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魔王に攻撃された人を治そうとした時に、私は完全に覚醒しました

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絶対に私が聖魔力適正があるのは知られてはいけないのだ。何しろ私は魔王に恨まれている。前回はたまたま魔王に勝ったが、まぐれに違いないと祖母には言われた。

何しろ魔王は1000年前に史上最強と言われた大聖女様に封じられる前は、全世界を恐怖で支配していたのだ。次に私が捕まったら、1センチ刻みでいびり殺されるに違いないと、魔王が使っていたと言われる拷問器具が載っている本を見せながら、じっくりと祖母に説明されたのだ。

その恐怖を感じて以来この祖母のくれたメガネで姿を変えているのだ。

そんな私が、何故このフィールド王国最高の教育機関である王立学園に来たかと言うと、生きていくために職を得るためただった。
祖母が亡くなって、祖母がやっていた診療所も閉めざるを得ず、これからどうやって生活していこうと悩んでいた私は、学力があればただで行ける学園があり、そこを出れば職には困らないと周りの人に言われて、わらをも掴む気持ちで王立学園の入試を受けたら、特待生で通ってしまったのだ。


そもそも私に聖魔術が顕在化したのはたまたまだ。

騎士をしていた父と一緒に5歳の私は山に木の実を取りに行ったときに、たまたま魔物に襲われたのだ。
魔物は父によって倒されたが、父も瀕死の重症を負ったのだ。

「パパ、死んじゃいやーーーー」
私が大声で叫んだ時だ。

私の周りに何か巨大な力が現れた。

私はその時思わず祈ったのだ。父を助けてと。

凄まじい光の乱舞が回りを舞って、私は気を失っていた。



次に気づいた時は夕方だった。

「パパ!」
はっとして私は父に駆け寄ると、父をゆり動かした。

「エレ、どうしたんだ」
ぼうっとして父は起きあがった。

「あれ、傷が塞がっている」
父は驚いて言った。

「えっ、本当だ」
私も驚いた。

「エレがやってくれたのかい」
「えっ、わからない」
私は素直に言った。だって私は気を失っていたのだから。

狐につままれたみたいに私達は家に帰った。


でも、そんな風に助かった父も魔物のスタンピードを防ごうとして死んだ。その時のスタンピードで何人もの騎士が死んだと聞く。

母は私の小さい頃に死んでいたので、私は下町で治療院をしている母の実家の祖母の家に行った。

父と母は祖母の反対を押し切って結婚したみたいで、母が亡くなってからはあまり祖母には会ったことがなかった。

でも、祖母は口は悪かったが、彼女なりに私を可愛がってくれた・・・・と思う。

祖母は皆に黙っていたが、珍しく癒やしの魔術が使えたのだ。薬を使うふりをして癒やしの魔術をたまに使っていたのだ。

「あんたもやってご覧」
祖母はそう言うとヒールの練習をさせた。

でもなかなかうまくいかなかった。

私は練習するために、祖母に腕とか体の一部を傷つけられて、自分で治して練習するよう何度もやらされた。

「痛くて嫌だ」と言っても、
「あんたが私が死んだ後生きていくためだよ」
祖母は止めてくれなかった。

でも、何回もやるうちになんとか3回に一回はヒールと叫べば使えるようになってきた。

私は祖母の診療所を手伝いつつ、練習した。


そんな時だ。私が魔王と遭遇したのは。

その日は祖母にお使いを頼まれて、私はその道をたまたま歩いていたのだ。

悲鳴を聞いたような気がした。

そして、ドサッという音とともに血だらけの人が私の目の前に落ちてきたのだ。

スローモーションのように。

父が魔物に襲われて半死半生になった時の事を思い出したのだ。

また、私はその時、魔法聖女エリという絵本を愛読していた。

魔法聖女ってなんだ! 今ならツッコミどころ満載の本なのだが、小さかった私は名前が似ているのもあって、その真似を何度もしていたのだ。練習の時も祖母に隠れて格好つけてやっていた。

そう魔法聖女エリは手を空に向けてヒールと叫ぶと皆の傷を治して、悪い奴をバッタバッタ弾き飛ばしていくのだった。最後に魔王を確かエリアヒールで弾き飛ばしていたと思ったのだ。
実際は、浄化とか、衝撃波とか、爆裂魔術とか色々難しい名前が書いてあったのだが、私は幼心に全てヒールと覚えてしまっていたのだった。

そう、ついに私の出番が来たのだ。

私は血だらけの人と父をダブらせて見るや、手を空に向けた。

「ヒール」
その叫び声とともに、癒やし魔術が発動した。
今まで中々出来なかったのに、さっと出来た。それも半死半生の人の傷が殆ど治ってしまったのだ。
そうか、手を上に上げていなかったから出来なかったんだ。
単純な私はそう、思ってしまったのだった。
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次話は明朝です

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