上 下
48 / 82

慌ててクラスのホームルームに戻ったら放課後、先生に呼び出されることになりました

しおりを挟む
私はいろいろとマチルダに教えてもらったのだ。

やっぱり、マチルダはアラプール公爵家のご令嬢だそうだ。こちらにはその父からもらったデール子爵を名乗っているのだとか。流石公爵家、子爵家を持っているのが凄い! それもリーズ王国の子爵家ではなくて、本国の子爵家だ。領地も我が男爵家の10倍以上はあり、何でもデカイ鉱山まであるそうだ。
羨ましい限りだ。そう言ったら、
「あんたはヒロインなんだから良いじゃない」
って言うんだけど、良いと思うなら、あなたは何故ヒロインにならなかったのよ!
絶体に何かあるはずだ。

そもそも天国でもいろいろやらかせてくれて、この世界に追放されたのだとか。出来たら私と一緒にこの世界で生きたいとか余計な事を黒服に言ってくれていたらしい。

「今世は前世と違って静かにつつましく、生きたいと思っていたのに」
私がポロリと本音を言うと

「あんた、魔法少女なのよ。どうやって静かにつつましく生きるのよ。それに、もう十分に目立っていると思うけど」
マチルダが言ってくれるんだけど。

「あなたに会うまでは十分に静かにしていたわよ」
私が反論すると、

「はああああ」
盛大に溜息つかれてしまったんだけど……

「あんたね。既にローズとブラッドの二人の仲を引き裂いたのは貴族社会では有名よ。帝国にいた私でさえ聞いたんだから」
「えっ、帝国にまで悪名が響いているの?」
私は驚いてマチルダを見た。

「リーズ王国の名門アープロース侯爵家のお嬢様から女の魅力を使ってパーマン侯爵家令息を寝取った悪役令嬢パトリシアの名前は有名よ」
「そんな」
私は思わずその場に膝をついてしまった。

「私も話を聞いた時は豊満な胸を見せびらかせて女の魅力で男どもを寝取っていく淫乱女を想像したのよ。あの藤崎さんが何食べたらそんな体になったんだろうって不思議だったんだけど、実物見たらデマだってことが良く判ったわ」
こいつ、相も変わらず、オブラートに包まない言い方してくれる。

「まあ、そのあたりの事はおいおい聞くとして、さすがにそろそろ教室に行かないと担任が怒るわよ。担任は厳しくて有名だそうだから」
「あっ、そうよ。入学式!」
私は入学式の前に会場にも入らずに出て来たのを思い出した。

「何言っているのよ。入学式なんてとっくに終わっているわよ。王太子や学園長の馬鹿が長々話をしていてもね。今はホームルームの時間かしら」
「ちょっと、すぐに教室に行きましょうよ」
「えっ、でも、教室がどこか判らないわよ」
平然とマチルダは言ってくれるんだけど。

「うそ、あんた判っていないの?」
そういう事は詳しいはずなのに。

「もう、あんた、私の侍女をすることになったんだから、もっとしっかりしてよね。まあ、方向音痴の藤崎改めパティにそんな事は期待していないけど」
何かムカつくことを平然と言ってくれるが、その通りなので、私は何も否定しない。

「おそらくこっちよ」
私はマチルダに引き連れられて、校舎の中に入って行った。

そして、最初の扉で止まる。
その前にはA組とでかでかと書かれていた。

扉をがらりとマチルダはあけると私をポンと中にほうり込んでくれたのだ。

次の瞬間、全員の鋭い視線をもろに受けてしまったのだ。

ちょっと、マチルダ……

「マチルダさ……あなたは誰です」
教壇に立っていたロッテンマイヤーさんばりの眼鏡のきつそうな女性が注意しようとして相手が違ったので私に名前を聞いてきた。
「パ、パトリシア・ロウギルでちゅ」
私は思いっきり噛んでしまった。

「はあ、何ですか、その答え方は? あなた言葉もまともに話せないのですか」
「す、すみまちぇん。き、緊張ちてちまって」
もう嚙みまくりだ。だって、先生が鬼婆みたいに怖かったのだ。

「はああああ? あなた、その話し方は私を馬鹿にしているんですか?」
「……」
私はこれ以上怒らせるわけにもいかずに、もう首を振る事しかできなかった。
「貴方、話せないんふりしてももう無理ですよ!」
でも、それが更に先生の怒りに油を注いでしまったみたいだ。

