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侯爵令息は私に平謝りに謝って父の言葉に何故か赤くなっていました

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「パーマン侯爵家のブラッドリー様がいらっしゃいました」
ケインの声に
「えっ、パトリシアがちょっかいをかけた本人が来られたのか?」
「そんな、大変ですわ。慰謝料を請求しに来たに違いありません」
男爵の声に驚いて義母が叫びだしたんだけど。
それで皆が更にパニックになった。

「ちょっとパトリシア、どうしてくれるのよ!」
「本当よ。それでなくても金が無いのに!」
「お前は追放だ! もう今からは一切男爵家と関係ないぞ」
最後の男爵家の一言に私は完全に切れた。
ふんっ、こんな男爵家こちらから縁切ってあげるわ!
私がそう叫ぼうとした時だ、

「あのう、誠に申し訳ない」
ケインの後ろから声がしたのだ。

「な、お前はだ……」
叫ぼうとした父が口を開いたまま、止まってしまった。

そこにはすまなさそうに立っているブラッドリーがいたのだ。

「これはこれは、侯爵令息様。このようなあばら家にようこそいらっしゃいました」
真っ先に我に返ったのは義母だ。
早速立ち上がって、挨拶するや

「どうぞ、こちらにおかけ下さい」
営業スマイルを振りまいているんだけど、今までの私に対する罵声を発していた態度はどうしたの?

「本当ですわ。この度は妹が大変ご迷惑をおかけしました」
「スカーレット、このような恥知らずの娘はもう我が家とは縁がないぞ」
スカーレットの言葉に男爵が言うんだけど。

「いや、男爵、この度のことは周りの誤解があるのだ」
ブラッドリーが言い訳を始めるんだけど、

「誤解と言われますと」
「パトリシア嬢は何も悪くないのだ」
男爵の言葉にブラッドリーが答えてくれるんだけど、それはアープロース侯爵家で言えよ!

「しかし、パトリシアは貴方様に色目を使ったと侯爵家から首になりまして」
「いやあ、そこが誤解なのだ。彼女の機転のお陰で、ローズ嬢も私も無事に済んだのだ。彼女にはどれだけお礼を言っても言い過ぎではない」
男爵の言葉にブラッドリーは言い訳してくれるんだけど、
「えっ、そうなのですか? まあ、私もパトリシアがそんな酷いことをする訳はないと信じていたのですが」
義母がいきなり態度を変えて言い始めるのだが、あなた今私とは縁を切ると言ったところよね!
私がにらみつけると
「左様でございましたか。パトリシアはそんな事お首にも出しませんでしたから、私達も良く事情が判らなくて、つい取り乱してしまいました」
男爵までが言ってくれるんだけど。
お前こそ縁を切るって言ったよね!

もう私の頭は怒りで沸騰していたんだけど。

「しかし、侯爵令息様。アーブロース家ではお嬢様がたいそうお怒りだとか」
お兄さまが恐れる様に言い出したんだけど。

「まあ、ちょっと今はさらわれた後でローズ嬢も気が立っているんだ。私も誤解を解くようにするから、そこは安心してほしい」
「本当でございますか? 我が男爵家はご覧のように吹けば飛ぶような家でございまして、アーブロース侯爵家から睨まれたら生きていけないと悲観して負ったところなのです」
「それは安心してほしい。たとえ侯爵の誤解が解けなくとも、万が一の時は我が侯爵家が全面的に男爵家を守らせていただくから」
自信をもってブラッドリーは言ってくれた。

「本当にございますか? それならば安心でございますな」
「本当よね、ねあなた」
途端に現金なもので男爵家の一同は喜びだしたんだけど。

「という事で男爵、パトリシア嬢と少しの間二人きりで話させてほしいのだが」
「左様でございますか」
「よろしく頼む」
「パトリシア、令息様に粗相の無いようにね」
「本当よ。絶対に余計な事はしないのよ」
母娘でわたしに釘を刺してくれるんだけど、それは知らない。

「では、令息様、私達は隣の部屋におりますから、いつ何なりとお呼び下さい」
義母達は心配そうに私達を見て、隣の部屋に移って行ったんだけど……

でも、私は許さない。こいつが抱きついてきたお陰で侯爵家から追い出されたのだ。

借りは返すと言いながら全然返していないではないか!

