上 下
23 / 51

大魔術師レイモンド様に会いに王宮に行きました

しおりを挟む
「今日は王宮に行くから」
そして、翌日、私はマリアンの家で美味しい朝食を楽しんでいる時に、とんでもないことを言われたのだ。

「えっ!」
私はぎょっとしてマリアンを見た。

「まあ、エレ、心配しないで。父に会えとは言わないから」
マリアンがとんでもないことを言った。

「当たり前でしょ。王女様のお父上って国王陛下でしょ。そんなの無理に決まっているじゃない」
私はゼイゼイしながら言った。

「そう?、魔法聖女エリは国王陛下にお会いしていたわよ」
「エリと私は違うわよ」
私は必死に言い切る。そんなの国王陛下に拝謁するなんて絶対に無理だ。

「大魔術師のレイモンド様にエレには会ってほしいのよ」
「えっ、やだ」
私は即答した。

「でも、エレ、いつ何時魔王はあんたを見つけないとは限らないのよ。だから自分の身を守る術は身につけておいたほうが良いでしょ」
「見つからないためにこのメガネかけているんじゃない」
「そんなのその眼鏡で魔王がごまかせるかどうかわからないじゃない。レイモンド様は国最高の魔術師よ。唯一、魔王に対抗できるかもしれない。その方に今後の対策聞いておいたほうが良いでしょ」
「でも」
「いつまでもその眼鏡で隠せるかどうかわからないじゃない。エレは考え無しのおっちょこちょいなんだから」
「そんな事ないわよ。沈着冷静な私に向かってなんてこと言うのよ」
私が言うとマリアンは頭を押さえた。

「な、何よその態度」
「あんた、沈着冷静って言葉の意味、もう一度辞書で引いたほうが良いわよ」
「どういう意味よ」
私が食って掛かると

「じゃあ、クラスの皆に聞いてみましょうか。あんたが沈着冷静かどうか。頷いてくれるのはお情けでポールくらいのものよ。ピーターなんて即否定確実よ」
「・・・・」
私は何も言えなかった。何もそこまで言うことは無いじゃないと思わないでもなかったが。

「それにそのメガネしていても現に私にバレちゃったじゃない」
「あれは人が死にそうだったから仕方がないじゃない」
私は言い訳した。

「また、あんな事があんたの目の前で起こらないとも限らないでしょ。だから絶対に対策は練っておいたほうが良いと思うの」
「そらあ、そうかも知れないけれど」
私は抵抗した。

「レイモンド様の魔術は素晴らしいのよ。絶対にあなたのためになること教えてくれるから」
「でも、これ以上秘密が漏れると私監禁される」
「大丈夫よ。レイモンド様には黙っておいてくれるように頼むから。昨日もお兄様には黙っておいてあげたじゃない」
「国王陛下にも?」
「いざとなったら話して手を貸してもらうけど、それまでは黙っておいてあげるから」
「本当に?」
「本当よ。そもそも、私はこの国の王女なのよ。まあ皆にはあんまり知られていないけれど。もしバレてもあなたは私の庇護下にあるのよ。公爵だろうが侯爵だろうが、私には強いことは言えないし、その子どもたちなんて言えるわけ無いわ。そもそも私本人が男爵だからね」
「えっ、マリアンって男爵様だったの」
「そうよ、父が、どさくさに紛れて母に男爵位を授与したのよ。母が亡くなったから当然私が引き継いだの。だから王女ってバラさなくても男爵だって言えば彼奴等一言も言えないわよ。なんせ侯爵の息子でも爵位はないからね」
まあ、そらそうだけど、それに実際は王女様だから公爵でも強いことは言えないのは確かだ。

