24 / 48
23:どろどろ
しおりを挟む
あの現場を目撃してしまってから一週間、ヴィンスは用事で出る事が増えた。
またあの女性に会っているのだろうか。黒い毛並みの、綺麗な猫獣人だった。
今日の授業が終わった後、ヴィンスはいそいそと出掛けて行った。どうやら、街へと行っているらしい。
もしかして、デートだろうか。
「…違う。ヴィンスは、そんな事…」
本当に?絶対に心変わりなどしないと、どうして言い切れる。
侯爵邸のメイド達の噂話を思い出す。母はとある事情での政略結婚であり、二人は愛し合っていなかったと。
ただの噂だと思っていたが、今となっては信憑性が高いと感じる。
父は俺を毛嫌いしているし、母親に似た顔が憎たらしいとも言われていた。
「愛なんて、不確かなんだな」
ぽつりと呟く。窓の外を見ると、今にも雨が降ってきそうなほどどんよりとしていた。
あの後本当に雨が降り、より一層気分が落ち込む。
ずきずきと痛む胸と、どろどろと暗い感情がお腹の中で渦巻いて何もかもやる気が出ない。
態々ヴィンスが夕食を取ろうと誘ってくれたのに、素っ気なく断ってしまった。食欲すら、全然わかない。
ぼんやりと窓の外を眺める。あぁ、俺は一体何をしているのだろう。
『何もかも、壊してしまいたい。俺がヴィンスを殺してしまえば、何の気兼ねもなく永遠に愛してあげられるのに』
おれが、ゔぃんすをころしてしまえば。
『彼の全てを、手に入れられる。俺が、彼の全てを奪ってやれる』
ゔぃんすの、ぜんぶを。
「…~っは、ちがう、そんな、」
急激に吐き気が込み上げてくる。急いでトイレへ駆け込み、便器の中へ胃液を吐き出した。
何も食べていないから何も出てきやしない。けれど吐き気は治らなくて、息を切らしながら胃液を吐く。
気持ち悪い、きもちわるい、キモチワルイ。
何が?自分が。どうして?理解できない。駄目なの?駄目に決まってる。
訳の分からない自問自答を繰り返した。何でこんなに、悪意が溢れてくるんだろう。
「…もしかして、呪いが進行してる…?」
ぜいぜいと息を切らしながら、思い当たる理由を呟く。
アルフォンスを襲ったあの時も、好きだから何をしてでも手に入れたいと思った。殿下への嫉妬とアルフォンスへの怒りで、周りが全然見えなくなった。
自分の汚い欲を、最優先にしてしまった。
何故?俺に呪いをかけたのは、母国の人間だったはずだ。
俺が近頃会った母国の人間なんて、アルフォンスとザックくらい。
ザックは呪いなんて使ったら死んでしまうから有り得ないし、アルフォンスも無関係だと思いたい。
考えるのが億劫になる。何を信じたら良いのか分からなくて、頭の中がぐちゃぐちゃで。
「…俺、どうすれば」
思わず出た声は、驚く程弱々しかった。
またあの女性に会っているのだろうか。黒い毛並みの、綺麗な猫獣人だった。
今日の授業が終わった後、ヴィンスはいそいそと出掛けて行った。どうやら、街へと行っているらしい。
もしかして、デートだろうか。
「…違う。ヴィンスは、そんな事…」
本当に?絶対に心変わりなどしないと、どうして言い切れる。
侯爵邸のメイド達の噂話を思い出す。母はとある事情での政略結婚であり、二人は愛し合っていなかったと。
ただの噂だと思っていたが、今となっては信憑性が高いと感じる。
父は俺を毛嫌いしているし、母親に似た顔が憎たらしいとも言われていた。
「愛なんて、不確かなんだな」
ぽつりと呟く。窓の外を見ると、今にも雨が降ってきそうなほどどんよりとしていた。
あの後本当に雨が降り、より一層気分が落ち込む。
ずきずきと痛む胸と、どろどろと暗い感情がお腹の中で渦巻いて何もかもやる気が出ない。
態々ヴィンスが夕食を取ろうと誘ってくれたのに、素っ気なく断ってしまった。食欲すら、全然わかない。
ぼんやりと窓の外を眺める。あぁ、俺は一体何をしているのだろう。
『何もかも、壊してしまいたい。俺がヴィンスを殺してしまえば、何の気兼ねもなく永遠に愛してあげられるのに』
おれが、ゔぃんすをころしてしまえば。
『彼の全てを、手に入れられる。俺が、彼の全てを奪ってやれる』
ゔぃんすの、ぜんぶを。
「…~っは、ちがう、そんな、」
急激に吐き気が込み上げてくる。急いでトイレへ駆け込み、便器の中へ胃液を吐き出した。
何も食べていないから何も出てきやしない。けれど吐き気は治らなくて、息を切らしながら胃液を吐く。
気持ち悪い、きもちわるい、キモチワルイ。
何が?自分が。どうして?理解できない。駄目なの?駄目に決まってる。
