ブス眼鏡と呼ばれても王太子に恋してる~私が本物の聖女なのに魔王の仕返しが怖いので、目立たないようにしているつもりです

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され

文字の大きさ
上 下
37 / 51

王太子視点4 婚約者を早く探せと父母が煩いです。

しおりを挟む
「パーシ、そろそろ、考えてくれたの?」
俺は母から催促された。
「外務大臣のあの娘さんとかどう?」


今日は週に一度の両親との食事会だ。本来は家族4人の食事会なのだが、最近妹は何かと言い訳していないことが多い。妹さえいればここまで言われることがないのに、あいつ、許さない。最近はあの眼鏡チャンとよくつるんでいるみたいで、王宮にはよく来ているみたいだが、めったにここには顔を見せない。父上の機嫌も悪くなるし、ますますうるさくなるのをなんとかして欲しい。

「お前も、もう18だろう。私はその時はキャサリンと婚約していたぞ」
「そうよ。それにあなたが婚約者を決めないから、貴族の令嬢たちもなかなか相手を決められなくて、息子の嫁探しも難航しております、とこの前宰相にも文句を言われたのよ」
父母は畳みかけてきた。

「だから、私は私の命を助けてくれた聖女としか結婚しないと言っているでしょう」
「でも、その聖女は天使様じゃないの?」
「違います。ちゃんと生きていました」
「あーら、嫌だ。天使様も生きているわよ」
母が訳の判んないことを言う。

「天使様は人間ではないでしょ。彼女はちゃんとした人間でしたから」
「でも、天使様も人には変装できると思うわ。だって、あなたがあれだけ探しても全然見つけられないのでしょう。私は女神様があなたを哀れんで天使様を遣わしてくれたのだと思うわ」
「しかし、母上、天使様が浄化とヒールを間違いますか?」
「えっ?、それはしないと思うけど」
「そうでしょ。その子は魔王相手にヒールで攻撃していたのですよ。あれは絶対に浄化です」
「でも、まだ見習いの天使だったかもしれないじゃない」
母はとんでもないことを言いだした。

「見習いで魔王に勝てるのですか?」
「そらあ天使様だもの」
「そんな訳無いでしょ。そもそも彼女はヒールをする時に、魔法聖女エリのマネして手を上げていたのですよ」
「えっ、そんなの当たり前じゃない。魔法聖女は手を上げるのよ」
母は心から信じているみたいだった。

「それ、母上の本の中だけですよね。ヒールできる人を色々見ましたけど、手を上げる人って母上の本の中にしかでてきませんでしたよ」
「うそ、そんな事ないわよ」
「本当です。だからあの聖女は絶対に母上の本を読んだことがあったのです」
俺は言い切った。

「でも、それでは対象者は王宮関係者に限られるのではないのか」
父が言った。

「あなた。何言っているのよ。それ以外にもいるでしょ。あの本は本屋で売ってもらったんだから。宰相とかは本屋でよく売れていたと言ってくれたわ」
あのボケ宰相は何を嘘を言っているんだ。あの本売れなくて、俺ら王侯貴族の子弟に強制的に下げ渡されたのだ。それも必ず読んでおくようにと父の言葉付きで。
マイケルとかテディとかからどれだけブツブツと不平を言われた事か。

「ま、まあな。一部を王宮関係者に配らせたのじゃよ」
父も必死にごまかしている。

「そう言う奴らには尽くあたったのじゃろう」
「まあ、ある程度は」
俺は頷いた。騎士関係者もいて、なかなか俺がすべての顔を見るのは何かと難しい問題があったが、側近共を使って魔術の高い子をある程度当たらせたのだ。
その中にはあの子はいなかった。
最近は孤児院に配った分もあるとのことで、孤児院周りもしている。

そう言えばあのモモンガが奇跡を起こしたとかいう孤児院も行ってみたが、俺の行く前に妹らも行っていたみたいだった。眼鏡のお姉ちゃんに魔法聖女エリを読んでもらったと子供たちは嬉しそうに言っていた。

「そう言えば妹の側近に魔法聖女エリのファンがいましたよ」
「そうなのか」
私が母に言うと父が驚いた顔をした。

「王宮で父上にも紹介したと言っていましたが」
「ああ、あの金髪のきれいな女の子か」
「はっ?」
俺は父が何を言っているか判らなかった。

あのメガネちゃんがきれい? いや、絶対に聞き違いだろう。

「お前も会ったことがあるのだろう。あれ程の美形は久しぶりで見たぞ」
「あなた、それはどういう事ですか」
途端に母の機嫌が悪くなる。妹の母に現を抜かしていたと母が知ってからそう言うことはご法度なのだ。

「いや、キャサリン。それは違うぞ」
「何が違うのです」
「あれだけの美形ならばパーシの嫁にもいいかなとふと思っただけじゃ」
「ぶっ」
俺は口に含んでいたものを吹き出しそうになった。

「いやいや、父上、それはないでしょう。彼女は平民ですし」
俺は必死に言い訳した。よりによってメガネちゃんはありえないだろう!

「しかし、学園の特待生で、あのレイモンドのお気に入りじゃぞ」
「私としてはあの聖女以外は娶るつもりはありませんから」
俺は即否定した。そう、俺はあのミニ聖女一択なのだ。

「そうか。あの子はいいと思ったのだが」
「息子が興味ないからって、ご自分が手を出されるなんてことないでしょうね?」
「何を言っている。あの子はマリアンのお気に入りだぞ。そんな事したら私が許されんわ。そもそも、兄の相手にも絶対に渡さんと申しておったからな」
「いや、だから、私はありえませんて」
私は再度否定した。

そう、その時は絶対にありえないと思っていたのだ。
限りなく少ない魔法聖女エリのファンだとか、魔術を発動する時に手を挙げる癖とか、もっとよく考えるべきだった、と後悔したのはもっと後になってからだった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。

玖保ひかる
恋愛
[完結] 北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。 ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。 アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。 森に捨てられてしまったのだ。 南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。 苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。 ※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。 ※完結しました。

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに自分の恋も叶えちゃいます!

MEIKO
恋愛
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるラブコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

処理中です...