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遠足にぴーちゃんと一緒に行くことになりました
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たんた、たんた、たんた!
私は鼻歌を歌いつつ、ぴーちゃんを抱っこしてデール子爵家の食堂に降りてきた。
今日はぴーちゃんを連れての遠足だ。
久しぶりにぴーちゃんとのお出かけなのだ。
いつも、ぴーちゃんは授業のある時は学園の門の外で、お留守番だった。
マチルダの騎士の人たちと一緒に。
学園の中は流石に騎士は入ってはいけないということで、外でお留守番なので、一緒に面倒を見てくれるということになったのだ。
まあ、護衛隊長のアンドレさんらがぴーちゃんの相手をしてくれるということだが、虐められていないか私はとても心配だった。ちゃんと面倒を見てくれるというアンドレさんを信じないわけじゃあないけど、騎士の訓練とか付き合わされたら、ぴーちゃんが大変だ。
「ピースケが負けるわけ無いじゃない」とかマチルダはいい加減なことを言ってくれるが、ぴーちゃんが騎士に勝てるわけ無いじゃない!
何かそんな事を言うマチルダが信じられなかった。
この前ジルを外に弾き飛ばしたのだって絶対にマチルダが何かしたのだ。
私はぴーちゃんがやったとは絶対に信じられなかった。
今回遠足にぴーちゃんを連れて行くのは班決めの時に私のペットも連れてきて良いように、ジルとブラッドが先生と交渉してくれたのだ。
中々二人共親切だった。
でも、護衛はしてあげないけれど……
それに、遠足の時に危険はないと思ったし。遠足の時までスカウトに煩わされるのは嫌だ。
見目の良い二人が私の周りにいると女の子たちの機嫌も悪くなるし。
私の班はこの前、罰として校則を書き写させられた面々に決まったのだ。
「やっぱり、仲の良くない者同士、一緒に散策すれば仲良くなれると思います」
マチルダの強引な発言でそうなったのだ。
まあ、マチルダは前世で実績があるけれど……
罰ゲームと称して、いつも最悪な事を、皆で一緒にさせられるのだ。
必然的にお互いに被害者になって、仲良くならざるを得なかったのだ。
川をせき止めて洪水させたのを治すとか普通女の子には無理だから。本当に……
「そんなの嫌です」
オードリーが勇気ある発言をした。でも、こいつはいつも馬鹿だ。マチルダが許すわけ無いじゃない。
「ああああら、先生の、学園に在学する間は身分の上下関係無く親しくするという、ご意見にあなたは反対なさるというのですね」
笑って言う、そのマチルダの発言にギロリとストラシー先生が黒縁メガネの奥を光らせたんだけど。
「いえ、そうとは申しませんが……」
オードリーも流石にまずい発言をしたと思ったのだ。ひたいに汗が浮かんでいた。
その横にさり気なくマチルダは近づくと
「あなた、昨日、カフェにいたでしょ」
「えっ」
マチルダの問にオードリーは目が点になった。
「たしかあれは隣のクラスの」
「すみません。先生。マチルダさんの意見に賛成します」
必死の形相で、オードリーが言い出したんだけど。
反対していた、後の二人の令嬢もマチルダから一言二言、言われた途端に、賛成に回っていたんだけど、何を言ったんだろう? 皆の弱みを握るが昔からマチルダは得意だ。
今世は公爵家の暗部も手伝っているはずだから、もう無敵のはずだった。
でも、皆を集めてマチルダは何をさせるつもりなんだろう?
絶対に碌でも無いことに違いない。
私は危惧した。
そんな私の不信もなんのその。マチルダは今日もとても機嫌が良かった。
「ピースケ、今日はよろしくね」
ぴーちゃんにも挨拶しているけど、
「ぴ」
相変わらず、ぴーちゃんは塩対応だ。
「そうだ。ぴーちゃん。こんな意地悪おばさんの言うことを聞く必要はないわよ」
私が頷いた時だ。
「まあ、パティ、酷いこと言って。誰が意地悪おばさんよ。私はまだ花の15才よ」
そこかよ。気になるのは! 意地悪なのは認めるんだ。
「うーん、でも、ピースケが言うことを聞いてくれないと今日やることは難しいし……」
「えっ、何! 今日ぴーちゃんに何か酷いことさせるの?」
私がきっとしてマチルダを睨みつけたけれど、
「やあね。少しだけ手伝ってもらうだけよ。ちょっと睨んでくれるだけでいいの」
「どういうことよ。睨みつけるって。ねえぴーちゃん」
「ぴーー」
ぴーちゃんも一緒に怒ってくれた。そうよ。こんな可愛いぴーちゃんに酷いことをさせるなんて許さないわ!
私とぴーちゃんは二人でマチルダを睨みつけたのだ。
しかしだ。
「ピースケ、おいで」
マチルダが箱から何かを取り出してぴーちゃの前に出したのだ。
「えっ、それって帝都で人気だっていうケーキじゃ」
「ぴーーーー」
一瞬だった。
私の腕から飛び出したぴーちゃんは一目散にマチルダの前に走って行ったのだ……
「えっ」
「はい、ピースケおあがり」
「ぴーーーー」
ぴーちゃんはそのケーキを貪りだしたのだ。
おい、飼い主を置いておいて何だ!
私は切れた。
「まあ、パティもそう怒らないで」
私の前にもケーキが出てきた。
「えっ、私の分もあるの?」
「当たり前じゃない」
「そう、ありがとう」
私達は幸せそうにケーキを食べだしたのだ。
それをほほえみながら見ていたマチルダの笑顔が怖かったんだけど、私は夢中で食べていて気づかなかったのだった……
************************************************************
食べ物に弱い主従でした。
マチルダの狙いは何でしょう?
