上 下
32 / 82

お嬢様の婚約者の侯爵令息視点 敵を罠にかけようとして逆に罠に嵌りました

しおりを挟む
俺はブラッドリー、パーマン侯爵家の嫡男だ。
我がパーマン侯爵家は50年前の帝国との戦争で、裏切り者の汚名を着つつ、国を救った恩賞で伯爵家から侯爵家に昇爵した。
当時の国王は勝てるわけはないのに、帝国に戦争を挑んだ無能者だ。そのせいで多くの兵士が死んだのだ。

陛下の甥の公爵が王家に対して決起して当時の国王を捕まえなければ、我がリーズ王国は滅んでいただろう。その恩賞でなんとか帝国に併合されずに、独立国として我がリーズ王国は存続できたのだ。
属国とは言っても拘束されることもほとんど無く、唯一全取れ高の5%を帝国に軍事費として収めれば良いという我が方有利な条件であった。
軍事以外の制約はない。

帝国内の経済圏に入れたので、税金も無くなり、穀物も安く入るようになった。
昔から守られていてた地場産業で染め物とか衣料品は帝国の安い製品に負けて衰退したが、果物など、多くの農産物が輸出できるようになって我が国にとってはプラスになったはずだ。

もっとも、どこの国でも不平分子はいるもので、我が国にも不満分子はいる。
最近は独立派なる前国王の血縁を担ぐ不届き者が跋扈しているという情報は入っていた。

ただ、全てを取り締まると不平不満が溜まるので、一部はガス抜きの意味でも泳がせていた。

そんな中、私の婚約者が守旧派のアーブロース侯爵家の娘、ローズに決まった。

アーブロース家は帝国との戦いの時に最後に国王を裏切った家で、我が派閥にも入っていなかったが、これを期に我が派閥に取り込もうと父が企んだみたいだ。

アーブロース家は古くからの名家で、下手に独立派に担ぎ上げられても困る。
そんな思惑もあったのだ。

ローズ嬢の情報は我が家の諜報網で調べると、わがままに育った令嬢とあったが、会った感じでは可愛らしい女の子であった。少し気の強い所はあったが……

まあ、これからじっくりと育てていけばよいだろう。

そう俺はそう思っていたのだ。

そんなローズ嬢とのお茶会に出た俺を、にらみつける不遜な侍女がいた。

聞くとロウギルとかいう田舎の男爵家の娘らしい。何でも平民に育てられたそうで、礼儀作法はあまりなっていないとか。

しかし、俺は自分で言うのも何だが、見目も悪くなく、侯爵家の跡取り息子だ。黄色い声を上げられて寄ってこられることは多々あったが、睨みつけられるのは初めてだった。

その事を側近で騎士見習いのアルフに言うと
「へええええ、ブラッドが睨みつけられるなんて余程酷いことをしたんじゃないか」
笑ってアルフが言ってくれるんだが、出会ったばかりの侍女に悪いことをしようもなかろう。

過去に我が家に恨みのある家の出かもしれないと探ると、独立派の間者、デーリーと接点があるとのことだった。

こいつは新たな独立派の間者か? アーブロース侯爵にももう少し使用人の選定には気を使ってもらうようにしようと考えていると、我が方の手のものからその女とデービーがなんと俺の婚約者と俺を誘拐しようと計画しているとのことだった。

「直ちに捕まえるか? 何だったらその女を捕まえて吐かせればよいだろう」
アルフは言ってくれたが、どういうものだろうか?

一応相手は男爵家の令嬢だ。
手荒なことは中々出来ない。

それに下手に手を出すと、気づかれて他の者に逃走される恐れがあった。

それよりは誘拐されてその敵の本拠に騎士団を突入させたほうがやりやすかろう。

独立派のアジトは既に掴んていた。

俺は突入させるべく変装させて我が騎士団の精鋭50人を待機させたのだ。

「後でアーブロース侯爵から文句が来ないか?」
「屋敷内に独立派を雇い入れたアーブロース家は何も言えないさ」
俺はアルフに答えた。
今回、独立派の手の者を屋敷で雇っていた侯爵の落ち度も問えるだろう。
独立派を一網打尽にできれば、不平を言っている貴族たちもしばらくは大人しくなるはずだ。