「そもそも、あなた入学式をサボるなんてどういう事なんですか。登校していたのに、マチルダ嬢と一緒にどこかに遊びに行ってしまったとか。前代未聞の事です」
このまま、延々怒られるのか?
と思った時だ。ぐいっと私は横に退けられたのだ。
そのまま、ブラッドの席に突っ込んでいった。
そのまま、ブラッドに抱きとめられて、でも、ガンガラガッチャンといすごと地面に押し倒していた。

「本当に今度の侍女はどうしようもありませんわね。先生に言い訳もできずに、男とイチャイチャしているなんて」

私は真っ赤になった。
もう絶対にマチルダは許さない!
私は心に決めたのだ。

「す、すみません」
慌ててブラッドの抱擁から逃れる。
ブラッドも何故か真っ赤になっている。

「マチルダさん。貴方がパトリシアさんを連れ出したんでしょう」
「だって、先生、あのままにしてそこに置いておいたら彼女はローズさんに虐め殺されていましたよ」
「な、何言うのよ! 私があんたに虐めらていたの間違いでしょう」
ローズが切れて言ってくれた。泣いていたのは収まったみたいだ。

「そんな、滅相もございませんわ。我が帝国のちっぽけな子爵風情が、畏れ多くも、このリーズ王国の大侯爵様のご令嬢を虐められるわけは無いではありませんか」
なんかマチルダは殊勝な事を、いや違う、絶対に嫌味だ、を言っていた。

「良くあんたがそんなこと言うわね。女の魅力がそこのパトリシア以下とか言って散々虐めたくせに」
「何をおっしゃっていらっしゃるのだか。そんなことを私が言うわけはありません。
先生、私はそれよりも、ローズさんが王太子殿下とヒシっと抱き合っておられる場面に出くわしてしまって、恥ずかしくて、その場にいたたまれなかっただけですわ」
とんでもないことをマチルダが言い出したんだけど。

「な、何を言うのよ。あれはあなたに虐められて泣き出した私を王太子殿下が慰めて頂いただけで」
真っ赤になってローズが言うんだけど。

「ああ、もうわかりました。とりあえず、マチルダさんとパトリシアさんは後で私の所に来なさい」
先生が言ってくれた。

「ええええ! 先生、侯爵家と王家をえこひいきするんですか」
マチルダが大声で言い出すんだけど。

「ちょっと、どういう意味よ」
「だって、公衆の面前で王太子殿下と大侯爵令嬢がヒシっと抱き合っていたのに」
「ああ、もうわかりました。殿下とローズさんにも話は聞きます」
「判りました。一緒に怒られるなら仕方ありませんわ」
「な、何で私が……」
「もういいですね。説明に戻ります。二人はすぐに席に座って」
先生は怒って言ったので、ローズは言い訳できなかった。

でも、今回の事で、絶対に私は先生に目をつけられた。私は今後の学園生活が禄でもないものになる未来しか見えなかったのだ

**************************************************************

ここまで読んで頂いて有難うございます。
御忙しい中、ブックマーク、感想等して頂いてとても嬉しいです!




しおりを挟む
script?guid=onここまで読んでいただいてありがとうございます。

私の絶賛発売中の書籍化作品はこちら
『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/302627913

7月5日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。



この次の新作はこちら
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/497818447

前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。もう二度と会う訳はないと思っていたのに……
感想 3

あなたにおすすめの小説

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

寡黙な貴方は今も彼女を想う

MOMO-tank
恋愛
婚約者以外の女性に夢中になり、婚約者を蔑ろにしたうえ婚約破棄した。 ーーそんな過去を持つ私の旦那様は、今もなお後悔し続け、元婚約者を想っている。 シドニーは王宮で側妃付きの侍女として働く18歳の子爵令嬢。見た目が色っぽいシドニーは文官にしつこくされているところを眼光鋭い年上の騎士に助けられる。その男性とは辺境で騎士として12年、数々の武勲をあげ一代限りの男爵位を授かったクライブ・ノックスだった。二人はこの時を境に会えば挨拶を交わすようになり、いつしか婚約話が持ち上がり結婚する。 言葉少ないながらも彼の優しさに幸せを感じていたある日、クライブの元婚約者で現在は未亡人となった美しく儚げなステラ・コンウォール前伯爵夫人と夜会で再会する。 ※設定はゆるいです。 ※溺愛タグ追加しました。

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません

ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。 そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。 婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。 どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。 実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。 それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。 これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。 ☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

処理中です...