上 下
5 / 51

魔王に攻撃された人を治そうとした時に、私は完全に覚醒しました

しおりを挟む
絶対に私が聖魔力適正があるのは知られてはいけないのだ。何しろ私は魔王に恨まれている。前回はたまたま魔王に勝ったが、まぐれに違いないと祖母には言われた。

何しろ魔王は1000年前に史上最強と言われた大聖女様に封じられる前は、全世界を恐怖で支配していたのだ。次に私が捕まったら、1センチ刻みでいびり殺されるに違いないと、魔王が使っていたと言われる拷問器具が載っている本を見せながら、じっくりと祖母に説明されたのだ。

その恐怖を感じて以来この祖母のくれたメガネで姿を変えているのだ。

そんな私が、何故このフィールド王国最高の教育機関である王立学園に来たかと言うと、生きていくために職を得るためただった。
祖母が亡くなって、祖母がやっていた診療所も閉めざるを得ず、これからどうやって生活していこうと悩んでいた私は、学力があればただで行ける学園があり、そこを出れば職には困らないと周りの人に言われて、わらをも掴む気持ちで王立学園の入試を受けたら、特待生で通ってしまったのだ。


そもそも私に聖魔術が顕在化したのはたまたまだ。

騎士をしていた父と一緒に5歳の私は山に木の実を取りに行ったときに、たまたま魔物に襲われたのだ。
魔物は父によって倒されたが、父も瀕死の重症を負ったのだ。

「パパ、死んじゃいやーーーー」
私が大声で叫んだ時だ。

私の周りに何か巨大な力が現れた。

私はその時思わず祈ったのだ。父を助けてと。

凄まじい光の乱舞が回りを舞って、私は気を失っていた。



次に気づいた時は夕方だった。

「パパ!」
はっとして私は父に駆け寄ると、父をゆり動かした。

「エレ、どうしたんだ」
ぼうっとして父は起きあがった。

「あれ、傷が塞がっている」
父は驚いて言った。

「えっ、本当だ」
私も驚いた。

「エレがやってくれたのかい」
「えっ、わからない」
私は素直に言った。だって私は気を失っていたのだから。

狐につままれたみたいに私達は家に帰った。


でも、そんな風に助かった父も魔物のスタンピードを防ごうとして死んだ。その時のスタンピードで何人もの騎士が死んだと聞く。

母は私の小さい頃に死んでいたので、私は下町で治療院をしている母の実家の祖母の家に行った。

父と母は祖母の反対を押し切って結婚したみたいで、母が亡くなってからはあまり祖母には会ったことがなかった。

でも、祖母は口は悪かったが、彼女なりに私を可愛がってくれた・・・・と思う。

祖母は皆に黙っていたが、珍しく癒やしの魔術が使えたのだ。薬を使うふりをして癒やしの魔術をたまに使っていたのだ。

「あんたもやってご覧」
祖母はそう言うとヒールの練習をさせた。

でもなかなかうまくいかなかった。

私は練習するために、祖母に腕とか体の一部を傷つけられて、自分で治して練習するよう何度もやらされた。

「痛くて嫌だ」と言っても、
「あんたが私が死んだ後生きていくためだよ」
祖母は止めてくれなかった。

でも、何回もやるうちになんとか3回に一回はヒールと叫べば使えるようになってきた。

私は祖母の診療所を手伝いつつ、練習した。


そんな時だ。私が魔王と遭遇したのは。

その日は祖母にお使いを頼まれて、私はその道をたまたま歩いていたのだ。

悲鳴を聞いたような気がした。

そして、ドサッという音とともに血だらけの人が私の目の前に落ちてきたのだ。

スローモーションのように。

父が魔物に襲われて半死半生になった時の事を思い出したのだ。

また、私はその時、魔法聖女エリという絵本を愛読していた。

魔法聖女ってなんだ! 今ならツッコミどころ満載の本なのだが、小さかった私は名前が似ているのもあって、その真似を何度もしていたのだ。練習の時も祖母に隠れて格好つけてやっていた。

そう魔法聖女エリは手を空に向けてヒールと叫ぶと皆の傷を治して、悪い奴をバッタバッタ弾き飛ばしていくのだった。最後に魔王を確かエリアヒールで弾き飛ばしていたと思ったのだ。
実際は、浄化とか、衝撃波とか、爆裂魔術とか色々難しい名前が書いてあったのだが、私は幼心に全てヒールと覚えてしまっていたのだった。

そう、ついに私の出番が来たのだ。

私は血だらけの人と父をダブらせて見るや、手を空に向けた。

「ヒール」
その叫び声とともに、癒やし魔術が発動した。
今まで中々出来なかったのに、さっと出来た。それも半死半生の人の傷が殆ど治ってしまったのだ。
そうか、手を上に上げていなかったから出来なかったんだ。
単純な私はそう、思ってしまったのだった。
***********************************************
次話は明朝です

