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ぷっつん切れた私は怒りのあまり伯爵邸を消滅させました

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「今からじっくりとお前を可愛がってやるわ。そこの騎士の前でな」
厭らしい笑みを浮かべた伯爵が私の体に触れる。
私におぞ気が走った。
でも、手には魔封じの手錠が嵌められていて魔術が使えない。もっとも私の魔術なんて見た目は大したことはないんだけど・・・・

「アン! しっかりしろ」
フィル様が叫んでいる。

が、フィル様の周りに後ろからバラバラと騎士達が現れたのだ。そして、次々とフィル様に斬りかかった。

フィル様は慌てて剣の相手を始めた。

「グウェェェ」
斬りかかった伯爵の騎士が次々に斬られていく。
さすがフィル様。

「そこの騎士、王女がどうなっても良いのか」
しかし、伯爵が私の首筋に小刀を突きつけて叫んだ。

「な、何を!」
フィル様が慌てる。

「フィル様私は良いから、逃げて」
私が出ない声をあげて必至に言うが、

「お前が剣を捨てないとこの王女の命はないぞ」
伯爵が私の首筋に小刀を当てる。

フィル様は私達の様子を見て、剣を降ろした。

「さっさと捨てるんだ」
伯爵が凄んだ。

「ちっ」
舌打ちしてフィル様が剣を遠くに投げだ。

「拘束しろ!」
伯爵の言葉にフィル様は騎士達に押し倒されて後手に縛られていた。

そんな!

私は唖然とした。

「ふんっ、そこの騎士。貴様の王女がこの儂におもちゃにされるのをそこでよく見ていろ」
そう下卑た笑みを浮かべると伯爵は服の上から私の胸に触れやがったのだ。
私の胸に。いつも全然無いとかペチャパイとか、散々馬鹿にされているが、それでも乙女の胸だ。それにあろう事かこの下衆は触れやがったのだ!

怖気が走ると同時に、ピキッと私の線が一本、完全にぷっつん切れたのだ。

汚らしい手で私の胸に触れるな!

私がそう思った瞬間だ。

パリンッ

大きな音と共に魔術封じの手錠が砕け散った。

「な」
思わず胸から手を離して後ろに後ずさった伯爵に

「この変態野郎!」
私は怒りの蹴りを繰り出していたのだ。その蹴りがモロに伯爵の股間を直撃したのだ。

「ギャーーーー」
大きな悲鳴をあげて伯爵は吹っ飛んでいた。

そのまま鉄格子をぶち破り騎士達の中に飛び込んで、ドミノ倒しに倒していく。

「死ね死ね死ね」
もう私は完全に切れて制御不能になっていた。

ファイヤーボールをどうなるか何も考えずに、伯爵の飛んでいった方に次々に射出したのだ。

ポヨンポヨンポヨンポヨン

私の怒りとは反比例してゆっくりととても小さな火の玉が飛んでいく。

騎士達はそれを唖然としてみていた。
「何だ」
「このちゃちなものは」
馬鹿にしたような騎士の視線がファイアーボールと私に向かう。

ええい、うるさい! 私の魔術は見た目はこうなのよ!
そう、叫ぼうとした時だ。


「アン」
飛ぶように走って来たフィル様に私は捕まると部屋の奥に強引に連れて行かれる。

「えっ、フィル様」
戸惑う私をフィル様は押し倒した。

「な、何を」
叫ぼうとする私の頭をフィル様が抱えた瞬間だ。

ドカーーーーーン
凄まじい爆発が怒った。ファイアーボールが何かに当たったのだ。

屋敷が大きく揺れて、天井がバラバラと落ちてくる。

ドカーーーーン

ドカーーーーン

ファイアーボールが次々に爆発する。凄まじい爆風と粉塵が私たちを襲う。
フィル様が必至に私を守ってくれる。

ちょっとやり過ぎたかもしれない・・・・。
私が不安に思った時だ。

やっと爆発が終わった。


粉塵が晴れた時に顔を上げると天井がなかった。

私の目には青空が見えているのだ!

そう、私達の上にあった伯爵邸が綺麗さっぱり無くなっていたのだ。

私のファイアーボールは見た目はちゃちだが、その威力は半端なものじゃないのだ。

イングリッドたちは無事なんだろうか?
私はとても不安になった。

ガーブリエル様からは魔術を使ってもいいとは言われていたが、逃げられたんだろうか?

周りを見ると立っている敵兵士は1人もいなかった。

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ここまで読んで頂いて有難うございます。

今日はまだまだ更新します。

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