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ぴーちゃんの一鳴きで魔物たちは一目散に逃げていきました。

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「オードリー!」
私は唖然とした。

そこには血まみれのオードリーが魔物に切り裂かれて倒れていたのだ。

何故、こんな所に魔物がいるのよ? それも何匹もいるんだけど。

でも、今はそれどころではなかった。いるものはなんとかしないといけない。

私はオードリーが好きではなかったが、ここまで、一緒に来た仲間だった。
今は好き嫌いは関係なかった。

私は次の一瞬で変身しようとしたのだ。
「待ちなさい」
それをマチルダが私の肩に手を当てて止めてくれたんだけど。
何でだ?

魔物がこちらを見た。
ちょっとマチルダ。どうするのよ?

その瞬間、私の真横を光が通り過ぎた。

それは瞬時に魔物に命中して、弾き飛ばしていた。

「パティ」
「大丈夫か」
そこにはジルとブラッドが駆けてきたのだ。
「オードリーが……」
私が指差すと、

「魔物どもめ、許さん」
「撫で斬りにしてやる」
ジルたちが魔物に立ち向かっていった。
ジルは目の前にいた魔物を一刀両断する。そして、その横にいた魔物も。剣で次々に切り裂いてくれた。

対して、ブラッドは爆裂魔術を放って魔物を次々にやっつけていた。

でも、魔物たちはどこからか次々に出てきて、襲いかかってくるんだけど。

こうしてはいられないわ。

「オードリー」
「ちょっとパティ」
「危ないですわ」
レイラらが止めようとしていくれたが、今はそれどころではない。

私はオードリーに駆け寄ったのだ。

オードリーは血まみれで、倒れていた。息が荒い。どう見ても致命傷だ。

「オードリー」
私はオードリーを抱き寄せた。

「ごめん、パティ、ユニコーンが来ないのは私がいるから、私が……じゃないから」
何かオードリーが言っているけど、そんなのは今はどうでもいい。

ジルらが魔物から守ってくれているけれど、魔物の数が圧倒的に多いのだ。

ここは私が変身して片付けるしか無い。
ジルには昔助けたのが私だとバレるけれど、もうブラッドにもバレているから今更だろう。

私は立ち上がったのだ。
「パティ、危ない」
その瞬間、私に襲いかかってきた魔物をジルが斬り伏せてくれた。
「ありがとう」
私はジルにお礼を言う。

「危ない。パティ」
そして、もう一度仁王立ちになろうとして今度はブラッドに後ろから押されて地べたに這いつくばった。私のいたところに魔物が腕を振って間一髪で躱せた。
何よこれ。変身できないじゃない。

本当に呪文が不便! 長すぎるのよ!
私は黒服に心の中で悪態をついた。

「パティ、危険だからしゃがんでいてくれ」
「そうだ。ここは俺たちがなんとかする」
二人して言ってくれるんだけど。
コイツラが当てにならないから、私が変身しようとしているんじゃない。
思わず口に出して言いそうになった。

「ねえ、ぴーちゃん!」
私は私の前にとことこ歩いてきたぴーちゃんに言ったのだ。

「ぴー」
ぴーちゃんが何故か立ち上がるんだけど。危ないって!

ガウォーーーー
吠えた、魔物が今度はぴーちゃんに襲いかかってきた。

「危ない!」
私の手はぴーちゃんに届かなかった。

やられる! 私は恐怖に震えたのだ。

「ぴ」
でも、次の瞬間だ。ぴーちゃんはその魔物の手をポイとぴーちゃんが触ったのだ。

その瞬間、魔物は飛んでいったのだ。

ドシーーーーン
魔物は地面に叩きつけられていたのだ。
私は唖然とした。

ぴーちゃんは一瞬で自分の何十倍もある魔物を投げ飛ばしていたのだ。
この前のジルの時と同じだ。
今度ははっきりと見ていたから見間違いようはなかった。

なんてこと。このペット、魔物たちよりも圧倒的に強いんだけど。
私の驚きが魔物たちに伝染したんだろうか?

私達を襲っていた魔物たちの動きが止まったのだ。

そして、皆、ぴーちゃんを驚愕した感じで見ているんだけど。

ぴーちゃんがその魔物たちを見たのだ。
その瞬間、魔物たちはビクッとしたのだ。何故かはっきりと恐怖に震える魔物を感じたのだ。

「ぴーーーーー」
そして、ぴーちゃんが怒ったように鳴くと、魔物たちは一斉に後ろを向くや、

「ギャーーーー」
叫びながら一斉に逃げ出したのだった。
何もかも投げ出して一目散にぴーちゃんと反対側に駆け出しだのだ。

私達は唖然とそれを見ていたのだ。
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