上 下
61 / 82

友だちが魔物に襲われました

しおりを挟む
私達は学園に集合すると馬車の移動で『聖なる森』に向かったのだ。馬車は班ごとに乗ることになっていて、私達は女の子だけの八人で乗っていた。

聖なる森は王都の北に広がっている美しい森で、貴重な薬草や、美しい花々が咲き誇るお花畑があることで有名らしかった。
そのさらに先は魔の森で魔物が多くいるそうであったが、聖なる森には何故か入って来ないのだそうだ。

「なんでも、『聖なる森』にはユニコーンがいて、木々を浄化して、魔物が近づかないそうですわ」
伯爵家の令嬢であるジャネットが言った。
「えっ、そうなんですの? ユニコーンって真っ白で光り輝くばかりに美しいっていう神獣ですよね」
子爵家の令嬢のレイラも目を輝かせて言った。
「そうなんだ。そんなにきれいなら、一度でいいから見てみたいわ」
私が言うと、
「ふんっ、ユニコーンは処女にしか近寄って来ないのよ。あなた、処女じゃないでしょ」
いきなりオードリーがとんでもないことを言い出すんだけど。

「何言っているのよ。私は正真正銘の処女よ」
私は大声で叫んでいた。

「えっ」
皆、驚いた顔をする。
「ちょっと、パティ、声大きいですわ」
レイラが注意してくれた。
そうだった、私は真っ赤になった。なんてことを大声で叫んでしまったのだろう。

「でも、あなた、ローズ様からブラッドリー様を寝取ったって」
ジャネットが赤くなっていってくれるけれど、

「そんな訳ないでしょ」
私が赤くなって否定する。

「ジャネット、パティ見たらわかるじゃない。この子はどう見てもおぼこよ」
マチルダが私を馬鹿にして言ってくれた。
「そうよね。胸もないし、女らしくもないし、どうやってブラッドリー様を寝取ったのか不思議だったのよ」
ジャネットも平然と失礼な事を言ってくれるんだけど……
「そうよ。この幼女体系のパティに女の魅力を感じて手を出すなんて余程の変人かロリコンよ」
「えっ、じゃあブラッドリー様ってロリコンなの?」
「えっ、そうなの?」
「ショック」
みんな好きな事を言ってくれるんだけど。

「ちょっと私は本当に処女だからね」
私がむっとして反論するが、

「判ってるって。だってこの子、赤ちゃんはコウノトリが運んでくるって言っているのよ」
マチルダがとんでもないことを言ってくれるんだけど。

「うそ!」
「男と女の事、何も知らないのね」
「信じられない」
今度は皆で馬鹿にしてくれるんだけど。私も前世の保健の授業でちゃんと聞いたわよ。男と女が何をするかは。

「ちょっと、私もセックスの事は知っているわよ」
ムッとして私が言うと
「セックスですって」
「ちょっと、パティ、あからさますぎ」
皆キャーキャー言って馬鹿にしてくれるんだけど。
それがきっかけで、皆その手の話で盛り上がってくれるんだけど。
姉の話や友達の話を。みんな興味津々で聞いてくれるんだけど、私はその手の話は苦手だ。
手持無沙汰で外を見たら、寝ていたぴーちゃんがもぞもぞしだした。

「まあ、その子可愛いですわね」
前の席のレイラが言ってくれた。
「そうなの。ぴーちゃんは可愛いでしょ」
私は褒められて嬉しくなって言った。

「何なら抱いてみる?」
「えっ、良いのですか?」
レイラに差し出してみる。

「レイラ、トカゲを抱くの?」
オードリーが言ってくれたが

「えっ、こんなにかわいいのに?」
レイラは差し出したぴーちゃんをぎゅっと胸に抱きしめてくれた。
この子胸がでかい。

「ぴーーーー」
何かぴーちゃんが顔を胸にすりすりして嬉しそうだ。私はムッとしてぴーちゃんを睨みつけたが、ぴーちゃんは知らん顔でレイラに抱かれていたのだ。



公園に着いたら早速お弁当だった。
皆、作って来た、大半は料理人が作ってくれたお弁当を広げていた。

何かフルコースの料理のお弁当を広げている組もあったが……
ローズの班だ。私達が男はお断りとつれなくしたので、ブラッドとジルはローズらと一緒の班になっていた。高位貴族組だ。
侯爵家の令嬢二人と辺境伯の令嬢二人に囲まれていた。
たまにこちらを二人は見て来たが私は当然無視した。


私はと言うと、

「ぴー様。これはどうですか」
「ぴー」
ぴーちゃんはオードリー以外の女の子にモテモテで、皆から食事を手ずからもらって喜んで食べていた。

私の所には全然帰って来ないんだけど……

この浮気者ピースケめ!
私は少し切れていた。

食事の後は散策の時間だった。


「この噴水の北側にユニコーンを見かけたという情報があるのよ」
マチルダが言い出した。なんか碌でも見ないような気がするんだけど。幸運のユニコーンがそう簡単に見つかるわけないじゃない、と私は思ったのだ。

「えっ、そうなんですの」
「せっかくだから行って見ましょうよ」
「でも、処女でないとユニコーンは出て来ないんでしょ」
ジャネットらの言葉にオードリーは心配そうに言うんだけど。
「大丈夫よ。パティも処女だと判ったんだし」
何かジャネットがとんでもないこと言ってくれるんだけど、お前らは大丈夫なのかよ!
私は言いたかった。まあ、お貴族様の令嬢は処女性が求められるから大丈夫なのかもしれないが。

「じゃあ、ユニコーン探しに北に行ってみよう」
マチルダの言葉に全員うきうきして歩き出したんだけど。
私は少しうんざりした。また、マチルダに付き合わされるんだけど、これは碌な事ではないと思うのだ。


歩いても歩いてもユニコーンは見つからなかった。
そう簡単に見つかるわけないのだ。

「もう、疲れましたわ」
「本当に」
皆がいい加減に疲れたので近くのベンチで休んでいた。

「やっぱり、パティは処女じゃないんじゃ」
「あのね。いい加減にしてよね」
私はジャネットの言葉を否定するんだけど。


「オードリー、顔が少し青いわよ。大丈夫?」
レイラの声がした。確かにオードリーは少し顔色が悪かった。

「いえ、何でもないわ」
そう言うと心配するレイラから離れて森の中に入って行ったのだ。

「ちょっと、オードリー、勝手に先行っちゃだめよ」
ジャネットが注意するが、

「キャーーーーー」
そこにオードリーの悲鳴が響き渡ったのだ。

「えっ」
「どうしたの?」
私達は慌てて、オードリーの元に向かった。

そこには魔物にのしかかられているオードリーがいたのだ。


しおりを挟む
script?guid=onここまで読んでいただいてありがとうございます。

私の絶賛発売中の書籍化作品はこちら
『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/302627913

7月5日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。



この次の新作はこちら
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/497818447

前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。もう二度と会う訳はないと思っていたのに……
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

塩対応の公子様と二度と会わないつもりでした

奏多
恋愛
子爵令嬢リシーラは、チェンジリングに遭ったせいで、両親から嫌われていた。 そのため、隣国の侵略があった時に置き去りにされたのだが、妖精の友人達のおかげで生き延びることができた。 その時、一人の騎士を助けたリシーラ。 妖精界へ行くつもりで求婚に曖昧な返事をしていた後、名前を教えずに別れたのだが、後日開催されたアルシオン公爵子息の婚約者選びのお茶会で再会してしまう。 問題の公子がその騎士だったのだ。

処理中です...