俺はゆっくりと婚約者を迎えに行ったのだ。

そして、婚約者と侍女たちと一緒にお忍びで街を歩いた。

女の子の好きそうなカフェでお茶をして、混雑している町並みをウィンドウショッピングしている時にいきなり馬車が飛び込んできたのだ。

「退いてくれ!」
御者が叫んでいる。馬の制御が出来なくなったみたいだ。

騎士たちが必死に止めようとする。

俺は皆を建物の軒下に入れたのだ。

「きゃーー!」
周りは大混乱に陥った。

俺は慌てた。まさか、こんな目立つことをしてくるとは思ってもいなかったのだ。

そうか、これは関係ないのか?

護衛の騎士たちが必死に馬を止めようとしている。


「えっ」
そして、馬車を気にしていたら後ろからナイフを持った男に婚約者が掴まったのだ。
「騒ぐな!」
ローズは真っ青な顔をしている。

「待て」
「キャッ」
俺は慌てて追おうとして突き飛ばされたローズの侍女らにぶつかられたのだ。

男はそのまま、側の建物の中に婚約者と入っていったのだ。

「怖かったです」
俺は抱きついてくる侍女を慌てて剥がすと急いでローズを追いかけた。

しかし、建物の中には誰もいず、反対側の扉が閉まるのを見た。

走って追いつこうとして掴んだ取っ手がチクリとする。

何も考えずに、出ようとして視界がぐらりとするのを感じた。

まさか……毒をもられたのか?

俺は扉を開けた眼の前の馬車に飛び乗って意識が遠くなったのだった。

「ふんっ、俺たちを嵌めようとしたみたいだが、所詮13のガキなんだよ」
吐き捨てられた言葉に反論も出来なかった。
*************************************************************
ここまで読んで頂いてありがとうございます。
頼みの侯爵令息も捕まってしまいました。
やはり最後は魔法少女沙希様の出番?
続きは今夜です。
しおりを挟む
script?guid=onここまで読んでいただいてありがとうございます。

私の絶賛発売中の書籍化作品はこちら
『悪役令嬢に転生したけど、婚約破棄には興味ありません! 学園生活を満喫するのに忙しいです』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/302627913

7月5日全国1200以上の書店にて発売しました。表紙画像は11ちゃんさんです。
表紙画像
表紙絵をクリックしたらレジーナブックスの説明ページに飛びます。



この次の新作はこちら
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました』https://www.alphapolis.co.jp/novel/237012270/497818447

前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。もう二度と会う訳はないと思っていたのに……
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】殿下、自由にさせていただきます。

なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」  その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。  アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。  髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。  見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。  私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。  初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?  恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。  しかし、正騎士団は女人禁制。  故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。  晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。     身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。    そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。  これは、私の初恋が終わり。  僕として新たな人生を歩みだした話。  

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

妹に婚約者を奪われたので妹の服を全部売りさばくことに決めました

常野夏子
恋愛
婚約者フレデリックを妹ジェシカに奪われたクラリッサ。 裏切りに打ちひしがれるも、やがて復讐を決意する。 ジェシカが莫大な資金を投じて集めた高級服の数々――それを全て売りさばき、彼女の誇りを粉々に砕くのだ。

塩対応の公子様と二度と会わないつもりでした

奏多
恋愛
子爵令嬢リシーラは、チェンジリングに遭ったせいで、両親から嫌われていた。 そのため、隣国の侵略があった時に置き去りにされたのだが、妖精の友人達のおかげで生き延びることができた。 その時、一人の騎士を助けたリシーラ。 妖精界へ行くつもりで求婚に曖昧な返事をしていた後、名前を教えずに別れたのだが、後日開催されたアルシオン公爵子息の婚約者選びのお茶会で再会してしまう。 問題の公子がその騎士だったのだ。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません

しげむろ ゆうき
恋愛
 ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。  しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。  だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。 ○○sideあり 全20話

処理中です...