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大魔術師レイモンド様に会いに王宮に行きました
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「今日は王宮に行くから」
そして、翌日、私はマリアンの家で美味しい朝食を楽しんでいる時に、とんでもないことを言われたのだ。
「えっ!」
私はぎょっとしてマリアンを見た。
「まあ、エレ、心配しないで。父に会えとは言わないから」
マリアンがとんでもないことを言った。
「当たり前でしょ。王女様のお父上って国王陛下でしょ。そんなの無理に決まっているじゃない」
私はゼイゼイしながら言った。
「そう?、魔法聖女エリは国王陛下にお会いしていたわよ」
「エリと私は違うわよ」
私は必死に言い切る。そんなの国王陛下に拝謁するなんて絶対に無理だ。
「大魔術師のレイモンド様にエレには会ってほしいのよ」
「えっ、やだ」
私は即答した。
「でも、エレ、いつ何時魔王はあんたを見つけないとは限らないのよ。だから自分の身を守る術は身につけておいたほうが良いでしょ」
「見つからないためにこのメガネかけているんじゃない」
「そんなのその眼鏡で魔王がごまかせるかどうかわからないじゃない。レイモンド様は国最高の魔術師よ。唯一、魔王に対抗できるかもしれない。その方に今後の対策聞いておいたほうが良いでしょ」
「でも」
「いつまでもその眼鏡で隠せるかどうかわからないじゃない。エレは考え無しのおっちょこちょいなんだから」
「そんな事ないわよ。沈着冷静な私に向かってなんてこと言うのよ」
私が言うとマリアンは頭を押さえた。
「な、何よその態度」
「あんた、沈着冷静って言葉の意味、もう一度辞書で引いたほうが良いわよ」
「どういう意味よ」
私が食って掛かると
「じゃあ、クラスの皆に聞いてみましょうか。あんたが沈着冷静かどうか。頷いてくれるのはお情けでポールくらいのものよ。ピーターなんて即否定確実よ」
「・・・・」
私は何も言えなかった。何もそこまで言うことは無いじゃないと思わないでもなかったが。
「それにそのメガネしていても現に私にバレちゃったじゃない」
「あれは人が死にそうだったから仕方がないじゃない」
私は言い訳した。
「また、あんな事があんたの目の前で起こらないとも限らないでしょ。だから絶対に対策は練っておいたほうが良いと思うの」
「そらあ、そうかも知れないけれど」
私は抵抗した。
「レイモンド様の魔術は素晴らしいのよ。絶対にあなたのためになること教えてくれるから」
「でも、これ以上秘密が漏れると私監禁される」
「大丈夫よ。レイモンド様には黙っておいてくれるように頼むから。昨日もお兄様には黙っておいてあげたじゃない」
「国王陛下にも?」
「いざとなったら話して手を貸してもらうけど、それまでは黙っておいてあげるから」
「本当に?」
「本当よ。そもそも、私はこの国の王女なのよ。まあ皆にはあんまり知られていないけれど。もしバレてもあなたは私の庇護下にあるのよ。公爵だろうが侯爵だろうが、私には強いことは言えないし、その子どもたちなんて言えるわけ無いわ。そもそも私本人が男爵だからね」
「えっ、マリアンって男爵様だったの」
「そうよ、父が、どさくさに紛れて母に男爵位を授与したのよ。母が亡くなったから当然私が引き継いだの。だから王女ってバラさなくても男爵だって言えば彼奴等一言も言えないわよ。なんせ侯爵の息子でも爵位はないからね」
まあ、そらそうだけど、それに実際は王女様だから公爵でも強いことは言えないのは確かだ。
「まあ、王女様はそうかも知れないけど、国王陛下に知られたら、今度は王宮に監禁されない?」
「大丈夫よ。お父様も私には優しいのよ。私のいやがることは絶対にしないから」
「うーん」
「そのためにも味方は多いほうが良いでしょ。国の魔術師の大半はレイモンド様の弟子だから、レイモンド様にさえ認めてもらえれば今後のこともやりやすいから」
「でも、嫌われちゃったら。魔術師の人って変な人多くない?」
