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また、校則を書き写させられることになりました

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私は令嬢方に囲まれて、絶体絶命のピンチだった。
このままでは、皆にボコられる!
私が恐怖に駆られた時だ。


「おーほっほっほっほ」
そこに良く知った高笑いが響いたのだ。

そう、そこには両手に腰を当てたマチルダが仁王立ちしてくれていたのだ。


「まあ、皆様方、私の侍女を囲んで何の相談ですの?」
「お前はマチルダ!」
オードリーが呼び捨てにしたんだけど。

「はあああ! 私、あなたに呼び捨てにされる言われはございませんことよ」
きっとしてマチルダはオードリーを睨みつけた。
そのとおりだ。何しろ彼女は我が国の宗主国の帝国の大公爵令嬢様なのだ。属国の子爵家の令嬢風情が呼び捨てたら下手したら子爵家は抹殺される。この世から。それほどの家柄なのだ。

「私をデール子爵家当主として知っての狼藉ですの」
「何言っているのよ。うちのお父様に聞いたら帝国にそんな子爵家なんて聞いた事無いって言ってらしたわ」
オードリーが睨み返したのだ。

「ああら、このリーズ王国には愚かな子爵もいたものね」
マチルダが馬鹿にしきった声でオードリーを見下した。

「な、何ですって」
眦を決してオードリーが言うんだけど。

「デール子爵家を知らないなんて、本当に無知ね。何でしたらこの国の王太子殿下に聞いてみらしたら良いのではなくて。『私の父は愚かにもデール子爵の名前なぞ聞いたことは無いと申していたのですが、殿下はご存知ですかと』」
「な、何を言うのよ。そんな子爵の名前なんて殿下もご存知ないはずよ」
オードリーが言い切ったのだ。本当にオードリーは馬鹿だ。昨日も殿下がとてもマチルダに気を使っていたのがわからなかったのか? 年鑑には載っていないのかもしれないが、絶対に公爵家が昔から持っていた子爵家で、おそらく歴史は古いはずだ。でないと、マチルダがこんなに言う訳はないのだ。


「だそうですよ。殿下」
「えっ?」
マチルダの声にみんな一斉にマチルダの呼びかけた方を見た。
そこには困り顔の王太子殿下が立っていたのだ。

「あ、殿下!」
オードリーは助けが来たみたいに悦んで殿下を見た。

「この女がデール子爵だと言って威張っているんですけど、帝国の貴族年鑑を調べてもそんな子爵家なかったんです。ない子爵家を言い張るのは詐称ですよね」
オードリーは喜々として言い張るんだけど……

「オードリー嬢。マチルダ嬢がデール子爵なのは本当の事だ」
「えっ」
殿下の声にオードリーは固まった。

「本当ですか? 殿下」
「私達は帝国の貴族年鑑を見たんですけど、載っていなかったんですが」
令嬢たちが口々に言うが、

「それは少し古い年鑑なのだ。マチルダ嬢がデール子爵であるのは間違いない」
王太子殿下ははっきりと否定されたのだ。

「そんな」
オードリーは唖然としていた。

「でも、殿下。この女は子爵の方が伯爵令嬢よりも偉いって言うんですけれど、本当なのですか」
「それは時と場合によるが、彼女の場合は公爵……」
伯爵令嬢の疑問にさすがに王太子がばらそうとした時だ。

「な、何をしているのです。もうとっくにベルはなっていますよ」
そこにストラシー先生が慌ててやってきたのだ。

「先生。マチルダさんがデール子爵は帝国の有名な子爵家だから、マチルダさんに頭を下げろと強制されるんです」
オードリーは味方を見つけたみたいにストラシー先生に言うんだけど、先生はどうするんだろう?
私が興味津々と見ていると

「そのような下らない事で、授業中にこんなところにいるのですか」
しかし、先生はオードリーの言葉に言い切ったのだ。
皆驚いて先生を見た。

「下らないって」
オードリーが呟くが、

「先生はそれを下らないとおっしゃるのですか」
マチルダはきっとしてストラシー先生を睨みつけた。

「当然です。マチルダさんも校則を書き写されたから第一条になんと書かれていたかご存知ですよね」
「さあ、どのみち生徒は皆平等とか書かれていたのではないですか」
おそらく宿題はマチルダがしたのではなくて、ジーニーか誰かにさせたのだ。でも、あてずっぽうで答えたのだが、

「そう、そのとおりなのです」
先生は笑顔で頷いてくれたんだけど……
「この王立学園は例え、帝国の皇子様であろうと平民の子であろうと皆平等なのです。この学園の中に地位を持ち出すことは許されません」
「でも、それは建前なのでは」
マチルダが食い下がるが

「建前ではありません。事実なのです。それはここにいらっしゃる王太子殿下であろうが、帝国の高位貴族のご令嬢であろうが、侯爵令嬢であろうが、同じです。みな平等なのです。地位によって差別は許されません。私はこの国の国王陛下は元より、帝国の皇帝陛下にも、すべての生徒を平等に扱うということに同意いただいております。あなたのお父様にも書面を頂いておりますが、何でしたらお見せいたしましょうか?」
先生はニコリと笑ってくれたのだ。

「あ、あのクソ親父」
何かマチルダは余計な一言を言ったような気がしたが。

結局私達はまた、授業中に勝手に外でたむろっていたということで、一から校則を全て書き写させられる羽目になってしまったのだ。授業中ずうーーーーっと、先生の前で。
これではサボることも侍女にさせることも出来なかったのだ。

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