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男爵令嬢三女視点2 家が回らなくなったので、やむを得ずトカゲに罪をなすりつけようとしたらドラゴンになって咆哮されました

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妹のパティに兄嫁のネックレスを盗った罪を捏造するのは上手くいった。

パティは必死に言い訳するのだが、誰もパティを信じない。当然長くいる私の方が信用があるのだ。

皆、パティよりは私の方を信じてくれる。

私よりも付き合いの短いパティを皆が信じたらどうしようと少し不安だったが、上手く行ったと私はほくそ笑んだのだ。

しかしだ。

そう思っていたのは私だけみたいだった。

私は物陰で聞いてしまったのだ。皆の考えを。


「料理長。パティが若奥様のネックレスを取るなんて信じられますか」
見習いのマックが料理長に聞いていた、いや食ってかかっていたのだ!

私は料理長は頷いてくれると思っていたのだ。

「いや、あのボツトツとしたパティが盗む訳はないだろう」
なんと料理長は否定してくれたのだ。

「パティが料理をつまみ食いしたというのならば判るが、宝石なんて盗らないだろう」
「そうだぞ、マック。パティは食い意地は張っているが、宝石なんて見向きもしないさ」
料理長並びに庭師の爺さんまで言ってくれたのだ。

「じゃあ、何でパティを助けようとしないのさ?」
マックが聞くと、

「実はな、マック、アーブローズ侯爵家より一人侍女をほしいと打診があったのだ。お館様はパティはどうかと思っておられる」
「えっ、パティがいなくなるの?」
マックはなんと、ショックを受けているんだけど。
どうして?

「だって、次はスカーレット様じゃないのか」
マックは当然のように言ってくれた。

「俺等もそう思っていたのじゃが、先方は厳しいと有名なアーブローズ家だ。スカーレット様がやれると思うか」
「無理じゃないかな」
料理長の言葉にあっさりとマックが頷いてくれるんだけど……

「そうじゃろう」
どういう意味よ。私も行く所に行けばちゃんとやるわよ!
私は頷いた三人に思わず殺意を覚えた。

「それに、ここに残るのに、スカーレット様とパティならどっちが良い?」
「そらあ、パティだよ。だってパティが来てからきれいなエプロンが切れたことは無いもの」
「わしも、仕事着が汚いままだったことはない」
「そうだろう。そして、盗んだことのある娘が侯爵家に呼ばれると思うか?」
「そうか、このままにしておいたほうが、パティがこの家に残ってくれるんだ」
納得したようにマックが言ってくれるんだけど、それはそれでとてもムカついた。
と言うか私はがっかりした。
皆私を信じてくれたのではなくて、パティを信じたのだ。だが、私の言うことを信じた方が、すなわち、パティが残ったほうが良いと思うから私を信じたのだ。

私はショックを受けていた。

そう、そして、パティが閉じ込められたことで、更に私が困ったことになったのだ。

はっきり言って家の中が回らなくなったのだ。

完全に忘れていたが、家の雑用の大半はパティがしていたのだ。

「スカーレット、まだなの?」
私が奥様の朝の準備を手伝っていると、バーバラが怒ってきた。

ちょっと待ってよ。私一人しかいないのよ!

行けば行ったで、
「私のお気に入りの髪飾りにして」
「お気に入りとは」
「あなたそんなのも知らないの? あの青い色の」
慣れない私は探し出すだけで一苦労だった。

そして、それ以上に
「スカーレット様、洗濯した作業着はどこですか?」
見習いのマックが生意気にも言ってきたんだけど、洗濯なんて今までパティがしていたじゃない。私はそんな暇ないわよ!

「そんなの自分でしなさいよ」
「ええええ! どこの家に料理人が洗濯する家があるんですか」
「ちょっとスカーレット、洗濯した子供のおむつはどこ?」
「お嬢様。私の服は?」
最後は執事まで出てきて言い出すんだげと……

「ちょっと、私、一人しかいないのに、そんなの無理よ!」
私は執事相手に切れていた。

それを見て何故か執事が頭を抱えていたんだけど。

私はみんなから責められて一人で庭で泣きそうになっていた。

でも、このままでは確かにまずい。

今までは適当にしていて、皆もそれに文句を言わなかったけれど、パティが来てからは一人で全ての仕事を完璧に近くしてくれていたのだ。
そして、この一ヶ月で皆それに慣れてしまったのだ。

だから今までみたいな適当では許してくれなかった。

そして、パティが閉じ込められたままだと私が仕事をしないといけない。
でも、私一人だとそこまでできないのだ。パティは非常識にも一人で全て回してくれていたのだ。

すぐに侯爵家に行けないと皆の顰蹙が私に向かってくる。

どうしよう?

そんな、悩む私を尻目に私の前を果物を咥えたパティのペットのトカゲがトテトテと歩いて行ったのだ。
そして、トカゲは地下室に向かって行った。

何だろうとつけていくとトカゲは途中で消えたのだ。

どこかに隠れたのだろうか?

そう思っていると
「あっ、ぴーちゃん有難う! おいしいわ」
喜ぶパティの声が聞こえたのだ。

そういえばパティに食事を届けろと言われて、むかついていた私はそれも全部捨てていたのだ。

なんだ、食事はあのトカゲがパティに運んでいたのか。

私はパティが餓死しない理由が理解できた。

そうだ! 私は良いことを思いついた。

パティを閉じ込めたままではこの館は回らない。

私一人では到底回らない。今までは適当にやって来たけれど、皆パティのいる生活に慣れてしまったのだ。

でも、ネックレスを盗ったことになっているパティはすぐには解放されないだろう。

でもそれだと私が出来ないことがバレてしまう。

こうなったらネックレスを盗ったのをこのトカゲになればよいのだ。

うまくいけば、嫌いなトカゲを放逐出来て、パティの悲しむ姿を見られるかもしれない。

私はトカゲの首にお義母様のネックレスをつけることにしたのだ。

地下室の廊下で待っているとトカゲが出て来た。

「ほらおいで」
その前に厨房からくすねて来たお菓子を出してやる。

「ぴー」
単純なトカゲは私に向かって尻尾を振って寄って来たのだ。本当に飼い主と並んで食い意地だけははっている。

そして、私はお菓子を食べようとしたトカゲにネックレスをかけようとしてその角みたいなのに触れてしまったのだ。

その瞬間だ。
「グォーー」
トカゲの顔が瞬時にドラゴンになって、咆哮したのだ。

私はあまりの事に泡を吹いて吹き飛ばされたのだ。
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