「えっ、まあ、たしかに変かもしれないけれど、エレ、あなたなら絶対に好かれるから。私が太鼓判押してあげるわ」
なんか訳の判らないこと言われて無理矢理に連れて行かれることになったのだ。
衣装はそのままの動きやすいワンピースで良いと言われたのでそうした。
でも、これ絶対に庶民のワンピースじゃない。私じゃ絶対に買えない値段の服だ。
汚したらどうしようと言うと、大丈夫そんな服はいくらでもあるからと言われてしまった。
馬車に乗っていくのかと思ったが、今度は奥に案内される。
女性騎士が二人ついてくれた。
そして、奥の部屋の中にも2人の騎士がいた。
マリアンはそのまま歩いていく。
女性騎士が合図すると男性の騎士が扉を開けてくれた。
「えっ」
私が驚いていると
「この屋敷と王宮は秘密の扉で繋がっているのよ」
マリアンが説明してくれた。
そう言えば屋敷は王宮の城壁沿いにいあったと思ったが、繋がっているとは思っていなかった。
「便利だからよくお兄様が利用するのよね。本当に迷惑なのだけど」
そうか、マリアンの屋敷に来れば麗しの王太子殿下に会えるかもしれないんだ、それはそれで楽しみだ。会っても恥ずかしくて話せないけれど。
私がしょうもないことを考えていると、また扉が見えてきた。
通路は20メートルも歩くともう出口だったのだ。
メチャクチャ近い。これなら王太子殿下も使いたくなるはずだ。
二人の騎士の見守る中、私達は中に入った。
そう、私はあっという間に生まれてはじめて王宮に入ったのだ。
感動する時間も、心の準備をする暇もなかった。
そして、城壁沿いに歩くと王宮の角に尖塔が現れた。
「これが魔術師の塔よ」
マリアンはそう言うと入り口で止まる。
塔は寂れた感じでいかにも胡散臭そうで、言い換えれば魔王が住んでいそうだった。
「ほっほっほっ、流石に魔王は住んでおりませんぞ」
笑い声を響かせながら、年老いた老魔術師が現れた。
「えっ、また心の声が漏れていた?」
「違うわよ。レイモンド様は時たま心の声を読むのよ」
マリアンが解説してくれた。
これが私とレイモンド様の出会いだった。
そして、翌日、私はマリアンの家で美味しい朝食を楽しんでいる時に、とんでもないことを言われたのだ。
「えっ!」
私はぎょっとしてマリアンを見た。
「まあ、エレ、心配しないで。父に会えとは言わないから」
マリアンがとんでもないことを言った。
「当たり前でしょ。王女様のお父上って国王陛下でしょ。そんなの無理に決まっているじゃない」
私はゼイゼイしながら言った。
「そう?、魔法聖女エリは国王陛下にお会いしていたわよ」
「エリと私は違うわよ」
私は必死に言い切る。そんなの国王陛下に拝謁するなんて絶対に無理だ。
「大魔術師のレイモンド様にエレには会ってほしいのよ」
「えっ、やだ」
私は即答した。
「でも、エレ、いつ何時魔王はあんたを見つけないとは限らないのよ。だから自分の身を守る術は身につけておいたほうが良いでしょ」
「見つからないためにこのメガネかけているんじゃない」
「そんなのその眼鏡で魔王がごまかせるかどうかわからないじゃない。レイモンド様は国最高の魔術師よ。唯一、魔王に対抗できるかもしれない。その方に今後の対策聞いておいたほうが良いでしょ」
「でも」
「いつまでもその眼鏡で隠せるかどうかわからないじゃない。エレは考え無しのおっちょこちょいなんだから」
「そんな事ないわよ。沈着冷静な私に向かってなんてこと言うのよ」
私が言うとマリアンは頭を押さえた。
「な、何よその態度」
「あんた、沈着冷静って言葉の意味、もう一度辞書で引いたほうが良いわよ」
「どういう意味よ」
私が食って掛かると
「じゃあ、クラスの皆に聞いてみましょうか。あんたが沈着冷静かどうか。頷いてくれるのはお情けでポールくらいのものよ。ピーターなんて即否定確実よ」
「・・・・」
私は何も言えなかった。何もそこまで言うことは無いじゃないと思わないでもなかったが。
「それにそのメガネしていても現に私にバレちゃったじゃない」