続きは明日
私は鼻歌を歌いつつ、ぴーちゃんを抱っこしてデール子爵家の食堂に降りてきた。
今日はぴーちゃんを連れての遠足だ。
久しぶりにぴーちゃんとのお出かけなのだ。
いつも、ぴーちゃんは授業のある時は学園の門の外で、お留守番だった。
マチルダの騎士の人たちと一緒に。
学園の中は流石に騎士は入ってはいけないということで、外でお留守番なので、一緒に面倒を見てくれるということになったのだ。
まあ、護衛隊長のアンドレさんらがぴーちゃんの相手をしてくれるということだが、虐められていないか私はとても心配だった。ちゃんと面倒を見てくれるというアンドレさんを信じないわけじゃあないけど、騎士の訓練とか付き合わされたら、ぴーちゃんが大変だ。
「ピースケが負けるわけ無いじゃない」とかマチルダはいい加減なことを言ってくれるが、ぴーちゃんが騎士に勝てるわけ無いじゃない!
何かそんな事を言うマチルダが信じられなかった。
この前ジルを外に弾き飛ばしたのだって絶対にマチルダが何かしたのだ。
私はぴーちゃんがやったとは絶対に信じられなかった。
今回遠足にぴーちゃんを連れて行くのは班決めの時に私のペットも連れてきて良いように、ジルとブラッドが先生と交渉してくれたのだ。
中々二人共親切だった。
でも、護衛はしてあげないけれど……
それに、遠足の時に危険はないと思ったし。遠足の時までスカウトに煩わされるのは嫌だ。
見目の良い二人が私の周りにいると女の子たちの機嫌も悪くなるし。
私の班はこの前、罰として校則を書き写させられた面々に決まったのだ。
「やっぱり、仲の良くない者同士、一緒に散策すれば仲良くなれると思います」
マチルダの強引な発言でそうなったのだ。
まあ、マチルダは前世で実績があるけれど……
罰ゲームと称して、いつも最悪な事を、皆で一緒にさせられるのだ。
必然的にお互いに被害者になって、仲良くならざるを得なかったのだ。
川をせき止めて洪水させたのを治すとか普通女の子には無理だから。本当に……
「そんなの嫌です」
オードリーが勇気ある発言をした。でも、こいつはいつも馬鹿だ。マチルダが許すわけ無いじゃない。
「ああああら、先生の、学園に在学する間は身分の上下関係無く親しくするという、ご意見にあなたは反対なさるというのですね」
笑って言う、そのマチルダの発言にギロリとストラシー先生が黒縁メガネの奥を光らせたんだけど。
「いえ、そうとは申しませんが……」
オードリーも流石にまずい発言をしたと思ったのだ。ひたいに汗が浮かんでいた。
その横にさり気なくマチルダは近づくと
「あなた、昨日、カフェにいたでしょ」
「えっ」
マチルダの問にオードリーは目が点になった。
「たしかあれは隣のクラスの」
「すみません。先生。マチルダさんの意見に賛成します」
必死の形相で、オードリーが言い出したんだけど。
反対していた、後の二人の令嬢もマチルダから一言二言、言われた途端に、賛成に回っていたんだけど、何を言ったんだろう? 皆の弱みを握るが昔からマチルダは得意だ。
今世は公爵家の暗部も手伝っているはずだから、もう無敵のはずだった。
でも、皆を集めてマチルダは何をさせるつもりなんだろう?
絶対に碌でも無いことに違いない。
私は危惧した。
そんな私の不信もなんのその。マチルダは今日もとても機嫌が良かった。
「ピースケ、今日はよろしくね」
ぴーちゃんにも挨拶しているけど、
「ぴ」
相変わらず、ぴーちゃんは塩対応だ。
「そうだ。ぴーちゃん。こんな意地悪おばさんの言うことを聞く必要はないわよ」
私が頷いた時だ。
「まあ、パティ、酷いこと言って。誰が意地悪おばさんよ。私はまだ花の15才よ」
そこかよ。気になるのは! 意地悪なのは認めるんだ。
「うーん、でも、ピースケが言うことを聞いてくれないと今日やることは難しいし……」
「えっ、何! 今日ぴーちゃんに何か酷いことさせるの?」
私がきっとしてマチルダを睨みつけたけれど、
「やあね。少しだけ手伝ってもらうだけよ。ちょっと睨んでくれるだけでいいの」
「どういうことよ。睨みつけるって。ねえぴーちゃん」
「ぴーー」
ぴーちゃんも一緒に怒ってくれた。そうよ。こんな可愛いぴーちゃんに酷いことをさせるなんて許さないわ!
私とぴーちゃんは二人でマチルダを睨みつけたのだ。
しかしだ。
「ピースケ、おいで」
マチルダが箱から何かを取り出してぴーちゃの前に出したのだ。
「えっ、それって帝都で人気だっていうケーキじゃ」
「ぴーーーー」
一瞬だった。
私の腕から飛び出したぴーちゃんは一目散にマチルダの前に走って行ったのだ……
「えっ」
「はい、ピースケおあがり」
「ぴーーーー」
ぴーちゃんはそのケーキを貪りだしたのだ。
おい、飼い主を置いておいて何だ!
私は切れた。
「まあ、パティもそう怒らないで」
私の前にもケーキが出てきた。
「えっ、私の分もあるの?」
「当たり前じゃない」
「そう、ありがとう」
私達は幸せそうにケーキを食べだしたのだ。
それをほほえみながら見ていたマチルダの笑顔が怖かったんだけど、私は夢中で食べていて気づかなかったのだった……
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食べ物に弱い主従でした。
マチルダの狙いは何でしょう?
続きは明日
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