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チャイチュアの捕らぬ狸の皮算用・チェラム攻防戦の始まり

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チュラは元チェラム国の王都だったところだ。
緑豊かな国家は10年前に帝国に蹂躙されて王族は野獣王の為に殺された。
ハレルヤ王国軍は王妃の具合が悪いところでもあり援軍は送れなかった。
最も送ったところで何の助けにもならなかったと思われるが。
以来チェラム帝国の過重な税にあえいでいた。
普通は四公六民4割が税金で6割が農民とか五公五民という五分五分が普通だったが、
チェラムは六公四民だった。さらにプラスして道路整備等の重い賦役がかされていた。

「チャイチュア様。このままでは農民はやって行けません。何卒お慈悲を」
ブンヤサックは司令官に頭を下げていた。
サーマート・ブンヤサックは元々チェラムの文官。併合後は帝国の取り立て官として努力してきたが、その努力でカバーできる事は限られていた。
そしてさすがに10年ともなると豊かなチェラムも蓄えは尽き、逃散をする村も現れ始めていた。

チェラム方面司令官であり軍政官でもあるダーオルング・チャイチュアは胡散臭そうにブンヤックをにらんだ。
「ブンヤサック。その方チェラム出身だからと言ってお前の地区の取り立てを手を抜いているのではないか」
「滅相もございません。私は帝国の為に頑張っております。ただ、あまりにも厳しく取り立てすぎますと村人が逃げて返って収穫が減るのではないかと危惧しておる次第です。」
当たり障りの無い回答をする。

「思い上がりをするでない。この畜生が」
そう言うとチャイチュアは司令官席を立ちあがって思いっきりブンヤサックを殴りつけていた。
「貴様のところの税収が減っているのだよ。チャラのところは増えているというのに。」
「チェラのところは払えない農民は虐殺し、恐怖で村を収めていると」
反論するブンヤサックを再度殴りつける。

「農民は生かさず殺さずだ。いや収穫さえ上がれば殺してもよい。皇帝陛下の事を思うなら、当然そうすべきだろう。
我が帝国は恐怖で全世界を支配するのだ。」
チャイチュアは太った体を揺らしていった。

「ダージリン。ブンヤサックの徴税している村へ行って直ちに税を徴収しして来い。」
部隊長を呼んでチャイチュアは命じた。

「お待ちください。閣下。それだけは」
真っ青になってそう言って止めようとするブンヤサックを足蹴にする。

「直ちに行け。行って帝国の恐怖を農民どもに思い知らせて来るのだ。
何人殺しても構わん。」
ダージリンは村人を平気で殺す死神部隊の異名をとる部隊を率いていた。
その通った後はぺんぺん草も生えていないと言われていた。
「閣下」
ブンヤサックは何としても止めようと立ち上がった時だ。

「ご報告申し上げます。」
慌てて兵士が駆けこんで来た。

「何事だ。今取り込んでおる」
きっとしてチャイチュアは兵士をにらんだ。

「はっ。ハレルヤにて皇帝陛下崩御されたそうです。」
慌てて兵士が報告する。
「な、なんだと」
修羅場だった一同は唖然とした。

「崩御されたとはどういうことか。」
「はっ。ハレルヤの最終兵器怪獣デブゴンに強襲され、お亡くなりになったそうです。」
兵士は下を向いて報告していた。
こんなことがあるなんて
象と押し相撲をしても勝ちそうなスラバ14世だった。
それがハレルヤの軍に敗れるなど信じられなかった。
いくら最終兵器を隠していたとはいえ、皇帝が敗ける訳は無かった。
「ふんっとうとう天罰が下ったか」
そうぼそっと呟いたブンヤサックをチャイチュアはけり倒した。

「それは事実か」
「国境近くの村には続々と敗れた兵士が逃げてきているそうです。
その兵士全てが皇帝陛下が殺されるのを見たと申しております。」

「一緒にいた前衛将軍のハッパはどうした」
「ハッパ様は半分の兵を引き連れてハレルヤ本城攻撃の為に向かっておられ、その場にはいらっしゃらなかったそうです。」
まだハッパの敗死の件はここまで伝わっていなかった。
「わかった直ちに全軍国境地域に集めよ。陛下の弔い合戦を始める。」
チャイチュアは高らかに宣言した。
チェラムの全軍 帝国本軍5万人。チェラム人の現地人部隊5万人を合わせれば10万人になる。
これでハッパの5万人を合わせれば15万人もの大軍になるのだ。
いくらハレルヤの最終兵器とはいえ手も足も出ないであろう。
ここで、陛下の仇を討ったとなると帝国軍の中での地位も上がるに違いない。
これは急がなくては、下手してハッパなどに先を越されてはたまらん。
チャイチュアは取らぬ狸の皮算用を始めた。
ハレルヤの最終兵器に散々な目に合わされるなど想像もしなかった。

そしてチャイチュアはこれが帝国の没落の始まりだとは想像だにしなかった。

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