47 / 82
ゲームの中身が少しわかりましたが、絶対に私はヒロインは無理だと思いました
しおりを挟む
マチルダによると、この世界は日本全体で一千万本も売れた、不朽の名作乙女ゲーム『リーズの聖女』なんだそうだ。小説も何百万部も売れて、アニメ化、映画化されたお化け乙女ゲームだそうだ。
ヒロインの聖女の可憐さと、主人公の皇子様のカッコよさ、それに悪役令嬢のこれでもかという、いじめの凄さと存在感が、圧倒的に支持されたのだとか。
「まあ、悪役令嬢の可愛さと悪に立ち向かう、正義感の高さが一番人気だったけれどね」
さすが元町田さん、自分を一番美化しているのは前世と一緒だ。
「なんであなたが知らないのよ?」
完全に私を馬鹿にして言ってくれるんだけど……
ブラック企業に勤めていて、家には毎日終電で帰っていた私には、そんなのやる暇も無かったわよ!
「相変わらず、私と別れてからも流され人生送っていたのね」
残念な物を見る様にマチルダは私を見てくれるんだけど。
「でも、ここからは私がちゃんとあなたの面倒も見てあげるから大丈夫よ」
マチルダが太鼓判を押してくれるんだけど……
「ええ?」
「なによ、その不満そうな声は?」
「だって、碌な事になりそうにないんだけど」
「何言っているのよ。そんな訳ないでしょ」
「はああああ! よく言うわね。今もあなたのせいで殴られたのよ」
「殴られたって頬を撫でられたくらいじゃない。全然大したことないわよ」
ムッとして私が言うと、平然とマチルダは言ってくれた。
でも前世でもマチルダの言う通りにしてろくな目にあった記憶がないんだけど……
「あなたね、攻略者の一人のブラッドに好意を持たれているからって喜んでいちゃだめよ。彼に好意を持たれるなんて基本の基本なんだから」
「誰が喜んでいるのよ。そもそもブラッドに好意なんて寄せられていないわよ。ブラッドは私を護衛にしたいだけでしょ」
「えっ?」
心底驚いた顔をマチルダはした。
「そう言えば、この子は恋愛に疎いんだったわ」
何か平然と人を侮辱してくれるんだけど。
「何言ってるのよ。私も恋くらい知っているわよ」
「まさか、ペットのぴーちゃんに恋しているって言うんじゃないでしょうね」
「そんな事はないわよ」
私はぼそりと小さい声で言った。決してマチルダに言葉を先に言われたからではない。
マチルダが頭を抱えている。
「あなた、ひょっとして、ぴーちゃんの正体もしらないんじゃ無いでしょうね?」
「えっ?、ぴーちゃんってかわいい私のペットよ」
「はああああ、頭痛い。こんな奴に宝の持ち腐れだわ」
頭片手で押さえて何かマチルダが言っている。
「何よ!」
私がむっとして言うと
「まあ、良いわ。判った。あんたのペットは最強だから。何かに襲われた時は頼ればいいわ。相手が古代竜でない限り絶対に勝てるから。古代竜でも互角よ」
「何言っているのよ。そんなの可愛いぴーちゃんにはムリよ」
私の言葉にマチルダは今度は両手で頭を抱えているんだけど、
「良いわね。いざという時はその相手に向けてぴーちゃんをぶつければ良いわ。絶対に勝てるから」
そんなのできるわけは無いと思いつつ、あまりのマチルダの勢いに思わず頷いてしまった。
「それとブラッドだけど、痴話げんかに巻き込まれたらあなたの死亡エンドもあるから気を付けてね。まあ、それは防いであげたと思うけど」
何で恋人でもないブラッドの痴話げんかに巻き込まれるのか良く判らなかったが、私は適当に頷いた。
「あなたの攻略対象は四人よ。裏ルートもあるけどそれは取り合えず今は良いわ」
マチルダが説明を始めた。
「メインは帝国の第三皇子ね」
「えっ、私、この国の男爵令嬢でしかないのよ。どうやって帝国の皇子様と釣り合うのよ」
「でも、あなた無敵の魔法少女じゃない。十分にそれだけで釣り合うわよ」
「そうかな」
まあ、そういうものかもしれないが……
「それとブラッド」
「えっ? ブラッドもなの」
「何言っているのよ。今も親しいでしょ」
「親しいって、助けただけよ」
「助けられて恋に落ちたんじゃないの」
「そうかな、そうは見えないけど」
私の言葉にまた、マチルダが頭を抱えているけれど、何でだ?
「それと帝国の第二皇子。でも彼の場合性癖がね。彼とくっついたら監禁奴隷エンドだから」
「えっ? なによそれ」
「地下牢に監禁されて日々調教されるのよ。第二皇子の性格はゆがんでいるから」
どうでもいいけれど、何で帝国の皇子が何人も出てくるのだ。ここは帝国の属国と言っても辺境の地だ。あり得ないんだけど。
「それと、さっきのヘタレの王太子」
「ないない、絶対にないから。そんな畏れ多い」
私は首を振った。
「あんた何言っているのかわからないけれど、高々辺境の属国の王妃よ。全然大したことないんだから」
「それは帝国の大貴族、公爵令嬢のあなたから見たらでしょ」
私が呆れて言うと、
「まあ、それはそうだけれど」
そこで頷くなよ。それはそう思うけれど、友だちを慮ってもう少しオブラートに包むとか、いや、無理だ。町田さんにオブラートにつつむなんて真似出来るわけない。この子なら絶対に正直に洗いざらいズバズバと話してしまうんだった。
「なんか文句があるの?」
私の残念なものを見るような視線を感じたのか、マチルダがぎろりとこちらを睨んでくれたんだけど……
「なんでもない」
私は慌てて首を振った。変なこと言うと、後でその仕返しが怖いのだ。
でも、私に帝国の皇子様が目をつけるなんてあり得ないんだけど。
私は既に目をつけらられているのを全く知らなかったのだ。
ヒロインの聖女の可憐さと、主人公の皇子様のカッコよさ、それに悪役令嬢のこれでもかという、いじめの凄さと存在感が、圧倒的に支持されたのだとか。
「まあ、悪役令嬢の可愛さと悪に立ち向かう、正義感の高さが一番人気だったけれどね」
さすが元町田さん、自分を一番美化しているのは前世と一緒だ。
「なんであなたが知らないのよ?」
完全に私を馬鹿にして言ってくれるんだけど……
ブラック企業に勤めていて、家には毎日終電で帰っていた私には、そんなのやる暇も無かったわよ!
「相変わらず、私と別れてからも流され人生送っていたのね」
残念な物を見る様にマチルダは私を見てくれるんだけど。
「でも、ここからは私がちゃんとあなたの面倒も見てあげるから大丈夫よ」
マチルダが太鼓判を押してくれるんだけど……
「ええ?」
「なによ、その不満そうな声は?」
「だって、碌な事になりそうにないんだけど」
「何言っているのよ。そんな訳ないでしょ」
「はああああ! よく言うわね。今もあなたのせいで殴られたのよ」
「殴られたって頬を撫でられたくらいじゃない。全然大したことないわよ」
ムッとして私が言うと、平然とマチルダは言ってくれた。
でも前世でもマチルダの言う通りにしてろくな目にあった記憶がないんだけど……
「あなたね、攻略者の一人のブラッドに好意を持たれているからって喜んでいちゃだめよ。彼に好意を持たれるなんて基本の基本なんだから」
「誰が喜んでいるのよ。そもそもブラッドに好意なんて寄せられていないわよ。ブラッドは私を護衛にしたいだけでしょ」
「えっ?」
心底驚いた顔をマチルダはした。
「そう言えば、この子は恋愛に疎いんだったわ」
何か平然と人を侮辱してくれるんだけど。
「何言ってるのよ。私も恋くらい知っているわよ」
「まさか、ペットのぴーちゃんに恋しているって言うんじゃないでしょうね」
「そんな事はないわよ」
私はぼそりと小さい声で言った。決してマチルダに言葉を先に言われたからではない。
マチルダが頭を抱えている。
「あなた、ひょっとして、ぴーちゃんの正体もしらないんじゃ無いでしょうね?」
「えっ?、ぴーちゃんってかわいい私のペットよ」
「はああああ、頭痛い。こんな奴に宝の持ち腐れだわ」
頭片手で押さえて何かマチルダが言っている。
「何よ!」
私がむっとして言うと
「まあ、良いわ。判った。あんたのペットは最強だから。何かに襲われた時は頼ればいいわ。相手が古代竜でない限り絶対に勝てるから。古代竜でも互角よ」
「何言っているのよ。そんなの可愛いぴーちゃんにはムリよ」
私の言葉にマチルダは今度は両手で頭を抱えているんだけど、
「良いわね。いざという時はその相手に向けてぴーちゃんをぶつければ良いわ。絶対に勝てるから」
そんなのできるわけは無いと思いつつ、あまりのマチルダの勢いに思わず頷いてしまった。
「それとブラッドだけど、痴話げんかに巻き込まれたらあなたの死亡エンドもあるから気を付けてね。まあ、それは防いであげたと思うけど」