「あれは人が死にそうだったから仕方がないじゃない」
私は言い訳した。
「また、あんな事があんたの目の前で起こらないとも限らないでしょ。だから絶対に対策は練っておいたほうが良いと思うの」
「そらあ、そうかも知れないけれど」
私は抵抗した。
「レイモンド様の魔術は素晴らしいのよ。絶対にあなたのためになること教えてくれるから」
「でも、これ以上秘密が漏れると私監禁される」
「大丈夫よ。レイモンド様には黙っておいてくれるように頼むから。昨日もお兄様には黙っておいてあげたじゃない」
「国王陛下にも?」
「いざとなったら話して手を貸してもらうけど、それまでは黙っておいてあげるから」
「本当に?」
「本当よ。そもそも、私はこの国の王女なのよ。まあ皆にはあんまり知られていないけれど。もしバレてもあなたは私の庇護下にあるのよ。公爵だろうが侯爵だろうが、私には強いことは言えないし、その子どもたちなんて言えるわけ無いわ。そもそも私本人が男爵だからね」
「えっ、マリアンって男爵様だったの」
「そうよ、父が、どさくさに紛れて母に男爵位を授与したのよ。母が亡くなったから当然私が引き継いだの。だから王女ってバラさなくても男爵だって言えば彼奴等一言も言えないわよ。なんせ侯爵の息子でも爵位はないからね」
まあ、そらそうだけど、それに実際は王女様だから公爵でも強いことは言えないのは確かだ。
「まあ、王女様はそうかも知れないけど、国王陛下に知られたら、今度は王宮に監禁されない?」
「大丈夫よ。お父様も私には優しいのよ。私のいやがることは絶対にしないから」
「うーん」
「そのためにも味方は多いほうが良いでしょ。国の魔術師の大半はレイモンド様の弟子だから、レイモンド様にさえ認めてもらえれば今後のこともやりやすいから」
「でも、嫌われちゃったら。魔術師の人って変な人多くない?」
「えっ、まあ、たしかに変かもしれないけれど、エレ、あなたなら絶対に好かれるから。私が太鼓判押してあげるわ」
なんか訳の判らないこと言われて無理矢理に連れて行かれることになったのだ。
衣装はそのままの動きやすいワンピースで良いと言われたのでそうした。
でも、これ絶対に庶民のワンピースじゃない。私じゃ絶対に買えない値段の服だ。
汚したらどうしようと言うと、大丈夫そんな服はいくらでもあるからと言われてしまった。
馬車に乗っていくのかと思ったが、今度は奥に案内される。
女性騎士が二人ついてくれた。
そして、奥の部屋の中にも2人の騎士がいた。
マリアンはそのまま歩いていく。
女性騎士が合図すると男性の騎士が扉を開けてくれた。
「えっ」
私が驚いていると
「この屋敷と王宮は秘密の扉で繋がっているのよ」
マリアンが説明してくれた。
そう言えば屋敷は王宮の城壁沿いにいあったと思ったが、繋がっているとは思っていなかった。
「便利だからよくお兄様が利用するのよね。本当に迷惑なのだけど」
そうか、マリアンの屋敷に来れば麗しの王太子殿下に会えるかもしれないんだ、それはそれで楽しみだ。会っても恥ずかしくて話せないけれど。
私がしょうもないことを考えていると、また扉が見えてきた。
通路は20メートルも歩くともう出口だったのだ。
メチャクチャ近い。これなら王太子殿下も使いたくなるはずだ。
二人の騎士の見守る中、私達は中に入った。
そう、私はあっという間に生まれてはじめて王宮に入ったのだ。
感動する時間も、心の準備をする暇もなかった。
そして、城壁沿いに歩くと王宮の角に尖塔が現れた。
「これが魔術師の塔よ」
マリアンはそう言うと入り口で止まる。
塔は寂れた感じでいかにも胡散臭そうで、言い換えれば魔王が住んでいそうだった。
「ほっほっほっ、流石に魔王は住んでおりませんぞ」
笑い声を響かせながら、年老いた老魔術師が現れた。
「えっ、また心の声が漏れていた?」
「違うわよ。レイモンド様は時たま心の声を読むのよ」
マリアンが解説してくれた。
これが私とレイモンド様の出会いだった。
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