある日は終始ご機嫌で過ごせたのに、翌日には得体の知れない不安に襲われ部屋からも出られない。
そんなこんなでヴィンスとの授業も不定期になってしまっていた。
今日も今日とて酷く気分が落ち込み、部屋に篭りきっている。
「……はぁ」
俺がため息を吐き出したと同時に、部屋の扉がノックされた。
いつもならレイモンドが代わりに対応してくれるが、彼は今生憎席を外している。
無視するわけにもいかず、のろのろと歩き扉を開けばそこに居たのはヴィンスだった。
明らかに調子の良くなさそうな俺を見て、申し訳なさそうに耳を垂らす。
彼にそんな反応をさせてしまってるのが申し訳なくて、俺は咄嗟に笑みを作った。
「今日の授業、取り止めちゃってごめん。俺に何か用?」
「いや、それは構わないんだが…実はシルに相談があったんだ。調子が悪いなら、明日出直す」
俺を気遣う優しい声と、心配そうな視線。
たったそれだけなのに、気分が高揚する。今ヴィンスは、俺だけを見ていてくれている。
少しずつ心臓が鼓動を早めていく。こんな事思ってはいけないと分かっているのに、止められない。
優越感に似た何かに浸っているこの現状が、心地良い。
「シル?やっぱり、明日出直したほうが…」
「大丈夫、何でもないっ…中で、座って話さないか?」
「そうか?じゃあ、お言葉に甘えて…」
ヴィンスを部屋へ招き入れ、ソファに座る様促す。
俺を見つめるヴィンスの瞳が、隣に座って欲しいと言っている様な気がしてそっと隣へ腰を下ろした。
そんな俺に、ヴィンスは驚いた様に目を見開いた後柔らかく微笑んでくれる。どくり、心臓が跳ね上がった気がした。
そっと俺の片手を握り込み、ヴィンスが口を開く。
「実は来月、年に一度行われる大きな舞踏会があるんだ。その舞踏会で、私のパートナーになってくれないか?」
「…俺が、ヴィンスのパートナー?」
「あぁ。ファーストダンスの後は、自由にしてくれて構わない。我が国の舞踏会で、君をエスコートしたいんだ…私の我儘なのは分かってる。断ってくれても構わない」
ヴィンスの真剣な双眸が、俺の事を見つめ続ける。
嬉しい、と思う。ヴィンスと一緒に舞踏会で踊れたら、きっと凄く楽しいだろう。
だけど頭に引っかかるのは、先日ヴィンスが首を垂れていた猫獣人の女性の事。醜い嫉妬だと分かっているが、彼女はヴィンスに相応しいと思った。
ヴィンスの傍に立つ彼女が、美しいと思ったから。でも。
「…その誘い、受けるよ。ヴィンスのパートナーになりたい」
「っ…そうか。ありがとう、シル。礼服は私が準備するから、期待しててくれ」
「こっちこそ、ありがとう。よろしくね」
これから先ずっと、彼の隣に居たいと思ってしまう俺は、酷く欲張りなんだろうと思った。
不調という不調ではないが、酷く情緒が不安定だ。ある日は終始ご機嫌で過ごせたのに、翌日には得体の知れない不安に襲われ部屋からも出られない。
そんなこんなでヴィンスとの授業も不定期になってしまっていた。
今日も今日とて酷く気分が落ち込み、部屋に篭りきっている。
「……はぁ」
俺がため息を吐き出したと同時に、部屋の扉がノックされた。
いつもならレイモンドが代わりに対応してくれるが、彼は今生憎席を外している。
無視するわけにもいかず、のろのろと歩き扉を開けばそこに居たのはヴィンスだった。
明らかに調子の良くなさそうな俺を見て、申し訳なさそうに耳を垂らす。
彼にそんな反応をさせてしまってるのが申し訳なくて、俺は咄嗟に笑みを作った。
「今日の授業、取り止めちゃってごめん。俺に何か用?」
「いや、それは構わないんだが…実はシルに相談があったんだ。調子が悪いなら、明日出直す」
俺を気遣う優しい声と、心配そうな視線。
たったそれだけなのに、気分が高揚する。今ヴィンスは、俺だけを見ていてくれている。
少しずつ心臓が鼓動を早めていく。こんな事思ってはいけないと分かっているのに、止められない。
優越感に似た何かに浸っているこの現状が、心地良い。
「シル?やっぱり、明日出直したほうが…」
「大丈夫、何でもないっ…中で、座って話さないか?」
「そうか?じゃあ、お言葉に甘えて…」
ヴィンスを部屋へ招き入れ、ソファに座る様促す。
俺を見つめるヴィンスの瞳が、隣に座って欲しいと言っている様な気がしてそっと隣へ腰を下ろした。
そんな俺に、ヴィンスは驚いた様に目を見開いた後柔らかく微笑んでくれる。どくり、心臓が跳ね上がった気がした。
そっと俺の片手を握り込み、ヴィンスが口を開く。
「実は来月、年に一度行われる大きな舞踏会があるんだ。その舞踏会で、私のパートナーになってくれないか?」
「…俺が、ヴィンスのパートナー?」
「あぁ。ファーストダンスの後は、自由にしてくれて構わない。我が国の舞踏会で、君をエスコートしたいんだ…私の我儘なのは分かってる。断ってくれても構わない」
ヴィンスの真剣な双眸が、俺の事を見つめ続ける。
嬉しい、と思う。ヴィンスと一緒に舞踏会で踊れたら、きっと凄く楽しいだろう。
だけど頭に引っかかるのは、先日ヴィンスが首を垂れていた猫獣人の女性の事。醜い嫉妬だと分かっているが、彼女はヴィンスに相応しいと思った。
ヴィンスの傍に立つ彼女が、美しいと思ったから。でも。
「…その誘い、受けるよ。ヴィンスのパートナーになりたい」
「っ…そうか。ありがとう、シル。礼服は私が準備するから、期待しててくれ」
「こっちこそ、ありがとう。よろしくね」
これから先ずっと、彼の隣に居たいと思ってしまう俺は、酷く欲張りなんだろうと思った。
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