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お貴族様に囲まれて嫌がらせを受けました

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その日の放課後だ。

「ちょっと、バースさん、宜しいかしら」

授業が終わると私はクラスの貴族の女性の方々に囲まれたのだ。

うーん、誰が誰かは全くまだわからないんだけど、なんだか皆怒っている。
タチアナ様を探しにすぐに出たかったのに、仕方がない。皆様、何なんでしょう?

なんか、お貴族様の顔が怖いんだけど、私が何かお気に触ることしたんだろうか? 授業中も静かにしていたはずだけど。

「あなた、今日のお昼間、ベーレンズ様とお話していたって聞いたのだけど、本当なの?」
「べーレンズ様ってどなたですか?」
私は判らなくて聞いた。

「ほら、アニカ、こんな野暮ったい女の子がべーレンズ様に気に入られるわけないじゃない」
この中でリーダー格の女が言った。確か、クロメロン子爵令嬢だったような気がする。何かメチャクチャ失礼な事言われたような気がしたんだけど。

「いえ、レネイ様。私ははっきりと仲良く話しているのを見ました」
その横にいた男爵令嬢が否定する。たしかデブアニカ男爵令嬢だったはずだ。

「あなた、嘘を言ったの!」
きっとしてクロメロン子爵令嬢が怒って言った。

「はい? そもそもべーレンズ様なんてお話したこともありませんけれど」
「あなたお昼休みにお話していたじゃない。黒い髪の男性のことよ」
「ああ、クンラート様ですか」
「あなた、名前呼びするなんて不敬よ」
子爵令嬢が注意してきた。そうだった。確か貴族は名前を呼ぶのはとても親しい人のみで、普通は苗字で呼ぶのだった。でも、そんなの苗字なんて覚えていないわよ。ゲームではほとんど名前のみだったんだから。

「でも、その方とはお話していただけですよ」
「あなた、何言っているの? べーレンズ様にはブールセマ様という、あなたなんて到底かなわない、麗しい公爵家のご令嬢が婚約者でいらっしゃるのよ。なのに二人きりで親しくお話するなんておかしくなくて」
「クロメロン様」
「誰が黒メロンよ。私はレネイ・クロンメリン子爵令嬢よ。クロンメリンね」
「あっ、すいません。クロンメリン様」
本当に貴族の名前ってややこしいのよ、ってそうじゃなくて

「私、二人きりではなくて、アル様がその場にはいらっしゃいましたけれど」
「誰よアル様って?」
「私も苗字は教えて頂いておりません」
「何なの、それ? まあ良いわ。そもそもべーレンズ様にはブールセマ様というれっきとした婚約者がいらっしやるのよ。だからあなたから話しかけるのはおかしいわ」
「あのう、お言葉ですけれど、私から話しかけたのではなくて、向こうから話し掛けられたのですが」
私ははっきり訂正した。

「何を言っているの? ベーレンズ様があなたみたいな地味な女の子なんかに話しかけるはずないでしょう」
うーん、野暮ったいも地味なも余計なんだけど・・・・。

「そもそもあなたがベーレンズ様に話しかけられても応えなければよいのよ」
何を言うんだろう。この子。太公のご子息から話し掛けられて無視なんかしたら反って不敬になるのではないだろうか?

「判りました。次にベーレンズ様に声かけられたらクロンメリン様からお話するなと言われているので話せませんと言います」
「ちょっと待ってよ。そんな事したら今度は私が怒られるじゃない!」
「そう言われましてもそうしろとおっしゃられたのはクロンメリン様ですよね」
私が言う。私だけ酷い目に会うのは嫌だ。無視なんかしたらクンラート様に何を言われるか判ったものではない。

「それはそうだけど、あなた、ブルーセマ様に逆らいたいの?」
「まさか、滅相もありませんわ。ブルーセマ様ほど素晴らしい方は学園にいらっしゃいません。私はそのブルーセマ様がく、ベーレンズ様に話し掛けようとなされたのに、ベーレンズ様が無視なさったので、それに対して文句、いえ苦情を申していただけですわ」
私はクンラート様に危うく説教していたと正直に言うところだった。

そう、あのクンラート様に、如何にタチアナ様がクンラート様の事を思っていらっしゃるか、延々とお話しただけなのだ。そんな訳はないとクンラート様は否定されたが、クンラート様はタチアナ様がどれだけツンデレなのかご存知ないだけなのだ。

「あなた、それは本当なの? ベーレンズ様はあなたとお話して、いたく楽しそうにされていたけど」
男爵令嬢が疑い深そうに言ってくるが事実だ。

「本当ですわ、デブアニカ様」
「誰がでぶ・アニカよ。私の名前はアニカ・デ・ヴァール男爵令嬢よ。デ・ヴァールよ。デブアールでもないわよ」
「申し訳ありません。デ・ヴァール様」
お貴族様の名前って、なんて難しいんだ。少し太っているからデブアニカと覚えたのに・・・・。

「どっちにしろ、ベーレンズ様とはあまり近づかないようにするのよ!」
「判ったわね!」
クロメロンとデブアニカ達は、言いたいことだけ言うとさっさと出ていった。

私はお貴族様の対応に疲れ切ってしまって、タチアナ様を追っかけるのは諦めて帰ったのだ。
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