訳の分からない自問自答を繰り返した。何でこんなに、悪意が溢れてくるんだろう。
「…もしかして、呪いが進行してる…?」
ぜいぜいと息を切らしながら、思い当たる理由を呟く。
アルフォンスを襲ったあの時も、好きだから何をしてでも手に入れたいと思った。殿下への嫉妬とアルフォンスへの怒りで、周りが全然見えなくなった。
自分の汚い欲を、最優先にしてしまった。
何故?俺に呪いをかけたのは、母国の人間だったはずだ。
俺が近頃会った母国の人間なんて、アルフォンスとザックくらい。
ザックは呪いなんて使ったら死んでしまうから有り得ないし、アルフォンスも無関係だと思いたい。
考えるのが億劫になる。何を信じたら良いのか分からなくて、頭の中がぐちゃぐちゃで。
「…俺、どうすれば」
思わず出た声は、驚く程弱々しかった。
44
お気に入りに追加
191
あなたにおすすめの小説
記憶の欠けたオメガがヤンデレ溺愛王子に堕ちるまで
橘 木葉
BL
ある日事故で一部記憶がかけてしまったミシェル。
婚約者はとても優しいのに体は怖がっているのは何故だろう、、
不思議に思いながらも婚約者の溺愛に溺れていく。
---
記憶喪失を機に愛が重すぎて失敗した関係を作り直そうとする婚約者フェルナンドが奮闘!
次は行き過ぎないぞ!と意気込み、ヤンデレバレを対策。
---
記憶は戻りますが、パッピーエンドです!
⚠︎固定カプです
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
可愛くない僕は愛されない…はず
おがとま
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。
押しが強いスパダリα ✕ 逃げるツンツンデレΩ
ハッピーエンドです!
病んでる受けが好みです。
闇描写大好きです(*´`)
※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております!
また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)
俺のまったり生活はどこへ?
グランラババー
BL
異世界に転生したリューイは、前世での死因を鑑みて、今世は若いうちだけ頑張って仕事をして、不労所得獲得を目指し、20代後半からはのんびり、まったり生活することにする。
しかし、次代の王となる第一王子に気に入られたり、伝説のドラゴンを倒したりと、今世も仕事からは逃れられそうにない。
さて、リューイは無事に不労所得獲得と、のんびり、まったり生活を実現できるのか?
「俺と第一王子との婚約なんて聞いてない!!」
BLではありますが、軽い恋愛要素があるぐらいで、R18には至りません。
以前は別の名前で投稿してたのですが、小説の内容がどうしても題名に沿わなくなってしまったため、題名を変更しました。
題名変更に伴い、小説の内容を少しずつ変更していきます。
小説の修正が終わりましたら、新章を投稿していきたいと思っています。
【完】俺の嫁はどうも悪役令息にしては優し過ぎる。
福の島
BL
日本でのびのび大学生やってたはずの俺が、異世界に産まれて早16年、ついに婚約者(笑)が出来た。
そこそこ有名貴族の実家だからか、婚約者になりたいっていう輩は居たんだが…俺の意見的には絶対NO。
理由としては…まぁ前世の記憶を思い返しても女の人に良いイメージがねぇから。
だが人生そう甘くない、長男の為にも早く家を出て欲しい両親VS婚約者ヤダー俺の勝負は、俺がちゃんと学校に行って婚約者を探すことで落ち着いた。
なんかいい人居ねぇかなとか思ってたら婚約者に虐められちゃってる悪役令息がいるじゃんと…
俺はソイツを貰うことにした。
怠慢だけど実はハイスペックスパダリ×フハハハ系美人悪役令息
弱ざまぁ(?)
1万字短編完結済み
過食症の僕なんかが異世界に行ったって……
おがとま
BL
過食症の受け「春」は自身の醜さに苦しんでいた。そこに強い光が差し込み異世界に…?!
ではなく、神様の私欲の巻き添えをくらい、雑に異世界に飛ばされてしまった。まあそこでなんやかんやあって攻め「ギル」に出会う。ギルは街1番の鍛冶屋、真面目で筋肉ムキムキ。
凸凹な2人がお互いを意識し、尊敬し、愛し合う物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる