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皇子視点 命を救ってくれたピンクの衣の美少女に一目惚れしました

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俺の正式な名前はヴァージル・フレーザー、帝国の第三皇子だ。
そして、俺の母は属国になったリーズ王国の元王女の娘だった。
属国になって王族は幽閉、その獄中で産まれた孫娘を不憫に思ったとある貴族が養女として育てて、王宮に侍女として出仕させていたのに、我が父の手がついたのだ。

そして、産まれたのが俺だ。

俺の母方の親族の殆どは幽閉されて亡くなっていた。

母も幼いときに亡くなって俺は殆ど一人になった。

そんな俺がこの魑魅魍魎の跋扈する王宮では生きていくのが大変だった。

俺は母の養い親の辺境伯の助けもあって、何とか生き残れていた。

我が帝国は長子相続ではない。実力主義なのだ。
そして、何故か俺は他の皇子たちに比べて魔力量が多かったのだ。その点を嫉妬したのか第一皇子の母の王妃からは毛嫌いされた。
何度か毒を盛られた事もある。

自分として帝位に興味はなくとも生き残るためにはいろいろとやるしかなかったのだ。

そんな俺が8歳の時に興味を抱いたのが、古代竜だった。

帝国のシンボルは古代竜なのだ。

山奥に住むそれは帝国の誕生期に初代皇帝に付いて国を起こすのを手伝ったと言う言い伝えがあるのだ。

その古代竜を配下にすれば、帝位継承レースにおいて優位になるのではないかと思ったのだ。

古代竜は切り立った山奥に住んでいるのだが、その卵を失敬して産まれた時から育てれば刷り込みになって懐いてくれるのではないかと俺は安直に考えてしまったのだ。

俺は俺の護衛とそのちちである辺境伯と一緒に竜の住処に潜り込んだ。

しかし、そこをにいた竜は化け物だった。何十人といた騎士達は怒り狂った竜の爆炎攻撃で一瞬で灰となった。

竜の力は俺が想像する以上に圧倒的だったのだ。

傷ついた俺は何とか卵を抱えて転移するしか出来なかった。

でも、転移して逃げ出すのは成功したが、俺も瀕死の重症で、このままでは死ぬのは時間の問題だった。

虫の息の俺に人が近づいてきたのが判ったが、既に目がぼやけて相手がよく見えなかった。
相手が帝位争いの相手なら、ここで終わりだろう。それでなくてもここは山の中。医療技術も発展していない。生き残れる可能性は少ないのではないか?

そう悲観した時だ。

その相手が光輝いたのだ。俺は何も見えなくなった。

でも、相手が聞いたこともないような異国の言葉を唱えた時だ。俺は光に包まれた。
そして、突然体がポカポカ暖かくなったのだ。昔、生きていた母に抱かれた時のような温もりに包まれた。

薄っすらと目を開けると、見た事もない異国のピンク色の衣を身に纏った少女が俺の目の前に立っていたのだ。

その少女の指先から、光が断続的に放たれていて、それが俺を覆っていた。それは回復魔法だったと元気になった後に気づいた。

でもその時には暖かな光に包まれて、ここは天国なのかと感極まってしまった。帝位争いの荒んだいつ殺されるか判らない不安を忘れて、俺は心の中までぽかぽかと温かくなった。
俺はそのまま、その少女の優しい魔法の中で意識を失った。


次に気付いた時、俺はベッドの上に寝かされていた。

そして、やたらベタベタくっついて来る少女がいたのだ。

この子が俺を治してくれたのか? 

でも何か感じが違う。

それに俺はベタベタされるのは嫌だ。

そして、俺は知らせを聞いて、慌てて飛んできたこの国の宰相の家来達に宰相の家に連れて行かれたのだ。


俺は宰相から、俺に好意的だった辺境伯が今回の件で亡くなったのを初めて、知った。

俺は後ろ盾を完全に無くしてしまったのだ。もう俺が帝位を継ぐことはないだろう。宰相の便宜によって、俺は母の出身のリーズ王国でリコニック子爵としてしばらく生きていくことにしたのだ。

今回の件で俺はもう帝位なんてどうでも良くなっていた。

この帝国の属国でのんびり生きていくのも良いかと思ってしまったのだ。

そんな中、俺は良くピンクの少女を思い出していた。

顔の細かい輪郭は意識が朦朧としていたのではっきりとはわからないが、その美しい立ち居振る舞いを思い出していた。

異国の少女かもしれない。

異国の言葉のような彼女の呪文が頭の中に何回もリフレインした。

美しいピンクの輪郭とともに……

そう、俺はあの神々しい姿形に恋していたのだ。

俺はさっそく、その少女を探すことにした。

しかし、いくら探してもあの辺りには異国のピンクの衣装を着た少女などいないのだ。

俺を介護していた村長のところにはあのやたらと馴れ馴れしい娘しかいなかった。でも、絶対にあれは違う。

でも、彼女が言うにはピンクの衣装を着て俺を看護したというのだ。

治療魔法に関しては、神に祈っていたら急に輝きだして俺が治ったとか言っているらしい。

しかし、派遣した宰相の部下によると再現性はないらしい。

「あの時は必死だったので、何故あんな事ができたかはわからない」との事だったが……

俺も何度かその少女に会いに行ったが、その度に彼女はピンクの少女ではないと思えて仕方がなかった。

しかし、俺も命の恩人らを無碍にすることも出来ずに、宰相に頼んだら、形だけ男爵にしてくれた。領地は無いが。まあ、下手に領地のない方が豊かな生活が送れるだろう。

この馴れ馴れしい彼女も王立学園に入れて教育すれば治療魔法をまた発現してくれるかもしれない。

そして、俺はいつもは絶対に行かないのに、今回は入学式に合わせてわざわざその子を迎えに行ったのだ。
虫が知らせたとしか言いようがなかった。

俺はそこで彼女に会ったのだ。
**************************************************************

ここまで読んで頂いてありがとうございました。
王子様視点でした。
さてここから話は大きく動いていきます。
恋愛視点で……
悪役令嬢の登場まで後少しです……
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script?guid=onここまで読んでいただいてありがとうございます。

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感想 3

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