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明日の昼には家から追い出されることになりました

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「パティ、今すぐこの家を出て行きなさい」
なんと、入ってくるなり、いきなりお嬢様は私を家から追い出そうとしだしたのだ。

「はい?」
私はあいた口が塞がらなかった。

人の家に乗り込んできて、いきなり出て行けとはどういう事だ?
この村長の娘のエイダにそんな権限があるのか?

「ぴーーーー」
怒ったぴーちゃんも首を振り上げてエイダを威嚇してくれたんだけど。

めちゃくちゃ可愛い。
私はエイダを無視して思わずぴーちゃんに抱きつきそうになった。

「この家は元々私の家の物なのよ。おじいちゃんが何故かただ同然であなたのおばあちゃんに貸していたみたいだけど、その貸していたおじいちゃんも、借りていたあなたのおばあちゃんも、もういなくなったんだし、もう良いでしょう」
エイダは言ってくれるけれど、何が良いんだ!

私がここに住んでいるじゃないか!

思わず私は叫びそうになった。

駄目だ駄目だ、落ち着こう。

私は深呼吸した。

「あの、この家は本当に村長のものなの」
私は思わず聞いていた。

「そうよね。キム」
「はい。そうです。ここに権利書があります」
エイダは隣についてきた村の補佐役のキムが頷いて見せてくれたのだ。几帳面なキムの言う事だから確かなのだろう。

「そら、聞いたでしょ。だから、今すぐ出て行って」
エイダは無茶を言ってくれた。

「そんなこといきなり言われても」
私は困惑した。そもそもこのボロ屋は絶対におばあちゃんのものだと思っていたのだ。
それをいきなり村長の家のものだから出ていけはないんじゃない!

そもそも私が高位貴族の息子を治したおかげで、莫大な金が村長の所に入ったはずだ。それなのに、出て行けってどういう事なのだ?
まあ、もっとも私が秘密にしていたから当然エイダは知らないけれど。

「そうだ。家賃もろくろく払っていないパティはすぐに出て行け」
横から言ってくれたのは鍛冶屋の息子のトムだ。昔からこいつはエイダの腰ぎんちゃくだ。

「まあ、悪いとは思うけれど、エイダお嬢様がそう仰るのだ。パティも大人しく出て行ってくれ」
こいつは村唯一の商店の息子のケンだ。
そして、その後ろには10人くらいの男たちがついているんだけど。何なのよ。こいつらは!

元々おばあちゃんがよそ者だったみたいで、こうなると私の味方はほとんどいない。
私と仲の良かった男の子たちも二、三いるが、皆、私と目を合わせようとしなかった。
それだけの関係だったのだ。私は納得した。まあ、好きな子もいなかったし。どうしても精神年齢アラサープラスの私には村の若い男たちは幼く見えるのだ。

そういえば前の村長、エイダの祖父は良くうちに来ていた。おばあちゃん目当てだったのかもしれない。おばあちゃんは年とっても奇麗だったし。

孫のエイダにとってもおばあちゃんは目の上のたん瘤だったのだろう。

でも、いきなり出て行けと言われても、どこに行けばいいか判らないし。

私は困惑した。

「何しているの。パティ、さっさと出て行きなさいよ」
エイダは扉の外を指さした。

まあ、こいつはいつも私にはいう事はきつかったが。適当に頷いていたのが、まずかったのか。

「そんな事いきなり言われても」
「あんた、トムやケンに流し目していたって言うじゃない。この村で娼婦の真似事でもするつもりなの」
「はああああ! 何言ってくれるのよ。あんたじゃあるまいし、何でそんな事しなければならないのよ」
私はエイダの言葉に完全にプッツン切れていた。

「ちょっと、私じゃあるまいしってどういうことよ。私は村長の娘なのよ。そんな事する必要もないでしょ」
「その割にいつも男たちを侍らせているじゃない。今も10人も連れてきて。私一人しかいないのに、恥ずかしくないの」
「な、何かですって」
私達、二人の間には火花が散った。

流石の男どもも私達の間に入ってこない。

やるなら魔法少女になって、全員弾き飛ばしてやるわよ。私はやる気満々だった。

「まあ、エイダ。今日の今日ではさすがに可哀そうではないか」
少し年上のジャックが言ってくれた。

「そうだ。パティもおばあさんが死んだばかりで少し動揺しているんだよ」
キムもそう言ってくれた。

二人は私に恩着せがましい視線を送ってくれる。
まあ、確かにその言葉は少しは助けになったけれど、私に媚を売ったつもりかもしれないが、今まではいつも優しくしてくれたのに、エイダの方についている限りコイツラもエイダの味方なのだ。私が恩に着るわけはない。

「まあ、そうね。良いわ。明日のお昼まで待ってあげる。お昼には必ず出て行くのよ。良いわね!」
エイダはそう言うと男どもを引きつれて帰って行った。


私はほっとして、その場にうずくまってしまった。

さすがに驚き疲れてしまったのだ。

エイダ一人ならなんとも思わないが、流石に男たちが10人もいるといくら私が気が強いと言っても限界があるではないか。

それに私の味方は誰もいなかったし。

私はエイダには何も悪いことをしたことは無いのに、こんな仕打ちするなんて……

やはり黙ってもくもくと言う事を聞いているだけではだめなのだ。

私には三分間無敵という特技がある。

何だったらこの村ごと破壊してやろうか?

思わず考えてしまった。

いやいや、ダメだ。そんな事のためにこの力を使ってはいけない。

私は首を振った。

まあ、最悪、王都に行けば何とかなるかもしれない。13といえども仕事くらいあるだろう。

そう思ったが、なんか、とても、悲しくなった。

なにしろ大好きなおばあちゃんが亡くなって、まだ日が浅い。

おばあちゃんは私の守り神だったのかもしれない。黒服もおばあちゃんが生きている限りは平穏な生活を守ってくれたのかも。

でも、それなら、今からは怒涛の虐げ人生になるのかもしれない。

私はそう思うと何だかやりきれなくなった。

大好きなおばあちゃんが死んだところというのもあった。

涙が出て来た。

「ぴー」
ぴーちゃんが心配して私を見てくれた。

「大丈夫よ。ぴーちゃん」
私はぴーちゃんを撫でると、のろのろと荷物をまとめようとした。

でも、次から次に涙が出て来た。

「ぴー」
ぴーちゃんが私の膝に登って来て私の顔を舐めてくれた。
「ぴーちゃん」
私はピーちゃんを抱いて号泣したのだった。



*****************************************************
可愛そうなパティはどうなるのか?

続きは……

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