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村長の娘視点 人気のある金髪のあの女が許せませんでした。

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私はこの村の村長の娘、エイダだ。
この村では一番のお嬢様で、本来一番人気のある女であるはずなのだ。

そう、あのムカつく山奥の娘のパティが一番人気だとかいう馬鹿な男も少しはいるようだが……

パティは私にはブスな山猿にしか見えないが、見ようによっては金髪美人に見えるそうだ。男どもがよく噂していた。

おそらくそれはあのパティが、男たちに気があるように流し目を送っているからだ。

本当に憎たらしいことにパティの流し目は男どもの気を惹くのだ。

少し年上のケンやトムはそうでもないが、キムやジャックなんかはその最たる例で、よくパティの噂話なんかを私にしてくれた。

このエイダ様がいるのに、他の女の話なんぞするなと私は言いたかった

しかし、そんな私に神様は微笑んでくれたのだ。

高位貴族のジル様がなんと私の家の前で倒れていたのだ。

私は両親とお手伝いさんとともに必死に看病した。もっとも、私は日中のある一定の時間だけだったが。

ジル様はとても見目麗しい顔貌をしていた。将来的に女どもに噂される美貌だったのだ。私はその顔にもうイチコロだった。
私はそのジル様の顔をやたら触れていた。だってきれいなんだもの。
でも、うなされながらジル様は私の手を時たま跳ね除けてくれたんだけど、私はそれにも負けなかった。

ジル様が目を覚ました時はちょうど私が看病していて、嬉しさで思わず私はジル様に抱きつこうとして、ジル様に避けられていた。

お貴族様は小さい子供でも、あんまりスキンシップはしないらしい。

ジル様が帰られた後、謝礼として大量の金が我が家に送られてきた。両親はそれをもらって大喜びだった。

私はそれよりもまた、ジル様に会いたくて手紙を何回もお母様に書き方を聞いて送ったが、返事は本人からではなくて、執事から儀礼的なものしか返ってこなかった。

そんなジル様のことを気にして油断していたら、いつの間にかパティの人気が更に大きくなっていた。

流石にこのままではまずいと私は苦々しく思っていた時だ。パティの住んでいる家が我が村長家のものであることがひょんなことから判ったのだ。それも格安で貸していると。
おじいちゃんに聞くと、お前はそんな事は気にしなくて良いと少し叱られてしまった。

お手伝いさんに聞くと、お祖父様の老いらくの恋ですよ。と、お手伝いさんは面白おかしく話してくれたのだ。村の井戸端会議でも、おじいちゃんがパティのおばあちゃんの家に毎日のように通っているのは有名な話だそうだった。

パティといい、その祖母といい、流し目を使うなんて最低だと思って憤った。
でも、そんな祖父もなくなり、その翌年にはパティの祖母も亡くなったのだ。

何故かパティは祖母に似たのか、ますます男をたらし込むようになってお手伝いさんが言うにはそのうちに男を家に引き込むようになるんじゃないかとのことだった。

引き込んで何をするかなんか知らないが、いかがわしいことをするに違いない。

そんなことになる前に、この村から追い出したほうが良いと私は思ったのだ。

パティの家に行くとふてぶてしくもパティは私に反論してきたのだ。

私はそれを許すわけもなく、明日の昼までに出ていけと言ってやったのだ。

本当にスッキリした。

これでパティがいなくなればこの村の一番人気は私になるのだ。

そう思っていたが、パティの人気は男たちにも結構あって、いきなり追い出すのは可哀想じゃないかとキムやジャックが言い出したのだ。もう少し、待ってやっても良いじゃないかと。

16になれば私は王都の王立学園に入って、私の助けたジル様と仲良くなる予定だった。
それまではこの村で我慢して過ごすのだ。少しでも過ごしやすくなるために、パティを追い出そうとしたのだが、パティの人気は私が思っていた以上に、あるみたいだ。
娼婦のようなパティがいれば私がいない間に村の秩序が崩れてしまう。

私はこうしてはいられないと、考えを変えて、朝早くからパティの家に押しかけたのだ。

そこで、なんとパティは更に男たちに流し目を使ってくれたのだ。

もう、私は許せなかった。

パシンッ
とパティの憎たらしげな顔を叩いてやったのだ。

とても気分が良かった。

しかしだ。そこに現れたこの村の領主の執事が、なんと、パティは男爵の娘だと衝撃の発言をしてくれたのだ。

私には晴天の霹靂だった。

こんな淫婦が私を差し置いてお貴族様の娘だなんて信じられなかった。

更にはパティは頬を押さえて私に叩かれたと言って泣き出し始めてくれたのだ。
軽く触れただけじゃない!

私は必死に思ったが、後難を避けたい男たちが逃げ出したのだ。

なんて奴だ。

それも執事が時代が時代ならばお貴族様の娘に手を出した私は縛り首だと脅してくれたのだ。

私としたことが、恐怖に震えてしまったのだ。

執事はすぐに謝りに来いと言っていたが、そんなの出来るわけはない。

私は執事が忘れてくれることを祈った。

1ヶ月が経ち、執事が忘れてくれたと私が思い出した時に、男爵家から召喚状が届いたのだ。

私はなぜ今まで黙っていたと怒って私を叩いた父によって男爵家に連れて行かれた。

私は生きた心地がしなかった。

本当に縛り首になったらどうしよう。

パティに上座に立たれて、威張られるというのも嫌だったが、命には替えられない。

私が震え慄いて男爵様の所に父と一緒に行くと、出てきた執事さんに、館でメイドとして礼儀作法見習いとして働けば許そうと寛大な言葉を頂いてホッとした。

あまりのことに賃金の金額を見なかったとしても仕方がなかったのだ。

その金額が本当に雀の涙ほどだとは私は思ってもいなかったのだ。
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