何で恋人でもないブラッドの痴話げんかに巻き込まれるのか良く判らなかったが、私は適当に頷いた。
「あなたの攻略対象は四人よ。裏ルートもあるけどそれは取り合えず今は良いわ」
マチルダが説明を始めた。
「メインは帝国の第三皇子ね」
「えっ、私、この国の男爵令嬢でしかないのよ。どうやって帝国の皇子様と釣り合うのよ」
「でも、あなた無敵の魔法少女じゃない。十分にそれだけで釣り合うわよ」
「そうかな」
まあ、そういうものかもしれないが……
「それとブラッド」
「えっ? ブラッドもなの」
「何言っているのよ。今も親しいでしょ」
「親しいって、助けただけよ」
「助けられて恋に落ちたんじゃないの」
「そうかな、そうは見えないけど」
私の言葉にまた、マチルダが頭を抱えているけれど、何でだ?
「それと帝国の第二皇子。でも彼の場合性癖がね。彼とくっついたら監禁奴隷エンドだから」
「えっ? なによそれ」
「地下牢に監禁されて日々調教されるのよ。第二皇子の性格はゆがんでいるから」
どうでもいいけれど、何で帝国の皇子が何人も出てくるのだ。ここは帝国の属国と言っても辺境の地だ。あり得ないんだけど。
「それと、さっきのヘタレの王太子」
「ないない、絶対にないから。そんな畏れ多い」
私は首を振った。
「あんた何言っているのかわからないけれど、高々辺境の属国の王妃よ。全然大したことないんだから」
「それは帝国の大貴族、公爵令嬢のあなたから見たらでしょ」
私が呆れて言うと、
「まあ、それはそうだけれど」
そこで頷くなよ。それはそう思うけれど、友だちを慮ってもう少しオブラートに包むとか、いや、無理だ。町田さんにオブラートにつつむなんて真似出来るわけない。この子なら絶対に正直に洗いざらいズバズバと話してしまうんだった。
「なんか文句があるの?」
私の残念なものを見るような視線を感じたのか、マチルダがぎろりとこちらを睨んでくれたんだけど……
「なんでもない」
私は慌てて首を振った。変なこと言うと、後でその仕返しが怖いのだ。
でも、私に帝国の皇子様が目をつけるなんてあり得ないんだけど。
私は既に目をつけらられているのを全く知らなかったのだ。
10
私の絶賛発売中の書籍化作品はこちら
『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/302627913
7月5日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。

表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。
この次の新作はこちら
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/497818447
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。もう二度と会う訳はないと思っていたのに……
お気に入りに追加
209
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします
希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。
国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。
隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。
「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

塩対応の公子様と二度と会わないつもりでした
奏多
恋愛
子爵令嬢リシーラは、チェンジリングに遭ったせいで、両親から嫌われていた。
そのため、隣国の侵略があった時に置き去りにされたのだが、妖精の友人達のおかげで生き延びることができた。
その時、一人の騎士を助けたリシーラ。
妖精界へ行くつもりで求婚に曖昧な返事をしていた後、名前を教えずに別れたのだが、後日開催されたアルシオン公爵子息の婚約者選びのお茶会で再会してしまう。
問題の公子がその騎士だったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる