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慌ててクラスのホームルームに戻ったら放課後、先生に呼び出されることになりました

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私はいろいろとマチルダに教えてもらったのだ。

やっぱり、マチルダはアラプール公爵家のご令嬢だそうだ。こちらにはその父からもらったデール子爵を名乗っているのだとか。流石公爵家、子爵家を持っているのが凄い! それもリーズ王国の子爵家ではなくて、本国の子爵家だ。領地も我が男爵家の10倍以上はあり、何でもデカイ鉱山まであるそうだ。
羨ましい限りだ。そう言ったら、
「あんたはヒロインなんだから良いじゃない」
って言うんだけど、良いと思うなら、あなたは何故ヒロインにならなかったのよ!
絶体に何かあるはずだ。

そもそも天国でもいろいろやらかせてくれて、この世界に追放されたのだとか。出来たら私と一緒にこの世界で生きたいとか余計な事を黒服に言ってくれていたらしい。

「今世は前世と違って静かにつつましく、生きたいと思っていたのに」
私がポロリと本音を言うと

「あんた、魔法少女なのよ。どうやって静かにつつましく生きるのよ。それに、もう十分に目立っていると思うけど」
マチルダが言ってくれるんだけど。

「あなたに会うまでは十分に静かにしていたわよ」
私が反論すると、

「はああああ」
盛大に溜息つかれてしまったんだけど……

「あんたね。既にローズとブラッドの二人の仲を引き裂いたのは貴族社会では有名よ。帝国にいた私でさえ聞いたんだから」
「えっ、帝国にまで悪名が響いているの?」
私は驚いてマチルダを見た。

「リーズ王国の名門アープロース侯爵家のお嬢様から女の魅力を使ってパーマン侯爵家令息を寝取った悪役令嬢パトリシアの名前は有名よ」
「そんな」
私は思わずその場に膝をついてしまった。

「私も話を聞いた時は豊満な胸を見せびらかせて女の魅力で男どもを寝取っていく淫乱女を想像したのよ。あの藤崎さんが何食べたらそんな体になったんだろうって不思議だったんだけど、実物見たらデマだってことが良く判ったわ」
こいつ、相も変わらず、オブラートに包まない言い方してくれる。

「まあ、そのあたりの事はおいおい聞くとして、さすがにそろそろ教室に行かないと担任が怒るわよ。担任は厳しくて有名だそうだから」
「あっ、そうよ。入学式!」
私は入学式の前に会場にも入らずに出て来たのを思い出した。

「何言っているのよ。入学式なんてとっくに終わっているわよ。王太子や学園長の馬鹿が長々話をしていてもね。今はホームルームの時間かしら」
「ちょっと、すぐに教室に行きましょうよ」
「えっ、でも、教室がどこか判らないわよ」
平然とマチルダは言ってくれるんだけど。

「うそ、あんた判っていないの?」
そういう事は詳しいはずなのに。

「もう、あんた、私の侍女をすることになったんだから、もっとしっかりしてよね。まあ、方向音痴の藤崎改めパティにそんな事は期待していないけど」
何かムカつくことを平然と言ってくれるが、その通りなので、私は何も否定しない。

「おそらくこっちよ」
私はマチルダに引き連れられて、校舎の中に入って行った。

そして、最初の扉で止まる。
その前にはA組とでかでかと書かれていた。

扉をがらりとマチルダはあけると私をポンと中にほうり込んでくれたのだ。

次の瞬間、全員の鋭い視線をもろに受けてしまったのだ。

ちょっと、マチルダ……

「マチルダさ……あなたは誰です」
教壇に立っていたロッテンマイヤーさんばりの眼鏡のきつそうな女性が注意しようとして相手が違ったので私に名前を聞いてきた。
「パ、パトリシア・ロウギルでちゅ」
私は思いっきり噛んでしまった。

「はあ、何ですか、その答え方は? あなた言葉もまともに話せないのですか」
「す、すみまちぇん。き、緊張ちてちまって」
もう嚙みまくりだ。だって、先生が鬼婆みたいに怖かったのだ。

「はああああ? あなた、その話し方は私を馬鹿にしているんですか?」
「……」
私はこれ以上怒らせるわけにもいかずに、もう首を振る事しかできなかった。
「貴方、話せないんふりしてももう無理ですよ!」
でも、それが更に先生の怒りに油を注いでしまったみたいだ。

「そもそも、あなた入学式をサボるなんてどういう事なんですか。登校していたのに、マチルダ嬢と一緒にどこかに遊びに行ってしまったとか。前代未聞の事です」
このまま、延々怒られるのか?
と思った時だ。ぐいっと私は横に退けられたのだ。
そのまま、ブラッドの席に突っ込んでいった。
そのまま、ブラッドに抱きとめられて、でも、ガンガラガッチャンといすごと地面に押し倒していた。

「本当に今度の侍女はどうしようもありませんわね。先生に言い訳もできずに、男とイチャイチャしているなんて」

私は真っ赤になった。
もう絶対にマチルダは許さない!
私は心に決めたのだ。

「す、すみません」
慌ててブラッドの抱擁から逃れる。
ブラッドも何故か真っ赤になっている。

「マチルダさん。貴方がパトリシアさんを連れ出したんでしょう」
「だって、先生、あのままにしてそこに置いておいたら彼女はローズさんに虐め殺されていましたよ」
「な、何言うのよ! 私があんたに虐めらていたの間違いでしょう」
ローズが切れて言ってくれた。泣いていたのは収まったみたいだ。

「そんな、滅相もございませんわ。我が帝国のちっぽけな子爵風情が、畏れ多くも、このリーズ王国の大侯爵様のご令嬢を虐められるわけは無いではありませんか」
なんかマチルダは殊勝な事を、いや違う、絶対に嫌味だ、を言っていた。

「良くあんたがそんなこと言うわね。女の魅力がそこのパトリシア以下とか言って散々虐めたくせに」
「何をおっしゃっていらっしゃるのだか。そんなことを私が言うわけはありません。
先生、私はそれよりも、ローズさんが王太子殿下とヒシっと抱き合っておられる場面に出くわしてしまって、恥ずかしくて、その場にいたたまれなかっただけですわ」
とんでもないことをマチルダが言い出したんだけど。

「な、何を言うのよ。あれはあなたに虐められて泣き出した私を王太子殿下が慰めて頂いただけで」
真っ赤になってローズが言うんだけど。

「ああ、もうわかりました。とりあえず、マチルダさんとパトリシアさんは後で私の所に来なさい」
先生が言ってくれた。

「ええええ! 先生、侯爵家と王家をえこひいきするんですか」
マチルダが大声で言い出すんだけど。

「ちょっと、どういう意味よ」
「だって、公衆の面前で王太子殿下と大侯爵令嬢がヒシっと抱き合っていたのに」
「ああ、もうわかりました。殿下とローズさんにも話は聞きます」
「判りました。一緒に怒られるなら仕方ありませんわ」
「な、何で私が……」
「もういいですね。説明に戻ります。二人はすぐに席に座って」
先生は怒って言ったので、ローズは言い訳できなかった。

でも、今回の事で、絶対に私は先生に目をつけられた。私は今後の学園生活が禄でもないものになる未来しか見えなかったのだ

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