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お嬢様に婚約者が訪ねて来て、帰った後に私が流し目をしたと誤解されました

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「パトリシア・ロウギル!」
やっとロッテンマイヤーさんの叱責から開放されて彼女が去った後、ローズお嬢様は私をきっと睨み据えたのだ。
まあ、私から見たらそうする仕草もとても可愛いのだけど、私の未来を考えると、これは良くない。
謝った方が良いんだろうか?

「あなた、良くも私をこんな目に合わせてくれたわね。それもロッテンマイヤーに言いつけるなんて」
お嬢様は怒って私に言うが、それは違うだろう! お嬢様が自らロッテンマイヤーさんに私を山猿と呼んだのに!

でも、私は怖くて反論できなかった。

「本当に最悪ですね。パトリシアは」
オードリーが更にローズお嬢様を焚き付けるんだけど。
「新入りのくせに、お嬢様に逆らってこの屋敷で生きていけると思うの?」
お嬢様付きのもう一人の年上のデリア・ロッジ伯爵令嬢が脅してくれた。

3対1だ。絶対に勝てない。
ここは日本人の得意技でやり過ごすしか無い。

「すみません。何でもやるので許してください!」
私は恥も外聞も殴り捨てて土下座して謝ったのだった。


「そう、判れば良いのよ」
ローズお嬢様は不敵な笑みを浮かべてくれたんだげと、これは碌でもないのでは無いかと私は恐怖に震えたのだ。



それからが大変だった。

まず、私はお嬢様の部屋を端から端まできれいに掃除させられたのだ。

一番大変なのは部屋の中を照らす魔法ランプ掃除だ。
ランプは魔力で照らす魔法ランプなのでそれ自体は燃えないので煤とかはつかないのだが、どうしても誇りとかはつく。ランプの裏とか結構汚れていた。
それをはしごを使って、一つずつ丁寧に掃除させられたのだ。
これがまたいくつもあって、なおかつはしごから落ちそうで怖いのだけど。

「パトリシア! ランプの端から端まで頑張って掃除するのよ!」
「埃一つ残したらダメだからね」
オードリーとデリアが注意してくれるんだけど。

やばい、落ちそう!

その間、3人は優雅にお茶してくれているんだけど……

ムカついたので3人のお茶の上にホコリを落としてやったのは秘密だ。


3人はかっふの中に浮かんだホコリを見て騒ぎ立てたが、これは紅茶の葉が最上級の葉である証拠だとか私の訳の解らない説明に却って喜んで飲んでいたんだけど……本当に馬鹿だ。

その上、洗濯も私が全てやらされたのだ。
「全部ちゃんと洗うのよ!」
オードリーとデリアが溜まっていた洗濯物を全てだしてくれたんだけど。その多いこと。それにこの二人は私が洗浄魔法を使えないのを知っていてやらせてくれたのだ。

なんて、ひどい奴らだ。

でもって、私って清浄魔法は出来ない。というか、魔法は一つも使えない。

こうなれば人力でやるしか無いと、男爵家でやっていたように手洗い、足洗したんだけど、あれええええ!

メイド服が色落ちして大変なことになってしまった。この家のメイド服は洗浄魔法仕様で、水洗いが想定されていなかったみたいで、完全に色落ちしてしまったのだ。
それにさらに悪いことに、お嬢様のお気に入りの真っ赤なドレスも色落ちしてしまったのだ。

私は青くなってしまった。

おそらく私の賃金では到底弁償出来ない額だ。

どうしよう。バレたらまずい!

私はない頭を必死に働かせたのだ。


「ちょっと、パトリシア! このメイド服、色が少しおかしくない!」
目ざといオードリーが文句を言ってきたんだけど。

「何かお嬢様の専属メイドのだけ、よく目立つように色が少し違うのが出来てきたみたいで」
私が必死に考えた言い訳をすると、

「えっ、そうなの」
「そう言われればこの色もいいわね」
何故か二人は騙されてくれたんだけど。

うっそ! こんなので騙されるの?

私は唖然としてしまった。


「パトリシア。私の赤いドレスはどこ?」
ついにお嬢様にも見つかってしまった。

「さあ、どこでしょう? それよりも王都では今、薄いピンクの色が流行っていると姉が言っていました。この色こそ、まさに王都で流行っているピンク色でございます」
「えっ、そうなの? あなた、田舎の出身なのに、王都の流行りまで知っているなんて!」
お嬢様は感激してくれたんだけど……うっそー
こんなので誤魔化せるの?

私は良心の呵責を感じつつ、主ら三人があまりにチョロいのに驚いた。
そして、にが笑いして誤魔化したのだった。

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