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14:誓い
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「私、ヴィンセント・ロルフ・ユースチスは誓います。シルティア・ワングレイをあらゆる危険から命をかけて守り切ると。私の誓いを、受け取って頂けますか?」
凛とした声が、廊下に響く。
知ってる。これは、命の誓いだ。本来は騎士が一生の主人を決めた時にするもの。
ヴィンスは王弟で、寧ろそれを受け取る側だ。そんな立場の人物が誓いを立てるのには、意味が二種類ある。
一つは己の身分を捨て、人生を主人に捧げる場合。もう一つは…。
「ヴィンス、これは…どっち?」
「…伴侶の方、と言ったら君は困ってしまうだろうか?」
もう一つは、生涯の伴侶と決めた人に贈るプロポーズ。
スッと顔を上げ、俺の目をじっと見つめるヴィンス。彼は、伴侶の方と断言した。
そう、断言した。ヴィンスは俺と、結婚したいと思ってくれている…そして俺は、驚いた事に全然嫌じゃない。
嫌じゃないから困ってる。俺は、そういう意味でヴィンスの事が好きなのだろうか?
「…困ってる」
「そうか…じゃあ、忘れてくれ。私は決して、君を困らせたい訳じゃない。断ったからと言って、君を守る事を止めるわけでも…」
「嫌じゃないから、困ってる。けど、俺のヴィンスに対する感情が恋愛なのか親愛なのか…それがまだ、分からない。ごめん。」
素直に謝罪を口にすれば、ヴィンスが驚いた様に目を見開いていた。
ヴィンスの気持ちは、嬉しい。何でこのタイミングなのかは分からないけど、彼の真剣な気持ちが伝わって来る。
でも、俺はまだヴィンスをそういう目で見れていない。いや、同性としてかっこいいと思ってる。だけどこれは憧れであって、恋ではない。
まだ、分からない。自覚するのが怖いのかもしれない。
「正直に言ってくれて、ありがとう。返事は今じゃなくて良い…が、私もシルに対してアプローチをする」
「俺に、アプローチ?」
「あぁ。スキンシップを取ったり、物を贈ったり…好きだと、伝えたり」
再びちゅっと手の甲に口付けられる。ぶわ、頬が一気に熱くなった。
これが単なる照れなのか、それとも俺は既にヴィンスへ気持ちが傾いているのか…分からないけど、兎に角恥ずかしい。
でも嫌悪感は沸いてこない。寧ろ触れ合えて嬉しい…って。
最早それは、惚れているのでは?いやでも、ヴィンスとそういう関係になりたいとはまだ思わないし…。
頭がこんがらがって、熱が出そうだ。俺のそんな様子を見て、ヴィンスは苦笑した後立ち上がった。
片手を握ったままエスコートされ、いつの間にやら部屋の前に到着している。
扉を開けて、ヴィンスに就寝の挨拶をしようと振り向いた。
「おやすみ、シル。良い夢を」
ちゅ、小さく聞こえた三度目のリップ音。額に口付けられたのだと気付いたのは、数秒後。
「お、やすみ…ゔぃんす、」
どうにか挨拶を口にした後、俺は勢いよく扉を閉めベッドへと潜り込んだ。
凛とした声が、廊下に響く。
知ってる。これは、命の誓いだ。本来は騎士が一生の主人を決めた時にするもの。
ヴィンスは王弟で、寧ろそれを受け取る側だ。そんな立場の人物が誓いを立てるのには、意味が二種類ある。
一つは己の身分を捨て、人生を主人に捧げる場合。もう一つは…。
「ヴィンス、これは…どっち?」
「…伴侶の方、と言ったら君は困ってしまうだろうか?」
もう一つは、生涯の伴侶と決めた人に贈るプロポーズ。
スッと顔を上げ、俺の目をじっと見つめるヴィンス。彼は、伴侶の方と断言した。
そう、断言した。ヴィンスは俺と、結婚したいと思ってくれている…そして俺は、驚いた事に全然嫌じゃない。
嫌じゃないから困ってる。俺は、そういう意味でヴィンスの事が好きなのだろうか?
「…困ってる」
「そうか…じゃあ、忘れてくれ。私は決して、君を困らせたい訳じゃない。断ったからと言って、君を守る事を止めるわけでも…」
「嫌じゃないから、困ってる。けど、俺のヴィンスに対する感情が恋愛なのか親愛なのか…それがまだ、分からない。ごめん。」
素直に謝罪を口にすれば、ヴィンスが驚いた様に目を見開いていた。
ヴィンスの気持ちは、嬉しい。何でこのタイミングなのかは分からないけど、彼の真剣な気持ちが伝わって来る。
でも、俺はまだヴィンスをそういう目で見れていない。いや、同性としてかっこいいと思ってる。だけどこれは憧れであって、恋ではない。
まだ、分からない。自覚するのが怖いのかもしれない。
「正直に言ってくれて、ありがとう。返事は今じゃなくて良い…が、私もシルに対してアプローチをする」
「俺に、アプローチ?」
「あぁ。スキンシップを取ったり、物を贈ったり…好きだと、伝えたり」
再びちゅっと手の甲に口付けられる。ぶわ、頬が一気に熱くなった。
これが単なる照れなのか、それとも俺は既にヴィンスへ気持ちが傾いているのか…分からないけど、兎に角恥ずかしい。
でも嫌悪感は沸いてこない。寧ろ触れ合えて嬉しい…って。
最早それは、惚れているのでは?いやでも、ヴィンスとそういう関係になりたいとはまだ思わないし…。
頭がこんがらがって、熱が出そうだ。俺のそんな様子を見て、ヴィンスは苦笑した後立ち上がった。
片手を握ったままエスコートされ、いつの間にやら部屋の前に到着している。
扉を開けて、ヴィンスに就寝の挨拶をしようと振り向いた。
「おやすみ、シル。良い夢を」
ちゅ、小さく聞こえた三度目のリップ音。額に口付けられたのだと気付いたのは、数秒後。
「お、やすみ…ゔぃんす、」
どうにか挨拶を口にした後、俺は勢いよく扉を閉めベッドへと潜り込んだ。
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