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お義兄様が私の前に跪いてくれました

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私はファッションお化けと偉そうな人の二人を湖に弾き飛ばしてしまって唖然とした。

慌てて、周りの護衛と思しき人たちが飛び込むのを茫然として見ていた。

でも、中々浮き上がってこない。

どうしよう、私のせいだ。
私は焦りに焦っていた。

仕方がない! 私が飛び込もうとした時だ。

私はギュッと後ろから誰かの腕に摑まれたのだ。

「えっ?」
慌てて後ろを見るとそこにはボートに乗ったお義兄様がいた。

そのまま、お義兄様に抱きあげられてボートに移されたんだけど……

「お義兄様。私、ボートがぶつかってしまってアガットと何処かの知らない人を湖に放り込んでしまったの! すぐに助けに行かないと」
私は正直にお義兄様に白状したのだ。

「大丈夫だ。どのみち二人にはここで湖の中に落ちてもらう予定だったから」
「えっ?」
私はお義兄様の言ってくれたことがよく判らなかった。
「いや、ラペルズ国王がアガットにいいところを見せたいと言って準備していたのだ」
「えっ?」
私はますますわからなくなった。
「それに、その時の為の緊急用の魔道具も装着しているから」
何故かお義兄様は余裕なんだけど。

「でも、お義兄様」
私は心配していたら、
偉そうな、人がアガットを抱き上げて浮かび上がってきた。
あれがラペルズ国王なんだ。国王はアガットを抱えたまま岸に上がった。
そして、そのまま、国王がアガットの唇に唇を当てて蘇生術をしだすのが見えた。
「お義兄様、大丈夫かな?」
「大丈夫だ。ラペルズは元々こういう事には慣れている」
「そうなの?」
私は驚いて二人を見た。

「あの二人にはもともと縁談があったのだ。アガットにとってもラペルズの王妃になれるのだから、これはいい縁談なのだ」
「えっ、そうなんだ。じゃあ私は二人のデートを邪魔したことになるの?」
「いや、元々サプライズで二人は湖に落ちる予定だったんだよ」
「えっ、そうなの?」
私はやっと腑に落ちた。

「それでさっそうと、ラペルズが助ける予定だったのだ。我々が魔術で揺らして落とすか、エリがぶつかるかの違いだからエリは、全く気にする必要は無い」
お義兄様が言ってくれたんだけど……

そういうものなのか?

「まあ、エリは二人のキューピットになったんだよ」
お義兄様が言ってくれるけれど、本当なんだろうか?
遠目に見たらアガットは息を吹き返したみたいだった。
それをラペルズ国王がお姫様抱っこをして屋敷に連れて行こうとするのが見えた。

「さあ、エリ、俺達は離れようか」
「えっ、でも謝らなくてもいいのかな」
「今行っても邪魔になるだけだろう。そのあたりの事は俺から適当に言っておく」

お義兄様は私を体の前に置いてボートをこぎ出した。
ぐんぐん岸から離れて行く。
アガットがこちらを見て何か言いかけたような気がしたけれど、その口をラペルズ国王に口づけで塞がれていた。
まあ、幸せな事は良い事なんだろう。
私は純粋に二人の幸福を祈ったのだ。

「エリも漕いでみるか」
「うん」
私はお義兄様の体にもたれかかって漕いでみる。
でも、船が大きくなったせいか中々前には進まない。

「うーん、しばらくしていないうちに腕が鈍ったのか」
「そんなことはないわよ!」
私は振り向いてお義兄様にそう言ったら大きく漕ごうとしたら大きくボートが揺れたのだ。
「おっと」
お義兄様がバランスを取ってくれた。
「ごめん、お義兄様」
私はホッとした。
「何、たとえ落ちても、俺がエリを助けるぞ」
「えっ」
それはあの国王みたいに私に口づけして蘇生術を試みるという事だろう。何度もお義兄様に口づけを許すわけにはいかないのだ。そんなことしたらお義兄様狙いの令嬢たちに殺される。まあ、最右翼のアガットがこれでいなくなったと思うけれど……

本当にお義兄様がいつまでもお相手を決めないから! どういうつもりなんだろう?

お義兄様が私の手に自分の手を添えて漕ぎ出してくれた。

本当にお義兄様は軽々とボートを漕いでくれるのだ。
まあ、腕の筋肉も堅いし。添えてくる手も剣だこで硬くなっていた。

昔に比べたら大きくなったみたいだった。


「お義兄様、今度は私だけでやってみる」
しばらく一緒に漕いだ後、私はお義兄様に手を放してもらって、今度は自分で漕いでみた。

お義兄様の漕ぎ方でコツが判ったみたいで、今度はスムーズに漕げたのだ。


私はお義兄様と一緒に久々にボートを堪能したのだ。

太陽が傾いて来たから、私達はボートを漕ぐのを止めて陸に上がった。


「あっ、きれい」
陸に上がって後ろを振り返ると太陽が真っ赤に大きくなっていた。
そして、今まさに湖に向かって沈もうとしていたのだ。
湖に沈んでいく太陽を私は目をキラキラさせて見ていた時だ。

「エリーゼ!」
お義兄様が突然私の名前を呼んで私の前に跪いてくれたのだ。

ええええ! お義兄様、何するつもりなの?
私は突然の事に驚いた。
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ここまで読んで頂いて有難うございます。
さて、二人の仲はどうなるのでしょうか
二人が恋愛関係になって欲しいと望まれる方はお気に入り登録、感想等して頂けたら嬉しいです


新作『王太子に婚約破棄されて両親を殺した野蛮王に売られそうになった時、白馬の騎士様が助けてくれました』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/381877902
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