推しの悪役令嬢を応援していたら自分がヒロインでした

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

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アル様とどうするか考えたら寝れなくなってしまいました

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私がアル様との事で呆然としている時だ。
母が帰って来た。

「シルフィ! あなた、王太子殿下から結婚の申込みを受けたんですって?」
母がいきなり言い出した。いやいやいや、弟の言う告白から更に進んで結婚になっているんだけど、私はそうされたつもりはないんだけど。

「あなたには無理だから、絶対に断りなさいよ」
いや、そうするつもりだったけれど、母からそうはっきり言われるのとは違うんじゃないの? と思わず私は思ってしまった。

「はあああ? それ決めるのは私よね。母さんじゃないわ」
私は母の言葉にムッとして言い返した。

「それはそうだけど、あなたこんなどろどろした王宮で生きていける訳無いでしょ!」
「王宮で確たる派閥を形成している母さんに言われたくないんですけど」
「な、何を言っているのよ。私はあなたが学園でテレシアの娘とルイーセの息子と友だちになって、その親を連れてきたからこうなったんじゃない。私は家で静かにしていたかったたのに」
母がなんか私のせいにしているけれど

「何言っているのよ。いつも母さんはそう言うけれど、今をむちゃくちゃ楽しんでいるじゃない!」
「そんなわけないでしょ。私はあなたたちのために無理しているのよ」
「よく言うわね。何が無理しているよ。今の母さんとても楽しそう。私達のせいにして家に閉籠っていたけれど、今はいきいきして元気いっぱいじゃない。無理やりってどこがよ。絶対に楽しんでいるわ。私はタチアナとかからは、あんたのお母さんがいる限り全然問題ないわね、とか言われているんですけど」
「はあああ! あなた私がどれだけ努力しているか判っているの?」
「もう、良いわよ。自分勝手な母さんは自分のことだけ考えていなさいよ。私のことは私で考えるから」
私はそう言うと自分で与えられた部屋に飛び込んだ。

はっきり言って今は母に構っている余裕はないのだ。

そもそも、私は今まで平民の娘だったのだ。

基本的に王太子妃なんて絶対に無理だ。

元々この学園に来たのは恩人のタチアナをクンラートとくっつけてタチアナが断罪されるのを回避するためだったのだ。

それは完全に果たしたのだ。それだけで良かった。自分のことなんて何も考えていなかったのだ。

それが王太子殿下であるアル様に好かれるなんて考えたこともなかった。

確かにアル様は一緒にいると楽しいし、見目も麗しい。私に対してもとても優しい。言うことはない。でも、アル様が王太子って事はその相手は王太子妃になるということで、いずれは王妃になるってことだ。私が王妃様のように振る舞えるかって言うと絶対に無理だ。

それを考えると断るしかない。

アル様も私が少し変わっているから、興味を持っただけだ。

そうだ。そんな感じなのだ。だから断っても問題ないはずだ。

もう断るしかない。

そう思うと、気が楽になった。


そうだ。タチアナも幸せになっているみたいだし、ここからは自分の人生を歩もう。

学園に入る前に、ムカつく母からは、学園で誰かいい平民の男を捕まえなさいみたいなことは言われていた。実際に学園在学中に相手を見つけるのが圧倒的に多いみたいだ。
でも、私はタチアナ達に関わっているうちに、他の男達と殆ど話せていない。考えたら親しい男たちがいないのだ。

ガーン!

考えたら、この前中止になったけれど、舞踏会でめぼしい男たちは殆ど皆パートナーを連れていたように思うんだけど・・・・。

ええええ! もう遅い? ひょっとしてアル様を断ったら私は一生涯独身決定?

皆楽しんでいるのに、私だけボッチ・・・・

なんか、それもちょっと嫌だ・・・・

考えたらアル様とは一緒に食べ歩きとかして楽しかった。学食でいつも一緒に食べられたし・・・・。

前世では彼氏なんていなかったし男の人と二人きりでどこか行くなんてこともなかった。アル様は前世も含めて初めて親しくなった男なのだ。


いやいやいやいや、でもダメだ。私が王妃なんて務まるわけがない。

自分が楽しいだけで、王妃になるなんて絶対にこの後地獄が待っている。

シルフィ、ここはしっかりするのだ。

でも、アル様を断ったらボッチ人生の始まりだ。

ああああ! どうしよう。

私は悶々とその夜を過ごしたのだった。

******************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございました。

間もなく完結です。
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