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新学期早々お嬢様軍団に囲まれまてしまいました
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「あなた、まさか宿題忘れてきたわけではありませんよね?」
私はストラシー先生の声に真っ青になったのだ。
しまった! 完全に忘れていた。
どうしよう?
昨日はただでさえ慣れない学園入学初日で、それでなくても緊張していたのに、強引にマチルダに連れ出されて屋敷に連れて行かれたり、その後ジルが来てぴーちゃんに弾き飛ばされたりして、完全に忘れていのたのだ。というか、もう昨日はいっぱいいっぱいで、あの後すぐに寝てしまった。
そもそも新学期早々に宿題なんて出してほしくなかった。
まあ、結果的にサボってしまった私達が本来は悪いのかもしれないけれど……
出来るわけ無いでしょう。校則全て書き写すなんて!
私は叫びたかった。でも、ストラシー先生の笑っていない目に向かってそんな事が言えるわけは無かった。
一体どうすれば良いのだろう? でも私は、その対策を何も思い付けなかったのだ。
先生の目がギラギラ光った。もう終わりだ。私は叱責を浴びて下手したら、学園を追放される未来しか見えなかったんだけど……
「先生、これが、校則を写した物です」
後ろからマチルダが言ってくれて資料を私の机の上に渡してくれたのだ。
「えっ?」
私の上に置かれたレポート用紙に私の名前も書かれていた。
うっそー、マチルダが書き写してくれたの!
私は信じられなかった。
もう、どこまでもマチルダにはついて行くわ!
私はそう決心したのだ。
今までマチルダには特に前世は数々の酷い事もされたけど、基本的にはマチルダは優しいのだ。
「マチルダ!」
私はうるうるした目でマチルダを見たのだ。
「ふんっ」
マチルダは私の視線を躱してくれたが、顔は少し赤くなっていた。
私からストラシー先生がその紙を受け取ってパラパラめくる。
「まあ、ところどころおかしいですけれど、良いでしょう。一応きちんとやろうという意識はあるのですね」
ストラシー先生は態度を180度変えて喜んで受け取ってくれたのだ。
私はホッとした。
その1時間目の礼儀作法の授業が終わるとブラッドが飛んできた。
「パティ、そのマチルダとかいう女に酷いことはされていないかい」
その顔は本当に心配そうだった。なるほど、ブラッドが皆に好かれているはずだ。使用人にもここまで心を配れるなんて……私は感動した。
「ブラッド、全然問題ないわ。マチルダは昔から友達だから」
私が当然の如く答えると、
「でも、パティ、いつ、帝国の子爵と知り合いになったんだ。元々君は、ロウギル男爵家ではなくて平民の親戚のお年寄りに育てられたと聞いていたけれど」
ブラッドが聞いてきた。
そうだった。マチルダは前世の町田さんとして友達だったのだ。帝国のアラプール家ではなくて……
今世では、当然帝国の公爵家と辺境の男爵家なんて付き合いがあるはずはないし、私について言えばその前は平民として育てられていたのだ。本来ならば付き合いなんてあるわけはないはずだった。
私は回答に失敗したのを理解した。
「本当だよな。マチルダとどこで知り合いになったか俺もとても知りたいんだけど」
横からジルまで出てきたんだけど。彼はマチルダの婚約者でそう言う限り子爵様ではなくて帝国の高位貴族様なのだ。下手したら昔からマチルダと親しいのかもしれない。
どうしよう?
私は周りを見た。マチルダを探したが、いない。
こうなったら、誤魔化すしか無い。
「ごめんなさい。ちょっとお手洗いに行ってきますわ」
「ちょっと、君!」
「パティ!」
笑って誤魔化すと私は止めようとする二人の横を脱兎のごとくダッシュして逃げ出したのだ。
お手洗いに向かって走ったは良いが方向音痴気味の私は当然迷ってしまって、何とか着いた時はハアハア息を切らしていた。
「ちょっと、そこの貴方。宜しいかしら」
ゼイゼイ言っていた私はいきなりお嬢様方に囲まれたのだった。
「えっ」
周りを見ると10人以上いるんだけど。
何だこれは?
「あなた、少しマチルダ様に気に入られたからって良い気になっていないこと」
一人の令嬢が言った。彼女は伯爵家の令嬢だったはずだ。
「そうよ。侯爵家のブラッド様と親しくするなんて男爵家のあなたには本来不釣り合いよ」
「本当に」
「元々ブラッド様はアーブロース侯爵家のローズ様の婚約者だったのよ。それを奪い取ったなんて信じられないわ」
「どのみち、女の武器で奪い取ったのでしょう」
「本当に淫乱女ね」
「その上帝国のヴァージル様をもその毒牙にかけようなんて、なんて悪女なのかしら」
「恥を知りなさい」
もうサンドバック状態だった。
皆目を怒らせて、今にも掴みかかってきそうなんだけど。
いくら脳天気な私でも、この状況は流石にまずいと思ったのだ。
「パトリシア・ロウギル。今日こそ、ローズお嬢様の恨みも全てあなたに叩きつけてあげるわ」
そして、後ろから出てきた人物こそ、私が一番会いたくない人物、ローズお嬢様付きメイドで、私を一緒にイジメていたオードリーだった。
彼女はそう言うと両手を腰に添えて仁王立ちしてくれたのだ。
怒り狂った令嬢達に囲まれて、周りにいた他の者達は慌てて逃げ出した。
ちょっと待ってよ!