「まあ、王女様はそうかも知れないけど、国王陛下に知られたら、今度は王宮に監禁されない?」
「大丈夫よ。お父様も私には優しいのよ。私のいやがることは絶対にしないから」
「うーん」
「そのためにも味方は多いほうが良いでしょ。国の魔術師の大半はレイモンド様の弟子だから、レイモンド様にさえ認めてもらえれば今後のこともやりやすいから」
「でも、嫌われちゃったら。魔術師の人って変な人多くない?」
「えっ、まあ、たしかに変かもしれないけれど、エレ、あなたなら絶対に好かれるから。私が太鼓判押してあげるわ」
なんか訳の判らないこと言われて無理矢理に連れて行かれることになったのだ。

衣装はそのままの動きやすいワンピースで良いと言われたのでそうした。

でも、これ絶対に庶民のワンピースじゃない。私じゃ絶対に買えない値段の服だ。
汚したらどうしようと言うと、大丈夫そんな服はいくらでもあるからと言われてしまった。

馬車に乗っていくのかと思ったが、今度は奥に案内される。
女性騎士が二人ついてくれた。

そして、奥の部屋の中にも2人の騎士がいた。

マリアンはそのまま歩いていく。

女性騎士が合図すると男性の騎士が扉を開けてくれた。

「えっ」
私が驚いていると

「この屋敷と王宮は秘密の扉で繋がっているのよ」
マリアンが説明してくれた。

そう言えば屋敷は王宮の城壁沿いにいあったと思ったが、繋がっているとは思っていなかった。

「便利だからよくお兄様が利用するのよね。本当に迷惑なのだけど」
そうか、マリアンの屋敷に来れば麗しの王太子殿下に会えるかもしれないんだ、それはそれで楽しみだ。会っても恥ずかしくて話せないけれど。
私がしょうもないことを考えていると、また扉が見えてきた。

通路は20メートルも歩くともう出口だったのだ。

メチャクチャ近い。これなら王太子殿下も使いたくなるはずだ。

二人の騎士の見守る中、私達は中に入った。

そう、私はあっという間に生まれてはじめて王宮に入ったのだ。
感動する時間も、心の準備をする暇もなかった。


そして、城壁沿いに歩くと王宮の角に尖塔が現れた。

「これが魔術師の塔よ」
マリアンはそう言うと入り口で止まる。

塔は寂れた感じでいかにも胡散臭そうで、言い換えれば魔王が住んでいそうだった。

「ほっほっほっ、流石に魔王は住んでおりませんぞ」
笑い声を響かせながら、年老いた老魔術師が現れた。

「えっ、また心の声が漏れていた?」
「違うわよ。レイモンド様は時たま心の声を読むのよ」
マリアンが解説してくれた。

これが私とレイモンド様の出会いだった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語 母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・? ※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!

春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前! さて、どうやって切り抜けようか? (全6話で完結) ※一般的なざまぁではありません ※他サイト様にも掲載中

【完】ええ!?わたし当て馬じゃ無いんですか!?

112
恋愛
ショーデ侯爵家の令嬢ルイーズは、王太子殿下の婚約者候補として、王宮に上がった。 目的は王太子の婚約者となること──でなく、父からの命で、リンドゲール侯爵家のシャルロット嬢を婚約者となるように手助けする。 助けが功を奏してか、最終候補にシャルロットが選ばれるが、特に何もしていないルイーズも何故か選ばれる。

婚約破棄を望む伯爵令嬢と逃がしたくない宰相閣下との攻防戦~最短で破棄したいので、悪役令嬢乗っ取ります~

甘寧
恋愛
この世界が前世で読んだ事のある小説『恋の花紡』だと気付いたリリー・エーヴェルト。 その瞬間から婚約破棄を望んでいるが、宰相を務める美麗秀麗な婚約者ルーファス・クライナートはそれを受け入れてくれない。 そんな折、気がついた。 「悪役令嬢になればいいじゃない?」 悪役令嬢になれば断罪は必然だが、幸運な事に原作では処刑されない事になってる。 貴族社会に思い残すことも無いし、断罪後は僻地でのんびり暮らすのもよかろう。 よしっ、悪役令嬢乗っ取ろう。 これで万事解決。 ……て思ってたのに、あれ?何で貴方が断罪されてるの? ※全12話で完結です。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

処理中です...