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マチルダの屋敷に拉致されました

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「ちょとパティ、どういう事なの? 勝手に私を連れ出してくれて!」
マチルダが職員室の中から出ると文句を言って来た。

「だってあのまま、あそこにいたら、延々怒られ続けたじゃない。それに、もっとひどい事になったかもしれないし」
宿題がこれ以上増えたらたまらないと私が言うと、

「何言っているのよ。もう少しやれば、ハマーンの弱みを突いて、二度と私に逆らえないように出来たのに……」
やはりマチルダは碌な事考えていなかった。

リーズ王国の為にも、これ以上王太子を悲惨な目に合わせてはだめだ。我が国は小さいので、下手したら完全に帝国に併合されてしまう。

まあ、母国にあんまり愛着はないけれど、それでも私はこの国が好きだ。

でも、いけ好かない貴族も多いけれど……少しは守ってあげないと。
私は決意も新たにしたのだ。

「まあ、良いわ。宿題はあなたがやるのよ」
「当然、私も書き写すわよ。でも、私が写したそれをあなたが書き写すと言うの?」
マチルダはさも当然のように言うんだけど、私は疑問に思って聞いた。

「何言っているのよ。あんたの汚い文字写すよりは、本をそのまま写した方が簡単でしょ」
「別に私の字は汚くないわよ!」
ムッとしてそう言うと、
「ただ癖が強いので、読みにくいだけよ」
「それを普通は汚いって言うのよ!」
マチルダはオブラートに包まずに、そのまま、言ってくれた。
「そうよね。一瞬、あなたがリーズ語の文字読めないのかと思ったわ」
私はマチルダを無視して言うと、マチルダは一瞬ムッとしたが、ため息をついて、
「まあ、あんたの字は元々汚いし、」
ボソリと呟いてくれて、頭を振ると、
「あんたじゃあるまいし、何故、私がリーズ語を読めないのよ。形は日本語と全く同じなんだから、読めるに決まっているじゃない!

というか、私は周辺国の10か国は読み書き完璧よ」
そうだ。マチルダは町田さんの時から英語は完璧だった。私が四苦八苦していたのをよく馬鹿にしてくれたものだ。

それも周辺諸国10か国も覚えているとはお化けだ。
私はそもそも帝国語自体が苦手なのに! 
何でもマチルダによると帝国後は文字の形が少し変わっただけで、英語そのままだそうだ。

「他には中国語そのままの言葉とかフランス語のままの言葉とか前世で覚えていたから楽勝だったわよ。小さい時から出来る私を見て、周りからは天才とか神童とか言われてたわ」
こいつ、前世でも、知らない間に語学をほとんどマスターしていたらしい。

「じゃあ、私がやることないじゃない」
私が当然のように言うと、
「何言っているのよ。あんたが私の代わりに私の分も書き写すのよ」
「なんで私が、そんなことする必要あるのよ」
ムッとして私が言うと

「そうだ。パティはその女のいう事を聞く必要はないぞ」
いきなり後ろからブラッドが現れて、私を抱き寄せてくれた。
ちょっといきなりは止めて。危うく肘鉄食らわせるところだったじゃない!

「あーーーーら。女の魅力の全くないパティの色香に迷わされて婚約破棄したブラッドじゃない」
マチルダはむかつく事を言ってくれたんだけど。女の色香が少ない、まだ、小さいので発達してないだけよ!

「何を言う。お前はパティの素晴らしさを知らないから言うんだ。ピンクの衣をまとったパティの女神のような神々しさを」
あっ、ブラッド、余計な事をここで話すな!ジルの前で言うのは止めて! 
私が思ったが遅かった。

「ちょっと待て、ブラッド! パティのピンクの衣ってなんだ」
何か横からジルが出て来てさらにややこしくなった。
「ふん、貴様も知らないと思うが……」
「ブラッド! 余計なこと言わないで!」
更に余計な事を言おうとしたブラッドの口を押さえた。

何かブラッドが赤い顔しているんだけど。

「ちょっとそこの二人も不純異性行為よ」
マチルダに注意されるんだけど、口を押さえたくらいでなんで不純異性行為……
「ち、近い!」
赤くなってブラッドが呟く。
「えっ」
考えたら、口を塞ぐために背伸びをしてブラッドに密着していた。無い胸もブラッドの胸に当たっている。

「きゃっ」
私は慌てて、ブラッドから離れた。

「あなた、私の侍女になったんだから、変な男にくっつくのは禁止よ」
グイッとマチルダに引っ張られたのだった。

「ちょっと、パティ」
慌てて、ブラッドが私にてを伸ばそうとして、マチルダにその手を叩かれていた。
「痛いな、帝国の子爵女! 何するんだよ!」
「パティは私の侍女になったんだから、気安く近付かないで!」
「はあああ! パティ、どういう事だ? 侍女やるならうちの侍女になれば良いじゃないか? なんだったら、俺専属の侍女に!」
「何言っているのよ! そんなことしたら更にローズに勘違いされるじゃない!」
私が言うと、
「いや、勘違いじゃなくて」
ブラッドが更に何か言っているけど、

「さあ、行くわよ」
マチルダが私を引っ張って歩きだした。

「えっ、行くってどこに行くのよ?」
「私の屋敷に決まっているでしょ」
「あなたの屋敷へ? 何で?」
「だって、あなたは、私の侍女じゃない。いいから行くわよ」
「えっ、ちょっと待てよ」
マチルダは私を引き留めようとしたブラッドを無視して、強引に私を引っ張って行ったのだ。
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