周りを見回したが、誰も助けてくれそうな人は見つからなかったのだ。
************************************
囲まれたパティはどうなる?
続きは今夜です
私はストラシー先生の声に真っ青になったのだ。
しまった! 完全に忘れていた。
どうしよう?
昨日はただでさえ慣れない学園入学初日で、それでなくても緊張していたのに、強引にマチルダに連れ出されて屋敷に連れて行かれたり、その後ジルが来てぴーちゃんに弾き飛ばされたりして、完全に忘れていのたのだ。というか、もう昨日はいっぱいいっぱいで、あの後すぐに寝てしまった。
そもそも新学期早々に宿題なんて出してほしくなかった。
まあ、結果的にサボってしまった私達が本来は悪いのかもしれないけれど……
出来るわけ無いでしょう。校則全て書き写すなんて!
私は叫びたかった。でも、ストラシー先生の笑っていない目に向かってそんな事が言えるわけは無かった。
一体どうすれば良いのだろう? でも私は、その対策を何も思い付けなかったのだ。
先生の目がギラギラ光った。もう終わりだ。私は叱責を浴びて下手したら、学園を追放される未来しか見えなかったんだけど……
「先生、これが、校則を写した物です」
後ろからマチルダが言ってくれて資料を私の机の上に渡してくれたのだ。
「えっ?」
私の上に置かれたレポート用紙に私の名前も書かれていた。
うっそー、マチルダが書き写してくれたの!
私は信じられなかった。
もう、どこまでもマチルダにはついて行くわ!
私はそう決心したのだ。
今までマチルダには特に前世は数々の酷い事もされたけど、基本的にはマチルダは優しいのだ。
「マチルダ!」
私はうるうるした目でマチルダを見たのだ。
「ふんっ」
マチルダは私の視線を躱してくれたが、顔は少し赤くなっていた。
私からストラシー先生がその紙を受け取ってパラパラめくる。
「まあ、ところどころおかしいですけれど、良いでしょう。一応きちんとやろうという意識はあるのですね」
ストラシー先生は態度を180度変えて喜んで受け取ってくれたのだ。
私はホッとした。
その1時間目の礼儀作法の授業が終わるとブラッドが飛んできた。
「パティ、そのマチルダとかいう女に酷いことはされていないかい」
その顔は本当に心配そうだった。なるほど、ブラッドが皆に好かれているはずだ。使用人にもここまで心を配れるなんて……私は感動した。
「ブラッド、全然問題ないわ。マチルダは昔から友達だから」
私が当然の如く答えると、
「でも、パティ、いつ、帝国の子爵と知り合いになったんだ。元々君は、ロウギル男爵家ではなくて平民の親戚のお年寄りに育てられたと聞いていたけれど」
ブラッドが聞いてきた。
そうだった。マチルダは前世の町田さんとして友達だったのだ。帝国のアラプール家ではなくて……
今世では、当然帝国の公爵家と辺境の男爵家なんて付き合いがあるはずはないし、私について言えばその前は平民として育てられていたのだ。本来ならば付き合いなんてあるわけはないはずだった。
私は回答に失敗したのを理解した。
「本当だよな。マチルダとどこで知り合いになったか俺もとても知りたいんだけど」
横からジルまで出てきたんだけど。彼はマチルダの婚約者でそう言う限り子爵様ではなくて帝国の高位貴族様なのだ。下手したら昔からマチルダと親しいのかもしれない。
どうしよう?
私は周りを見た。マチルダを探したが、いない。
こうなったら、誤魔化すしか無い。
「ごめんなさい。ちょっとお手洗いに行ってきますわ」
「ちょっと、君!」
「パティ!」
笑って誤魔化すと私は止めようとする二人の横を脱兎のごとくダッシュして逃げ出したのだ。
お手洗いに向かって走ったは良いが方向音痴気味の私は当然迷ってしまって、何とか着いた時はハアハア息を切らしていた。
「ちょっと、そこの貴方。宜しいかしら」
ゼイゼイ言っていた私はいきなりお嬢様方に囲まれたのだった。
「えっ」
周りを見ると10人以上いるんだけど。
何だこれは?
「あなた、少しマチルダ様に気に入られたからって良い気になっていないこと」
一人の令嬢が言った。彼女は伯爵家の令嬢だったはずだ。
「そうよ。侯爵家のブラッド様と親しくするなんて男爵家のあなたには本来不釣り合いよ」
「本当に」
「元々ブラッド様はアーブロース侯爵家のローズ様の婚約者だったのよ。それを奪い取ったなんて信じられないわ」
「どのみち、女の武器で奪い取ったのでしょう」
「本当に淫乱女ね」
「その上帝国のヴァージル様をもその毒牙にかけようなんて、なんて悪女なのかしら」
「恥を知りなさい」
もうサンドバック状態だった。
皆目を怒らせて、今にも掴みかかってきそうなんだけど。
いくら脳天気な私でも、この状況は流石にまずいと思ったのだ。
「パトリシア・ロウギル。今日こそ、ローズお嬢様の恨みも全てあなたに叩きつけてあげるわ」
そして、後ろから出てきた人物こそ、私が一番会いたくない人物、ローズお嬢様付きメイドで、私を一緒にイジメていたオードリーだった。
彼女はそう言うと両手を腰に添えて仁王立ちしてくれたのだ。
怒り狂った令嬢達に囲まれて、周りにいた他の者達は慌てて逃げ出した。
ちょっと待ってよ!
周りを見回したが、誰も助けてくれそうな人は見つからなかったのだ。
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囲まれたパティはどうなる?
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