私が怒鳴りつけようとしたのだが、皆が出た途端だ。

「パトリシア嬢、申し訳なかった」
いきなりブラッドリーが頭を下げてきたのだ。

「本当よ。何よ。私が無理してあなた達を助けてあげたのに、あんたが抱きついてきたから侯爵家から追い出されてきたじゃないの。どうしてくれるのよ!」
私が詰め寄ると

「申し訳ない。ローズ嬢にも説明したんだが、彼女も気が立っているみたいで、聞いてくれなくて」
「それはそうでしょう! いきなり婚約者から婚約はなかったことにしてほしいなんて言われたら誰でもああなるわよ」
私は切れて言うと、
「いや、本当に申し訳ない。この借りは絶対に倍にして返すつもりだ」
「じゃあ、今すぐお嬢様との婚約解消を取り消してよ」
「すまない。それは出来ない」
私の提案にこいつは速攻拒否してくれたんだけど、どういう事だ? 全然悪いと思っていないのでは?

私がにらみつけると
「すまない。私は自分の心には正直なのだ」
ブラッドリーは訳の判らないことを言ってくれるんだけど……
何故か私を見る目が熱いんだけど、こいつ熱でもあるのか?
水の中には突っ込ませていないはずだ。本当にほっておいて溺れさせれば良かった。私が後悔した時だ。

「今回君が被った被害については我がパーマン侯爵家で肩代わりさせていただく」
勝手にブラッドリーが言ってくれるんだけど、それはお金を払ってくれるという事?
まあ、それは当然だけど……
金と聞いて私のトーンは少し下がった。

「詳しくは後で男爵と詰めさせてもらう。それで許してくれないだろうか?」
「でも、私の悪い噂はどうしてくれるのよ! 勤め先のお嬢様の婚約者に色目を使って婚約解消させたって奴は。そんな噂たったら次の勤め先がないじゃない」
私はブラッドリーに食って掛かった。

「その分も含めて賠償させていただく。そうか、あなたが我が侯爵家で働いてくれてもいいが」
急に喜びだしてブラッドリーが言うんだけど。
「それは嫌よ。私が色目を使って職場を変えたことになるじゃない。あなたの屋敷の使用人たちからも白い目で見られるのは確実でしょう」
そんな処で働きたくはなかった。

「そうか、それは残念だな」
何が残念何だか、全然わからないが、ブラッドリーは落ち込んでいた。私を護衛にでも使いたかったのか? 甘いわよ。私はそんなに安くないのよ!

「まあ、そうだよな。あんなみっともない所を君には見せたし……でも、今回、君に助けられたことで、俺は自分の不甲斐なさが良く判った。自分自身、もっと強くなって君に認めてもらうように頑張るつもりだ。だからそれまで待ってほしい」
こいつはいきなり、何を言っているんだろう?
待てって、賠償金の支払いを待つって事? そして、踏み倒すつもりだろうか?
私が危惧した時だ。

「取り敢えず、これは俺の気持ちだ。受け取って欲しい」
何か茶色い色のペンダントを取り出したんだけど。

「これは年代物ですな」
いきなり手が出てきてそれをケインが受け取ったんだけど……どうしてあんたが受け取るのよ!

「これが侯爵家のお気持ちですか?」
私をむっとした無視してケインはブラッドリーに話し出すんだけど、

「いや、賠償は別にさせていただく。これはパトリシア嬢に俺からのお礼だ」
「侯爵令息様。賠償の話は本当でございますか?」
開いていた扉から義母がその言葉に飛んできたのだ。
おいおい、どうなっているのよ?

「失礼ですが、いかほどに」
ケインは恥ずかしげもなく額面を聞いているし、
「な、なんと、それだけも頂けるのですか」
ブラッドリーから聞いた途端に上機嫌になったのだけど、
「だから許してもらえるだろうか」
「それだけ頂けるのならば、許すも何もございません」
父の男爵まで入ってきた。

「さすが、パーマン侯爵家は太っ腹ですな」
「お父様、それだけあれば私も宝石買っても良い?」
「私もドレスを新調したいのだけど」
「私は流行りの日傘が」
皆が中に入ってきて好きなことを話しだしたものだからもう訳がわからなくなってきた。

「だから私がパトリシア嬢にちょくちょく会いに来させて頂いてもいいだろうか」
「全然、構いません。何でしたら愛人にでもして頂けたら」
「いや、流石にそれは」
そこのボケ父、何を言うのよ! 私は切れたが、ブラッドリーが真っ赤になっているんだけど、何故だ?

もうてんやわんやでフラッドリーが私に何を話したかったかは良く判らなかったのだ!


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侯爵令息は何をしに来たのか?
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