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破落戸に襲われましたが、放った火の玉が倉庫に命中火柱をたてて、驚いて飛んできたワンらが制圧してくれました
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次の日の朝、アル様が言われたように王宮から馬車が来て、父と私を乗せてくれた。なんと護衛の騎士が4騎もいてくれて私はびっくりだった。
なんか父と一緒の登校は恥ずかしかったけど、いつも朝早く家を出て夜遅く帰ってくる父と一緒にいるのは久しぶりだった。
「学園には慣れたのか」
馬車が動き出すと父が聞いてきた。
「うん、友達も結構出来たし、今は楽しいの」
「そうかブールセマ公爵家のご令嬢とも友だちになったんだって」
「タチアナとは親友みたいなものよ」
「おいおい、公爵家のご令嬢を呼び捨てにしたらまずいだろう」
「ええええ! 母さんがそうだったんでしょ」
父が言うけれどそれは母に言って欲しい。
「いや、まあ、あの二人は特別で」
「テレシア様からも母さんらがやってた事、色々教えてもらったわ。学園長も母の話をすると何故か引かれるんだけど、何したか知っている?」
「いや、それは・・・・」
この感じだと父さんは絶対に知っている。でも教えてくれないやつだ。
「父さんと母さんが図書館で座っていた席なんだけど、必ず恋人になる席っていうんだって。そんな事知ってたら、前もって教えておいてよね」
私の言葉に父が固まっているんだけど。
「まさか、お前誰かと座ったのか?」
父が心配して聞いてきた。
「ええええ! 母さんに聞いていないの? 本当に迷惑しているんだから」
そうこう話すうちに、馬車は学園に着いた。
「おはよう、シルフィ」
「あ、アル様。何故?」
私をアル様が迎えてくれたのだ。
「で、殿下」
父が固まっていた。
「おはようバース。ここでは俺はアルだ。そう呼んでくれ」
二人の話を聞きつつ、私は殿下にエスコートされて、降ろされた。固まった父を乗せて動き出した馬車を見送った私はそのままアル様に図書館の恋人席に拉致されてしまったのだ。何でこうなる?
その日は昼はいつも通り4人で食べて、放課後はアル様に送ってもらった。
どう考えても、平民の女の子としてはおかしいんだけど。
翌日は朝から父は機嫌が悪かった。私がアル様と仲良くしていたのを母とかからよく聞いていなかったみたいだ。そんなの、母もちゃんと話しておいてほしい。
「まあ、学園の間だけだから」
という母はのほほんとしているが、王妃様と公爵夫人が母の親友なのだ。母自体がお貴族様になったら確実に二人に捕まると思うんだけど。
アル様からは王妃様が私に会いたがっていると言われたが、絶対に母に会いたがっているのだ。そのために私を呼ぶのだけは止めてほしい。王宮なんて行ったことはないし、絶対に行きたいとは思わないのだけど。そう言ったら何故かアル様が悲しそうにするんだけど何故に?
その日は何故か王宮の馬車が来なかった。
「まあ、いつも歩いているから歩くか」
父の言葉に私は何も考えずに頷いた。私達平民を襲おうとする暇人がいるとは思えていなかったのだ。
私は父と一緒にいつもより少し早い時間に歩き出した。
「おはようございます!ミラノさん」
パン屋のミラノさんに挨拶する。
「おはよう。シルフィ。今日はお父さんと一緒かい?」
「そうなんです」
「おはようございます」
「おはようございます。可愛い娘さんですよね」
父が挨拶してくれて、それにミラノさんも答えてくれる。
「もう、おばさんったら。私を褒めても何も出ませんよ」
「事実だよ、事実」
「そんな事言ったらおばさんもきれいですよ」
私はいつも通り通りを外れて草原の方へ歩いて行った。
その前に、破落戸を伴ったスーツ姿の男がいきなり現れたのだ。
「ブルさん」
父は戸惑った声を上げた。なんか父の知り合いみたいだ。でも、破落戸を伴っているということはあちら方面の人だろうか。
「アントン。子爵になるみたいで、いい気になっているんだって」
「まだ決まった訳では」
「そうだな。貴様はこれから拉致されるのだから、なることはないが」
男がニタリと笑った。
「おい、こいつらを連れて行け」
ブルと言われた男が破落戸共に指示した。
破落戸共が私達の方へ来る。
「ちょっと待て、娘は関係ないだろうが」
父が言うが。
「結構可愛い顔しているじゃないか。俺たちが可愛がってやるぜ」
破落戸の一人が父をどけて私を捕まえようとした。
こういう時は父は役に立たない。私がやるしかないのだ。
「出でよ。火の玉」
私は近付いた男に火の玉をお見舞いしたのだ。
でも近距離にもかかわらず、相変わらずノーコンで火の玉は男の真横を通過していったのだ。最悪だ。
「この女!」
怒った男は私の腕をひねり上げた。
「痛い」
私は悲鳴を上げた。
ドカーン
しかし、次の瞬間巨大な火柱が上がったのだ。
「えっ」
皆唖然としていた。
私の放ったファイアーボールは草原の横にあった倉庫に命中、油か何かに引火したのだ。
凄まじい火柱に呆然としていると、
「おい、あそこだ」
爆発に驚いた人達が駆けつけてきたのだ。
そして、その先頭には怒り狂ったワンがいた。
「止めろ」
「ガウ」
ワンは私を捕まえていた男に飛びかかり、一瞬でノックダウンさせたのだ。
逃げようとした他の男達もワンは次々に飛びかかっていく。
「止めろ!」
「ギャーーー」
破落戸共にワンは容赦がなかった。
そして、その頃には駆けてきた街の人達や一緒に来た騎士たちに次々に捕まっていた。
なんか父と一緒の登校は恥ずかしかったけど、いつも朝早く家を出て夜遅く帰ってくる父と一緒にいるのは久しぶりだった。
「学園には慣れたのか」
馬車が動き出すと父が聞いてきた。
「うん、友達も結構出来たし、今は楽しいの」
「そうかブールセマ公爵家のご令嬢とも友だちになったんだって」
「タチアナとは親友みたいなものよ」
「おいおい、公爵家のご令嬢を呼び捨てにしたらまずいだろう」
「ええええ! 母さんがそうだったんでしょ」
父が言うけれどそれは母に言って欲しい。
「いや、まあ、あの二人は特別で」
「テレシア様からも母さんらがやってた事、色々教えてもらったわ。学園長も母の話をすると何故か引かれるんだけど、何したか知っている?」
「いや、それは・・・・」
この感じだと父さんは絶対に知っている。でも教えてくれないやつだ。
「父さんと母さんが図書館で座っていた席なんだけど、必ず恋人になる席っていうんだって。そんな事知ってたら、前もって教えておいてよね」
私の言葉に父が固まっているんだけど。
「まさか、お前誰かと座ったのか?」
父が心配して聞いてきた。
「ええええ! 母さんに聞いていないの? 本当に迷惑しているんだから」
そうこう話すうちに、馬車は学園に着いた。
「おはよう、シルフィ」
「あ、アル様。何故?」
私をアル様が迎えてくれたのだ。
「で、殿下」
父が固まっていた。
「おはようバース。ここでは俺はアルだ。そう呼んでくれ」
二人の話を聞きつつ、私は殿下にエスコートされて、降ろされた。固まった父を乗せて動き出した馬車を見送った私はそのままアル様に図書館の恋人席に拉致されてしまったのだ。何でこうなる?
その日は昼はいつも通り4人で食べて、放課後はアル様に送ってもらった。
どう考えても、平民の女の子としてはおかしいんだけど。
翌日は朝から父は機嫌が悪かった。私がアル様と仲良くしていたのを母とかからよく聞いていなかったみたいだ。そんなの、母もちゃんと話しておいてほしい。
「まあ、学園の間だけだから」
という母はのほほんとしているが、王妃様と公爵夫人が母の親友なのだ。母自体がお貴族様になったら確実に二人に捕まると思うんだけど。
アル様からは王妃様が私に会いたがっていると言われたが、絶対に母に会いたがっているのだ。そのために私を呼ぶのだけは止めてほしい。王宮なんて行ったことはないし、絶対に行きたいとは思わないのだけど。そう言ったら何故かアル様が悲しそうにするんだけど何故に?
その日は何故か王宮の馬車が来なかった。
「まあ、いつも歩いているから歩くか」
父の言葉に私は何も考えずに頷いた。私達平民を襲おうとする暇人がいるとは思えていなかったのだ。
私は父と一緒にいつもより少し早い時間に歩き出した。
「おはようございます!ミラノさん」
パン屋のミラノさんに挨拶する。
「おはよう。シルフィ。今日はお父さんと一緒かい?」
「そうなんです」
「おはようございます」
「おはようございます。可愛い娘さんですよね」
父が挨拶してくれて、それにミラノさんも答えてくれる。
「もう、おばさんったら。私を褒めても何も出ませんよ」
「事実だよ、事実」
「そんな事言ったらおばさんもきれいですよ」
私はいつも通り通りを外れて草原の方へ歩いて行った。
その前に、破落戸を伴ったスーツ姿の男がいきなり現れたのだ。
「ブルさん」
父は戸惑った声を上げた。なんか父の知り合いみたいだ。でも、破落戸を伴っているということはあちら方面の人だろうか。
「アントン。子爵になるみたいで、いい気になっているんだって」
「まだ決まった訳では」
「そうだな。貴様はこれから拉致されるのだから、なることはないが」
男がニタリと笑った。
「おい、こいつらを連れて行け」
ブルと言われた男が破落戸共に指示した。
破落戸共が私達の方へ来る。
「ちょっと待て、娘は関係ないだろうが」
父が言うが。
「結構可愛い顔しているじゃないか。俺たちが可愛がってやるぜ」
破落戸の一人が父をどけて私を捕まえようとした。
こういう時は父は役に立たない。私がやるしかないのだ。
「出でよ。火の玉」
私は近付いた男に火の玉をお見舞いしたのだ。
でも近距離にもかかわらず、相変わらずノーコンで火の玉は男の真横を通過していったのだ。最悪だ。
「この女!」
怒った男は私の腕をひねり上げた。
「痛い」
私は悲鳴を上げた。
ドカーン
しかし、次の瞬間巨大な火柱が上がったのだ。
「えっ」
皆唖然としていた。
私の放ったファイアーボールは草原の横にあった倉庫に命中、油か何かに引火したのだ。
凄まじい火柱に呆然としていると、
「おい、あそこだ」
爆発に驚いた人達が駆けつけてきたのだ。
そして、その先頭には怒り狂ったワンがいた。
「止めろ」
「ガウ」
ワンは私を捕まえていた男に飛びかかり、一瞬でノックダウンさせたのだ。
逃げようとした他の男達もワンは次々に飛びかかっていく。
「止めろ!」
「ギャーーー」
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