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

【完結】転生したら少女漫画の悪役令嬢でした〜アホ王子との婚約フラグを壊したら義理の兄に溺愛されました〜

まほりろ
恋愛
ムーンライトノベルズで日間総合1位、週間総合2位になった作品です。 【完結】「ディアーナ・フォークト! 貴様との婚約を破棄する!!」見目麗しい第二王子にそう言い渡されたとき、ディアーナは騎士団長の子息に取り押さえられ膝をついていた。王子の側近により読み上げられるディアーナの罪状。第二王子の腕の中で幸せそうに微笑むヒロインのユリア。悪役令嬢のディアーナはユリアに斬りかかり、義理の兄で第二王子の近衛隊のフリードに斬り殺される。 三日月杏奈は漫画好きの普通の女の子、バナナの皮で滑って転んで死んだ。享年二十歳。 目を覚ました杏奈は少女漫画「クリンゲル学園の天使」悪役令嬢ディアーナ・フォークト転生していた。破滅フラグを壊す為に義理の兄と仲良くしようとしたら溺愛されました。 私の事を大切にしてくれるお義兄様と仲良く暮らします。王子殿下私のことは放っておいてください。 ムーンライトノベルズにも投稿しています。 「Copyright(C)2021-九十九沢まほろ」 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

【完結】気づいたら異世界に転生。読んでいた小説の脇役令嬢に。原作通りの人生は歩まないと決めたら隣国の王子様に愛されました

hikari
恋愛
気がついたら自分は異世界に転生していた事に気づく。 そこは以前読んだことのある異世界小説の中だった……。転生をしたのは『山紫水明の中庭』の脇役令嬢のアレクサンドラ。アレクサンドラはしつこくつきまとってくる迷惑平民男、チャールズに根負けして結婚してしまう。 「そんな人生は嫌だ!」という事で、宿命を変えてしまう。アレクサンドラには物語上でも片思いしていた相手がいた。 王太子の浮気で婚約破棄。ここまでは原作通り。 ところが、アレクサンドラは本来の物語に無い登場人物から言い寄られる。しかも、その人物の正体は実は隣国の王子だった……。 チャールズと仕向けようとした、王太子を奪ったディアドラとヒロインとヒロインの恋人の3人が最後に仲違い。 きわめつけは王太子がギャンブルをやっている事が発覚し王太子は国外追放にあう。 ※ざまぁの回には★印があります。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

転生不憫令嬢は自重しない~愛を知らない令嬢の異世界生活

リョンコ
恋愛
シュタイザー侯爵家の長女『ストロベリー・ディ・シュタイザー』の人生は幼少期から波乱万丈であった。 銀髪&碧眼色の父、金髪&翠眼色の母、両親の色彩を受け継いだ、金髪&碧眼色の実兄。 そんな侯爵家に産まれた待望の長女は、ミルキーピンクの髪の毛にパープルゴールドの眼。 両親どちらにもない色彩だった為、母は不貞を疑われるのを恐れ、産まれたばかりの娘を敷地内の旧侯爵邸へ隔離し、下働きメイドの娘(ハニーブロンドヘア&ヘーゼルアイ)を実娘として育てる事にした。 一方、本当の実娘『ストロベリー』は、産まれたばかりなのに泣きもせず、暴れたりもせず、無表情で一点を見詰めたまま微動だにしなかった……。 そんな赤ん坊の胸中は(クッソババアだな。あれが実母とかやばくね?パパンは何処よ?家庭を顧みないダメ親父か?ヘイゴッド、転生先が悪魔の住処ってこれ如何に?私に恨みでもあるんですか!?)だった。 そして泣きもせず、暴れたりもせず、ずっと無表情だった『ストロベリー』の第一声は、「おぎゃー」でも「うにゃー」でもなく、「くっそはりゃへった……」だった。 その声は、空が茜色に染まってきた頃に薄暗い部屋の中で静かに木霊した……。 ※この小説は剣と魔法の世界&乙女ゲームを模した世界なので、バトル有り恋愛有りのファンタジー小説になります。 ※ギリギリR15を攻めます。 ※残酷描写有りなので苦手な方は注意して下さい。 ※主人公は気が強く喧嘩っ早いし口が悪いです。 ※色々な加護持ちだけど、平凡なチートです。 ※他転生者も登場します。 ※毎日1話ずつ更新する予定です。ゆるゆると進みます。 皆様のお気に入り登録やエールをお待ちしております。 ※なろう小説でも掲載しています☆

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

婚約破棄された令嬢は変人公爵に嫁がされる ~新婚生活を嘲笑いにきた? 夫がかわゆすぎて今それどころじゃないんですが!!

杓子ねこ
恋愛
侯爵令嬢テオドシーネは、王太子の婚約者として花嫁修業に励んできた。 しかしその努力が裏目に出てしまい、王太子ピエトロに浮気され、浮気相手への嫌がらせを理由に婚約破棄された挙句、変人と名高いクイア公爵のもとへ嫁がされることに。 対面した当主シエルフィリードは馬のかぶりものをして、噂どおりの奇人……と思ったら、馬の下から出てきたのは超絶美少年? でもあなたかなり年上のはずですよね? 年下にしか見えませんが? どうして涙ぐんでるんですか? え、王太子殿下が新婚生活を嘲笑いにきた? 公爵様がかわゆすぎていまそれどころじゃないんですが!! 恋を知らなかった生真面目令嬢がきゅんきゅんしながら引きこもり公爵を育成するお話です。 本編11話+番外編。 ※「小説家になろう」でも掲載しています。

処理中です...