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王太子視点5 王宮食事会で妹まで両親の側に回ってしまいました

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あいも変わらず、私の想い人は見つからなかった。

妹はワイルダー嬢に、助けられた時のことをきちんと話せば、ミニ聖女が見つかるかもしれないと助言してくれた。何か妹が掴んだのかと期待してワイルダー嬢にその時の事を話したのだが、見たことは無いとのことだった。少しは何か手がかりがつかめるかと思ったのだが、全然だった。

まあ、ワイルダー嬢が食い意地がはっているのと魔法聖女エリのファンだということは再度認識できたが。

しかし、誰か学園の奴があのカフェにいたみたいで、凄まじい噂になっていると側近のテディに言われた時は焦った。大人しそうなワイルダー嬢が心配になって遠くから見に行ったが、妹の言うように、ワイルダー嬢はうまいことやってコンスタンスの攻撃を躱していた。

確かに妹の言うように、彼女は見た目とは違い図太い性格をしているみたいだ。

図太いと言えばミニ聖女も図太かったが、ワイルダー嬢は癒やし魔術は全く使えないとのことだったし、それに見た目が全然違う。


食事会の当日にマリアンをレイモンド爺のところに迎えに行くと、二人してワイルダー嬢をからかっていた。

「おっ、噂をすれば影ですな。ワイルダー嬢を殿下がお迎えに来られましたぞ」
もう、レイモンド爺も、何をワイルダー嬢をからかっているのだ。彼女がいくら図太いとは言え、からかいすぎるのも良くないと思うのだが。ワイルダー嬢は真っ赤になってうつむいているし。

「レイモンド爺。私は食事会に妹を迎えに来たのだ」
そう真面目に言うとマリアンとレイモンド爺に盛大に溜息をつかれた。

何故、ため息をつく? そこは反省するところだろうが!


「じゃあマリアン行くぞ」
「えええ!、行きたくない」
文句を言うマリアンを無理やり引っ張っていった。


食堂には既に両親は来ていた。

「おおお、マリアンではないか。久しいな」
「本当にお久しぶりね。あまりにも会わないから忘れるところだったわ」
父が歓迎するが母は嫌味を言っていた。

「お父様、王妃殿下、お久しぶりでございます」
マリアンが頭を下げる。

「マリアン、私はあなたの母なんだから、私だけ殿下とかしこまる必要はないわ」
「これは申し訳ありません。お久しぶりでしたので、忘れておりました」
おいおいおい!、二人で諍いを始めるなよ。妹はいないといないで俺が被害を受けるが、いたらいたでまた、大変だった。
俺は頭を抱えたくなった。

「まあ、二人共、久しぶりなのだからそんなに角を立てるな。それよりもパーシがマリアンの口添えでデートしたと聞いたぞ」
俺はその言葉で、口に含んだ水を思わず吹き出しそうになった。

「そうよ。生まれて初めてのデートはどうだった?」
母までそれに乗っかってきた。

えっ、そこは平民なんてとかなんとか言って反対するのではないのか? 母が賛成するとは思わなかった。そもそも、私とワイルダー嬢とが付き合うとかそう言うことは絶対に無いが。

「デートではなくて、聖女を探す一環で一緒に来てもらっただけです」
「えっ、そうなの」
俺の言葉に母が残念そうに言う。

「でも、エレインは平民ですが、魔力量はおそらく学園トップかと。今も我が国最高の魔術師であらせられるレイモンド様の所で魔術の訓練を見てもらっております」
「ほう、そうなのか。あのレイモンドが自ら教えるなどなかなかないことではないか」
妹の話に父が乗ってくる。

「エレの父は騎士団の騎士でスタンピードの時に殉職したのです」
「まあ、そうなの、国のために殉じてくれたのね。そんな子を初デートの相手に選ぶなんてパーシも良く判っているじゃない」
「いや、まあ」
俺は口を濁すと

「騎士団長もエレインの為なら何でもやるとおっしゃっていらっしゃいました」
更に妹が言い募る。いやいや待て、こいつは何を企んでいる? 俺は焦りだした。

「そうか、騎士団も後ろについているのか」
「はい。魔術師達と騎士団の後ろ盾はございます。学力は学園の特待生ですし、マナーもマアマアかと」
「無いのは地位だけということね」
「ちょっと、何の話をしているのですか」
俺は慌てて口を挟んだ。この3人は何を結託してくれているのだ。

「何って、あなたが全然お相手を見つけてこないから、後ろからバックアップしてあげているんじゃない」
母が嬉しそうに言う。

「ちょっと待ってください。最初に言ったように、彼女には聖女探しのために付き合ってもらっただけで、私はそう言う気は全く無いですよ」
俺が必死に言う。

「しかし、王宮でも既に噂になっておるぞ」
「そうよ。やっと王太子殿下に春が来たと宰相たちも喜んでいたわよ」
「マリアン、お前だな、そんな噂流したのは」
「何をおっしゃっていらっしゃるのか、よく判りませんわ」
マリアンはしらばっくれた。絶対にこいつわざとだ。ここに連れて来られた腹いせで精一杯の意趣返しをしてくれているのだ。

「マリアンの側近なのでしょう。マリアンの屋敷の子らに聞いたらとてもいい子だそうじゃない」
母まで何を言い出すのだ。

「あのレイモンドが気に入っておったからの。そもそもお前とのそんな噂が流れたらその子の今後に関わるのではないのか」
「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ。マリアン、お前嵌めたな。俺を」
「何のことか判りませんが、私はお兄様のいやがることは一切しておりませんわ」
「はああああ?、何言っているんだ。十分にやっているじゃないか」
「私が今までお兄様の気に入らないことをしたことがありますか」
「いつもだ」
私は妹に言い切った。

「酷い、私はお兄様のためにしかやっていないのに」
マリアンが嘘泣きを始めた。

「白々しい」
俺が呆れて言うと、

「少し付き合ってみればいいのに。絶対に気にいると思うわ」
妹はまだしつこく言ってくる。

「何言っているんだ。そう言ってなし崩し的に既成事実にするつもりだう」
「絶対にお兄様に将来的に感謝されることは確実なのに」
「マリアン!」
俺はきれかかっていた。

「まあ良いわ。お兄様。私はここまでやってあげましたからね。後で後悔しても知りませんから」
「絶対にするか」
俺は言い切った。絶対に後悔することなんて無いはずだ。

「も、申し上げます」
そこへ、近衛士長が慌てて入ってきた。

「どうした。非常事態か」
父が問い正した。

「はっ、アシュバートン伯爵領にて魔物が大発生したようで、多くの死人が出ているとの一報が入りました」
「何だと」
アシュバートン伯爵領はここから南に100キロくらい下ったところにある。
たしか、最近そこの息子がワイルダー嬢に手を上げたとかで停学になったのでは。

「直ちに詳細を詰めよ。騎士団長を呼べ。すまん食事会はここまでだ」
父が慌てて出ていった。

残された私達も直ちに解散した。

魔物の大発生などしばらく無いことだ。
俺は直ちに側近に集合をかけた。


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ここまで読んで頂いてありがとうございます。完結まで後少しです。
続きは今夕予定です。お気に入り登録まだの方はしていただくと有り難いです。
次はついに登場します。
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